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落ち着こう
しおりを挟む「……いいから。落ち着いて」
アタシの頭の中では、たくさんのスタッフに捜されている高遠さんの図まで出来上がって軽いパニックに陥っていた。
高遠さんは、そんなアタシの背中をとんとんと叩いた。
「じゃ、深呼吸して」
言われるままに従う。
「大丈夫だから。きっとまだ撮影場所の確認や機材の設置に時間がかかってるから」
「…ごめんなさい」
アタシはうな垂れるしかなかった。
足元を見ながらゆっくり歩き出すと、狭い道の半歩先の崖がわを高遠さんが歩いてくれた。
「みんな俺達が居なくても、自分の仕事がわかってるんだよ。もちろん俺だって皆の努力を無駄にしないようにやらなくちゃいけないことがある」
頭をひとつ振って、振り返った高遠さんはアタシを見た。
「なんでいつも想像を超えたとこにいるのかなぁ」
「アタシがですか」
「CMのスポンサーとは知り合い?」
それは尾上さんを指していることに気づく。
「スポンサーは自分の会社です……尾上さんはお隣りの部署で、高遠さんの資料を貸してあげた仲です。CMの候補に高遠さんがいるって聞いてから、CM撮影に立ち会わせて貰えるまで、楽しみにしていたんです、アタシ」
それを聞いて高遠さんは微妙な顔をした。笑いたいような怒りたいような、なにか堪えるように口を結んだ。
「こんな所で会えるなんて思ってなかったから、驚いたよ」
そう言って、楽しそうに笑う顔は整ってはいても、冷たく見えることはなく、温かくアタシを見る。
「同じ舞台に立つ俳優さんも、同じドラマに出る女優さんも、一緒に居られるのは作品を作っている間だけなんだよ。期間にしたらほんの数ヶ月でしかない。CMにしたら尚更短いよね。だからどんな出会いも大切にしたいんだ」
さわさわと高遠さんの頭上で木々が揺れる。パッチワークのように木々が影を落としていて、日差しが強くなったのがわかった。
はっきりしたコントラストで高遠さんを強く意識した。
ああ
この人は本当に根っこから芸能界の人なんだ。アタシの常識や尺度とは違うものを持っているんだ。
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