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彼の引き出し
しおりを挟む「いいわね。高遠くん他にアイデアはあるかしら」
にっこりと湯山さんの口角があがる。監督も好感触だったらしく、頷いている。
「出来はわかりませんが、お時間をいただけるなら、やってみたいです」
高遠さんも、にっこりと笑顔をつくる。
「スポンサー様は、お時間よろしいでしょうか」
急に話を振られた尾上さんも、
「より良いものが出来るなら、かまいません。あとで会社の上層部と掛け合ってみます」と頷いた。
高遠さんが動いたことで、会社の上層部まで動かしてしまうなんてすごい。
ただ普通のタレントではない、舞台俳優としての幅の広さを感じた。
そこから高遠さんのアイデアによるふたつのCM撮影を終えた。
「本日はお世話になりました」
マネージャーが挨拶をしている脇で、高遠さんは足を拭い靴下をはいていた。
「今回は当社で提案させて頂いたほかに、高遠さんの案もCM編集に回してよろしいでしょうか」
湯山さんが、尾上さんの確認を取る。
「大変興味深いCMでした。放送されるのを楽しみにしています」
和やかな談笑の脇で、高遠さんの側を通るスタッフが何かしら声をかけていく。
「また一緒に仕事しましょーねー」
「オンエア楽しみッス」
掛けられる言葉に、短い返事を返したり、手を振ったりと高遠さんはせわしない。
撮影した後の安堵してゆるく笑った顔が、なによりもCMの出来を表しているようで、きっとこのお茶はヒットするという予感がする。
いいこと、だと思う。
舞台で活躍していて、テレビのドラマにも活躍の場所を広げて。
さらには、テレビCMの契約まで決まって。
きゅうっと胸が詰まった。
ねえ
アタシとは違いすぎない?
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