130 / 139
Natrium
第百二十七話 第二人格
しおりを挟む
「シン……なのか?」
ゆっくりと中空から地に足を着け口角を上げる真に、山本と月華元は目を丸くする。だがシグエーはそんな真に少しの違和感を覚えていた。
「さて……山本さんと月華元さんがまさかここに来るとは何かの思い違いでしょうかね」
「真、無事だったのね!」
「ん?ん?あれ、真君てこんな感じだったかな?ん、あれ……もしかして」
「おいおいおいおい!待て、コイツ!お前!お前ザイールトーナメントにいた……何だってんだよ、一体」
「ふう……僕はもう驚くのやーめた」
ボルグはそんな真を見るなりいつかの苦い記憶を思い出し、思わず指を指して声を上げた。
フィリップスに関しては面倒臭そうに両腕を頭に乗せ思考を中断させる。
そんな刹那、山本の手首に着けられたデバイスが光の明滅を放っていた。
「ん……SSFD?猛からか、何だろ」
一同はそんな山本に視線を注ぐ。
だが山本は自分の手首を凝視しながら青ざめていったのだった。
「え、ふ、ふざけんなよ!何だよ、コレ」
「どうしたの山本君、SSFDって……圧縮データ?何のデータが入ってるの?って言うよりそうよ、結城君から連絡は?真を見つけたのは良いけど私達どうやって地球へ戻るのよ!」
「はは、良い質問だね月華元女史!どうやらこれがその答えだよっ!つい異世界に興奮して忘れてた……猛の野郎、ふざけやがって。結城咲元、最初から僕を此処へ送り込む算段だったんだ、じゃなきゃこんな設計図を僕等を飛ばしてから作れる訳ない!こっちで粒子分解移転装置の指定受信部を――作れって事だよ」
「な、それって!?」
シグエーもトライレイズンの三人も最早蚊帳の外であった。と言ってもボルグに至っては真への対抗心を顕にしたままであり、そんな月華元と山本の言葉など最早聞こえてはいない。
「……何やら面倒な事になっているようですね。お二人も随分といい様に使われているようで」
「おいてめぇ!シンとか言ったよな、俺を負かしたあの小僧に勝った奴だ。間違いねえ、俺と勝負しろっ!今なら全力で行けるぜ、お前に勝てば晴れて名誉挽回だ!」
「汚名返上じゃなくて?」
「……っち、るせぇ!てめぇは黙ってろ」
真は山本と月華元へ視線を向けている。
だがボルグはフィリップスへ小馬鹿にされながらも未だザイールトーナメントの汚名を晴らそうと必死であった。
「先程から騒がしいですね貴方は……ん?そちらの貴方は確か……ハイライト=シグエーさんですか。ファンデル王国ギルド試験官の貴方がこの国で何を?因みに赤髪の貴方は、見覚えがありませんが何方様でしょうかね」
「てっ、てめぇ……馬鹿にしやがって」
「シン……やっぱり君なのか。でもどうしたんだ、何か、おかしい」
「あぁ、私ですか。ハイライト=シグエーさん、安心してください。貴方の知っている真ではありませんが私も真で間違いありませんからね」
そんな真の意味不明な言葉に動揺したのはシグエーだけではない。月華元もまた、山本の言葉が気になりつつも真の様子がおかしい事に気付き始めていた。
「だぁぁぁ!!くっそ、やってやる……やってやるぞ……そうだ、折角だからこのコードを改竄して、へへ、見てろよ結城咲元。でもくそ、どうやってこのコードを実機にするかだよな、普通に考えれば剣なんか持ってる異世界で材料なんて」
「ねぇ、ちょっと……山本君?真の様子、おかしくない?」
混乱するシグエーに、相変わらず感情の読めない表情で笑みを送る真。そしてそんなシグエーと真に無視されるボルグ達を見つめながら月華元は山本に問うていた。
山本は一人デバイスを弄りながら譫言のようにぶつぶつと呟くが、月華元にそう言われ僅かに視線を真へと向ける。
「ん……ああ、忘れてたよ真君の事。え、で何?真君が何?月華元さん、今すごく忙しくなったんだけど脳内回路が」
「それは分かるわ、でもあっちはあっちで何か忙しくなってるみたい」
最早山本と月華元等眼中に無いかのよう喚き散らす赤髪、掴みかかられんばかりの黒髪に呆れる黄髪、それを制しようと青髪も重い腰を上げるが未だ緑髪は動揺を隠せない。
そんな様々な髪色が乱れる場に、月華元は現状の自分達はこれからどうすればいいか等忘れる程であった。
一体この星は何なのか、何故こんな遥か遠い銀河の星に地球人に似た者達がいるのかと。
「あぁ……そう言えば真君、様子がおかしかったね。もしかして、もしかして?真君っ!」
「……呼びましたか、山本さん」
突如真を呼ぶ山本の声に反応する霧雨真。
だがその反応に山本は確信していた。
「あぁ、やっぱり。なるほど……これが柴本さんプロデュースの人工人格。凄い、完璧だ、やっぱり僕は天才だったね!」
「え、何よそれ……山本君。ちゃんと説明して、今北――」
「あぁ!もうダメだよ、月華元さん。それを使っていいのは人生で一回だけだからね」
山本はこれ以上教えて教えての月華元は御免だと適当な情報を月華元へ伝えて短い首を横に振る。
だが真の方は何かを理解していた様だった。
「なるほど。どうやら貴方が私のソースを作成した様ですね、山本尊オカルト研究員……それなら聞きたいのですが」
山本と月華元の不可思議なやり取りを聞き流し、真は自分の人工人格を作り出したであろう山本へ問う。
「私が人工人格として何故ここまでの自我があるのかという事ですが――」
「うむ、説明しよう!僕の天才的なプログラムを!君は僕が作成した二つの人格の一つなんだよ。だけどその自我は主人格である真君の頭頂葉へ繋がるんだ、僕は真君の頭頂葉へ指定コードを送るソースを作っただけだけど。まぁその結果、筋肉の活動準備電位によって君の自我が作られると言う仕組みなのさ。つまり恐らくは……うぅんと、第三かな?の君に意思など存在しない、君はあくまで僕の作ったソースコード内で動くいわば操られた真君って訳なのさ」
「ちょっと……山本君、何を言っているの?さっぱり理解できないわ」
「ん?まぁ、僕もバイオは詳しくないけど……そんな感じだったはずだよ。僕はその、まぁ真君の行動に制限を、違うな。制限解除を目的に作ったんだ――あ、因みに二番目の人格プログラムは失敗作だって言われちゃったけど僕的には成功なんだよ!制限解除人格を作れって言うから作ったのにさ、これじゃ危ないとか言って作り直しさせられたんだ。結局二週間もかかったよ、この三番目の真君を作るのに」
「なるほど……大体理解しましたよ。つまり私は霧崎真でしかない、それも貴方達に脳を操られた人工人間(アンドロイド)としての霧崎真。私は、いや、私達は最早人間ではないという事ですね」
「ちょっと。一体真君に何をしたのよ、山本君!貴方達は!人間を、一体なんだと思ってるの!」
「えぇ?何って……被検体なんてどうせ元々社会の悪でしかないような屑人間だよ?僕がむしろ世界を変える正義にしたって感じで、怒られる筋合いなんて無いんだけどな」
山本は人一人の人間を改変させた事に微塵の悪気も感じていない様子で飄々とそう告げる。
「いいんですよ月華元さん。分かっていましたからね、それが彼等のやり方です」
真は月華元にそう言うが、月華元は山本に対し湧き上がる嫌悪感を抑えきれなかった。だがここで何かを言ったところで山本には伝わらないであろう事も同時に理解していた。
巨大な研究機関、フォラスは狂っている。
人道も何もない、人間を好きに扱い、自分達の裁量で人間に価値を作る。
それが出来るだけの技術を持ってしまったのだと。
そして、その犠牲となったのが真のような日本経済格差における底辺部の人間達。
もしかすると世界は今後、誰かの意思のもとに全てを操られた一つだけの価値によって成り立つのかもしれない。そんなおぞましい考えが月華元の脳裏を襲っていた。
「凡そその推測は出来ていましたし、今更貴方達の様な狂った研究員に何を言っても仕方ありません。寧ろ月華元さんのような人の方があの組織では異常と言う所でしょうか」
「うーん、よく分からないけど月華元さんより話しやすいね。やっぱり僕のコードは素晴らしい」
「因みに山本さん、私の人格を主人格である霧崎真へ戻す事も可能なのですか?」
特にそんな山本の言葉を気にした様子も無い霧雨真はふと山本へそう持ち掛ける。
「勿論だよ!それには指定マイクロ波で神経回路の切替をするんだけど、戻すって事は元々の真君だから確か150MHzだったかな。因みに僕の最高傑作は君じゃなくて237MHzの方なんだけどね」
「――なるほど。それが知りたかったのですよ、指定周波数がね。間違えると大変ですから……さて、では私はゆっくりと安寧の時を過ごす事にしますか。あぁ、あと山本さん。折角ですから貴方の最高傑作とやら、じっくりと絶望を噛み締めてくださいよ。さて皆さん、恨みはありませんが何かあっても是非生き抜いて見てください、では御機嫌よう――conscious mind off no.3 biokillhuman……choosing……dicided the no.2 biokillhuman…………convert!」
「ん?生き抜く?ん、え?あのコードもしかして!!」
「――え?ちょ、え、何で……マイクロ波機能が真君の|FAIBE(デバイス)に?そんなの無かった筈って、あ」
直後だった。
真のデバイスは無機質な電子音を発し、気付けば次の瞬間山本の左手小指が何処かへ切り飛ばされていた。
流麗な黒き日本刀を振りぬき、いつの間にか山本の横に立つ真。月華元が開発した元素収束兵器であり、山本が自ら図案を起こしたカーボナイズドエッヂによる一閃。それはほんの一瞬の間に山本の小指を的確に身体から切り離したのだ。
「!?」
「シン!」
「え」
「んにゃ!?あ、あ、あ、い、いだぁ"ぁ"ぇぇ!!」
「あぁ……解ったよ、てめぇも俺と同じ屑だってのがな。終わりだ、ウスラデブ。FAIBE、消せ」
――OK. By an intention judgment, I understand an object for a particle resolution
それは一瞬。
山本の身体は刹那、真の行った粒子分解によりその身体を消し去られていた。
残ったのは、暴走する真と静止する五人の人間達。そして遠くへ飛び落ちた指輪型反磁性粒子分解装置のついた山本の小指だけだった。
ゆっくりと中空から地に足を着け口角を上げる真に、山本と月華元は目を丸くする。だがシグエーはそんな真に少しの違和感を覚えていた。
「さて……山本さんと月華元さんがまさかここに来るとは何かの思い違いでしょうかね」
「真、無事だったのね!」
「ん?ん?あれ、真君てこんな感じだったかな?ん、あれ……もしかして」
「おいおいおいおい!待て、コイツ!お前!お前ザイールトーナメントにいた……何だってんだよ、一体」
「ふう……僕はもう驚くのやーめた」
ボルグはそんな真を見るなりいつかの苦い記憶を思い出し、思わず指を指して声を上げた。
フィリップスに関しては面倒臭そうに両腕を頭に乗せ思考を中断させる。
そんな刹那、山本の手首に着けられたデバイスが光の明滅を放っていた。
「ん……SSFD?猛からか、何だろ」
一同はそんな山本に視線を注ぐ。
だが山本は自分の手首を凝視しながら青ざめていったのだった。
「え、ふ、ふざけんなよ!何だよ、コレ」
「どうしたの山本君、SSFDって……圧縮データ?何のデータが入ってるの?って言うよりそうよ、結城君から連絡は?真を見つけたのは良いけど私達どうやって地球へ戻るのよ!」
「はは、良い質問だね月華元女史!どうやらこれがその答えだよっ!つい異世界に興奮して忘れてた……猛の野郎、ふざけやがって。結城咲元、最初から僕を此処へ送り込む算段だったんだ、じゃなきゃこんな設計図を僕等を飛ばしてから作れる訳ない!こっちで粒子分解移転装置の指定受信部を――作れって事だよ」
「な、それって!?」
シグエーもトライレイズンの三人も最早蚊帳の外であった。と言ってもボルグに至っては真への対抗心を顕にしたままであり、そんな月華元と山本の言葉など最早聞こえてはいない。
「……何やら面倒な事になっているようですね。お二人も随分といい様に使われているようで」
「おいてめぇ!シンとか言ったよな、俺を負かしたあの小僧に勝った奴だ。間違いねえ、俺と勝負しろっ!今なら全力で行けるぜ、お前に勝てば晴れて名誉挽回だ!」
「汚名返上じゃなくて?」
「……っち、るせぇ!てめぇは黙ってろ」
真は山本と月華元へ視線を向けている。
だがボルグはフィリップスへ小馬鹿にされながらも未だザイールトーナメントの汚名を晴らそうと必死であった。
「先程から騒がしいですね貴方は……ん?そちらの貴方は確か……ハイライト=シグエーさんですか。ファンデル王国ギルド試験官の貴方がこの国で何を?因みに赤髪の貴方は、見覚えがありませんが何方様でしょうかね」
「てっ、てめぇ……馬鹿にしやがって」
「シン……やっぱり君なのか。でもどうしたんだ、何か、おかしい」
「あぁ、私ですか。ハイライト=シグエーさん、安心してください。貴方の知っている真ではありませんが私も真で間違いありませんからね」
そんな真の意味不明な言葉に動揺したのはシグエーだけではない。月華元もまた、山本の言葉が気になりつつも真の様子がおかしい事に気付き始めていた。
「だぁぁぁ!!くっそ、やってやる……やってやるぞ……そうだ、折角だからこのコードを改竄して、へへ、見てろよ結城咲元。でもくそ、どうやってこのコードを実機にするかだよな、普通に考えれば剣なんか持ってる異世界で材料なんて」
「ねぇ、ちょっと……山本君?真の様子、おかしくない?」
混乱するシグエーに、相変わらず感情の読めない表情で笑みを送る真。そしてそんなシグエーと真に無視されるボルグ達を見つめながら月華元は山本に問うていた。
山本は一人デバイスを弄りながら譫言のようにぶつぶつと呟くが、月華元にそう言われ僅かに視線を真へと向ける。
「ん……ああ、忘れてたよ真君の事。え、で何?真君が何?月華元さん、今すごく忙しくなったんだけど脳内回路が」
「それは分かるわ、でもあっちはあっちで何か忙しくなってるみたい」
最早山本と月華元等眼中に無いかのよう喚き散らす赤髪、掴みかかられんばかりの黒髪に呆れる黄髪、それを制しようと青髪も重い腰を上げるが未だ緑髪は動揺を隠せない。
そんな様々な髪色が乱れる場に、月華元は現状の自分達はこれからどうすればいいか等忘れる程であった。
一体この星は何なのか、何故こんな遥か遠い銀河の星に地球人に似た者達がいるのかと。
「あぁ……そう言えば真君、様子がおかしかったね。もしかして、もしかして?真君っ!」
「……呼びましたか、山本さん」
突如真を呼ぶ山本の声に反応する霧雨真。
だがその反応に山本は確信していた。
「あぁ、やっぱり。なるほど……これが柴本さんプロデュースの人工人格。凄い、完璧だ、やっぱり僕は天才だったね!」
「え、何よそれ……山本君。ちゃんと説明して、今北――」
「あぁ!もうダメだよ、月華元さん。それを使っていいのは人生で一回だけだからね」
山本はこれ以上教えて教えての月華元は御免だと適当な情報を月華元へ伝えて短い首を横に振る。
だが真の方は何かを理解していた様だった。
「なるほど。どうやら貴方が私のソースを作成した様ですね、山本尊オカルト研究員……それなら聞きたいのですが」
山本と月華元の不可思議なやり取りを聞き流し、真は自分の人工人格を作り出したであろう山本へ問う。
「私が人工人格として何故ここまでの自我があるのかという事ですが――」
「うむ、説明しよう!僕の天才的なプログラムを!君は僕が作成した二つの人格の一つなんだよ。だけどその自我は主人格である真君の頭頂葉へ繋がるんだ、僕は真君の頭頂葉へ指定コードを送るソースを作っただけだけど。まぁその結果、筋肉の活動準備電位によって君の自我が作られると言う仕組みなのさ。つまり恐らくは……うぅんと、第三かな?の君に意思など存在しない、君はあくまで僕の作ったソースコード内で動くいわば操られた真君って訳なのさ」
「ちょっと……山本君、何を言っているの?さっぱり理解できないわ」
「ん?まぁ、僕もバイオは詳しくないけど……そんな感じだったはずだよ。僕はその、まぁ真君の行動に制限を、違うな。制限解除を目的に作ったんだ――あ、因みに二番目の人格プログラムは失敗作だって言われちゃったけど僕的には成功なんだよ!制限解除人格を作れって言うから作ったのにさ、これじゃ危ないとか言って作り直しさせられたんだ。結局二週間もかかったよ、この三番目の真君を作るのに」
「なるほど……大体理解しましたよ。つまり私は霧崎真でしかない、それも貴方達に脳を操られた人工人間(アンドロイド)としての霧崎真。私は、いや、私達は最早人間ではないという事ですね」
「ちょっと。一体真君に何をしたのよ、山本君!貴方達は!人間を、一体なんだと思ってるの!」
「えぇ?何って……被検体なんてどうせ元々社会の悪でしかないような屑人間だよ?僕がむしろ世界を変える正義にしたって感じで、怒られる筋合いなんて無いんだけどな」
山本は人一人の人間を改変させた事に微塵の悪気も感じていない様子で飄々とそう告げる。
「いいんですよ月華元さん。分かっていましたからね、それが彼等のやり方です」
真は月華元にそう言うが、月華元は山本に対し湧き上がる嫌悪感を抑えきれなかった。だがここで何かを言ったところで山本には伝わらないであろう事も同時に理解していた。
巨大な研究機関、フォラスは狂っている。
人道も何もない、人間を好きに扱い、自分達の裁量で人間に価値を作る。
それが出来るだけの技術を持ってしまったのだと。
そして、その犠牲となったのが真のような日本経済格差における底辺部の人間達。
もしかすると世界は今後、誰かの意思のもとに全てを操られた一つだけの価値によって成り立つのかもしれない。そんなおぞましい考えが月華元の脳裏を襲っていた。
「凡そその推測は出来ていましたし、今更貴方達の様な狂った研究員に何を言っても仕方ありません。寧ろ月華元さんのような人の方があの組織では異常と言う所でしょうか」
「うーん、よく分からないけど月華元さんより話しやすいね。やっぱり僕のコードは素晴らしい」
「因みに山本さん、私の人格を主人格である霧崎真へ戻す事も可能なのですか?」
特にそんな山本の言葉を気にした様子も無い霧雨真はふと山本へそう持ち掛ける。
「勿論だよ!それには指定マイクロ波で神経回路の切替をするんだけど、戻すって事は元々の真君だから確か150MHzだったかな。因みに僕の最高傑作は君じゃなくて237MHzの方なんだけどね」
「――なるほど。それが知りたかったのですよ、指定周波数がね。間違えると大変ですから……さて、では私はゆっくりと安寧の時を過ごす事にしますか。あぁ、あと山本さん。折角ですから貴方の最高傑作とやら、じっくりと絶望を噛み締めてくださいよ。さて皆さん、恨みはありませんが何かあっても是非生き抜いて見てください、では御機嫌よう――conscious mind off no.3 biokillhuman……choosing……dicided the no.2 biokillhuman…………convert!」
「ん?生き抜く?ん、え?あのコードもしかして!!」
「――え?ちょ、え、何で……マイクロ波機能が真君の|FAIBE(デバイス)に?そんなの無かった筈って、あ」
直後だった。
真のデバイスは無機質な電子音を発し、気付けば次の瞬間山本の左手小指が何処かへ切り飛ばされていた。
流麗な黒き日本刀を振りぬき、いつの間にか山本の横に立つ真。月華元が開発した元素収束兵器であり、山本が自ら図案を起こしたカーボナイズドエッヂによる一閃。それはほんの一瞬の間に山本の小指を的確に身体から切り離したのだ。
「!?」
「シン!」
「え」
「んにゃ!?あ、あ、あ、い、いだぁ"ぁ"ぇぇ!!」
「あぁ……解ったよ、てめぇも俺と同じ屑だってのがな。終わりだ、ウスラデブ。FAIBE、消せ」
――OK. By an intention judgment, I understand an object for a particle resolution
それは一瞬。
山本の身体は刹那、真の行った粒子分解によりその身体を消し去られていた。
残ったのは、暴走する真と静止する五人の人間達。そして遠くへ飛び落ちた指輪型反磁性粒子分解装置のついた山本の小指だけだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる