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Lithium
第二十二話 パーティの確執
しおりを挟む「……何処のいい女冒険者が来てるのかと思えばフレイ=フォーレスさんじゃねぇか、なんだそこらのD級以下クズレ共連れて旅に出たって聞いてたがよぉ、ぇえ?」
嗄れ声の厳つい男、黒い短髪を何かで固めているのか前髪は芝生の様に立ち上がっている。
肩から足先までを灰色の西洋甲冑で包み、ガシャガシャと音立てながらフレイに視線を向け階段を降りてくる。
「……フレイ?」
フレイは黙ったまま男を一瞥するとその視線を反らす。
どうやら知り合い、と言う程仲の良い感じには見えない。男の口振りから恐らくは過去にここのギルドで顔を合わせた程度か、パーティを組んで嫌な思いをしたと言う当事者なのかだろうと真は検討をつけていた。
「何だぁ、そっちの後ろの坊っちゃんとちっこいのはお仲間かい?そいつらもD級以下クズレか?」
「……っちこっ?!」
フレイは痺れを切らしたのかその男を睨み付けると腰に提げた剣の鯉口を切る。
「……黙れッ!次にその言葉を言ってみろ、二度とその馬鹿デカイ飾りを握れない様にしてやるぞ」
馬鹿デカイ飾りとは恐らく男が背中に軽々と背負うその両刃の斧の様な物の事だろう。
試験時に初めて手に持った剣の三倍以上はある大きさのそれは見るだけで明らかに重いだろうと分かり、それを常に背負っていると言う事からそれだけでこの男がどれだけ体を鍛えているかが伺える。
そんな物を振り回して獣を狩るなど合理性の欠片も無いが、おそらくそこはフレイがしていたのと同様に魔力結石とやらの力を借りるのだろうと真は勝手に想像していた。
(魔力か……そんな物を認められるなんて俺もこの世界によっぽど染まったかな)
「おいおい……ギルド員同士の争いはご法度だろ?あの時の事まだ根に持ってんのかよ、悪かった。あれは魔が差したんだ、今はお前と真摯に向き合いたいと思ってんだぜ?」
「……ふざけた事を」
あの時の事、フレイの嫌悪と怒気が入り交じったこの剣幕。
もしかしたらいつかにフレイを襲おうとしたパーティと言うのはこの男の事なのだろうか、だとすればフレイがこの態度なのも頷けた。
「良かったらまた一緒にいかねぇか、今回は俺クラスのメンバーが足りなくてよ。手に余りそうなんだ、お前なら報酬の半分をやってもいい」
「ふん、何の依頼だか知らないがお前みたいな下衆に付き合う暇はない」
フレイはそのまま男の横を素通りして行列の出来るカウンターへの列へと足を向ける。
真はどうするべきかと決めあぐねてその場で頭を掻いた。
ルナは俯きながら未だに一人ちっこ、ちっこと不可思議な言葉を呟き続けている。
「……バジリスクだぞ」
「何……?」
ふと男が通りすぎるフレイにそう呟く。
フレイも今までに無い表情でその言葉に大きく反応を示した。
「……今回俺が受けたのはバジリスクの捕獲、いや死体でもいいから回収か」
「ふん、何を言い出すかと思えばお伽噺を持ち出してくるとはな……お前も焼きが回ったんじゃないのか?」
「まぁな、俺も実際信じちゃいねぇが目撃情報があんだよ。実際に捕獲に向かったC級以上アガリの奴等が帰ってこないってのもな……お前も探してたんじゃねぇのか?」
真は二人の会話の内容が全くと言っていい程理解の外にあった。
正直ついていけないと、フレイには悪いがとりあえず様子を伺う事にしようと自らの階級専用であるD級掲示板へと足を向ける。
フレイと男の会話が聞こえる辺りで素知らぬ態度を保ちながら掲示板を眺める事にした。
「……本当に、いるのか」
「分からねえがいく価値はある。しかも報酬は破格の白金貨さんだ、これがC級から請けられる依頼なもんだから早くしねぇと先を越される恐れもある、お前も分かってんだろ?万が一奴が見つかりゃ伝説の眼球とやらも手に入る。お前にくれてやってもいい……弟だったか?の病気も治るかも知れねーぜ?」
「…………」
フレイの声色から先程までの気持ちが揺らいでいるのが手に取る様に分かった。
伝説の生物、バジリスクとやらの捕獲。その依頼報酬は白金貨だと言う。
白金貨は確か一枚で金貨百枚の価値があるものだ。
真は白金貨をプラチナか何かかだろうと想像していた。
白金、原子番号78の希少金属。真のいた地球では金の百分の一程度しか採れない物だ、熱や酸耐性を持ち実用性に関しても申し分ない。この世界に銅、銀、金とある辺り白金があってもそれは真にとって特に違和感はなかった。
しかしフレイに弟がいたと言うのは真も初めて聞く事実だった、そしてそれと今回の依頼がどう関係するのか。
真は白金貨の千分の一以下程度の価値しかない依頼をただ眺めながら二人の会話に意識を向けていた。
「何ならそこのお仲間も入れてやろうか?」
「……っ!?お前、部位採取をどうするつもりだ……眼球を取るなど……腕を落とすぞ」
「……はっ、お前こそ自分で取る気だったのか?その為にあいつら見てえなD級以下クズレをパーティに入れてんだ」
「貴様は……それを奴等は知ってるのか?」
「知るわけねぇだろ、言ったら集まらねぇだろ?それにその話だってお伽噺の世界だ。実際には死んだバジリスクなら眼球に毒なんてねぇかも知れねぇじゃねぇか」
どうやらバジリスクの眼球には毒があり、それを回収するには危険が伴う様だった。
それを必要としているフレイ、弟の病気。
もしかするとその毒があるバジリスクの眼球とやらが万病の薬にでもなるのだろうか。
真には理解できないが、毒は薬にもなり薬は毒にもなる。
毒と妙薬は表裏一体とはよく言ったものだ。と言ってもその言葉はかつてフォースハッカーにいたメンバーの一人、今は無きバイオプログラム部門の狂い人が言っていたのを真が覚えていただけである。
「貴様って奴は……」
「そう怒るなよ、なんならお前が自分で取りゃあいい。俺は構わねぇからな、死体さえ持って変えりゃあ報酬は出るんだ。どうだフレイ?そこの二人も仲間なんだろ、纏めて俺のパーティに入れてやるからよ?」
フレイの怒りに満ちた震える声などお構いなしに男はそう捲し立てる。
そこまでしてフレイを仲間に入れたい理由は何なのか、それほどフレイと言う人間は優秀なのか今の真には分からない。
ただ、フレイが一緒に行くと言うなら見物がてら付いていってもいいかとも考えていた。
「何故そこまで私に拘る……その依頼なら他にも来る奴はいるだろう?」
「……殆どの奴はそんな噂みたいなもんよりよっぽど堅実に討伐した方がいいからな、それに丁度探してた所でお前を見つけた。腕も立つ、それに彼処は土竜の縄張りだ……お前の特技なら最高に相性がいい」
「土竜の縄張りだと……?ファンデル荒野か、お前のパーティにC級以上アガリとやらは何人いる?」
二人の会話の中で交わされるアガリやらクズレ。恐らく階級を区別する差別的な用語なのだろう、何処の世界でもそう言った造語は造られる物だと感じながらふと横を見るとルナがいつの間にか隣で真と同じ様にD級の掲示板を食い入る様に見詰めていた。
「……何か見つかったか?」
「……はっ、いえ、シン様と同じ階級なんて烏滸がましいにも程がありますが何と言うか色んな依頼がある物ですね。シン様は何かお気に召す物はありましたか?」
「……その様とか喋り方は何とかならないか。まぁそうだな……これなんかでいいんじゃないか?」
ルナの真を崇めるような口調に辟易としながらも真をは適当に目についた依頼書を指差した。
「……なるほど、場所も川辺と言う位ですから近いんでしょうか」
定期依頼、場所はファンデル河川。
ラベール花の採集と書いており、紫色の花弁を持つそのラベール花とやらの絵が付けられていた。
なかなかの画力であるが、それは逆に写真技術すらないと言う文明の低さを露呈している。
報酬は一輪につき銅貨一枚、どれだけ見付かるかは分からないが数を採れるとなれば宿代位は稼げるかもしれない。
もう少し報酬の高い物もあるが獣等の毛皮を剥がなくてはならず、やり方も分からない上ルナが獣と意思疏通が出来る事を鑑みるとあまり勧めたくはなかったのだ。
「……っ危険過ぎる!そんなメンバーで行くつもりだったのかっ!」
突如背後でフレイの怒声が響き渡る。
思わず真とルナもそちらを振り返った。周りの連中もその剣幕に一瞬視線を向けるが、よくある事なのか一様に興味を無くし見て見ぬふりをしていた。
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