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Chapter A
sec.4
しおりを挟む「どーもっ、ソウイチ戻りました!」
三導連大帝国グリゼル帝 組合ギルディフォーサイド支部。一見すると堅牢な趣を醸し出す灰色の建造物。
入り口のガラス戸を開けると、見慣れた今年28になる受付の男が此方を振り返り目を見開く。
「ソウイチ!? 遅いぞ! まぁた迷子か、だから止めとけって言ったんだ……案の定これとはなっ」
「申し訳ないっ!」
とにかく謝る。
自分が悪い時は素直に素早くがモットー。
今回の仕事は恐らく組合ギルディ直轄の物だからまだいいが、これが顧客依頼だったら組合の信頼が……とか小言が始まってしまう所である。
「ウォレットウルフ討伐捕獲作業、時間外及び捕獲失敗。 全く……何しに行ったんだお前は? 違約金だ」
「えっ!」
「え! じゃない、時間外だけなら未だしも手ぶらで帰ってくるとはクラスオールの風上にも置けないな。違約金だ、違約金」
勘弁してくれと頭を振る。
僅かな仕事で何とか家賃を払う為に金を稼ぎに来て金を取られてたら世話はない。
「それについては本当申し訳ないと思ってる! ……でもさ、言わせて貰えば暇な癖に何で時間制限なんて付いてるんだ? おかしくないか? なぁ、頼むよギース……俺との仲だろ? 金無いんだよー。この通りっ!」
誠心誠意頭を下げて手を合わせる。
多少文句も出てしまったが、本当に申し訳ないと思っているのは本当だ。
それにギースにはこの方法が一番こう効果があるとソウイチは知っていた。
「ったぁく……まぁいい、お前には随分働いて貰ってるしな! こんな街でクラスオールは貴重だ、次に森じゃない仕事あったら紹介してやるよ」
「サンキュゥゥッ! よっ、フォーサイド支部の昇進頭! 気前がいいね、太っ腹のシックスパックっ!」
成功だった。
こうなる事を多少なりとも以上に予測してた訳だが、今回は本当に金が無い分冷や汗物だったソウイチ。
「まぁ……確かにタスクも受けない様な依頼をお前が片付けてくれるお陰でもあるからな、今後も俺の昇進の為働いてくれたまえよ
」
「へいへい、任せておきなさい」
──クラスタスク。
組合員ギルディランクラスの1つで街の雑用、便利屋だ。
周りのクラスナイトから街のゴミ掃除屋、組合ギルディの恥さらし等と言われているクラスタスクだが、細々とした事をこなしている分タスクの人間は様々なスキルを持っている者が多い。
ちなみに組合員ギルディランクラスにはタスクと、護衛や討伐依頼を専門に受けるナイトの他にも二種類ある。
武器や食糧、薬品の材料となる自然資源の採取を専門に受けるクラスハントと全ての依頼をこなす事が出来るクラスオールである。
中でもクラスオールとは……他三つのクラスに所属し、それぞれのクラスでC級以上の資格を持った者だけが所属出来る物であり、何を隠そうソウイチはこのフォーサイド地区でも数少ないクラスオールの一人だった。
こう見えて優秀な組合員ギルディランであると言う事をソウイチは常々主張したいのである。
森で迷子になって、大して使い道もない銃を買った為に金も無くなった俺だがなめんなよ、頑張って来たんだぞ、と。
「そう思わないか、ギース?」
「んぁ? 何がだよっ。 それより今日はもう仕事も無いから閉めるぞ、お前待ちだったんだからな」
受付のギースは手を広げながら、見てみろと言わんばかりの表情でソウイチを責め立てる。見れば組合内にはギースの他に事務処理の女の子が一人だけだ。
(本当に他には誰もいないんだな、全くそんなにワンサイドがいいのかねぇ……)
そんな事を思いながらソウイチはギースに悪びれた様子もなく謝罪を口にした。
「あぁ、申し訳ないねぇ。 ま、また仕事入ったら教えてくれ、次は大丈夫」
「分かった分かった、ほら、しっしっ!」
早い所閉めたそうなギースにそう追い出され、組合を出てみれば外はもう夕暮れも過ぎて暗くなって来ていた。
この時期になると日が落ちるのが早い。今頃ユラに会わず森にいたら相当面倒な事態になっていただろう。
「しかし喉乾いたな、とっとと奴の店で飯でも食わせて貰うとするか!」
ソウイチが企てた作戦はこうだ。
いきつけで、世話になれるはずの、知り合いカイトの店でタダ飯を食う。
そんな安易な計画だ。
ソウイチは冷たいビル風が吹き抜ける暗がりの中、寒さの感じない身体で足早に街道を抜けた。
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