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1. 土下座するからヤらせてください!
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赤村桃耶は心底呆れていた。
「んなバカな頼み聞けるか」
「そこをなんとか!」
即断で却下する桃耶になおも食い下がるこのバカが「一生のお願い」をするのは通算五回目だ。桃耶の知らないうちに転生でも繰り返しているのだろうか。これまで四回とも「一生のお願い」を聞いてきてしまった自分を殴りたい。
「寝言は寝て言ってくださーい」
「うん、だから、おれと寝よ?」
「うるせえよ」
この返事。驚くべきことにこいつは桃耶に性交渉を迫っている。しかし桃耶はれっきとした異性愛者だ。いったい何が悲しくて恋愛感情の無い男と行為に及ばないといけないのか。桃耶の性的対象を重々承知の上でこんな頼みを持ちかけてくるくらいだから相当に仲が良いわけではあるが、だからこそその関係を破壊しかねない頼みは聞きたくない。
「田宮まじしつこい。あのなあ、セックスだろ? 冗談で済まねえって」
「冗談じゃねえから! ……あのさまじで、桃耶じゃなきゃ頼めない」
桃耶が冷たい視線を向けようとした矢先、田宮は今までに無い必死さで懇願してきた。なんでだか、今までとは違う、ような気がする。
「おれ今回だけは引き下がるわけにいかねえんだよ。なあ、桃耶」
田宮は真剣な顔で桃耶の目を見据える。
「本当の本当に頼む。お願いします!」
目の前の男は床に手を付いて深く深く頭を垂れた。床と額が擦れる音がした。言葉を発し終えても彼は顔を上げない。ただ、桃耶が何か言うのをじっと待っている。
──まさか、本気で土下座までするなんて。
こんなことは過去の田宮の「一生のお願い」でもされたことがなかった。桃耶は動揺してしまった。頼みごとを断れない性格ではないが、今までよっぽどじゃない限り引き受けてきた準お人好しだ。とはいえ男との性交渉の頼みはよっぽどのことだとは思うが、……桃耶は揺らいでしまった。今までされた「一生のお願い」だって、「銀のエンゼル譲ってくれ」とか「実家帰るときのバスの予約おれの分もしてくれ」とか、そういう感じの、喜んでとはいかないまでもまあ笑って引き受けられるくらいのことではあった。それがこんなに真剣な頼みをしているのだ。彼は土下座までして、本気で頼んでいる。確かにこんなことは俺くらいの関係じゃないと頼めないかもしれない。
それに正直自分だって最近彼女と別れたうえに抜く暇も無くていろいろ溜め込んではいた。この男の気持ちもまるっきり分からないでもない。桃耶はそう思って、だけどまだ決心がつかずにいて、そんなときに田宮が小さく掠れた声で言った。
「一生の、お願いなんだ」
その切実さにやられて、桃耶はついに同じくらい小さな声で答えてしまった。
「……わかったよ」
殊勝なことに、田宮はそれでもしばらく顔を上げなかった。この黒髪頭のつむじはこんな時じゃないと見える高さに無いのがなんだか無性に腹立たしい。でもきっと、これくらいしないといけない何かがあるのだろう。重ための病気とかだったら心配だな、と桃耶は少し不安になった。
まずは具体的に何をすればいいのか田宮に聞くと、尻の洗浄だと返ってきた。
「シャワーでお湯入れて、トイレで出すってのをきれいになるまでやるらしい」
「お前、俺んち三点バスだからって最初からそのつもりで……」
「いやいやそんなこたあないですよ」
すっかりいつもの調子を取り戻した田宮を桃耶が恨みがましい目で見ると、奴はさらに調子に乗った。
「手伝ってやろっか」
「入ってくんな!」
「はは冗談、じゃあ待ってます」
ドアを閉めて一人になる。少しずつ、早まったかもしれないという思いが募ってくる。田宮はきっと最終的には桃耶が了承するとふんで……。いや、もうそんなことはいい。とにかく早く済ませてしまおう。桃耶はシャワーを掴み、慣れない手つきで肛門を広げながらぬるいお湯を流し込んでいった。
「んなバカな頼み聞けるか」
「そこをなんとか!」
即断で却下する桃耶になおも食い下がるこのバカが「一生のお願い」をするのは通算五回目だ。桃耶の知らないうちに転生でも繰り返しているのだろうか。これまで四回とも「一生のお願い」を聞いてきてしまった自分を殴りたい。
「寝言は寝て言ってくださーい」
「うん、だから、おれと寝よ?」
「うるせえよ」
この返事。驚くべきことにこいつは桃耶に性交渉を迫っている。しかし桃耶はれっきとした異性愛者だ。いったい何が悲しくて恋愛感情の無い男と行為に及ばないといけないのか。桃耶の性的対象を重々承知の上でこんな頼みを持ちかけてくるくらいだから相当に仲が良いわけではあるが、だからこそその関係を破壊しかねない頼みは聞きたくない。
「田宮まじしつこい。あのなあ、セックスだろ? 冗談で済まねえって」
「冗談じゃねえから! ……あのさまじで、桃耶じゃなきゃ頼めない」
桃耶が冷たい視線を向けようとした矢先、田宮は今までに無い必死さで懇願してきた。なんでだか、今までとは違う、ような気がする。
「おれ今回だけは引き下がるわけにいかねえんだよ。なあ、桃耶」
田宮は真剣な顔で桃耶の目を見据える。
「本当の本当に頼む。お願いします!」
目の前の男は床に手を付いて深く深く頭を垂れた。床と額が擦れる音がした。言葉を発し終えても彼は顔を上げない。ただ、桃耶が何か言うのをじっと待っている。
──まさか、本気で土下座までするなんて。
こんなことは過去の田宮の「一生のお願い」でもされたことがなかった。桃耶は動揺してしまった。頼みごとを断れない性格ではないが、今までよっぽどじゃない限り引き受けてきた準お人好しだ。とはいえ男との性交渉の頼みはよっぽどのことだとは思うが、……桃耶は揺らいでしまった。今までされた「一生のお願い」だって、「銀のエンゼル譲ってくれ」とか「実家帰るときのバスの予約おれの分もしてくれ」とか、そういう感じの、喜んでとはいかないまでもまあ笑って引き受けられるくらいのことではあった。それがこんなに真剣な頼みをしているのだ。彼は土下座までして、本気で頼んでいる。確かにこんなことは俺くらいの関係じゃないと頼めないかもしれない。
それに正直自分だって最近彼女と別れたうえに抜く暇も無くていろいろ溜め込んではいた。この男の気持ちもまるっきり分からないでもない。桃耶はそう思って、だけどまだ決心がつかずにいて、そんなときに田宮が小さく掠れた声で言った。
「一生の、お願いなんだ」
その切実さにやられて、桃耶はついに同じくらい小さな声で答えてしまった。
「……わかったよ」
殊勝なことに、田宮はそれでもしばらく顔を上げなかった。この黒髪頭のつむじはこんな時じゃないと見える高さに無いのがなんだか無性に腹立たしい。でもきっと、これくらいしないといけない何かがあるのだろう。重ための病気とかだったら心配だな、と桃耶は少し不安になった。
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「シャワーでお湯入れて、トイレで出すってのをきれいになるまでやるらしい」
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「いやいやそんなこたあないですよ」
すっかりいつもの調子を取り戻した田宮を桃耶が恨みがましい目で見ると、奴はさらに調子に乗った。
「手伝ってやろっか」
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