一生のおねがい!

多賀森

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26.反省とかない反省会

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 公園からの帰路は、夏祭りの熱気から離れたせいかそこまで暑さを意識しないで済んだ。二人で並んで、それぞれ一本ずつチョコバナナを食べながら歩いていく。
「あとは頼むってさあ、フラグじゃん」
「まじあのおじさん強すぎるって~~」
 結局チョコバナナのおじさんには来年のリベンジをお祈りされた。必要以上に悔しがる成人男性の様子はずいぶんくだらなかっただろう。あんたら二人は来年の挑戦まで覚えとくよ、と笑いながら言われた。
 来年もまた、彼と二人で来られるといいけど。


「いやあっつ! 外よりあちーの何」
「窓閉めてたもん」
「えら、防犯しっかりしてるわ。先見の明を認定」
 田宮の部屋より公園に近いという理由で桃耶の部屋に到着すると、家主より先に田宮がエアコンをつけた。もう慣れたものだ。桃耶の部屋の家電を勝手に使う田宮に違和感を覚えるフェーズはとっくに過ぎている。手洗いだって先に済ませている始末だ。
「俺の部屋検定一級?」
「有資格者だったかも」
 道中で買った缶チューハイをローテーブルに並べて座椅子に腰を下ろすと、待ちきれないと言いたげな慌ただしさで向かいに座った田宮が栓を開けた。酒を開けたという実感の湧く良い音が室内に響き渡る。割り箸を用意してから、続けて桃耶も開栓の音を鳴らした。
「はい乾杯」
「かんぱーい」
 冷えた酒を呷ると食道を通っていく感覚があった。だいぶ喉が渇いていたことを今になって自覚する。空きっ腹に酒は悪酔いしそうだと思って手をつけた焼きそばはまだ温かかった。

「あー悔しい、まだ悔しい」
 焼きそばを食べながら田宮がつぶやく。あのじゃんけん勝負が意外に尾を引いているようだ。あまり物事に執着しないように見えて、田宮は案外負けず嫌いなところがある。
「出目金仙人でも手強いとは相当な手練よ」
「ワシの力を以てしてもおじさんには及ばんかった」
 田宮は大げさに項垂れてみせながら子どものように紅しょうがをパックの端に寄せている。
 それにしてもあの店主はかなり余裕そうだった。何か秘策があるのかもしれない。
「来年もそのシャツで行けよ、絶対出目金で覚えられてるから」
 どうしても目に入る派手柄は店主にとっても抜群のインパクトだったのではないか。精神攻撃とはいかなかったが、心なしか田宮の顔より出目金を見ている時間の方が長かったような気もする。
「そーね、来年こそはおれの本来の力見せたるわ」
「本来の力さっき出しとけよ」
「まだねえ、このシャツがおれに馴染んでないのよ。これ先週買ったやつだから」
「仙人なりたてだったんだ」
 まだ暑さを引きずっていて喉が渇くからか、酒のペースが早い気がする。会話が途切れた隙に、田宮が避けた紅しょうがを桃耶が勝手に取って食べた。田宮はそれに構わずトルネードポテトを食べだす。食べづらそうに大口を開けた顔が桃耶を笑わせにくる。吹き出しそうになるのを堪えながら手に持っていた缶を置いた瞬間に、一気に限界がきて声をあげて笑ってしまった。桃耶の笑いをゴリ押しでもぎ取った田宮も、結局つられて笑ってしばらくポテトを食べるどころではなくなっていた。
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