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第1章 護衛騎士は交易の要の街に行く

【間】第三王女の戸惑い②

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    だけど彼は翌日には追い付いてきた。残念だと思った。



だけどほんの少しだけびっくりもしたの、今まできた護衛騎士は誰1人追いついて来れなかったから。




    勿論顔には出さない。そうやって生きてきたから。



フィアの屋敷に着くまで相変わらず夜になると勝手に警護していた。



そして何食わぬ顔で何事も無かったように彼は振舞っていた。



何故?私には彼がよく分からない。護ってもらわなくても私は彼より強いから。



屋敷に到着した初日は執事のゼノに説得されて警護せずに眠った様で、私は久しぶりに夜中に起きることなく朝を迎えた。



    そしてポルティナへくる旅の途中に聞いていた街道の魔獣の件を確かめに朝日が昇る前に屋敷を後にした。



    フィアが『囮になると思うので連れて行きましょう』とぐるぐる巻きにした彼を連れてきたので一緒に飛行術をかけて街道目指して飛んだ。



その途中で彼が突然大きく『勝負しましょう殿下!!!!』と寝言を言ったので驚いて落としてしまった………とっても申し訳なくて直ぐに謝ったのですが、怒ったみたいでカタコトのお返事でしたけど…。



その後また彼に飛行術をかけて飛んだら



「殿下って飛行魔法まで使えるんですね」


そう言って凄くキラキラした目で私を見てきた。


「ええ。今はあまり長く使えないけれど」


そう返せば更に黒曜石みたいな目をキラキラして


「そうなんですね、やはり殿下は素晴らしいですね」


「??」



素晴らしいって何かしら??彼はなんでそんなに嬉しそうなのか分からない。




「その歳で強力な魔法を使えるようになるだけでも凄いのに更に飛行魔術まで行使できるなんて素晴らしいとしか言いようがないです!!」


更にそう言ってキラキラした目を私がいつも見ていたあのギラギラした目になった。

魔力が強くて小さい頃から高等魔術の訓練ばかりしてきた私にはそうやって素直に心の底から言ってくれる人は居なかった。


そうか、彼は正直なのか。と私は初めて彼の事を見た。


「城に戻ったら是非また俺と鍛錬してください!!」


……………………彼はただ、強くなりたいしか考えていない馬鹿正直な人だ。



私は彼をそう位置づけた。

でも、


「変な人…でも嬉しい、ありがとう」


そう小さく呟いた。


彼には聞こえなかったと思うけどそれで良かった。




その後も聴き込みしていたら彼が私の大好きな揚げ饅頭を買っていたので買取るつもりでお金を渡そうとしたら断られた。


王族でも護衛騎士からおやつを取り上げるなんてそんな事出来ないと思って無理矢理にでも渡そうとしたら

「元々で…お嬢様が食べるかなって買ったものなのでそのまま食べてください!!!」


勢いよくそう言われて、ぴたりと私の動きが止まった。


「何もいらないの…?」


見返りも要らないの?


私に何かしたり渡したりしてくる人は何かしか私に見返りを求める。


私に初めてドレスを作ってくれた仕立て屋は勝手に王家御用達の看板を掛けたり、家庭教師はいつの間にか私の師匠を名乗っていたりした。


だけど彼は全力で首を縦に振って私の前に膝を折り揚げ饅頭の袋を差し出た。


「要りませんので存分に食べてください」



綺麗で純粋な笑顔だった。ついうっかり見蕩れてしまい彼に袋を手渡しされて視界から消えるまでぼんやり眺めてしまった。


「ありがとう、シャーロットちゃん」



お礼を伝えたら困った様な笑ったような顔をしてました。



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