異世界初心者の冒険

海生まれのネコ

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第二章 学生魔王

4・母星バンハムーバ

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安定した空間でのワープを含めた三日間の宇宙の旅は、無事に終わった。

僕らはバンハムーバ人の故郷、母なる星のバンハムーバに到着した。

降り立ったバンハムーバ中央宇宙港はクリスタのものより広大で発展していて、人が多くて活気がある。空気がキラキラして見えるほど。

宇宙の辺境にあるクリスタは静かな星とは聞いていたものの、ここまで雰囲気に差があるとは思わなかった。

空港を出て、高速トラムで宿まで移動する時、あちこちでお祭り騒ぎのようなものを見かけた。

その意味に気付けたのはトラムを降り、一つの商店街アーケードに差し掛かった時だった。

普通の民家の軒先にも時折飾られているバンハムーバ国の国旗と共に、龍神様の姿を模した小さな像がいくつも店先で売られている。

この母星バンハムーバを守護する龍神様シーマ様の誕生日をお祝いしようと、店頭のポップに書いてある。今日は前夜祭のようだ。

クリスタの龍神様は全員、国を挙げての誕生祭を断っている。祝おうとなるとそれなりの予算が必要となるかららしい。

なので龍神様の誕生祭に生まれて初めて出くわし、少し嬉しくなった。

父さんが美味しいものをたらふく食べてこいと財布にねじ込んできたカードがあるので、これで龍神様の像をお土産で買おうかと思った。

そうしたら、アリアナが僕の上着を引っ張った。別の店を指さすので、従うことにした。

そこは、普通のバンハムーバ料理レストランだった。水に親しむバンハムーバ人は魚料理がとても好きで、それが文化になっている。

アリアナがお腹空いたのかと思った一瞬のち、店の前に立っていた店員さんらしき人がハイテンションで話しかけてきた。

「坊ちゃん! お待ちしておりましたよ! ささ、遠慮なく中へお入り下さい!」

熱烈歓迎の意味が分からず戸惑うと、アリアナが僕の腕を取って引っ張り、店内に連れ込んだ。

店内では大勢の人たちが待ち構えていて、僕に会えて物凄く喜んでくれた。

目をぱちくりした後、ほぼ全員が黒髪なのに気付いて納得した。

未だポドールイ人を名乗れる能力を持つ、過去の移民たちの末裔。混血で変身能力は失われているようだが、鋭い目を持ち合わせているのか。

同じテーブルについたアリアナに、先に連絡を取っていたのか聞いたら、取ってないと返された。

気付けなかった僕は沈んだ。なんで王様なのかと。

「兄さんは、混じった血のせいでポドールイの力が阻害されてるの。本当は私より強いのに」

「……え?」

武闘派な筈なのに、小動物のようにもぎゅもぎゅと可愛いらしい食べ方をしているアリアナの言葉に、少し混乱した。

「それは母の血のことだろうか」

「そこまでは分からない。でも、強い異質な力があって、それが邪魔をしてるのは感じる」

「母は特級魔術師だ。そのせいか」

それとも、父の方になにか問題があるのだろうか。

今はそんなことを考えたくない歓迎会なので、悩むのはそこまでにして皆さんと楽しむことにした。

事実、生まれて初めてこれだけ多くの同胞たちに取り囲まれ、顔がほてり頭がぼうっとするぐらいに嬉しい。

この幸せを噛みしめたくて、試験前日だけれど時間の許す限り彼らと談笑した。

深夜になりようやくホテルにチェックインし、アリアナと別れて個室に入った。

2・

翌日はシーマ様の誕生日で、祭日として休日だった。

だから受験があるのだろうと漠然と思いつつ、ホテルの近所にある試験会場へ向かった。

さすがに受験をアリアナに助けてもらう訳にいかないから、午後に会うのを約束し、それまで好きにしてもらった。

僕が受験するのは宇宙文明トップクラスの魔法大学の分校で、受かればこのバンハムーバの首都に引っ越しして通える位置にキャンパスがある。

つまりは、その分校での受験だ。

魔法を扱う者達のたくさん集う場所であり、雰囲気はどこか怪しい。

自分も怪しいからぴったりだぞと変な自負を持って、受験会場に突撃した。

普通の紙による試験の他にも、実技の試験も当然あった。

僕はその両方で全力を尽くした。燃え尽きてもいいと思ったものの、会場を壊したら不合格と先に釘を刺されたので手加減した。

時間は、あっという間に経過した。

夕方になりアリアナとの待ち合わせ場所の公園に向かうと、彼女は見知らぬバンハムーバ人たちと共にいた。

彼らの話を聞くよりアリアナに聞いた方が早いと踏んで、視線を向けた。

「彼らはバンハムーバ職員さん、というか神官の方々」

「神官なのですか?」

昨日の夜から周辺で若干気配を感じていた彼らは、私服ながら神官なのか。

明らかに裏の話があるようだから、人気のない場所に行き、詳しいことを聞いた。

彼らは、僕に頼み事があった。学生ながらポドールイの王がここにやって来たのを知り、龍神シーマ様が出来るなら会いたいと希望を述べたらしい。

命令ではないものの、シーマ様を尊敬し慕っている彼らは、どうあっても僕を神殿に連れて行きたくなった。

礼儀正しく控えめながら押しの強い神官さんたちを前に、しばらく考えてみた。

しかしどう考えても逃げ切れそうもないから、観念した。

そうして僕は受験帰りに、最も国民から愛される龍神シーマ様に謁見することになった。
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