異世界初心者の冒険

海生まれのネコ

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第二章 学生魔王

十二・全てがなくなった場所

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1・

アリアナは念力を付加した剣の一撃で、ウルフィール様の防御を崩そうとしたり、彼の繰り出す攻撃の邪魔をする。

ホルンは白魔法で回復役を務めつつ、装備した指輪でウルフィール様の使用する魔法を全て吸収、反射する。

ウルフィール様が魔法使用を止めて星の生命エネルギー流を操って攻撃をしても、反射のダメージは与えられないものの攻撃の邪魔をすることが出来ている。

僕はアリアナの攻撃の合間に黒魔法で狙い、時にアリアナとホルンに灰色魔法の防御壁の魔法をかけて補助をする。

この戦い方は全員の能力が一律に高く、それにポドールイ人としての繋がりがあるために無敵に思えた。

けれど、ウルフィール様は戦いを続けるうちに経験を積み、全ての対応に慣れ始めた。

扱うエネルギー量も攻撃の手数も増えていき、僕らは疲労で押され始めた。

ウルフィール様は星の生命力と龍神のコアから常に力を補充し続けることが可能で、ゆえに疲れた様子がまだ一つも見られない。

その繋がりを絶てるのは同じ龍神のみ。我々では不可能だ。

戦い始めた時は、力でねじ伏せて屈伏させる作戦も視野にあったのに、戦いが始まりほんの少しで、逆に屈伏させられる危険性を強く感じ始めた。

そもそもポドールイ人といえただの人が、神たる存在のホームグラウンドで圧倒的有利に立てる訳がない。

とにかく辛抱強く攻撃を防御し、アレンデール様とロック様の帰還を待つ。それが唯一の作戦となった。

そうして戦い続ける間に、澱みから生まれた化け物たちがどこからともなく湧いて出て、疲れを見せる僕らに襲いかかり始めた。

攻撃を避けきれなくなり怪我をし、回復の追いつかない状況になりつつある。

未来を読もうにも、読ませてもらえる暇も無い。

僕は現状打破のため、ウルフィール様に向けて叫んだ。

「もう止しましょう! ウルフィール様、僕らは敵じゃありません!」

「それは降伏の言葉じゃないだろう!」

「降伏すれば、止めていただけますか!」

「偽物の言うことは聞かない! 俺にあいつを返せ!」

どうあっても嘘ではないウルフィール様の台詞が、まだ理解できない。彼はうつ病の症状で幻を見ているのか、もしくは本当に彼の友人がいて、僕らがそれを奪ったのか?

それに僕を偽物というが、言葉を間違えるまでは友人のように接した。

とすれば、もしかしたら。

僕は化け物の攻撃を避け、強力な炎の全体魔法で焼き払った。

多くの精神力を失い震えが出たが、倒れるのをこらえて思い切り叫んだ。

「ウルフィール! お前の友人のノアだ! 攻撃を止せ!」

ウルフィール様は目を見開いて驚き、動きを止めて僕を凝視した。それから、冷徹な目をした。

「お前は違う。本当に嘘を吐きやがったな!」

その台詞で確定した。ウルフィール様の友人は僕だけど、今はそうじゃない。

彼が待つのは僕が知らない人生を送る別の世界の僕か、もしくは未来の僕。

未来の僕ならいいと願い、今の自分に何が足りないのか必死に考えつこうとした。

だけどその前に、背筋が凍り付く恐怖を感知した。

空を見上げ、それから僕に向けて光の槍を放とうとするウルフィール様を見て、防御もせず間に合うことを願い叫んだ。

「そこから離れてください、ウルフィール様!」

自分の身が傷つこうと、ただ僕は彼を救いたかった。

自分ではなく彼に防御魔法をかけ、無防備のまま光の矢を身に浴びようとした。

ほんの一瞬風と衝撃を感じて地面に倒れ込んだ僕は、僕を寸前にかばったアレンデール様の血まみれの体を抱きしめていた。

名を呼ぼうとし、止めた。

不思議なことに、確認していないのに触れているだけで既に命がここにないと分かったことが、僕の動きを全て封じた。

アレンデール様の体を地面に捨てられず抱きしめ続け、助けようとしたウルフィール様を上空から落ちてきた巨大な時空獣が、そのアギトで捕らえたところを見た。

僕のかけた防御魔法は鋭く長い鋭利な歯により瞬時に打ち砕かれ、ウルフィール様の体は逃げる間もなくかみ砕かれた。

最後の瞬間に僕を見たウルフィール様は、お前に会いたかったんだと強く心に伝えてきた。

まだ理解出来ない僕は片手を差し伸べたけれど、力を無くしたウルフィール様の姿は時空獣の口の中に消えていった。

時空獣は次に、全く動かない僕に目をつけたようだった。

ホルンとアリアナは僕に逃げろと言い、前に出て防御フィールドを作り、時空獣の動きを止めようとした。

その二人を見て、ようやく動かなくてはいけないと気付いて、立ち上がろうと思った。

なのに体に力が入らず、アレンデール様を押しのけることも出来ず、段々と押される二人を見ているしか出来なかった。

僕らは負ける。

そう感じた次の瞬間、多量のエネルギー流が複雑に動き、時空獣の周囲を取り巻き、檻を作成して閉じ込めようとし始めた。

まだロック様がいると気づいて、正気に戻り彼の姿を捜した。しかしどこにもいない。

代わりに傍に立ったシーマ様が僕の頭を軽く撫で、それからしゃがみ込んで、僕が抱きしめるアレンデール様を離させて、地面に横たえた。

「あ、あの、僕は――」

何でもいいから何か言いたい気分の僕を、シーマ様は強い目で睨み付けてきた。

「私は星と民を護る龍神としての任務を、最優先にするしかない。私は貴方をこれから殺す」

シーマ様は、いつの間にか手にしていた黒い何かを僕に向けて突き出した。

「あの時空獣は戦艦の援護射撃が無ければ、私といえども倒せない強さだ。ウルフィールを食べて進化しようとしている」

時空獣を見ると、確かに体が徐々に膨れ上がり、別の姿に変身しようとしているのが分かった。

「本当は貴方の体質を調査するための参考道具として持ってきたが、これを使用してもらう。これは黒の魔力を全て封じる戦犯者のサークレット。これを身につければ、君は生まれ持った白属性の魔力を、最大限に扱えるようになる」

「意味が……分かりません。全て分かりません。僕は、白魔法は得意ではありません」

「詳しく説明している暇は無い。ただ、これを使えば当たり前ながら闇の種族の君は苦しみ、体を焼かれて死ぬしかなくなるだろう。けれどその前に、私が使う最大級の白魔法の強化を行える。私にその優れた力を譲り渡せ」

「……」

意味が、分からない。けれどシーマ様が本気なのは分かる。

そして宇宙が、ホルンとアリアナを助けるにはもうそうするしかないという道を示している。せっついてくる。

僕の望む未来が、この先にあると教えてくれている。

僕は自分を信じることにした。

即座に、シーマ様から渡された漆黒のサークレットを頭につけた。

細胞の一つ一つに毒針が突き立つか、全身を微に入り細に入り同時に焼かれ始めたような激痛が身を襲った。

普通に座り込んでいるだけで、この世から消えてしまいたいと思える痛み。

それ以上、どう表現していいか分からない激痛の中、耐えきれずサークレットを外したいと本能的に頭に伸ばした手を必死になり止め、もう片手をシーマ様に差し伸べた。

シーマ様は素早く僕の手を握りしめて力を込め、僕の全く知らない魔法を発動させた。

当たりの風景が白く染まった。

僕はなにも無い、白い世界の中で一人になった。
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