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にこやかにお開き
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──卒業パーティーは喝采と共にお開きとなった。
王太子はにこやかに婚約者である侯爵令嬢をエスコートして会場から出てくる。
その側近たち4人も自分自身の婚約者たちと和やかに笑い合いながら寄り添って会場から出てきた。当然婚約者の居ないエリック(28)は一人だ。
王家の馬車の扉が開き、カルロスがルカリファスをエスコートする。
ルカリファスは馬車に乗り込む前に見送りに並んでいた側近たちとその婚約者たちに振り返った。
「今日はとても有意義なパーティーでしたわね。
皆様は明日の朝にはスッキリされますわ。
新しい旅立ちとなります。皆様、これから始まる人生を楽しみましょうね♪」
ルカリファスの言葉に側近たちは嬉しそうに笑みを深めて頷いた。
婚約者の令嬢たちはルカリファスの言葉の意味が一部理解出来ずに不思議そうな表情を浮かべたが、直ぐに淑女らしい笑みを浮かべてルカリファスに別れの挨拶をした。
側近たちは静かな笑みを浮かべてそれぞれルカリファスに感謝を述べて頭を下げる。
「今後、ルカリファス様のお側で仕えられる事。
これほどの喜びはありません。
カルロス、くれぐれもルカリファス様を大切に」
エースの言葉にカルロスは力強く頷く。
「当然だ。私に与えられた役目。全力で全うしよう」
とても和やかな空気で皆と別れた。
王家の馬車はルカリファスを侯爵家へと送る為に動き出す。
その中で向かい合って座るルカリファスとカルロスは互いに穏やかな笑みを浮かべながら見つめ合う。
「ルカリファス……、貴女とこうして向かい合える幸福に感謝します」
カルロスが恭しくルカリファスの手を取って微笑みかける。
それにルカリファスもニッコリと微笑み返す。
「貴方も物好きですわね。
自らカルロス様を選ぶなんて」
「貴女の伴侶となれるのです。
それに付随する苦労なんて寧ろ喜びですよ」
「まぁ。フフフ、カルロス様はここ1年ほどサボり気味でしたから大変ですわよ?」
「明日になれば魂も馴染むでしょう。本を読むだけで覚えられる事であれば何も問題ありません。
……直ぐに片付けて貴女との時間を作らせたいただきます」
うっとりと見つめるカルロスの青い瞳の奥で、黒く深い紫が揺らめいて見えた。
「では、1番美味しいと思う紅茶を選んでお待ちしておりますね」
コロコロと鈴が転がる様にルカリファスが笑う。
馬車の窓から差し込んだ月明かりにルカリファスの赤い瞳が煌めいた。
* * * *
ルカリファスが家に帰ると母が話しかけてきた。
「おかえりなさい、ルカ。
パーティーはどうでした?」
「お母様、だだいま戻りました。
パーティーはとても楽しかったですわ♪
わたくし、いつの間にか悪役令嬢役に抜擢されていたのですのよ!
なんだか本当に物語の舞台に立てた気分ですわ♪」
楽しそうにはしゃぐルカリファスに、ルカリファスに似ていつまでも若く美しく輝かしい母は目を細めた。
「悪役令嬢?ふふ、面白いわね」
「そうでしょう?
アンジェリカ様が自分をヒロインだと言い張られるから、その思考があまりにも面白くてついあちらの世界にご招待してしまいましたわ♪
欲望もとても強い方でいらしたから、きっとあちらでで大人気になると思いますの。
……ちょっとこちらでは男性方と親交を深め過ぎている節がありましたから……あのままこちらに居ても皆様にご迷惑がかかりそうでしたので……」
眉尻を下げて困った様に微笑む娘に母は、まぁ!と目を開いて驚いた顔をして見せて、直ぐにしょうがないわねと苦笑してルカリファスの頬を優しく撫でた。
「人の欲はこちらの世界よりあちらの世界の方が求められていますからね。
きっとそのヒロインさんも素敵な夢が見られるわ」
「えぇ、きっと。
夢の中には禁止事項などございませんものね」
黒い髪と赤い瞳で似たもの母娘は顔を見合わせて楽しそうに笑う。
美しく妖艶な二人が笑うと、夜空の月も喜ぶ様に更に輝きを増して世界を照らした。
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