愛しておりますわ、“婚約者”様[完]

ラララキヲ

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10>>よくそんな事言えますね

     
 
 
 
 
「マリーナ!! お前が俺に嘘を吐いていたせいで、俺はとんだ恥をかかされたじゃないか!!!」

「う、嘘っ?!?」

 リゼオンの言葉にマリーナは青ざめる。

「俺を愛しているなどと言って散々騙して、俺が婚約破棄を言い出すのを待っていたのか!!!」

「ええっ?!? あ、あのシーキアス様っ???」

「お前が俺を勘違いさせなければ俺はっ……俺はっ!!!」

 あんまりなリゼオンの言い分にマリーナもさすがに腹が立ってしまった。ぐっと拳を握り、顔に熱がたまって赤くなる。

「嘘なんて吐いていませんわ!!

 婚約者を愛するのは当然ではありませんか!?」

 マリーナが声を荒げた事に一瞬リゼオンも怯むがその事がまたリゼオンの怒りに加算される。

「そんなものが当然であるものか!?
 婚約者など親が勝手に決めただけの他人だ!!
 好きになれなければ愛してやる価値もない!!!」

「まぁ!?!」

 リゼオンの言葉にマリーナは絶句した。
 マリーナの中では婚約者を愛する事は当然の事だった。
 何故なら婚約者は『家族』になる人だからだ。
 『家族を愛する事は当然』な事であるマリーナにとって『将来家族になる婚約者を愛する事は当然』な事なのだ。
 マリーナにとって婚約者は『愛さなければいけない家族』なのだ。
 だからリゼオンの言い分は逆にマリーナには理解ができないものだった。

「……シーキアス様がそんな考えの方だったなんて気付きませんでしたわ」

 胸の前で手を握って下を向いたマリーナにリゼオンは怪訝な目を向ける。

「今回の婚約解消はお互いの為に良かったのですわね……こんなにも考え方が違うのですもの……婚姻前に分かって良かったですわ……」

「っ、何を言って……」

「わたくしは、愛しておりましたわ。それを否定された事を許す事は出来ません。

 そもそも、なぜ婚約者以外の女性と恋人関係になっていた方にわたくしが責められなければいけませんの?

 わたくしが貴方に恋い焦がれていたならば傷付けて良いと?
 今回わたくしが貴方に恋をしておりませんでしたから大して傷付きませんでしたけれど、もし貴方が『わたくしの恋心を利用して婿入り先の家に愛人を連れ込むつもり』だったのなら。
 わたくしは貴方を心底軽蔑いたします」

「っっ!!」

 マリーナに強い目で睨まれたリゼオンは、マリーナに初めてそんな目を向けられた事もありたじろいだ。

 こんな予定ではなかった。
 マリーナを問い詰めてその本心を聞き出し、あわよくば婚約解消の取り消しをさせようと思っていた。
 だがもうそれが出来る雰囲気ではない。
 マリーナが使った強い拒絶の言葉を取り消させる程の言葉をリゼオンは持ち合わせてはいなかった。
 リゼオンの行動は全て『マリーナが自分に心酔している』という前提で行われていたからだ。マリーナが自分に一切の恋愛感情を持っていないと分かった今、ずっと昔から彼女に冷たく接していたリゼオンに今更挽回できる手持ちのカードなど何一つ無かった。

「……授業に遅れてしまいますので、わたくしは失礼いたしますわ」

 形だけのお辞儀をしてマリーナはリゼオンに背を向けた。

「……っ、………」

 行かせてはダメだと思ったところで、もうリゼオンにはマリーナを止めるだけの言葉など無かった。
 マリーナの背に向かって伸ばした手を無意味に握り締め、リゼオンは歯を食いしばった。
 
 腹立たしく、悔しい。
 騙したのはマリーナだが、カレナとの事を言われると立場が無い。
 
 リゼオンはその場で2度力任せに足を踏み鳴らすとマリーナとは逆に歩き出した。今日はもう授業など受けられる気分ではない。









 ……そんな2人のやりとりを朝から見させられていた、運悪くこの時間に登校してしまっていた学生達の家からは、またシーキアス侯爵家に苦情の手紙が届くのだった……
  
 
 
    
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