13 / 14
13>>婚約破棄の結果:カレナ
しおりを挟むリゼオンの隠れた恋人であったカレナ・ドンド男爵令嬢の実家には今まで見た事も無かったような高位貴族の家紋が入った封書が届いていた。
それが嬉しい知らせであればカレナの父であるドンド男爵も喜んでいたのだが、生憎中身は苦情苦情のオンパレードで、それを読んだドンド男爵の心は今地獄へと落ちているところだった。
自分の娘がとても美しく育ってくれた事に感謝していた。
その娘の自慢の胸がゆっさゆっさと揺れる事にも、父であるドンド男爵は嬉しく思っていた。
母に似て美しく妖艶に育った娘が、もしかしたら学園で高位貴族の令息を捕まえてくるかもしれないと邪念を抱いたのがいけなかったのかもしれない……
娘はしっかりと高位貴族の令息を捕まえたが、それは当然の様に不貞行為であった……
それはそうだろう。
学園に入る年齢になっても婚約者が居ない高位貴族の令息の方が問題だ。婚約者が居ない高位貴族の令息など居る訳が無かった。
それなのに娘は捕まえてきてしまったのだ……
それとなく注意をしたし、母親にも浮気の危険性を娘に教えるように伝えたのだが、『奪い取れれば問題ないわ』と力強い返事が返ってきた。ドンド男爵は妻にも教育が必要な事に気づいて気力がごっそりと減った。
男爵家は頑張って貴族の暮らしをしている準貴族みたいなものだったので、ドンド男爵夫人もとても強かだった。『相手に婚約者が居る?勝ち取ればいいのよ!良い女が選ばれるだけなんだから!』そんなノリだった。そんな母に育てられたカレナはとても元気に媚を覚えた。
ドンド男爵が気付いた時には全てが遅かったのだ……
カレナが懇意にしていた令息が婚約者相手に婚約破棄をした。それも学園の皆の前で。カレナをしっかりエスコートしながら。カレナも相手の令嬢に偉そうに発言した。
知りたくなかった……
父さんは聞きたくなかった………
頭を抱えたドンド男爵はもう絶対娘は庇えないと悟った。
男爵家如きが貴族社会で噂に。それも悪い意味で。高位貴族にばっちり目をつけられた。
ドンド男爵は死を悟った。
「カレナ。お前を修道院に入れる」
「嫌よ!!!!!」
娘からの当然の返事を聞きながらドンド男爵は粛々と必要書類にサインしていった。
「修道院に入るくらいならお嫁に行くわ!! この際もう平民でもいいわよ!! お父様が言っていたお金持ちの商人のところへ行きましょう!!」
ぷりぷりと怒る娘を叱る気力ももう男爵には残ってはいなかった。
「……その話はもう無いよ」
「え?」
「成功した商人の取引相手など大半が貴族に決まってるじゃないか。その取引相手が嫌がっている女性を嫁になど迎え入れる訳がないだろう?
お前はまだ学生だから大丈夫とでも思っていたのかもしれないが、貴族社会の情報網は凄いんだよ。高位貴族の令息を誑かしてのし上がろうとする男爵令嬢の名前などとっくにみんな知っているさ。
お前は見た目だけは良いからな。ただ平民へ嫁がせただけでは身の安全を守れない。直ぐに人攫いに遭い娼館へ売られるだろう。私はそんな目に娘を遭わせたくはないのだ……
お前が修道院へ行くのはお前の身の安全の為だよ。
なに、しっかりと寄付金を払ってやるから安心しなさい。
ほとぼりが冷めたところでこちらに呼び戻してもらえるように、お前の兄には頼んでやるからな……」
優しく、諭すように話したドンド男爵の話を、
カレナは既に聞いてはいなかった………
──わたくしが修道院ですって!?! なんでそんなところに行かなくちゃいけないのよ!!! 婚約破棄とか言い出したのはリゼ様じゃない!? むしろわたくしは巻き込まれただけよ!! それなのにわたくしまでこんな罰を受けさせられるなんて聞いてないわ!!! 修道院に行くくらいなら平民になった方がマシよ!!! 絶対に行かないんだから!!!!──
父親の話を聞いていなかったカレナは深く考えずにただただ逃げる事を考えた。
部屋に帰って持ち物を漁り、お金になりそうな物を手当たり次第に鞄に詰めた。
母は言っていた。
『良い女には良い男が寄ってくるのよ』
カレナはそれを信じていた。
修道院が嫌だから逃げて、そしたらどこかで良い男の人が現れて、きっと自分を助けてくれる。そして助けてくれたその人は、きっと身分も高くて優しくてお金持ちで、わたくしを一目で見初めてお嫁さんにしてくれる!!
カレナは身持ちは悪かったが、中身はただの世間知らずの、貴族の令嬢らしい令嬢だった。
夜中に家出したカレナは当然の如くゴロツキに見つかり連れ去られ、気の強さから抵抗してしまった結果、翌朝庶民街の裏路地で死体となって発見された。荷物は全て持ち去られていた。簡素だが貴族らしいドレスを着たその死体が、家から居なくなっていたカレナだと直ぐに分かって、カレナは次の日には家へと帰ることになった。
身持ちの悪い男爵令嬢のせいで婚約破棄が起こったと、社交界では長年噂される事になったが、その話に出てくる『男爵令嬢』の名前がカレナ・ドンドだと知る者はほとんど残ってはいなかった。
374
あなたにおすすめの小説
婚約者をないがしろにする人はいりません
にいるず
恋愛
公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。
ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。
そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。
【完結】あなたにすべて差し上げます
野村にれ
恋愛
コンクラート王国。王宮には国王と、二人の王女がいた。
王太子の第一王女・アウラージュと、第二王女・シュアリー。
しかし、アウラージュはシュアリーに王配になるはずだった婚約者を奪われることになった。
女王になるべくして育てられた第一王女は、今までの努力をあっさりと手放し、
すべてを清算して、いなくなってしまった。
残されたのは国王と、第二王女と婚約者。これからどうするのか。
婚約解消の理由はあなた
彩柚月
恋愛
王女のレセプタントのオリヴィア。結婚の約束をしていた相手から解消の申し出を受けた理由は、王弟の息子に気に入られているから。
私の人生を壊したのはあなた。
許されると思わないでください。
全18話です。
最後まで書き終わって投稿予約済みです。
婚約解消したら後悔しました
せいめ
恋愛
別に好きな人ができた私は、幼い頃からの婚約者と婚約解消した。
婚約解消したことで、ずっと後悔し続ける令息の話。
ご都合主義です。ゆるい設定です。
誤字脱字お許しください。
婚約破棄した相手が付き纏ってきます。
沙耶
恋愛
「どうして分かってくれないのですか…」
最近婚約者に恋人がいるとよくない噂がたっており、気をつけてほしいと注意したガーネット。しかし婚約者のアベールは
「友人と仲良くするのが何が悪い!
いちいち口うるさいお前とはやっていけない!婚約破棄だ!」
「わかりました」
「え…」
スッと婚約破棄の書類を出してきたガーネット。
アベールは自分が言った手前断れる雰囲気ではなくサインしてしまった。
勢いでガーネットと婚約破棄してしまったアベール。
本当は、愛していたのに…
婚約破棄をされましたが私は元気です
にいるず
恋愛
私モリッシュ・ペートンは伯爵令嬢です。3日前に婚約者であるサミエル・コールマス公爵子息が、話があるとペートン伯爵邸にやってきました。そこで好きな人ができたから婚約破棄してほしいといわれました。相手は公爵家です。逆らえません。私は悲しくて3日間泣き通しでした。
ですが今、幼馴染のエドワルドとお茶をしています。エドワルドにはずいぶん心配をかけてしまいました。
あれ?さっきまですごく悲しかったのに、今は元気です。
実はこの婚約破棄には、隠された秘密がありました。
※サミエルのその後編始めました。よろしくお願いいたします。
旦那様、本当によろしいのですか?【完結】
翔千
恋愛
ロロビア王国、アークライド公爵家の娘ロザリア・ミラ・アークライドは夫のファーガスと結婚し、順風満帆の結婚生活・・・・・とは言い難い生活を送って来た。
なかなか子供を授かれず、夫はいつしかロザリアにに無関心なり、義母には子供が授からないことを責められていた。
そんな毎日をロザリアは笑顔で受け流していた。そんな、ある日、
「今日から愛しのサンドラがこの屋敷に住むから、お前は出て行け」
突然夫にそう告げられた。
夫の隣には豊満ボディの美人さんと嘲るように笑う義母。
理由も理不尽。だが、ロザリアは、
「旦那様、本当によろしいのですか?」
そういつもの微笑みを浮かべていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる