❲R18❳ 勇者のハーレムの彼女たちは今日も仲良く勇者をシェアする[完]

ラララキヲ

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4>>勇者の妻とは




 挨拶が終わると別の部屋へと移動となった。

 ソファに座ったメルディナとロロナの前には温かい紅茶と色とりどりのお菓子が載った皿が並べられている。
 他の女性たちもそれぞれソファに座っているが先程居た全員ではない。──そして一応追記しておくと部屋の隅には侍女やメイドが待機している。当然『家』には家令も執事も必要な手伝い達は一通り揃っている。なので勇者の妻の彼女たちは『貴族ではないが平民とは呼べない』立場となっているのだ──

 第ニ夫人のイセリアが一人掛けソファに座り、第六夫人のカリーナと第十夫人のケーラが三人掛けのソファに。第四夫人のエイゼル、第十一夫人のシルビー、第十九夫人のティーナが少し離れた場所にそれぞれ椅子に座って様子を見ていた。
 微笑みを絶やすことなくイセリアを見つめるメルディナとは対象的にロロナはどんどん下を向いてしまう。

 そんな2人にイセリアが優しく声を掛ける。

「勇者の妻になる前に、確認しなければならない事があります」

 そんな言葉に2人はドキリとする。ロロナはおずおずと顔を上げてイセリアを見た。
 そんなロロナに視線を合わせてイセリアは言葉を続ける。

「メルディナ様、ロロナさん。

 貴女は、
 愛する人が他の女性と愛し合っていても許せますか?」

 その言葉にロロナは肩を揺らした。
 誰が見ても動揺している事が分かる。
 そんなロロナを気にする事なくメルディナはイセリアに向ける笑みを深くした。

「勇者様にはたくさんの麗しき伴侶がいる事を世界中の全ての人が知っておりますわ。そんな方を慕うのですから、それくらいの覚悟は勿論ございます。
 むしろわたくしは勇者様の奥様たちと仲良くさせていただけたらなって、ずっと夢に見ていた程ですわ。
 勇者様の英雄談も素晴らしいですがそんな御方を支える奥様方の逸話は社交界でもいつも聞こえてきましたもの。そんな女性方とお知り合いになれるだけでも夢の様な話だわとわたくし、お友達と話しておりましたのよ。それなのに……、そんな話を通り越して勇者様御本人にこの手を引いていただける日が来るなんて……!
 わたくし、未だに夢を見ている気分ですわ!」

 胸の前で手を組んで瞳を潤ませながら想いを吐き出すメルディナの話を勇者の妻たちは微笑みながら聞いていた。
 ここでもメルディナは『控えめな女性』を演じる事を忘れない。少しだけ感情が昂ぶったところを見せながらもあくまでもお淑やかに。本心では全く仲良くなる気なんかさらさらないけれど表向きは『妻たちにも憧れている小娘』を演じる。勇者に選ばれたといってもまだ“勇者の家"に連れて来られただけだ。妻たち……特に目の前のイセリアや今は居ないアマリエルに嫌われたら即追い出されそうな気配がする。だからまだまだ分厚い猫を被り続けなければいけない。メルディナは掴んだばかりの野望の糸を絶対に逃すものかと心の中で炎を燃やした。

 そんなメルディナとは対象的にロロナの表情はどんどんと悪くなってくる。それに気付いたカリーナが声を掛けた。

「ロロナさん……大丈夫?」

 その声にみんながロロナを見る。
 その視線に更にロロナの顔色は悪くなり、血の気が失せたかの様に白くなった。

「ロロナさん……?」

「わ、わたし……」

「大丈夫よ、何も怖がる事なんてないわ?」

「そうよ。何か言いたい事があるのなら言っていいのよ?」

「誰も貴女を責めたりしないわ?」

 それぞれに声を掛ける中、第十九夫人のティーナが椅子から立ち上がるとロロナの側まで来てその震える背中を優しく撫でた。

「大丈夫よ……ゆっくりでいいわ……」

「わた……っ、わたし……」

「怖いわよね……分かるわ」

 茶目っ気を見せながらそんな事を言うティーナにカリーナが小さく頬を膨らませた。

「まぁ!わたくしは怖くなんかないわよ。ねぇケイ?」

「えぇ当然よリナ。貴女は少し見た目がキツく見られるだけよ」

「そうよ、見た目だけよ?」

 元侯爵令嬢のカリーナは自慢の黒髪を今は1つに縛って束ねている。そして黒縁眼鏡を掛けているので一見厳しそうに見えるのだ。それを茶化すケーラも元伯爵令嬢だが今は彼女もその自慢のハニーブロンドの髪を襟元で1つにゆったりと縛って、緩い楕円の眼鏡掛けている。自国の令嬢なら決してしない格好だった。同じ眼鏡女子の2人だったが、カリーナに比べてケーラは元の垂れ目のイメージも合ってキツいイメージは無い。そんな2人がロロナに何も緊張する必要はないのだと戯けて見せたのだ。ロロナにもそれが分かった。
 分かったからこそこんな自分に気を使わせてしまった事が逆に申し訳なくなってロロナの目からは遂に涙が溢れてしまった。
 あっ、とカリーナとケーラが思った時にはロロナは両手で顔を覆って泣き出してしまった。

「わた、わたし……っ!
 ご、こめんなさいっ!わたしっっ。
 わたし無理です……っ!むっ……っ」

「……良いのよ。泣かなくてもいいの……」

 ロロナを肩を撫でながらティーナが優しく声を掛ける。ティーナが勇者の妻の中で一番新しい妻だった。ロロナを見ていると1年前にここへ来たばかりの自分を思い出す。

「大丈夫よ、ロロナさん。
 誰も貴女を責めたりしないわ」

 イセリアが泣くロロナに穏やかに声を掛けた。ロロナは顔を上げる事は出来なかったがその声からは本当に自分を責める様な呆れる様な気配は受け取る事は出来なかった。むしろロロナを気遣う気持ちがイセリアの声からも伝わる。
 メルディナは突然横で始まった、自分を除け者にした茶番に気分を害していたがそんな気配は一切おくびにも出さずにロロナを心底心配する顔をしてロロナを見ていた。

 イセリアは自分用に用意されていた紅茶を一口飲んでロロナに優しい視線を向けた。

「“愛する人が自分以外の人を愛していても許せる”。
 これは勇者の妻になる為の絶対条件だけど、そんな事を言われても自分の気持ちを無理矢理そんな風に思わせるなんて無理よね。

 “愛してる人が他の誰かを愛してるなんて許せない”

 殆どの人がそう▪▪だと思うの。
 特に自由恋愛が当然の平民出身の女性はね……。
 だからロロナさんがそう▪▪だからと言って、それを誰も責めたりなんてしないわ」

「え?ではどうするのですか?!」

 ロロナを見つめながらイセリアの話を聞いていたメルディナが疑問に思ってつい聞き返してしまった。咄嗟に口に手を添えて小さな声で「ごめんなさい」と言ったが、イセリアは別段気にしては居ない。
 ロロナに向けていた視線をメルディナに向けたイセリアはフフっと笑って言った。

「どうもしませんわ?
 ロロナさんは“勇者の妻”にはならない。
 それだけよ?」

「え?!」
「……え?」

 イセリアの言葉にメルディナだけでなくロロナも泣き顔を上げて驚いた。



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