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ねこみみメイドさんはねこみみメイド喫茶「アニスミア」をオープンします。

第1話 ねこみみメイド喫茶アニスミアオープンですぅ

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 10歳になると教会の洗礼で職業を授かる。
 正確には教会の司祭等が鑑定を用いてその職業を伝える。

 故に貴族や一部の人間の間には、鑑定を持つものに子供の職業を見てもらうという者もいる。
 どういうわけか、鑑定というスキルは一部の高位職か商人系職業の者にしか使えない。

 教会が行う洗礼のため、たとえ孤児や浮浪者であっても無料で受ける事が出来る。
 場合によっては有能な職を持つ者が現れる事もあるためだ。

 それによって国に有益となるなら、元孤児や元浮浪者であっても将来への投資という事で無料で行われる事になっている。

 今年10歳になるねこみみの少女カレンもまた、拳闘道場の実家から洗礼を受けに来ていた。

 「はい、次の者前へ。」

 司祭の言葉により前に出るカレン。

 「よろしくお願いしますぅ。」

 司祭がカレンの額に手をかざすと……

 「少女よ、お前の職業は【メイドさん】だ。」



☆ ☆ ☆


 「はっ」

 なぜ今10歳の頃の夢を見たのだろうか。
 あの時……いや、以前からわかっていたではないか。
 自分の職業が【メイドさん】だという事が。

 メイドさんの初期スキルに鑑定がある。
 他にも掃除、洗濯、調理(料理含む)、裁縫があった。
 後開示されてないけど【??】というのがいくつかあった。

 実家が拳闘士道場だったため幼少時から鍛えていたが、職業がいまいちだったため跡取りにはなれなかった。
 そのため15歳になる時に実家を出て拳一つで冒険者になろうと思ったけど、職業に引っ張られついメイド服を買ったのが失敗だった。

 パーティを組もうとしても断られるし、よしんば入れたとしても勝手に後衛扱いされ、荷物運搬と解体・清掃に回される。

 1年が経つ頃には完全に便利屋扱いだった。
 それでも空いた時間で酒場で働き、生きていく分にはお金に困っていない。
 贅沢が出来ないくらい。

 最近では裁縫のスキルもあるため自作のメイド服を着用している。
 勢いで買った何か凄い素材を使ったんだけどあまり覚えていない。

 それからというもの、砂埃とか返り血とかで汚れる事はなくなった。
 何か凄い素材の効果かメイドさんのスキルの効果か……

 カレンが借りてる借家も、今にも壊れそうな程おんぼろだったため借りられたのだが、カレンが掃除をしたら新築同然に生まれ変わっていた。
 何か特殊な素材を使って清掃したわけでも洗浄したわけでもないのに。
 掃除をする前に買い取っているので元・借家であるが。
 1年冒険者をして酒場で働いていただけの少女が買い取れるのだからどれだけオンボロだったのかという話ではある。

 酒場でたまにカレンが調理に回ると、何故か客の疲れがなくなったり持病の○○が治ったりという話も聞く。

 ここまでくればカレンが有能だと言うのが理解出来るのだが、冒険者は誰も気付かない。

 気付いているとすれば、職員で数人、酒場で数人といったところか。

 ちなみにカレン本人も気付いていないがこの元・借家、ドラゴンがブレスを吐いても耐えられる要塞となっている。

 冒険者には向いていないのかもと考えたカレンは元・借家(この先は自宅と表記)の隣に喫茶店を作る事にした。

 そのための資金はまだたりないが、本能で何とかなると思っていた。
 メイド服のポケットは亜空間収納庫となっており、冒険のついでに採取した木材やら石材やら魔物の素材が入っている。

 パーティ仲間が休んでいる時にこっそり採取していたのだ。
 無能と追い出されるのが分かってからは、いつか売ってお金にしたり自分で使ったりしようと思いしまっていたのだ。

 残念ながら建築のスキルはないが掃除洗濯調理を駆使して似たような事が出来た。
 そうしたら建築スキルも生えた。
 ついでにハウスキーパーと言うスキルも生えた。
 未だに【??】は変わらないが……


 そうして喫茶店となる建物が完成。
 建物の周りに自宅も含めて壁を作る。
 一応外敵への備えだ。
 この壁もまた、軍隊が突進してきてもびくともしない程度には強固となっている。

 そして完成した喫茶店、「ラビッ……
 それは何かの力が働いてつけられなかったが「ねこみみメイド喫茶・アニスミア」として仮の名前は出来上がった。
 名前の由来は作者に聞けとカレンが言っていた。

 残念ながら従業員はカレン一人のため募集しなければならないが、給金を支払えるだけの蓄えはなかった。
 そのため最初は3組くらいの御客しか入れないようにしている。
 そーしゃるでぃすたんすというやつらしい。

 最初はプレオープンという事で酒場の従業員とギルドの職員に時間を割り振ってきてもらう事にした。

 メニューはまだ少ないけど……

 オムライスにケチャップで文字か絵を描いたもの。
 亜空間にしまってあったなんとかドラゴンのステーキ
 実家の秘伝であるいくつかのケーキとコーヒー。

 そういえばオムライスに使う何とかって大きな鶏さんの卵はたくさん亜空間にしまってる。
 同じように何とかドラゴンの肉もたくさんしまってある。

 足りないのは食器類と従業員。
 プレオープンで巧い事従業員になりたいと言う人がいれば良いなと思うカレンであった。

 実はいくつかメイド服も作ってある。
 いつでも雇えるように。
 男性用にも執事服というのを作ってある。

 できれば男性と女性一人ずつは雇いたいと思っているのだけど。


☆ ☆ ☆

 結果からいうとプレオープンは大成功。

 みんな来る前よりにこにこ顔で帰って行った。

 そして嬉しい事に女の子3人が従業員として雇う事になりました。

 全員元冒険者、または現役冒険者だった。

 悪いとは思ったけど面接の時に鑑定をさせてもらいスキルを確認させてもらった。

 一人には計算能力UP、一人には整理整頓清掃の3点セット、一人は調理。
 共通して話術向上があった。つまり接客は全員可能。
 
 カレンは気付いていない。
 自分のメイドさんの能力が働き、これから従業員がチート化していくことを。
 ただ、まだ今はその時になかったけれど。
 それでもこの3人が従業員となったのはカレンのメイドさんの能力が呼び寄せたものだった。

 プレオープンが終わり、3人の研修が3日行われた。
 
 そして今日オープンというその日に街に異変がおきた。

 街の近くにドラゴン襲来である。

 「今日オープンなのに困りましたぁ」
 間延びする声でカレンが辟易としている。

 カレンをクビにした冒険者達が街に到着する前に立ち向かったが歯が立たなかったという情報があるがカレンは知らない。

 「ちょっと待っててくださいねぇ。場合によっては開店時間を1時間遅らせても構いませんのでぇ。その場合はコーヒー1杯無料券をお渡しください。」

 そう言ってカレンはメイド服のまま店を出て行った。

 そしてカレンが向かった先には……ドラゴンが空から威嚇しブレスを吐いたりしていた。

 「むぅ空飛ぶとは卑怯……」

 カレンは実家秘伝の技を使う事にした。

 カレンは……地面を、空中を蹴り、ドラゴンのいる高さまで登った。

 「メイド喫茶のオープンを邪魔するやつはぁ、メッですぅ」
 カレンは右拳に力を籠め……ドラゴンの腹にワンパン決めた。
 ドゴオオオォォッォ
 という音を立てた後、ドラゴンは落下していった。

 その様子を遠視や遠見のスキルを持つものが見ているとも知らずに。

 落下したドラゴンはワンパンで絶命していた。
 「さっておっそうじおっそうじ~。」
 ドラゴンの死体をポケットの亜空間へ入れ街へと戻った。

 その様子を間近で見ていた者達がいた。
 先日カレンをクビにした冒険者達だった。
 ドラゴンに返り討ちにあい、地面とキスしながらその様子を眺めていたのだ。

☆ ☆ ☆
 「さぁ、ねこみみメイド喫茶、アニスミアの記念すべきオープンですぅ。」

 「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 どうやら【??】は【萌え】で間違いないらしい。
 扉を開けるとそこにはたくさんのご主人様達が長蛇の列を作っていた。

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