王子様を放送します

竹 美津

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本編

さいあくのこんにゃくちゃ

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「キャフ。……私は、ルシオールに。キャフに。嫌われているのじゃ、なかったのか?」

土鈴を鳴らしもせずに、思わずという顔でポツリとグランドが漏らす。
キャフは、お約束の鈴を、コロコロコロン♪と鳴らして、おとうちゃまを見上げて。
「どちてぇ?おかあちゃま、ぼく、おとうちゃまのこちょ、だいちゅき。」

「どうして。」
「どうちて?」

そんなの、何故って言われるような事じゃなくて当たり前じゃない?とばかり、はてな?と首を傾げるキャフと。目を丸くして呆然のグランド、親子の不思議な間に、ラフィネは。

ぶふ。

と吹いた。お茶飲んでなくて良かった。何なのこの会話。そしてほけ、と驚いた顔が2人似てるって、それだけで可笑しい。

コロコロン♪
ラフィネは手を伸ばして土鈴をキャフから貰い。鳴らして、グランドを挟んで。キャフも加わった3人の会話を楽しむ。
「うふふ!キャフ様はグランドお父様のどこが好きなの?」
「かっちょいい、ちょころ。うちょちゅかない。おちごと、ちゃんとちゅる。うわきちない。かおがわかりやちゅい。」
「え!?な……。」

ブハッ!とマレお姉さんも吹き出した。アマンおばあちゃま看護師は、ヌフふふふ、と手を口元に笑っている。フレーズおじいちゃん先生は、声なく、口がニカカに開いた。
多分それ、お母さんが普段言ってる事も、混ざってるよね。

マレお姉さんが手を伸ばして、ふっくら鳥の土鈴を受け取ると、コロロン♪と鳴らして、我慢できずに聞いた。
「キャフ様、かっこいいお父様が好きなのね。お母様は、グランドお父様、嘘つかないよー、って言ってたの?あと浮気しないとか。」

コロコロロ♪
「ウン。あのね、おかあちゃま、おとうちゃまのまえに、こんにゃくちゃ、がいたのでちゅ。うちょちゅき!やなやちゅ!だたのでちゅって。ちょうちがいいことばかち、ゆって、うちょばかち。うわきものだたのでちゅよ。」
「まぁ!それはそれは、嫌な婚約者だったんだわねー。お母様は、グランドお父様と結婚できて、良かったですねぇ?」

何だそれ。グランド、初耳である。

コロン♪
「ウン!よかた!くちばかち、うまい、うわきおとこは、ちんようにゃらにゃい。ちゅこち、おはなちが、うまくにゃくても、うちょちゅかない、おかおが、わかりやちゅい、おとうちゃまが、だいちゅきだのでちゅて。おかあちゃま。」

ぶくくくく。
それは、それは。それはなぁ。
「まぁまぁまぁ。それはそうよねえ。口ばっかり上手くて、不誠実な浮気男より、お仕事もちゃんとやって、カッコいいし、真面目で浮気しないグランドお父様がいいに、決まってるわねぇ。」

グランドが手を伸ばして、土鈴をパッと手に。コロコロンコロコロ!
「だが、だが!私はルシオールに、ありがとうって言わないだろう?色々、家を居心地良くしてくれても、受け取るばかりで。一言も感謝なんか言わなかった!仕事ばっかりで、イライラして、怒ってばかりで、キャフだって泣かせてしまって。キャフにも、字は書けるようになったのか、本は読めるようになったか、食事のマナーを教えるべき、家庭教師はいつつけるか、色々、色々、あれができなきゃ、これができなきゃ、って、あまり一緒に過ごしもしないのに、ルシオール越しに上から押し付けて。普段、褒めもしないし、食事も一緒に摂らない!頭も撫でない!嫌な、嫌なお父様だったろう?!」

(グランド様、ご自分でマズイなあと思ってらっしゃったんですね。まあそりゃあそう、大分、口が滑らかになってきましたね。)
ピコ、後ろでウンウン。

そして口が滑らかなグランドは話が長い。
キャフには、あんまりまだ長いお話は、どう応えていいか、どの部分に応えていいか、ハテナ?になっちゃうのだ。
眉をキュッと寄せて、鈴を取って持ったまま。キャフはおじいちゃまに困ったよ、分からない、の視線を投げた。
フレーズおじいちゃん先生は、アッハッハ、と笑って鈴を手に。

コロコロン♪
「キャフは、お父ちゃまが、お母ちゃまに、ありがとしたら良いと思う?」
「ウン。だって、ぼく、ありがちょね、ってゆわれたら、うれちいよ。ふわ~!て、おむねが、ドンドンちゅるの。がんばれゆの!」

「そうだよなぁ。グランドのやり方が直ぐに全てと変わるのは難しいだろうが、ルシオールは、グランドの事を多少なりと、分かっているのだよね。夫婦だものね。それでも日々の事に、少しでも感謝を貰えたら、どんなにか、やり甲斐を感じるだろうね。」
とフレーズおじいちゃん先生、ウンウンと頷く。
「ありがと言われたら、お母ちゃまだって、お胸がドンドン、嬉しくなるねえ。」
「ウン!たのちく、なゆ!」

それからは鈴があっちこっち、皆のところをいったりきたり。
「奥様はご苦労なさったから、今のグランド様との間柄も、案外幸せにやってらっしゃるのではないかしら。嫌われてるのかなぁ、なんて不安にしているより、ご本人に、お茶して聞いてみられると、よろしいわよ。」
「そうよねえ。でも、グランド様ご自身で気づいてらっしゃるように、もう少し頑張った方が良いわ。キャフ様だって嬉しいし、そうしたら、もっと幸せになれそう。」
「ダヨネー!キャフさま、なでたらいいじゃん。」
「なでれば。いま。キャフさまのおとうさんさま?」
「でちゅ~。ジゥも、たちゅきとーちゃ、よくなでてくれまちゅ。」

撫でれ。
という子供たちの視線に、グランドはたじろいだ。
キャフは、うん?って顔で、おとうちゃまを見上げている。

グランドが、そー、そーッと。
手を伸ばしてキャフの、まあるい何とも言えない曲線の頭に、着地、するか。
という時も、皆、好き勝手に話している。

「キャフ様の教育は、そんなに厳しくされているんですか?フレーズおじ…先生。」
「まあ嫡男だから、ゆくゆくはそれなりに教育を、となるだろうねえ。でも、今はルシオールが、上手くやっているかなあ。食事のマナーより先に、ちゃんと好き嫌いなく、お残しなく、食べられるように、お皿の指示を出させるのをやり始めた所なんだよ。食事は楽しくないとね、と言って、嫌にならないように、好物も取り混ぜてね。読み書きは、ホラ、テレビの小鳥の歌があったろう?」

キャフは、おとうちゃまの、伸びてくる手を見上げながら。テレビの文字覚えの歌を歌う。
「アーはことりのアー♪」

サラ、とした細い、子供ならではの髪が柔らかくて。グランドは、ひゅ、と手を一旦離して。また、ゆっくり頭に手を置いた。
髪ごしに、高い温度が温かく。手にまろくしっくりくるキャフの頭を撫でて、ゆっくり撫でて。
キャフは、ジッと、ジーッと。おとうちゃまを見ていたが。
ククフフ!と。突然。
嬉しそうに、肩をキュッとして笑った。

「おとうちゃま。たのちく、ちまちょ!」
「………うん。」



ーーーーー

今日は短めなので明日も更新したいです。
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