王子様を放送します

竹 美津

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本編

閑話 王族対抗歌合戦 5 本番前パシフィスト

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トントントン、と時は進んで、今日は王族対抗歌合戦の、収録日である。MVはもう、本当にもう、各国ものすごく苦労して撮影済みである。

誰だ、短いMVなら程よい力で、なんて言ったのは。皆、もりもりに盛り上がって、竜樹も王族たちも撮影作成班も楽しくなっちゃって、遊びに遊びまくっている。短い歌に合わせてキュッと高度に世界を詰め込む、なんて、そんな簡単な訳がなかった。いくらでもつくり込める。

とにかく、なんだかんだあったが、モノは出来ているのだ。
今日は、それを、楽しく王族たちが団欒しながら披露し合って、各国テレビ局の力も結集して、番組に組み上げてゆくのだ。
スタッフたちは、代役を立てたリハーサルも済み、ワワッと本番前の興奮と緊張、独特の雰囲気である。

各国とエルフ王族に似合いの。それぞれ王宮(と体育館)にセットを組んで、寛ぎの1室を。
どの国も、お国のモチーフカラー、国旗に拠ったインテリア。お国柄を演出しつつ、お人形や玩具など、やはりその国の、雑貨も賑やかに、実家の居間をイメージ。
王族の実家は王宮である訳だが、普段の厳かさ、高貴さよりも。王族たちの会話を撮る際に、画面が単調でなく彩となるよう。その国の特徴を出した、庶民的、親しみやすさのあるセットである。

ここ、パシフィストの国旗は黄色と青に白抜きで、太陽、月、星がデザインされている。黄色をベースに、その青白を上手に使って、ど~んと長い炬燵に布団。

「ハルサ王様、入られま~す!」

進行スタッフが片腕をサッと上げて、掛け声、瞬間わわ~っとカメラやアシスタント、ディレクターからも大きな拍手が起こる。とにかく元気に。
「「「おはようございま~す!」」」

ハルサ王様が、ニコニコと歩いてセットに入ってくる。
「おはよう!……と言っても、もう午後なのであるよな。なぜテレビ局で撮影の時、挨拶はおはようなのか。不思議であるなぁ。おはよう、おはよう、皆、今日はよろしくお願いするよ。」
周り中に手を振って、ご機嫌のハルサ王様である。

お衣装は、ちょっと小洒落た襟の黒シャツに、Vネックのゆるりとした生成色セーターを着ている。シャツの首元に貴石とリボンが輝いているのが、王様チック。シャツの後ろ長く膝裏まで、流麗なラインが、寛ぎの中にデザイナーのこだわりを感じさせる。おウチ収録がテーマでいながら、王族らしさも。衣装さんも力が入っている。

3方に壁がある、セットの部屋は1段高くなっていて。何故かといえば、炬燵は足がのんびり自由な掘り炬燵であるからだ。長い収録でも、楽な姿勢で過ごせる。もうすでに温かくしてあって、クッションや座椅子なども。

開いた方の壁がない前面沓脱ぎ場でハルサ王様は靴を脱ぎ、タスタス、と歩いて、ディレクターが恭しく指し示す炬燵の真ん中、素敵な青の座椅子へ。カメラ真ん前、画面の真ん中。
よっこら、どかりと座って、おこたの布団を掻き分けて足を入れたら、ホワッと温かくて。

ムフ。
お布団抱えて、ぬくぬく笑っちゃう。
今日は、もう、番組の収録だけ。
いつもの仕事は、な~んにも、しなくていいのだ!

おこたには、柑橘やお菓子なんかも完備。進行台本もちゃんと把握している、お助け侍従さんから、お茶が出される。
ずす、とお茶を飲み、葉っぱに包んである赤いお菓子を一つ、ぺりり、ぱく。もぐもぐ。きゅん!と甘酸っぱい。

あ~、あれだ、もうこれは、悠々のお休みなんじゃないか?
頬杖ついて、はふ~。

「今日は、楽しみであるなぁ~!」

「はい!ゆるりと楽しんでいただければ、きっと上手くいきます!ハルサ陛下、どうぞよろしくお願い致します。魔道具マイクを付けさせていただきますね。」

まったり、そしていそいそ、準備。


マルグリット王妃様も白レース襟ブラウスドレスに貴石リボン、フレア袖。淡いピンクの腿まであるセーター、スカートは8枚はぎの白薄ふわふわ。
やっぱりニコニコと入り。
「おはよう、皆さん。よろしくおねがいしますね。うふふ、おはよう、って、いかにも撮影って感じね!」

「君もそう思うかい?」
ハルサ王様が、おこたの布団を持ち上げてやりながら、隣に促して。
「ええ、午後でもおはようだなんて、不思議ですわねえ。」

王様王妃様、夫婦がお菓子を食べさせ合いっこなんかして、うふ♡としてると。

オール先王様、威厳がありながらも新しいもの好きで、MVづくりと番組撮影にわくわくのおじいさま。

スフェール王太后様、しゃんとした美おばあさま、最近は樹脂の着せ替え人形と、他にも……夢中な事がある、ファッションにちとうるさいお方。

リベリュール・エトワール前代第二側妃、バラン王兄のお母さん。ピリッとスパイシーだけど血の繋がらない孫3王子大好きおばあさま。

ダフネ・リュンヌ前代第三側妃、マルサ王弟のお母さん。前職踊り子、今も踊りは現役、背筋も柔らかくピシリと。

先王チームも一気にどわどわ、基本的にはお似合いのセーターと、裾が長く優美なシャツ、ブラウス、上品で楽そうな。

「あらあら、このホリゴタツっていうのは、何だかとっても気持ち良いものねえ。」
「ですわよね!スフェール王太后様、ぬくぬくで、ふわふわで、足が楽ですわ!」

「マルゴー、そのお菓子どんなお味でした?」
「リベリュール様、ハードチーズケーキのベイクドですって。歯応えがしっかりして、チーズ感も濃厚ですわ!」
「なるほど、だから小さいのね。」

「マルゴーちゃん、私が教えた、踊り前の身体ほぐし、役に立っている?」
「やっていますわ!ダフネ様!たまにやらなかった時は、なんだか身体が鈍る感じが致しますわね、習慣になりました。」

スフェール王太后様とリベリュール様ダフネ様、そしてマルグリット王妃との嫁姑関係は、なかなか良好。朗らかに話なんかしている。
ちなみにマルゴーちゃんとは、マルグリットの愛称である。

3王子が入ってきた。
オランネージュ。
ちょっと腹黒で猫好き、お茶屋さんのあのこが気になるお年頃、第一王子。

ネクター。
真面目で気にしい、犬が好きかもしれない……(オランネージュ兄さまには言いにくい)、第二王子。

ニリヤ。
お天気はなまる、ワイルドウルフの虎幼女エンリちゃんとけこんする、将来テレビ業界と兄さまたちのお助けをする成長株。竜樹ししょうのでし、第三王子。

「あ、お祖父様、お祖母様がたも~!」
「みて~!ぼくたちも、セーターおそろいです!」
「おこたで、ばんぐみ!」

わきゃ、きゃ!
黄色、青、クリーム色のセーターをそれぞれ。靴を脱いだらポーンとけっぽって、あわわ、と拾いに行ったりして、ちゃんと揃えました。偉い。
新聞寮で慣れているので、おこたにきゃっきゃいいと躊躇いもなく突っ込み。クッションにポフんとお背中預けたりしている。

音楽大好きバラン王兄、そしていつもは竜樹の護衛をしている、イクメンになりたい願望が密かにあるマルサ王弟も、ズボンのポッケにズサと手を突っ込み、ラフに現れた。

パシフィスト王族、3世代がここに、集結。

ちなみに竜樹は、ツッコミナレーションのために収音ブースにいます。お助け侍従タカラと、護衛と。そしてバラン王兄の婚約者、本大好き元司書お姉さんの、声が素敵なパージュさんと。

「それでは王族の皆さんを繋ぐ、相互モニターを8分割で一気に映します。はーい皆さん、注目~わわわわ~!」
手を振るアシスタントの側、大きなモニターが一台。パッと切り替わって各国、エルフ王族たちが。
それぞれ揃って寛いで、各国カラーの炬燵に足を突っ込んで、お互いの姿を見て、わ~っと手を振り合った。

「は~い!それでは本番、そろそろ参りますよ!」

おいおいニリヤ。
おこたでクッション抱いて、横にゴロンは、寛ぎ過ぎじゃない?ネクターも乗っかって、キャハっている。
オランネージュは、本物の猫ちゃん(茶白ハチワレ)がおこたにいるので、チッチッチ、と呼んでいて、全く自由である。

他のお国の王族たちも、子供たちは似たようなもの。
いつもならば、王族の子供たちだって、流石の良い子してお仕事モードなのだけれど、いいのだ。今日は、楽にして、たのしいふんいきだしてね!ってスタッフのお兄さんお姉さんに、言われているのだ。

「本番10秒前、9、8、7、6、5、4、3。」
指2本
1本
スタート!

パッ、とメインカメラ切り替わって。

収音室のギフトの御方、竜樹が、わ~っとアップで映る。

「皆さん、こんにちは!ギフトの竜樹です。今日はね、こちらで、楽しく番組進行させていただきたいと思っております。主にツッコミ担当です。そして頼りになる相棒、パシフィストのバラン王兄殿下の婚約者さんでもある、パージュさんです。」
手をフリフリ、さっ、と隣にご紹介。

「皆さんこんにちは!パージュです!少し緊張していますが、今日はね、王族の皆さんの、なかなかお見せする事ができない、普段のお姿を!拝見しながら、ギフトの竜樹様と繋ぎつつ、楽しく番組できたらな、って思います!」
ニコニコ、わわわ~っ!

「そうなんだよね。パージュさん、今日は、ソルセルリー大陸各国の王族ご一家、そしてエルフ王族ご一家、合わせて8チームで。」
「はい!いわゆる、ミュージック・ビデオをそれぞれ、撮影してありまして。それをご披露、対決するという!」

「MV、皆すごい凝ってるんだよねぇ~。」
「ええ、ほんと、凄いらしいです!今回、歌は全て、竜樹様の世界の歌を、こんなのがありますよ~、って教えて下さったんですよね!」

「どの王族の方にも、なんかハマっちゃう歌を、これどーう?ってしてみました!そんなところもね、へーっ、こんなのあるんだぁ、って楽しんでもらえたら嬉しいです。」
「楽しみですね!ミュージック・ビデオってなーに?竜樹様の世界の歌って?うんうん、それはこの後、番組を観れば納得の解決です。それではそろそろ参りましょう!ソルセルリー大陸全テレビ局協力による、今年の番組納めはこれ!」

「「第1回 王族対抗歌合戦~!!」

パン!と8チームがそれぞれ映ってゆく。笑顔で手を振る手を振る。


「まずはパシフィスト王族のご一家から参りましょう。パシフィスト王族ご一家の皆様~!」


「「「は~い!!」」」


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