王子様を放送します

竹 美津

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本編

つまごい

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「3人とも、元気出たかな?」
バラン王兄が ポロリン♪ 曲を弾き終えて仕切り直した。

「はい。」「はーい。」
「は、ぃ•••。」
ネクターはまだ気になる事があるのか、歯切れが悪い。
「ネクター、何かあるかな?」


「私だけ、やっぱり、歌がヘタだから•••。」
歌がヘタなのは、すぐには良くならない。不安の消せないネクターなのだ。

「ネクター、歌は上手いのばっかりがいい訳じゃないよ。だって、王だって音痴だけど、歌で王妃を射止めたんだからね。」

ブハハッ。マルサが噴き出す。

「そうそう。結婚前に留学で来てた王妃様に、もし私を望むなら、妻恋の歌を歌ってくださらない?って宴の余興で言われてな。」

朗々とヘタな歌を歌いきって、それで王妃様は兄王に好感をもったらしい。
くくくと思い出して笑う。

華やかにさんざめく宴の会場、煌びやかに装い合う男女、シーンと静まり返ったそこに、あのいい声の、ちょっと外れたユーモラスな歌が響く。

恥をかくのに、堂々と歌ってくれた、朗らかな人柄が、好ましい、ってな。

「つまりネクターは、父王に似てる、ってことだ!」
「そうだね。」
王兄弟に言われて、3王子は。

「父上って、音痴だったんだ。」
「おうた、ヘタなの?」

「私、父上に、似てる•••。」

顔を見合わせて、王の音痴という事実を飲み込んだ。

ネクターは、口をまむまむさせて、ちょっと言い淀む。それでも訥々と
「ち、父上は、母上のこと、あんまり好きじゃないから•••私の事も好きじゃ、ないかもって、思って。」

でも、だから、父上に、似てたら、嬉しい。

ふおっと、頬を上気させて、呟いた。

大人たち、すんっ、と静まる。
子供だって、周りをちゃんと、見て考えているのだ。男女の事は、まあ仕方ない面もあるが、それでも子供に不安がらせちゃったら、大人が悪い。

「一緒に夕飯食べた時、王様は、3人を気にしていたね。歌を歌うの、大丈夫かなって。」
竜樹がそういえばと思い出す。

「そうだな。あれは、3人のうちの誰かが、自分に似てるんじゃないか、と思ったんだな。」

「3人を、心配していたんだよね、王様は。」
ネクターも、だ。

王様に聞きに行ってみよう。
ネクターが、王様に似ていたよ、って。

「王はあれで、ヘタだけど歌うのは好きなんだよ。」
ヘタだから歌っちゃいけない、なんて、誰が決めた?好きに歌っていいんだ。
バラン王兄は、むんっ、と拳を握る。
「でも、今より上手に歌えるよう、3人とも、練習だからね。」

そして、王も音感自体は悪くないから、楽器はいけるんだ。
どうしても、となったら、ネクターは笛でも担当すれば、3人で気持ちよくハーモニー作れるんじゃないかな?

「いいですね。オカリナ、って笛があるんだけど、似た笛こっちにあるかな。ポロポロして、可愛い音なんだ。」
スマホでオカリナ動画を見せる。
3人王子と、王兄弟と。そしてここでもカメラを回していたミランが、小さい画面に寄ってくる。

ホロー♪
ずんぐりむっくりした、愛嬌のある笛に、ネクターは、「これ、やってみたい、です。」バラン王兄を見上げて、瞳をきらめかせた。

ピアノみたいな楽器もあるんだから、オカリナみたいな楽器もあるかも。思った竜樹の予想は当たり、バラン王兄は心当たりがあるそうだ。
「これも地方の、祭典用の楽器なんだが、ラプタって笛が、良く似ているね。取り寄せて、吹いてみようか。」

それに、王子が地方の楽器を使う、となったら、その地方の人達は喜ぶだろうし。音楽の祭典としても、広く音楽を扱うものとして、聞く人に地方の音楽に興味をもってもらえるんじゃないかな。

この後。
王様に、ネクターが王様似だという話をしに、執務室へ突撃したら。
「そうかそうか、誰かが似るかと思ったが、ネクターが私に似てしまったか。いや、だが、上手いばかりがいいのじゃないぞ。私など、ヘタな歌で、王妃を射止めた事があってな。」
フワハハ、ネクターを撫でて、呵々大笑した。

竜樹は後で、子供が不安がってるぞ、と突っついてやろうと思ったが、ネクターは嬉しそうに王の話を聞いていたから、まずはホッとして見守っていた。

そうして、お泊まり会では、灯を柔らかくオレンジ色につけたままで、ベッドを増やしてくっつけ、大きくして雑魚寝した。
ネクターとニリヤとオランネージュは、一緒に風呂に入った後、ベッドで互いにくっつきあって、くすくすしていたが、やがてすやすや寝入った。

大人たちは、お茶を飲みつつ、ボソボソと小さな声で反省会と。撮影した映像、編集で、王様が第二側妃の事あまり好きじゃない、とかはカットして、流そう、と打ち合わせした。

因みに、王様音痴の件は、バッチリ放送である。
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