王子様を放送します

竹 美津

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本編

将来の布石

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「そもそも、優秀な人と優秀な人を掛け合わせて、より優秀な人を作ろう、という考え、私は好きじゃないです。だって、結婚する2人には、それまでに何人もの祖先からの血が入って、たまたま優秀に見える特徴が表に現れてるからといって、その他の特徴も沢山、本当に沢山孕んでいる。結婚して、子供を産んで、どの特徴が現れるかなんて、博打でしかないですよ。思い通りな子供以外は切り捨てるーーーなんて、バカバカしいでしょう?そういう事をすると、生きていくこの世界が、大多数の人にとって、厳しく辛い世の中になってしまうし、切り捨てる側は、いつか切り捨てられますからね。それは生命の大樹を、細めるやり方なんです。それより、違う要素を、取り入れる、っていうのが、良いと思うんです。」

はい、と手を上げた、視力の弱い、ルフレ公爵家長男プレイヤード。

「はい、ルフレ公爵家プレイヤード君。」

「私みたいな、視力の弱い者は、血が近いから生まれたのですか?」

プレイヤード君の母、トレフル夫人が、真っ青な顔をしてふるふる震えている。

「そうかもしれない。でも、そうでないかもしれない。神様は、一人一人について、詳しく説明してくれた訳ではないですから。庶民でも、視力の弱い子はいるでしょう?ただ、やっぱり、私の元いた世界でも、血が近いのは、良くなかったです。」
トレフル夫人は、顔を手で覆って、小さく丸まった。

「私、しょうらい、素敵な女の人と結婚したいんだけど、結婚するとしたら、離れた血の人の方が良いって事ですか?」

うんうん。いいね!プレイヤード君は、光の暖かさを忘れない、力強い命の子である。

「良いですね!結婚。もし、これから結婚相手を探すとして、子供が欲しいな、ってなったら、少し気にすると良いかもです。ただ、この人と結婚したい、って思うのって、いつ誰と、なんて分からないよね。だから、選択肢が増えると良いですよね。」

「選択肢。増やすには、どうしたら。良いですか。」

「色々な人と知り合える環境を、大人達が作る事ですかね。それと、プレイヤード君が、色々な事に興味を持って、生き生きと暮らしていく事。魅力的な人は、モテると思います!モテたいですか?」

くふふ、とプレイヤードは笑って。
「モテたいです!」

はい!!と勢いをもって手を上げた、燃えるような目をした令嬢を、竜樹は指す。
「パシオン侯爵家フラム嬢。どうぞ。」

「私は、アシュランス公爵家ジェネルー様と婚約しています。両家の間では、これまでに婚姻で血を近づけた、親戚関係の間柄があって、私達も従兄弟同士です。それって、結婚しない方が良いのですか!?わた、私は、ジェネルー様を、お慕いしています!ジェネルー様も、私の輿入れを待っていてくださると。」

うん。そういう現実もあるよね。

「従兄弟婚は、私のいた世界の、私の国では、許されていましたね。それと、今までそうやって繋いできた貴族の方々が、いきなり新しく離れた血の者を入れたからといって、必ず障がいのない者しか生まれないか、なんて分からないのですよ。フラム嬢。」

「でも、私達は相当、近い血です!もし、障がいのある子が生まれたら•••。でも、結婚は、したいです•••。」
チラリ、と、ジェネルーの弟、視力の弱いピティエを見たフラム嬢は、いやいや、と首を振って、そっと俯いた。

うん。難しい問題だよね。
「•••私が聴覚障がいの方の勉強をする時、ある絵本を読んだのですが、そこに、お父さんとお母さんが、聴覚障がいを持つ娘さんが載っていました。その娘さんも、聴覚に障がいがあるのです。おそらくご両親は、結婚して子供を産む時、子供に障がいが起こるかもしれない、と、考えただろうな、と私は思いました。それでも子供を産みたいと考えるのは、いけない事だとは思いません。ご両親の決断です。それは、他人がどうこう言える事ではなくて、夫婦が話し合って決める事です。でも、不安は、そりゃありますよね。どうしたらいいですかね。すぐ、答えの出る問題では、ないんじゃないかな、って思います。」

ざわざわ、と不安に話し合う貴族達に、出番はここだ!と竜樹は目配せを送った。

ファヴール教皇、お願いします。

さっ、と立ったファヴール教皇は、スタスタと前に歩いてきて、スクリーンの前で竜樹と頷き合った。

「私は、ファヴール、教皇をやっています。若き婚約者たち、これから婚約者を見つけようと思う者達、その親達も、不安に思うのも無理はないでしょう。だが、神の独り言とは、私達に気づく機会を与えてくれた、神からのメッセージだとは思えませんか。」
押し出しのあるファヴール教皇の声に、貴族達は聞き入っている。

「竜樹殿に聞きました。竜樹殿の世界では、障がいのある者達が、便利な道具や、色々なサポートを受けて、家に隠される事なく、持てる力を発揮して、やり甲斐のある仕事をしたり、スポーツをしたり、趣味も持ったりして、それぞれに生きている者もいると。」

「私達は、障がいを恐れるあまりに、愛する娘や息子達の活躍する場を、奪ってはいまいか。五体満足だからといって、素晴らしい人物とは限らないし、娘や息子達が、本当は何が出来るか、まだ知らないのではないか。そして、恐れて、中途半端にしか知識がないから、遠ざける事で安心を得ているだけではないか、と。」

「今こそ知る時、そう神がおっしゃっているに違いない。私はそう思います。すぐに結論を出すのではなく、良く知って、考えてからでも、遅くないのではないか?始めるなら、今。きっかけがあるということは、幸いなのです。」

「ですが、教皇様、知るとはどうしたらいいのですか?」
手を目の前に組んで、祈りながら発言する、フラム嬢の言葉に。

ニヤリ、とファヴール教皇が、竜樹に視線を寄越す。
「それを竜樹殿が解決してくれる。問題はそれぞれが考えねばなるまいが、知る手助けはしてくれよう。竜樹殿。」

はい、と受け取って。
「テレビ番組や、ラジオ番組、教科書もかな?障がいのある方と、持たない方と、両方を雇いたいと思っています。一緒に働いたら、関わり合ったら、知り合う事ができませんか?それには、お互いの歩み寄りが必要です。工夫が必要です。可哀想だからやってあげる、でもなく、障がいがないから余計に仕事をしなきゃ、障がいがあるから適当でいい、でもなく、お互いに、一つのものを作り上げるのに、協力し合う。どうですか、最初からうまくいくとは限りませんが、もしかしたらこれからも生まれてくる、色々な特徴の子供達が、それぞれ生きていける世界を、皆さんで作りませんか。」

そして。
「それをやるのが、導く、という貴族の役割なのでは?」

「新しい血の事は、どうなりますか。」
義務教育に待ったをかけたオラージュ子爵家のトネールが、青い顔をしている。
そこには、あどけない顔をした彼の娘と、真剣な顔をした妻が寄り添っている。

「もちろん庶民の方で優秀な方を、雇う事も考えていますがーーーそうですね。義務教育って言っても、個人個人で進み方は違うと思うのです。その中でも優秀な子に、奨学金を与えて勉強の機会を与える、なんてどうですか?勉強だけじゃなくて、接客が上手な子、音楽が好きな子、絵の才能がある子。デザインの才能がある子。それぞれにいい事がありますが、そんな子達を育てる、庶民向けの高等教育を行う学校もあっても良いかもですね。まあ、それは、お金の事から仕組みまで、皆さんにも考えてもらえたら。」
未来への布石をするのは、今の大人だから。

うん、うん、と、オラージュ子爵家のトネールが頷きながら聞いている。

「という事で、今日は見本の番組を聞いて観て、そして話し合ってみましょう。今日一日で出来ることではありません。皆さん、ちょっと驚いて、緊張しちゃったのでは?まずはお昼をいただきましょう。私も一つ一つ、番組の解説をしますね。焦らず、まずは楽しんで。では、侍女さん達、お昼を配ってください。」

ささっ、と、侍女さん達が、それぞれどこどこ公爵家などと、名前のついたバスケットを配り出した。
ざわめきが深くなり、竜樹もホッと息を吐いて、少しスクリーンの前から席を外した。

「ファヴール教皇、ばっちりです!」
「教会内の古狸と話すより、よほど楽であった。私も米粉のパンを味わうとしよう。教会にもアレルギーの子はいるのでな。」
ファヴール教皇は、子供達の報告書を読んでいるのだ。

3王子達とアルディ王子が、竜樹の所へやってくる。フレ・ヴェリテ叔父様も、ててて、と興奮気味に。
「ししょう!むつかしい、おはなし、わからなかった!でも、アミューズたちと、ばんぐみ、つくる?リポート、する?のは、わかった!あとおべんきょ。」
「それだけ分かってたらいいよーニリヤ。」
「私達も、協力、します!」
「私も。教育番組にも出るよ。」
アルディ王子が、ふー、と息を吐きながら、竜樹のマントにつかまって、一生懸命、話しだす。
「私、この国でみんなといると、すごく考えることがあるの。いっぱい、物事が起こってきて、それを考えてると、色々な事があるんだな、って、でも、何だか不思議と、勇気とやる気が出るの。しょうがいのある人たちで、お家に隠されてたの、きっと、外に出たら、私みたいにびっくりして、やる気出ると思う。」
「そうだといいな。」
絶対だよ!
ぱふ、と抱きついたアルディ王子を、竜樹はくりくりと撫でてやった。

フレ・ヴェリテ叔父様は、竜樹にキラキラした瞳で興奮したまま、頭を下げた。
「どうか私の国にも、あの魔道具を!兄弟の中で、耳の不自由な者がいるのです!まずは王族が試して、国民にも使わせてやりたいです!」
うんうん。
「王様ともお話しして、いいようにしましょうね。」

「今回のは、随分大きな一雫です。波紋が大きく広がりそうですね。」
カメラマンこと侍従のミランも、ニカカ、と笑いながら、会場の様子をぐるーりと撮る。
「俺はもう、何が起きてもおどろかねぇ。」
マルサは、とんとん、と首の後ろを叩きながら、「竜樹も少し食べておけよ。解説は食事の中ほどからだろ。食べとかないと、腹が減るぜ。」とせっついた。

「ししょう、いっしょ、たべよ!」
「「「食べよう食べよう!」」」

米粉のパンはもっちりと美味しく、紅茶はミルクでまったり。

「はぁ~。午後も、頑張るか!!」
「おー!もぐもぐ•••。」
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