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本編
陽炎の月9日から12日 アルディ王子4
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「踊り?」
「そう、おぼんの、魂たちに捧げる舞を、私たち子供が、踊って迎えることになったんだ。それは良いんだけど•••。」
家族の再会から一夜明けて。ファング王太子は、弟のアルディ王子を伴って、踊りの練習に体育館へ向かっていた。
ワイルドウルフにも新しく出来た、プールに体育館。国の建築関係の総力を上げて、スピーディーに、そして堅牢に、かつ美しく造られたそれらは、身体を動かす事が大好きな獣人達から、喜びをもって迎えられ、既に沢山の人が利用している。
竜樹のいる、パシフィストの国に追いつけと、新聞も先日から発行され、体育館、プールの記事も大々的に掲載されて、新聞共々大人気である。
入り口から入って、体育館の一番大きな部屋へと。
『はっきり言って、君たち、舞は、やめた方がいいよ。』
『何でよルトラン!私たちだって、できるわ!』
入り口前でも聞こえる、中からの声。
ファング王太子とアルディ王子は顔を見合わせて。そして、はぁ~っ、と萎れてため息をつくファング王太子。分からないながらも、何か揉めているんだな、とアルディ王子は、兄の手を取り、ちょいちょい、と入り口に向けて人差し指で、これ?と首を傾げて合図した。
こくこく。うん、これ。
踊る、それは良いんだけど、の後に続く言葉は、揉め事があって、なのだな。
ファング王太子は、ふ、と顔を上げて、気を取り直し、威厳を保って、扉を開けて。
「皆、すまない、遅くなった。所で、外まで、揉めている声が聞こえてきたぞ。一体、どうしたというんだ。」
ハッとして、サッ、と頭を垂れて、胸に手を当て礼をする、獣耳尻尾の子供達。1人の利発そうな身体の大きな熊耳少年、その後ろに、貴族や豊かな平民と思われる見目麗しい少年少女達がいて。そして対する少女は、ウサギ耳、車椅子で。後ろに主に、そう豊かでない平民の子や、身体の小さかったり、少し太ったりと、バラエティーに富んだ見た目の者達を控えさせていた。
周りで見守っていた貴族の保護者達やお付きの者も、ファング王太子とアルディ王子に礼をとった。舞の監督も。
しかし、何も言わない、ということは、子供達自身に、チームをまとめて踊る事を、ある程度様子をみて任せているのだ。ファング王太子の力量を見ている、ともいう。
「良いよ、直って。もうすぐおぼんなのだから、舞の練習をしようじゃないか?••••••今日は、何で揉めているんだ?」
なかなか口を切らない子供達だったが、揉め事の中心にいた、アッシュグレーの髪色、瞳の、幼いながらに精悍な、一回り皆より大きい少年が、まず話し出した。
「コリーヌ嬢達に、現実を見て欲しくて。舞はやめたらどうかと、勧めていました。」
「現実を見てほしいとは?ルトラン?」
ふー、やれやれ、とばかりに、ため息をつく、ルトランと呼ばれた少年は続ける。
「コリーヌ嬢は、見た通り車椅子で、足が不自由です。」
指摘されたコリーヌ嬢は、むぐ、と口を閉じて悔しそうに拳を握った。
「それなのにわざわざ無理をして、上半身だけの舞で踊るから、やっぱり全体的な舞の完成度としては、ちょっと見劣りします。」
「私達も、何も舞でなくとも、他にもコリーヌ様にできる事がありましょうから、あまり無理はなさらない方が良いのでは、と思いますわ。」
ルトランの後ろにいた令嬢、令息達も、うんうん、と頷いている。
「ふむ、それで?」
ファング王太子が促し、ルトランが続ける。
「先日、上手く踊れない者と、出来ている者とで、チーム分けをして、各々努力して完成度を上げる、となりましたよね。コリーヌ嬢の後ろで踊っている者達は、舞が上手くできない者、不得意な者を集めたチームです。もう、今日この段階で、このレベルでは、おぼんに踊るには、不足ではないでしょうか。何も無理せずとも、できないのであれば、踊らなければいい。せっかくおぼんに来る魂達に、捧げる舞なのだから、完璧な舞をすべきです。」
舞を完璧に収めたファング王太子殿下と一緒に踊るのですから、拙い舞を披露するべきではない。それは不敬でもあるし、ファング王太子の名を貶める事にもなる。
「私は、そのように思います。」
私は正しい、とルトラン達は堂々と。
「そうか•••だが、それでも私は、皆で踊れたら、と、やはり思う。コリーヌ、君たちも、頑張っているのだろう?」
ファング王太子は、ふ、と息を吐いて、一方だけの意見だけでなく、コリーヌ嬢にも聞いた。
「はい。おぼんまで、ギリギリまで、頑張りますから、私達は、踊りたいです!わ、私が足が悪いのは、もう、どうにもならない事です。でも、私だって、こうなりたくてなったのではないし、踊るのも好きです!皆と、一緒に、精一杯踊りたい!皆、平民の子は働いていたりもするから、練習ばかりをできない事情もあります。あまり動くのが得意ではない者もいますが、皆、やっぱり、光栄なこの舞を、やってみたいと思っているんです!」
私たちだって、やってみたい!
真剣な目をして言い募る。
「そうか。」
ファング王太子は、うんうん、と頷いたが。
「やりたいからと言って、できる事ばかりではないだろう。わがまま言わずに、遠慮したらどうだ。」
ルトランと、その後ろの令嬢令息達は、ふるふる、と頭を振って、受け入れない。
アルディ王子は、双方の意見を聞いて。
これって、コーディネーターが必要なんじゃないの。
と思った。
病気で弱くて、皆と一緒ができなかった、受け入れられない者達の気持ちがわかる、自分。
エフォールと仲良くして、自分は足がちゃんと動いて、でも、動かない車椅子のエフォールと、一緒に遊んできた自分。
今では、喘息に気をつけながら、色々な事を出来てきた、自分。
そうして、ここにいる、2つの、出来るチーム、出来ないチーム、どちらにも属さない。
真ん中で双方を取り持つコーディネーターには。
私、アルディが、ピッタリなんじゃないの??
ファング王太子は、困った顔で、何とか皆で一緒に踊れる方法はないのか?と対話を求めている。
兄様にお助けする事が、私に、できる、かも???
アルディ王子は、思い立って、ブルブルリ!と武者震いをして。
「はい!発言を求めます!」
手を上げて。
出来るチームも、出来ないチームも、え、と虚を突かれた顔で。一斉にアルディ王子を見た。
その顔は、今までこんな人いたっけ、と、誰も彼もが同じ顔をしていた。
「そう、おぼんの、魂たちに捧げる舞を、私たち子供が、踊って迎えることになったんだ。それは良いんだけど•••。」
家族の再会から一夜明けて。ファング王太子は、弟のアルディ王子を伴って、踊りの練習に体育館へ向かっていた。
ワイルドウルフにも新しく出来た、プールに体育館。国の建築関係の総力を上げて、スピーディーに、そして堅牢に、かつ美しく造られたそれらは、身体を動かす事が大好きな獣人達から、喜びをもって迎えられ、既に沢山の人が利用している。
竜樹のいる、パシフィストの国に追いつけと、新聞も先日から発行され、体育館、プールの記事も大々的に掲載されて、新聞共々大人気である。
入り口から入って、体育館の一番大きな部屋へと。
『はっきり言って、君たち、舞は、やめた方がいいよ。』
『何でよルトラン!私たちだって、できるわ!』
入り口前でも聞こえる、中からの声。
ファング王太子とアルディ王子は顔を見合わせて。そして、はぁ~っ、と萎れてため息をつくファング王太子。分からないながらも、何か揉めているんだな、とアルディ王子は、兄の手を取り、ちょいちょい、と入り口に向けて人差し指で、これ?と首を傾げて合図した。
こくこく。うん、これ。
踊る、それは良いんだけど、の後に続く言葉は、揉め事があって、なのだな。
ファング王太子は、ふ、と顔を上げて、気を取り直し、威厳を保って、扉を開けて。
「皆、すまない、遅くなった。所で、外まで、揉めている声が聞こえてきたぞ。一体、どうしたというんだ。」
ハッとして、サッ、と頭を垂れて、胸に手を当て礼をする、獣耳尻尾の子供達。1人の利発そうな身体の大きな熊耳少年、その後ろに、貴族や豊かな平民と思われる見目麗しい少年少女達がいて。そして対する少女は、ウサギ耳、車椅子で。後ろに主に、そう豊かでない平民の子や、身体の小さかったり、少し太ったりと、バラエティーに富んだ見た目の者達を控えさせていた。
周りで見守っていた貴族の保護者達やお付きの者も、ファング王太子とアルディ王子に礼をとった。舞の監督も。
しかし、何も言わない、ということは、子供達自身に、チームをまとめて踊る事を、ある程度様子をみて任せているのだ。ファング王太子の力量を見ている、ともいう。
「良いよ、直って。もうすぐおぼんなのだから、舞の練習をしようじゃないか?••••••今日は、何で揉めているんだ?」
なかなか口を切らない子供達だったが、揉め事の中心にいた、アッシュグレーの髪色、瞳の、幼いながらに精悍な、一回り皆より大きい少年が、まず話し出した。
「コリーヌ嬢達に、現実を見て欲しくて。舞はやめたらどうかと、勧めていました。」
「現実を見てほしいとは?ルトラン?」
ふー、やれやれ、とばかりに、ため息をつく、ルトランと呼ばれた少年は続ける。
「コリーヌ嬢は、見た通り車椅子で、足が不自由です。」
指摘されたコリーヌ嬢は、むぐ、と口を閉じて悔しそうに拳を握った。
「それなのにわざわざ無理をして、上半身だけの舞で踊るから、やっぱり全体的な舞の完成度としては、ちょっと見劣りします。」
「私達も、何も舞でなくとも、他にもコリーヌ様にできる事がありましょうから、あまり無理はなさらない方が良いのでは、と思いますわ。」
ルトランの後ろにいた令嬢、令息達も、うんうん、と頷いている。
「ふむ、それで?」
ファング王太子が促し、ルトランが続ける。
「先日、上手く踊れない者と、出来ている者とで、チーム分けをして、各々努力して完成度を上げる、となりましたよね。コリーヌ嬢の後ろで踊っている者達は、舞が上手くできない者、不得意な者を集めたチームです。もう、今日この段階で、このレベルでは、おぼんに踊るには、不足ではないでしょうか。何も無理せずとも、できないのであれば、踊らなければいい。せっかくおぼんに来る魂達に、捧げる舞なのだから、完璧な舞をすべきです。」
舞を完璧に収めたファング王太子殿下と一緒に踊るのですから、拙い舞を披露するべきではない。それは不敬でもあるし、ファング王太子の名を貶める事にもなる。
「私は、そのように思います。」
私は正しい、とルトラン達は堂々と。
「そうか•••だが、それでも私は、皆で踊れたら、と、やはり思う。コリーヌ、君たちも、頑張っているのだろう?」
ファング王太子は、ふ、と息を吐いて、一方だけの意見だけでなく、コリーヌ嬢にも聞いた。
「はい。おぼんまで、ギリギリまで、頑張りますから、私達は、踊りたいです!わ、私が足が悪いのは、もう、どうにもならない事です。でも、私だって、こうなりたくてなったのではないし、踊るのも好きです!皆と、一緒に、精一杯踊りたい!皆、平民の子は働いていたりもするから、練習ばかりをできない事情もあります。あまり動くのが得意ではない者もいますが、皆、やっぱり、光栄なこの舞を、やってみたいと思っているんです!」
私たちだって、やってみたい!
真剣な目をして言い募る。
「そうか。」
ファング王太子は、うんうん、と頷いたが。
「やりたいからと言って、できる事ばかりではないだろう。わがまま言わずに、遠慮したらどうだ。」
ルトランと、その後ろの令嬢令息達は、ふるふる、と頭を振って、受け入れない。
アルディ王子は、双方の意見を聞いて。
これって、コーディネーターが必要なんじゃないの。
と思った。
病気で弱くて、皆と一緒ができなかった、受け入れられない者達の気持ちがわかる、自分。
エフォールと仲良くして、自分は足がちゃんと動いて、でも、動かない車椅子のエフォールと、一緒に遊んできた自分。
今では、喘息に気をつけながら、色々な事を出来てきた、自分。
そうして、ここにいる、2つの、出来るチーム、出来ないチーム、どちらにも属さない。
真ん中で双方を取り持つコーディネーターには。
私、アルディが、ピッタリなんじゃないの??
ファング王太子は、困った顔で、何とか皆で一緒に踊れる方法はないのか?と対話を求めている。
兄様にお助けする事が、私に、できる、かも???
アルディ王子は、思い立って、ブルブルリ!と武者震いをして。
「はい!発言を求めます!」
手を上げて。
出来るチームも、出来ないチームも、え、と虚を突かれた顔で。一斉にアルディ王子を見た。
その顔は、今までこんな人いたっけ、と、誰も彼もが同じ顔をしていた。
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