王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
265 / 717
本編

12日夜 3王子とおばあさま達

しおりを挟む
「さあ、サイコロ振って、順番決めましょう!」
「「「おー!!」」」

スフェール王太后様が、むむむん!と真剣にサイコロを振る。
コロ•••3•••6•••い、1。
「ま、まあ、最後に金貨が残ってる、とも言うし!」
「スフェールおばあさま、ざんねん?」
ニリヤ王子が眉を下げて悲しそうに聞くと、いえいえ、とニッコリ笑って。
「これからよ!」
と闘志漲り。

広間に祭壇を作り魂達を、お迎えして。お風呂も夕飯も終わった王族達は、寛いだ格好で、ほぼ裸足の、柔らかい布靴を履いて、真新しい絨毯を踏み締め。敷かれたお布団を自ら丸く避けて、中央に場を開いた。
いざ、トランプ。ババ抜きやろう、と集まった所である。

ハルサ王は胡座をかいて、中にネクターを入れ。
マルグリット王妃はオランネージュと隣り合わせ。
ニリヤはスフェール王太后様と、貴族から嫁がれたエトワール、ちょっぴりスパイシーで孫好きお祖母様なリベリュール先王妃とに、挟まれている。
庶民出身、小柄だが踊り子出身リュンヌのダフネ先王妃は、ダラッとしているのに何故か姿勢が良く、コロリン、と半ば布団に寝転がりつつ、ババ抜きに参加。サイコロをぽん、ぽん、投げ上げ掴み、としている姿もキマッていて。
そして、3人の奥さんを、温かい表情で見ているオール先王様である。と、後ろにいるバラン王兄を振り返り。

「バランは、今年は、パージュ嬢と仲良く家に居たかったろうねえ。パージュ嬢も寂しいだろう。」
まだ婚約段階なので、王族の集まり、しかも今夜のお泊まりは儀式になるから、参加は遠慮したパージュである。儀式というか皆だべってるだけなのだが。オール先王も、息子のバラン王兄が、賢くて優しい、謙虚な伴侶を見つけた事を、嬉しく思っている。一緒に過ごしたかった、招びたかった。

「ご心配ありがとうございます、父上。でもパージュは、たまには1人で夜更かしして、ゆっくり読みたかった本を読みます、と言っていましたからね。こんな日もあって、良いでしょう。父上が気にかけてくれた事、伝えておきますね。来年からは、一緒に泊まれますから。」

ふん、ふん、とバラン王兄は鼻歌、ゲームには参加せず、布団にぺったり寝転んだ。その鼻歌は、お盆の最終日16日に披露する、盆踊りのもの。心は音楽イベントへ、のバラン王兄であった。
ちかり、ちかりと、魂達も、鼻歌に合わせて光る。

「今度は私よ!」
ダフネ先王妃•••お祖母様、がサイコロを振る。
「6よ!」
「ダフネお祖母様からだね!」
ネクターが、トランプのカードを配りつつ。ハルサ王はネクターとペアを組んでやるつもりだ。別々だと、抱っこしてるとカードが見えちゃう。
「ぼく、こんなにいっぱい、とらんぷあるの!」
ニリヤは相変わらずだ。早く少なくなった方が勝ち、とは思ってなかった。
良いねー、良かったわ、と周りに言ってもらって、ニシシのニリヤだ。

さて、ババ抜きは、心理戦が飛び交うゲームである。良くある、抜いて欲しいカードを、わざと一枚、少し取りやすく上にずらしたり。裏をかいてババは持ってない、とか、飛び出したカードの方じゃない、とか。裏の裏をかいて、とかとか。
何しろ王族、百戦錬磨の者達、キラリピカーンと、瞳は輝き、平静に笑顔でやり取り。
「あがった!」
その覇者達をおいて、オランネージュがニコリと一抜けし。
「私も、あーがり!」
ネクターも。
「ぼくも、なくなっちゃった。」
欲のないニリヤは、残念そうに。
「私も、上りよ!」
マルグリット王妃は、サラリと流石に。

残ったのは、オール先王様と、その妻3人。
「ふふふ!面白くなってきたわ。」
元モデルかのような、美おばあさま、スフェール王太后が言えば。
「これからが、本当の戦いね!」
スパイシーな、ザ・貴族、リベリュールおばあさまも応え。
「私、賭け事って引きがいいのよ!腕がなるわぁ!」
おばあさまと言うには、溌剌すぎるダフネおばあさま。

「賭け事?」
「良いわね!何を賭けます?」
「そうね!この中で、一番先に抜けた者が、孫と一日中遊ぶ権利、なんてどう?」
「素敵ね!」
「良いわ!」
「是非勝たなければね!」

「おいおい、私もまだ残ってるんだよ?」
オール先王が妻達に言葉をかけるが。

「「「貴方は黙ってらっしゃい。」」」

はいはい、はーい。
返事も軽い、慣れてるオール先王である。

では。
と、先ずはダフネお祖母様が、カードを引いた。






「あぁ~、残念。1番は、引きの良いダフネ様だったわね。3番目は私。」
スフェール王太后がため息を吐く。
「私は2番。」
リベリュールおばあさまが、涼しい顔で。
「ふふ、私って運が良いのよ。」
何して遊ぼっかなぁ~。ね?とダフネおばあさまは、ニリヤに顔寄せて。
「スフェールおばあさま、リベリュールおばあさまとも、遊びたいの。皆で、仲良くしようよぉ。」
ペタリ、とダフネおばあさまのほっぺを挟み、両手をつけてお願いするニリヤに。
ニコニコしちゃうおばあさま達。
「孫には勝てないわ!」
「仕方ないわ!」
「仕方ないから、遊んじゃうわ!」

最後の最後、残ったのはオール先王である!
上手くできてる夫婦達なのだ。

「明日、ししょうと、寮に行って遊ぼうよ~。」
「良いわよ。」「良いわ。」「竜樹様ともお茶したいわね!」
和やかに。
オランネージュ、ネクター、ニリヤは、今日一日儀式の事で疲れて、眠くなってきた。
おばあさま達は、仲良くお布団に孫を入れつつ、女子高生のパジャマパーティーみたいに、るふるふと仲良くお話し合い。ファッションショー、スフェール様出るのですって?ええ、そうなの、浴衣っていうの着るのよ。靴が、斬新で、可愛いの!裸足で履くのよ、革命よ!ヘェ~、私たちも楽しみね!

マルグリット王妃は、3人の関係性を、良いな良いな、と思った。
私たち、ハルサ王の妻達も、そうなれる道もあったのに。
いがみ合わずに、真っ当にぶつかって、でも取り返しのつかない事はせず、一緒に時を過ごす戦友。その戦友にしか分からない、近い感覚。

「おかあさま達は、最初から、こんな風に良い距離感だったのですか?」

ふと、聞いてしまうマルグリット王妃である。皆で布団に横たわって、歯に衣きせず、1人残った義理の娘に、3人はくすくす笑った。

「まさか!」
「まさかよ!」
「私たち、3人とも、怒れる猪だったわ!」

オール先王が、肩を竦める。
「私も、胃が痛く感じる事があったよ。」

うっふっふ。
笑う3人の妻達は、修羅場を超えてきたから、笑えるのだ。

「マルグリット。貴女は、良くやっているわ。」
「3人揃う事が無くなってしまったのは、貴女のせいじゃない。」
「きっと生き抜いた先に、ホッとして笑える未来があるわ。」
私たちが、保証する。
そして、何かあれば、私たちも助けるから、言ってくるのよ。

一つの光、魂と、それに寄り添う小さな光が、マルグリット王妃の周りを、クルクルする。

頼もしい3人の先達に、励ます魂に、マルグリット王妃も、ふふっと微笑んだ。
ネクターが、眠くなりながらも、チラチラとこちらを気にしているので、3人のおばあさまもマルグリット王妃も、それぞれがネクターのまろいほっぺにキスをして。

「ネクターのせいでもないわよ。」
「私たちがついてるわ。安心しておやすみなさい。」
「可愛い孫よ。沢山遊んで、勉強して。今のやり方で大丈夫、それでいいの。大人になれば、自分がどうすべきかも、ちゃんと、分かるわ。」

「ギフトの御方様も、ついていて下さるしね。」

そうねそうね、と女子会は続く。
男子5人は、大人しく先に就寝するのだ。

ザザ、と魂の渦が広間を踊り、そのゆらゆらした光が、王族達の眠りを誘い、次第に声が小さくなり、皆、静かに就寝した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...