王子様を放送します

竹 美津

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本編

コウキと文と千沙ちゃんと 2

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文がコウキを意識し始めたのは、こんなちょっとした出来事から。

場所は学生食堂。
コウキはお弁当持ちだが、学生なら自由に食堂を使って良いので、友達と一緒にテーブルに。
混み合うので、気持ち良く相席するのも、学食のマナー。見知らぬ1人の男子学生が、コウキの隣に座った。

その男子学生は、背が高くてゴツくて地味な、格闘技でもやっていそうな筋肉の持ち主。名前は鈴木淳すずきあつし。
文もたまたま、学食に来たので、コウキに挨拶しようとした時。
鈴木が食事の出来上がり、予約番号札を持って待っていて。
その間小さなノートに何か書いていた。
近づいてきた女子学生の3人が、ヒョイ、とノートを奪って。

『え~鈴木君、詩なんか書いてるんだぁ!超似合わない~!』
『どれどれ、「ーーー君は僕の天使だから」だって!ダサ!天使、天使!』
『あっはっは!』

『ーーー返せよ!』
鈴木は顔を赤らめて、手を伸ばすが、女子学生達は調子に乗って返そうとしない。
文は、あぁ~、と思って様子を見ていた。何とも可哀想な鈴木である。誰だって好きに表現しても良いだろう、特に誰に迷惑をかけるでもなし。ノートを取り返してあげようか、と一歩出た時。

『ーーーいい加減に、しなさい!!』

キュン!

コウキが立って、それほど大きい声ではないのに、落ち着いた低い声でハッキリと、女子学生達を叱った。その声に、3人とも、ビビ!と震えて、竦んでしまう。


文は、文は、キュンとして、動けなくなった!

『人が一生懸命に作ったものを、その表現を、簡単に貶せるほど、君たちは偉い立場なのか!』

ムン、と立って、コウキは。

『それに、そのノート、君たちに見せるなんてこの人言ってないだろう。勝手に見て、勝手に馬鹿にして、君たちにそんな権利ない!』

黙っている女子学生達に近づき、ピッとノートを取り上げ、鈴木に返すコウキ。
鈴木は、顔が赤いままだったけれど、ちょっと笑ってコウキに。
『ありがとう。』
『ううん。詩が書けるなんて凄いね。俺、詩心全然ないんだ。読んでも分からなくって。分かる人尊敬する。』
和やかに話をする。

女子学生達が、口をムンとしたまま。
『な、なによーーー。』

あ、ヤバい。文はそう思った。
胸のキュンは、ドキドキに変わり、コウキが初めて見る男の人に思えた。
こんな時に、こんな風に、真正面からバシっと言えてカッコいい。文だって何かを作り上げる、演じるという創作をしている1人だ。コウキは、作った物を大事にしてくれる人、真面目に叱れる人なんだな。

そしてこのままじゃまずい、とも分かっていた。女子学生達を下げたままじゃ、きっと、拗れるな、と。
文は女優力を発揮した!
優しそうな微笑みで。

『あらあら、あなたたち。文お姉さんが話を聞いてあげるわよ。鈴木?さん? が優しそうだから、きっと女の子達は、ちょっと甘えて調子に乗っちゃったのよね。でもやっぱり、人の創作をバカにしたら、いけないわよ。多数の人の目に、出しても良い、って本人が晒した作品でもないのだし。』

ごめんなさい、したら良いわよ?
調子に乗っちゃう事あるわよね。
イジって、笑いにして、仲良くなる事もあるしね。でもそれは、相手がそれを許してくれる時しか、ダメなのよ?
さあ、一言謝りましょ!スッキリするわ!

文が女子学生達の背中を、ポンポン、と叩き。叩かれた女子達は、ショボ、と上目遣いで文を見る。
ウンウン、若さゆえの過ちよ。

『別に謝ってくれなくても良いよ。』

鈴木は、もう興味ない、って冷たい顔をしている。

『あら、でもそれじゃ、この子達が、悪者のままだわ。うーん、そうしたら、3人と、鈴木さんとで、詩の賞にでも投稿してみる?そうしたら、自分を曝け出して作るって事、結構大変なんだな、って皆分かるでしょ。』

詩と君とファンタジー、の雑誌MOETで、確か詩の賞を公募してたはずよ。知り合いが審査員だから、知ってるんだけど。

ええ、と目をキョロキョロさせ始めた女子学生に、鈴木は。

『僕は、その賞に応募できない。』

『そうなの?人前に出す気はない?』

文が聞けば。
鈴木はニヤリとして。

『いいや。僕、去年、その賞の大賞とってるから。もう応募資格がないんだ。このノートは作品じゃなくて、アイデア帳で、誰かに見せるものじゃないからやだっただけ。詩と君とファンタジーの審査員達は、もっと辛辣だから、この位のディスり、何でもないよ。』

ええええ!!

女子学生達は、ひえ~、と肩を竦めて、鈴木に謝った。
『調子に乗って、バカにしてごめんなさい。』
『『ごめんなさい~。』』

うん、いいよ。
鈴木が頷き、ここは手打ちになった。
ウンウン、女の子達も素直でよろしい。一つ学びになったね。
文が満足していると。

『やっぱり文さんは大人だなぁ。俺、止めるように言ったは良いけど、それだけじゃ、悪い雰囲気のままになっちゃうもんね。女の子達に上手く話せなかったもの。大人ってすごいなぁ。』

キラキラしたコウキの目に、文は再び。

キュン☆

なのであった。


それからは、鈴木とコウキと文で、いや、詩人になりたい鈴木と、女優の文とで、コウキを何故か取り合う事になり。

⭐︎鈴木
コウキ君は、ほんとに健やかな精神が素敵だから、仲良くしたいって気持ち!詩を読んでもらっても、分からないって本人が言ってるように、変に賢ぶらないで、普通の、なんて事ない感想が、すごく貴重。

⭐︎文
うぬぅ。鈴木め。私だってコウキさんと仲良くしたいわよ!私の出た作品を、見て!

イケメンの結城悟が、よせばいいのに、若い少女歌手メンバーの中の1人の、水着アリ写真集を持ってくれば。

『畠中どう?美月ちゃんの写真集、データじゃなくて本で、俺買っちゃった!良いよね~美月ちゃん!この水着なんかもさ~。』

『美月ちゃんて、妹のサチと同じ歳だから、何だか水着とか見るの、悪いなって気がしちゃうよ~。』
と言いつつも、結城に見せられて、頬をぽっぽとしているコウキに。

⭐︎文
『ふぬぬぬぅ!私だって、私だって、写真集くらい出せるんだからね!マネージャー!』

⭐︎文のマネージャー
『写真集。ええ、ええ、良いでしょう。コウキ君に見せたいがためにでも何でも、お仕事になれば成功を目指すのみ!鏑木文の魅力満載な本を、出しますよ!』

そうして出来たのが。

『鏑木文、お姉さんのコスプレ写真集』

貞淑でクラシックな本格派メイド服、芯の一本通った厳しい女性教師、馬術を嗜むお嬢様、水着はパレオで現地の働くお姉さんぽく。華やかでかっちりした軍服でベルサイユに、タバコを咥え雀荘の主、吉原遊廓の花魁。

こんな事になるはずじゃなかった、と思いつつも、コウキに、見て!と差し出した文。

『•••やっぱり文さんは素敵ですね!カッコいい!』
とコウキに言われて、ムフ、とする。
ちなみにその写真集は激売れした。



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