345 / 702
本編
情報が多すぎるジャンドル
しおりを挟む
「父上、母上。ちょっとお話が。」
高級縫いぐるみ作家なんて副業でやっている、自分にとっては不可解な事の多い息子、ジャンドルに、ニッコリ話しかけられて、父のベルジェ伯爵家当主、フィアーバは、ぎくっ、とした。
息子が笑顔で話しかけてくる時、碌でもない事を言うことが多いのである。
騎士団に入ったよ、と嫡男なのに事後報告で言い出した時。
花街のコリエの借金を払って、後々は見受けしたい、手続きをしてると事後報告だった時。
借金なんて返せるか!と叱ったら、副業で縫いぐるみ作家をやってるよ、とキチンとした地道な返済計画を、やっぱり事後報告で淡々と伝えられた時。
そもそも、子爵家の娘だったコリエを婚約者にするのだって、あの娘に決めたよ、仲良くなったんだ、約束もしてきた。とニッコリして事後報告だったのだ。兎に角大事な事は自分で決めて、事後報告な息子だ。しっかりしてるといえば聞こえは良いが、そして手間がかからない息子だったが、心労はいかばかりか。フィアーバには身に余る。
これは、最近まで自分の事は自分でして、矍鑠としていた祖父様の血であろう。プロ顔負けのシャツを仕立てたりする、縫い物の手仕事嗜む、職人気質で風変わりな所もあった。それを恥に思っていた、そもそも不器用なフィアーバには、現れなかった血だ。
地味でありふれた貴族のフィアーバは、息子が恐ろしい。決めたら外野の意見など何であろうと、いやひらりとかわして、淡々と一筋に、必ずやり通す芯の強さが、息子にはある。貴族として何とか外聞を整わせ維持してきた、柔いフィアーバには、毎度、勘弁してくれ!となるのだ。
これは妻のセンプリチェも同意見で、特に秀でた所もなく維持、とにかく先代が広げてきたベルジェ伯爵家の、そこそこの繁栄を、次代に繋げる駒としてーーーフィアーバは自分を正しく評価している。自分が事業や家を拡大していける力があるとは思ってないーーーとにかく、維持していければ!という必死の思いでやってきたのである。
それを息子は、外聞の悪い事をサクサクッと、決めたから、と言ってくる。
そしてそれが、家の為にならないか、といえば微妙な所で、縫いぐるみ作家の活動をしながら得た情報で密かに維持できた事が色々ある。腹に座りが悪いのだ。
花街でもそうで、遊ばないのに借金を返しに行って世間話をしてきて、ちょっとした事業の変化の、ヒントを拾ってきたりする。大体反対するが、ジャンドルが執事に通してしまってやり始めれば利益が出て、或いは赤字を回避でき、結局利用することになる。祖父様が指名した長年働く執事は、ジャンドルの味方だ。
それでもフィアーバは、孫のエフォールの事は隠し通した。はずだった。
だってあちらは、もうパンセ家の息子さんなのだし。こちらが余分な口を出す方が悪い心象を与えそうである。関わってほしくない、花街の母だという情報も隠せたら、そう思っているはずだ。
妻のセンプリチェは、少し残念そうだったが、人間何でもは手に入らない。穏やかな毎日をお互いに、家族が過ごすには、と、目を瞑ったのだ。
ジャンドルはニッコリを崩さず。
「エフォール君と会ってます。」
ガタガタん!
手に持った文箱を落として。フィアーバは、目を見張る。
同席していたセンプリチェも、口に手を当てて、ひゅ、と息を吸う。
「意地が悪いなあ、父上、母上。エフォール君の事を秘密にしているなんて。まんまと、こんなに大きくなるまで俺に息子がいる事を知りませんでした。会ってみれば、俺にそっくりで、とても良い子でね。編み物が好きなんですって。」
ああ。祖父様の血だ。そう、テレビでもそう言っていたっけ。歩けるようになるまで、りはびり、というのをやっていると。根気よく、努力ができる、一筋に。
「パンセ家へやった子だ。あまり関わってはーーー。」
センプリチェも、じと、とやりきれない思いで手を組み、ジャンドルを見つめている。
「仲良くしたいんですって。エフォール君。知りたいんですって。俺のこと。可愛いですよね。勿論パンセ家には配慮致しますけど、あちらも仲良くしましょう、ってエフォール君の気持ちを第一に考えてらっしゃる。愛情深い、良いお家です。パンセ家で良かった。エフォール君の養父母様が。」
ニッコー!輝くばかりの息子の笑顔に、フィアーバは顔色が悪くなってゆくし、センプリチェはハラハラし出した。
「それで今度、コリエの借金の残りをパンセ家が一括で払って、肩代わりしてくれて。一括にしたら、大分低く抑えられたので、今後の返済計画は、上方修正できそうです。エフォール君の、編み物のクマちゃんを売ったお金も当てて、本当、情の深い子なんです。」
「まあ•••。」
センプリチェはちょっと感動したっぽいが、フィアーバは冷や汗が出るのを抑えられない。その話は、どこに、落ち着くの、かな。
「それでコリエが花街から解放されたので、今はギフトの御方様の寮にいるんですが、借金に負けず結ばれた運命の恋人達と応援を受けまして。ギフトの御方様の世界の、素敵な結婚式の様式を広めるために、私たちが選ばれて、王妃様も後援して下さるそうなので、父上と母上も、明後日マルグリット王妃様に謁見願います。直々に、お声をかけて下さるそうなので。」
えっ?なんだって?
情報が多すぎて入ってこないな?
「まさか。王妃様と言わなかったか?」
「王妃様が。私とコリエの結婚式を後援して下さるそうで。お言葉も下さるので、明後日、謁見です。」
大事な所だけ、もう一回言ったジャンドルに。
ぱか。
フィアーバの口は開いたまま。
センプリチェは、ヒッと言って、青ざめる。
ニッコリ。
「私はコリエと結婚します。もう大分前から決めていました。やっと実現します。外聞を気になさる、父上母上にも受け入れられる後ろ盾を、得て参りました。ご安心下さい。お喜び下さい。」
な、なんとーーーーー!!!???
長年働く執事は、これでこそジャンドルぼっちゃまです。と、うんうんしつつ、文箱を拾ってテーブルに置いた。
ーーーーーーーーーーー⭐︎
土日の更新はここまででした。
お母さんズの所まで書きたかったのです
また日々がんばりますー
高級縫いぐるみ作家なんて副業でやっている、自分にとっては不可解な事の多い息子、ジャンドルに、ニッコリ話しかけられて、父のベルジェ伯爵家当主、フィアーバは、ぎくっ、とした。
息子が笑顔で話しかけてくる時、碌でもない事を言うことが多いのである。
騎士団に入ったよ、と嫡男なのに事後報告で言い出した時。
花街のコリエの借金を払って、後々は見受けしたい、手続きをしてると事後報告だった時。
借金なんて返せるか!と叱ったら、副業で縫いぐるみ作家をやってるよ、とキチンとした地道な返済計画を、やっぱり事後報告で淡々と伝えられた時。
そもそも、子爵家の娘だったコリエを婚約者にするのだって、あの娘に決めたよ、仲良くなったんだ、約束もしてきた。とニッコリして事後報告だったのだ。兎に角大事な事は自分で決めて、事後報告な息子だ。しっかりしてるといえば聞こえは良いが、そして手間がかからない息子だったが、心労はいかばかりか。フィアーバには身に余る。
これは、最近まで自分の事は自分でして、矍鑠としていた祖父様の血であろう。プロ顔負けのシャツを仕立てたりする、縫い物の手仕事嗜む、職人気質で風変わりな所もあった。それを恥に思っていた、そもそも不器用なフィアーバには、現れなかった血だ。
地味でありふれた貴族のフィアーバは、息子が恐ろしい。決めたら外野の意見など何であろうと、いやひらりとかわして、淡々と一筋に、必ずやり通す芯の強さが、息子にはある。貴族として何とか外聞を整わせ維持してきた、柔いフィアーバには、毎度、勘弁してくれ!となるのだ。
これは妻のセンプリチェも同意見で、特に秀でた所もなく維持、とにかく先代が広げてきたベルジェ伯爵家の、そこそこの繁栄を、次代に繋げる駒としてーーーフィアーバは自分を正しく評価している。自分が事業や家を拡大していける力があるとは思ってないーーーとにかく、維持していければ!という必死の思いでやってきたのである。
それを息子は、外聞の悪い事をサクサクッと、決めたから、と言ってくる。
そしてそれが、家の為にならないか、といえば微妙な所で、縫いぐるみ作家の活動をしながら得た情報で密かに維持できた事が色々ある。腹に座りが悪いのだ。
花街でもそうで、遊ばないのに借金を返しに行って世間話をしてきて、ちょっとした事業の変化の、ヒントを拾ってきたりする。大体反対するが、ジャンドルが執事に通してしまってやり始めれば利益が出て、或いは赤字を回避でき、結局利用することになる。祖父様が指名した長年働く執事は、ジャンドルの味方だ。
それでもフィアーバは、孫のエフォールの事は隠し通した。はずだった。
だってあちらは、もうパンセ家の息子さんなのだし。こちらが余分な口を出す方が悪い心象を与えそうである。関わってほしくない、花街の母だという情報も隠せたら、そう思っているはずだ。
妻のセンプリチェは、少し残念そうだったが、人間何でもは手に入らない。穏やかな毎日をお互いに、家族が過ごすには、と、目を瞑ったのだ。
ジャンドルはニッコリを崩さず。
「エフォール君と会ってます。」
ガタガタん!
手に持った文箱を落として。フィアーバは、目を見張る。
同席していたセンプリチェも、口に手を当てて、ひゅ、と息を吸う。
「意地が悪いなあ、父上、母上。エフォール君の事を秘密にしているなんて。まんまと、こんなに大きくなるまで俺に息子がいる事を知りませんでした。会ってみれば、俺にそっくりで、とても良い子でね。編み物が好きなんですって。」
ああ。祖父様の血だ。そう、テレビでもそう言っていたっけ。歩けるようになるまで、りはびり、というのをやっていると。根気よく、努力ができる、一筋に。
「パンセ家へやった子だ。あまり関わってはーーー。」
センプリチェも、じと、とやりきれない思いで手を組み、ジャンドルを見つめている。
「仲良くしたいんですって。エフォール君。知りたいんですって。俺のこと。可愛いですよね。勿論パンセ家には配慮致しますけど、あちらも仲良くしましょう、ってエフォール君の気持ちを第一に考えてらっしゃる。愛情深い、良いお家です。パンセ家で良かった。エフォール君の養父母様が。」
ニッコー!輝くばかりの息子の笑顔に、フィアーバは顔色が悪くなってゆくし、センプリチェはハラハラし出した。
「それで今度、コリエの借金の残りをパンセ家が一括で払って、肩代わりしてくれて。一括にしたら、大分低く抑えられたので、今後の返済計画は、上方修正できそうです。エフォール君の、編み物のクマちゃんを売ったお金も当てて、本当、情の深い子なんです。」
「まあ•••。」
センプリチェはちょっと感動したっぽいが、フィアーバは冷や汗が出るのを抑えられない。その話は、どこに、落ち着くの、かな。
「それでコリエが花街から解放されたので、今はギフトの御方様の寮にいるんですが、借金に負けず結ばれた運命の恋人達と応援を受けまして。ギフトの御方様の世界の、素敵な結婚式の様式を広めるために、私たちが選ばれて、王妃様も後援して下さるそうなので、父上と母上も、明後日マルグリット王妃様に謁見願います。直々に、お声をかけて下さるそうなので。」
えっ?なんだって?
情報が多すぎて入ってこないな?
「まさか。王妃様と言わなかったか?」
「王妃様が。私とコリエの結婚式を後援して下さるそうで。お言葉も下さるので、明後日、謁見です。」
大事な所だけ、もう一回言ったジャンドルに。
ぱか。
フィアーバの口は開いたまま。
センプリチェは、ヒッと言って、青ざめる。
ニッコリ。
「私はコリエと結婚します。もう大分前から決めていました。やっと実現します。外聞を気になさる、父上母上にも受け入れられる後ろ盾を、得て参りました。ご安心下さい。お喜び下さい。」
な、なんとーーーーー!!!???
長年働く執事は、これでこそジャンドルぼっちゃまです。と、うんうんしつつ、文箱を拾ってテーブルに置いた。
ーーーーーーーーーーー⭐︎
土日の更新はここまででした。
お母さんズの所まで書きたかったのです
また日々がんばりますー
55
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』
ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。
現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます
ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。
理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。
……正直、めんどくさい。
政略、責任、義務、期待。
それらすべてから解放された彼女は、
聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。
毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。
何もしない、何も背負わない、静かな日常。
ところが――
彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、
一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが
異様なほど平和になっていく。
祈らない。
詠唱しない。
癒やさない。
それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。
「何もしない」ことを選んだ元聖女と、
彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。
これは、
誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、
いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる