王子様を放送します

竹 美津

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本編

逃げて生きた

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※ レゾンがレザンになってたです。
なおしました!すみません。
ーーーーーーーーー


「ど~んけつ相撲で、はっけよいの・ドン!」

ブフと噴いて、ニカカカカ、肩を揺らして笑っているバーニー君をそのままに、竜樹はハイハイと場を作る。ちょっとだけフカっとした、大きな木の切り株位なクッションの周りに、いつも皆が寝ているお布団をぐるり。ガードは完璧だ。
そんな簡単な用意で、さあもう準備は完了。

「じゃあ、最初に竜樹とーさと、ラフィネかーさが、やってみるね。狭いけど、クッションの上に、背中向けあって立ちます。お尻の力とバランス感覚、フェイントなんかも良いかもね!さあ、いくよ!ドン!って言ったら、様子見ながらお尻で押し合いっこだよ!」

ふむふむ。ラフィネも、さあ、とクッションの上に乗って、戦闘体制、にふふと笑って、お尻を竜樹とくっつける。
竜樹も、よーし、と拳を握ってへっぴり腰加減、お尻を左右に、ふりり!

「どーんけつ相撲だ、はっけよいの・ドン!」

へこっ。

前傾になりつつ、お尻を突き出し合って、おとととと。ドン!と勢いよくお尻で押された竜樹が、つま先立ってわたわた、あ、あ、ああぁぁぁ~!

子供達も、アワアワ!おちるう!竜樹とーさ!キャハハ!なんて笑ってる。

どた、とお布団の上に転げ落ちて膝を突いた。辛子色スモックを揺らして、ラフィネが、ああ!と口を押さえ「竜樹様、大丈夫!?」声をかけるが、竜樹は、あはは!と笑ってお布団に両手、起き上がって髪をかきあげ、ちょっと照れ臭く頭をぽりぽりした。
「ラフィネさん強ーい!あはは、負けちゃった。こんな風にー、クッションから落ちちゃった方の人が負けです。さあ、やってみたい人~!」

はい、はい、は~い!!!!

立候補が沢山いて、小ちゃい子から順番に。
テレビ電話の向こうからは、アンクル地方の教会孤児院の、ぽっこりお腹の赤ちゃん、ラマンも、小さなお手てをはーいして、どんてちゅ、どんてちゅ!と言って他の子達と転移魔法陣へ、いこっ、こっ!と向かった。
どんけつ相撲やりたい子が、続々と寮の交流室に集まってくる。

小ちゃい子組の、ロンとサンで。
どんけつ相撲だ、はっけよいのドン!

へこっ

お尻を突き出し、ロンが、手を振り回して落ちる。サン、前屈みになりながら、おととと、堪えるが~、ととっ、落ちちゃった!引き分け~。

ニリヤ王子とネクター王子の兄弟どんけつは、ネクターの勢い尻に、ドンっとニリヤが吹っ飛んで、布団に頭からコロリ、一回転。子供って柔らかいから、そして頭が重いから、くにゃんころろと丸まって、ペタンと座って手足をお布団に投げ出したニリヤは、キョトンとしていたが。一瞬置いて、キャハハハ!とお口を大きく開けて笑った。
ネクターは心配して降りて肩に手を掛けたが、その手を握って、おもしろーい!!とばんざーいである。

「アハ!」
「あははは!!」

大きい子組のジェムとアガットのどんけつは、お互いにタイミングが、へこっ、へこっ、とズレて、中々決着がつかなかったが、いつも大人しいアガットの猛攻尻があり、ジェムは、わたた!と落っこちた。周りのお布団にダイブ。
ワイルドウルフ勢の戦いも、またバランスが良くて。お尻尾ピルピル、ファング王太子とアルディ王子の戦いは、へこっとアルディが落ちそうになり、尻尾でファングのお尻尾にしがみつき、おっとと、でも、でも、あぁぁ~!と2人して落ちる!なんてことも。
貴族の女子、マテリアちゃんと、オランネージュ王子の対決もなかなかで、遠慮し合って、ちょい、ちょちょい、と弱くお尻を出し合っていたが。負けるなー、がんばれー!の男女応援に、よしっ、と2人、せーので、どん!結局2人、おっきく吹っ飛んで引き分け。笑いながらオランネージュは、お布団からマテリアちゃんを助け起こした。

チーム荒野の、視力に障がいのあるプレイヤードと、アミューズも、さわさわ、と自分が立てるクッションの範囲と、落ちた時のお布団との段差を確かめたら、後は何とも大胆。グーの手握って、どん!と押せ押せ、プレイヤードが押し勝って、アミューズがとっとっと、と落ちた。

同じくチーム荒野のモデル体型のピティエと、それより大分背の低い、足での歩き練習中のエフォールも、尻の位置がたがい違いになりつつ、どん!何故だか押しながら2人、ぐるぐる回って、結局ピティエが落ちた。エフォールは、やったね!の拳突き上げ。

元王女のシエルとエクレの姉妹対決は、大人しめの姉、エクレの勝ち。
エルフのお助けお姉さんマレと、ベルジュお兄さんとのエルフ対決は、マレお姉さんの勝ち。

お布団ふかふか、落ちても笑ってる皆に、マヌケな戦いに、子供達も竜樹もラフィネも、マルサと護衛達も、カメラのミランとお助け侍従タカラも、バーニー君も、お世話人エルフ達も、元王女エクレとシエルも、レザン父ちゃんもエタニテ母ちゃんも来て、手を打って笑った。
ポムドゥテール一家も、タイラス一家も、涙を流しながら大笑いである。

ぽっこりお腹の赤ちゃんラマンが、ちっちゃくて大きいそのお尻で、よちよち、えい!えい!へこ、へこ!と皆の真似をして、少しお姉ちゃんのジゥと戦い。おっとっと、と、待ち構えてる竜樹とーさの腕の中、クッションから落ちて抱っこ、その拍子に。

「キャハハハ!どんてちゅ!ちっこ!でちゃ!」
満面の笑みである。

「んん!?ちっこでた!?あらららら。大変だ大変だ!」
竜樹が、まだ出る?出ない?なんて聞きながら、未使用のおしめを取って、あわーと交流室の隅っこで取っ替えをしている間に、ポムドゥテール嬢とお助け侍従のタカラが戦ったりして。ポムドゥテールのこれ以上ない真剣な表情、そしてへっぴり腰に拳を握って、が、またこのぬけた戦いに笑いを呼んで、皆してお腹抱えて。

かす、かす。

ひゅ、ひゅ、ひゅ、ひゅひゅ。

喉から空気が、ひゅひゅ、と漏れる。おかしくって。ああ。

ラシーヌは、涙を滲ませながら、車椅子の上、動かない四肢、出ない声で、でも腹の底から、ひゅ、ひゅ、ひゅ、と愉快に笑った。苦しいくらいに。



その時、交流室の入り口に、おずおずと。
灰色の修道服が、2人。
黒のファヴール教皇が、ピシリとした背を肩を、ふふふと笑いに揺らしながら、灰色の2人をさあ、さあと背中を押して。
修道士のレゾンとバーバルは、一体何をやってる所•••?とハテナになっていたが、車椅子の、昔馴染みの、忘れられない、ああ、ラシーヌを目に、ハッと。

「ラシーヌ•••?い、生きて。本当に石化が治って•••?!わ、笑ってるのか?」

ずんぐりと、のっぽ。ラシーヌの石化に関係した2人、自爆のレゾンと魔道具おっつけバーバルが、お口を開けてあんぐりと、呆然と。笑う子供や女性達などに目もくれず、吸い込まれるように、笑うラシーヌから目が離せずに。

さあ、とファヴール教皇が、竜樹に目配せをして、ラシーヌの元へ2人を連れて行く。背中に手を当て、まごまごしている修道士達を、昔の因縁と引き合わせ。
ラシーヌの夫の、ベッシュが、穏やかな顔で目礼する。

「お久しぶりですね。レゾンさん、バーバルさん。」
2人は無言で、胸に手を当て、ぺこりと礼をした。

竜樹がラマンを、よいっと抱っこしながら。
「お2人を連れて来て下さって、ファヴール教皇様、ありがとうございます!」
ベッシュもポムドゥテールも、そして動けないが目で語るラシーヌも。
「「ありがとう存じます。」」
頭を、瞼を下げた。

「いやいや。転移魔法陣を試したかったものでね。あっという間にアグルムの修道院まで行けた!教会としても、都市や地方同士の連携が素早くなろうもの。良き機会であったよ。さあ、それより、懐かしい顔を合わせ、レゾン修道士、バーバル修道士、存分に語りなさい。また出会えた幸いが、ここにあるのだからね。」

鋭い眼光なのに、ファヴール教皇は機嫌良く、言葉でも2人を押した。

何を言おうか。
いや、自爆のレゾンは誓願で話せないし、ラシーヌも今までの石化の影響で話せない。そしてバーバルは、もじもじして、レゾンとラシーヌを、交互に見ては困っている。
何を言えば。
傷ついたラシーヌに、傷をつけ落とし前をつけた、レゾンとバーバルが。

ベッシュが、子供達のどんけつお遊びの喧騒に負けない、困った沈黙に、そっと話し出す。
「先程、ラシーヌは、竜樹様達に、病原菌を浄化してもらって、目覚めた所なんですよ。ラシーヌ、お2人に話したい事が、あるかい?」

ぱちん。

ベッシュが文字板を持って、瞬きで、ラシーヌはポツポツと、話す。

れ ぞ ん
ば ー ば る
あ え た な

眼差しが笑んでいる。
修道士の2人は、眩しいものを見るかのように、目をパチパチした。

レゾンは喋れないから、バーバルが、主に話す。
「ラシーヌ•••俺たちのせいで、長い事、すまなかったな。目覚めてくれて、本当に、嬉しい。しかし、なんて、その、何言ってもさ。」
うん、うん、とレゾンも頷く。
「俺たちが、何を言っても、言い訳になっちまう。ただ、ただ、石化の、治療が叶う事、良かったと。」
手を2人修道士は、胸の前で組んで、そっと幸いを祈った。

ひゅ

笑う。笑うラシーヌ。

れ ぞ ん
に げ た ん だ ろ
き し だ ん か ら

バーバルが、バッとレゾンを見る。
レゾンは、ムニュムニュ、と口を複雑な形に、何か言いたそうに動かすと、焦って、手をふわ、ふわ、と書く真似をした。辛子色スモック揺らして、タタッとラフィネが、紙と鉛筆を持ってくる。

『ラシーヌさん。
良く分かったね。
確かに、私は、逃げました。
騎士団から。合わない仕事から。
私を揶揄って、いじるばっかりの、同僚から。
将来を選ばせてくれない両親から。
モテなくて、望みのなさそうな、結婚から。
•••その言い訳に、ラシーヌさんを使ったようになって、ごめんなさい。』

ラシーヌは、目に涙を滲ませて。
ひゅ ひゅ とまた、笑った。

れ ぞ ん
に げ て も
い い ん だ

に げ ら れ て
よ か っ た

い ま
し あ わ せ か ?

むぐぐ、とレゾンの口は山なりになって、じわり、目に涙が。
かしかし、と鉛筆が走る。

『今の生活は、穏やかで。
ラシーヌさんの事を後悔すること以外は、小さな満ち足りた幸せが、沢山あって。
畑仕事に、手仕事。
競わない、乱暴な事のない、ものをつくる、毎日。
地元の人に、食べる分以外の、ジャムを売ったり。緩やかな、人とのつながり。
私が欲しかった、生活は、これだって、思って。
皆が、欲しがらなくちゃダメだ、って言ってたものは、私は、何一つ、欲しくなくて。

とても、とても。
幸せです。』

ひゅ ひゅ
ラシーヌが、笑って、固まった指先を、ピクリ、ピクリと動かす。
娘のポムドゥテールは、ラシーヌのしたい事が分かったから、手を取って、固まった腕を、レゾンの方へと伸ばさせてやった。
レゾンが、躊躇いながら、それを握る。

じわり、体温が、交差する。


よ か っ た

わ た し は
き っ と
な お る と お も う

だ か ら
わ た し を
だ し に
に げ た こ と は

ゆ る し て や る よ

グニュグニュ、と口を噤んだレゾンは、顔をクシャッと歪ませて、バッと紙と鉛筆を握った片手で目の上を覆った。震える肩、ふくふくの頬、灰色の修道服の胸に、ぽたり、涙が落ちてシミになる。ふっ、ふっ、と、声にならない吐息。
それを見ていたバーバル修道士が、スーッ、と息を吸って、ハーッと吐き。
ニッコリ、と笑った。

ば ー ば る も
ゆ る し て や る よ
も う
つ ぐ な う な

げ ん ぞ く
し た い か ?

ラシーヌの問いに、バーバルは、笑ったまま、ふるふる、と顔を振った。
「俺も修道院で歳をとっちまったよ。今更、俗世で、何をしようってんだ。レゾンからは、逃げただけだってちゃんと言われてたけど、俺が、嫌になっちまったんだ。•••俺も、逃げたのかもな。あの、グダグダになった騎士団を、男女共に誇りをもって働けるようにする、そんな、仕事から。」

あそこに残った同僚たちは、今じゃちゃんと、レゾンとラシーヌの望みを叶えているのだろ。娘ちゃんの、ポムドゥテール嬢が、問題なく仕事できるほどに。

「俺にゃ出来なかった。不甲斐ない自分の、罪を自覚しながらそこにいる、腹に力を溜めてひっくり返す、それが出来なかった。•••ラシーヌ、ごめんな。何も出来ないで、ただ、祈るばかりで、俺も、穏やかに、幸せに暮らしていたんだよ。」
バーバルは、しゅん、と萎れて告白する。
誰もが強い訳じゃない。屈強な男が、負い目を持ったまま心戦えるかどうかなんて。そして、レゾンの口の代わりとなったバーバルが、修道士になった事、それがある意味逃げだとしても、ラシーヌ以外、誰がそれを咎められるだろうか。
生きるために逃げる事を、誰が。

い い よ

ぎ ふ と の
た つ き さ ま が
だ い だ ん え ん に
す る と い っ た

わ た し も
そ れ が い い と
お も っ た

わ た し た ち は
も う
じ ゅ う ぶ ん
く る し ん だ

れ ぞ ん
ば ー ば る

の ぞ む ま ま に
こ こ ろ は れ て
い き て

わ た し は
た た か う
き っ と
う ご け る よ う に
な っ て み せ る

ニッ、と笑った目元に、レゾンもバーバルも、震え、涙を。飲み込む嗚咽を。

「レゾンさんも、バーバルさんも、良かったらこの寮に泊まってって下さい。懐かしいラシーヌさんと、積もる話もあるでしょう。お二人が、普段、修道院でどんな工夫をして、どんな暮らしをしているか、私も興味がありますよ。自給自足なのでしょう?ポムドゥテール嬢から、今の騎士団のお話も、聞きましょうよ。」
ニッコリした竜樹が、肩を震わす2人に、赤ちゃんラマンを抱っこしながら言葉をかける。
「ファヴール教皇も、お急ぎでなければ、夕飯を召し上がっていってくださいな。子供達も喜びますから。」

「うむ、喜んでご一緒しよう。」

ファヴール教皇が、まとわりつく子供達を腹に抱きながら、ニヤッと応えた。


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