王子様を放送します

竹 美津

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本編

回るテーブルで

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竜樹は3王子と、そして預かったキャリコ少年を1人で寮にやる訳には行かないので一緒に、手を引いて前後左右ちょこちょこ、だまだま、になりながら。
王宮の宿泊施設近く、皆が歌バトルをしたサロンへ廊下を歩く。

吟遊詩人達と貴族歌い手達の後に、ゆっくり大きなドアから入った。

丸い、8人がけのテーブルが、人数全て分座れるだけ入っている。そう、中華の2段になっている、回るアレである。

ふぁ? と中には不思議にも思った歌い手達だったけれど、お助け侍従侍女さん達が誘導に立っていて。
「どうぞお座り下さい、本日はお祝い、お疲れ様の懇親のお食事になりますので、身分の上下は、お気になさらずご自由に。」
と勧めてもくれたので。
立っていても仕方がないし、疲れてもいて、ガヤガヤと8人ずつ、何となくその場にいて喋って歩いてきた順番に座った。
そもそも、音楽で繋がっているから、他の貴族平民達より近しい(歌バトルできる位に遠慮がない)彼らなのであるが。ミュジーク神様に皆で祝福を貰えた流れで、歌も歌い終わって、ホッとして、そりゃあ和やかに親しい気持ちも芽生えようというものだ。
あの歌バトルは何だったんだ、って程に、皆が笑顔でこだわりなく、混ざって話をしながら、上手く吟遊詩人達と貴族の歌い手達で5と3、4と4、でテーブルに収まった。

竜樹も、3王子、キャリコ少年、護衛のマルサ王弟、バラン王兄、司会だった、バラン王兄の婚約者パージュさんの8人で座った。
どさり、お尻が重い。座っている時間が長かったのに、何だか結構、疲れたのだ。

「竜樹様、始めてよろしいですか?準備は出来ておりますが。」
お助けお付きの侍従タカラが、そっと竜樹にお伺い。彼も一日中働いたので、もう打ち上げだけで、あと一働き、何だかほっと頬が明るく緩んでいる。

「うん、お腹空いてるのに待たせても仕方がないからね。どんどん出してしまって。」

かしこまりました、とタカラは、控えていた他のお助け侍従侍女に目配せ。ご馳走を用意とお給仕に、サササ~ッと軽やかに、沢山の彼らがスマートに動き出した。

「ししょう!このてーぶる、くるくるする!」
「本当だ!まわる!」
「へー!初めてこんなの!」

キャッキャ、と嬉しそうな3王子。それを聞いていて、吟遊詩人達も、お、お?なんてテーブルを回し始める。
うん、何かやたらと回したいよね、中華のテーブル。この世界では、このような形のものは今までなかったのだそう。竜樹の、「皆で大皿の料理を取り分けながら、仲良く打ち上げしたいじゃん!こーいうのがあってさぁ~。」との言葉で造られたものである。

チャーハン入り鳥の丸焼き。給仕さんが運んできたワゴンの上で、じゅうじゅういってるやつを、ざくざくざっくり切り分けて、大皿に乗せ直す。
大きな匙で掬う、蓮根入り肉団子と菜葉のクリーム煮。
ぷりぷりの海老マヨ。海老チリもある。
麻婆豆腐。回鍋肉。八宝菜。ここら辺は安心の美味しいだ。こちらにも小さい、鶉の玉子程の大きさのものがある。
海鮮玉子のトロトロ餡掛け。
鳥ガラかきたまスープ。
海老、鳥、猪の餃子やシュウマイ。
お豆やお肉の入った、うっすら味付きちまき。
はっぷり齧れば幸福の、粉の甘さが存分に蒸しパン、花巻。
角煮も大きいままに、これも目の前で切り分けて大皿どーん!辛子が小さなお匙に入れ物で、そっと付く。
春雨やきゅうりや、モヤシの茹でたもの。ハム、胡麻油がアクセントのサラダ。
概ね味、濃い!って感じのラインナップだが、普段のご飯じゃなくてご馳走なのだし、サッパリした黄金色のお茶で、口を洗いながら食べられるよう。お茶ブースでは初老の侍従さんが、実に素晴らしく雅な手つきでお茶を準備している。

そして1杯だけ食前酒が配られる。白ワインに香りの良いお花を漬けて、時進めの倉庫で寝かせたお酒。華やか。

ふわぁぁあ!と皆、目がもう、お皿が届く度にお迎えに行っている。ニリヤもお目々キラリのお口がパッカリ開いて、ひたひたに。
ツン、ツン、ハヤク!と小さな手にシャツを引っ張られ、にふふ、と笑った竜樹は、スッと立ち上がって、グラスを手に。なるべく短い挨拶をした。

「皆さん!お疲れ様でした!素晴らしい歌をありがとう!オアズケはしません、まずは食べましょう!その後で、お天気リポートの話なんかを、ざっくりしましょうね!お料理は、テーブルを回して、皆で取れるように和気藹々とやって下さい。では、いただきま~す!!かんぱ~い!」

「か、かんぱい~?」
「カンパイ!」
「おつかれ~!!」

クイッと一口。
まだお仕事の話があるから、お酒は1杯だけ。打ち上げ食事会に相応しいお酒、お花が口の中に、ポッと咲いた。
3王子とキャリコ少年、アルコールがダメな勤務中護衛マルサ王弟や、お酒が苦手な人、そして教会孤児院のサンジャック少年との約束で、お酒は1年に1回だけの竜樹は、桃の香りの特別なお茶を常温で。

く~っ! はぁ~。
お酒じゃないのに3王子も、ぷは!とやっている。お疲れ様。

「ふふふ。ニリヤ、ネクター、オランネージュ。どれから食べるんだい?キャリコ君も食べたいものを言うんだよ。取ってあげるよ。はーいはーい鳥の丸焼き食べたい人ー!」

「はーい!ししょう、とりまるやき、ぼく、あじごはんとたべうの!」
「ぐるっとすると近くにお料理くるね、このテーブル。私もまるやきー!」
「食べたいもの自分でとって良い?」
「••••••とり。」

竜樹は、取り皿に丸焼きの焦げも香ばしい1カケと、肉汁しみたチャーハンをこんもり、盛って隣のニリヤに渡してやる。同じように逆隣のキャリコ少年に盛ってやり、自分のは適当に取って、テーブルを回してネクターとオランネージュに届かせてやる。大人は竜樹のやり方を見てふむふむ、順番を待って、ゆっくり好きに取って。
テーブル回るのが面白いのと、ご馳走が美味しいのとで、賑やかに歓談しながら、モグモグ。

チャーハンは、レンゲで。
レンゲって、小さなお口には、入りきらないけれど、陶器に脂のつやつや、あの口触りが、モグッと美味しいになる気がする。ニリヤもネクターも、オランネージュもキャリコ少年も、お口からレンゲをはみ出させて、クイッと唇に沿ってレンゲの曲線を滑らせて。
お米、お腹にたまる、ほふほふ美味しい。

「はいよ、ニリヤ、花巻半分こしよう。俺は、お肉と食べるぞー。キャリコ君、角煮にカラシはいる?ピリッとするやつ大丈夫?」

「モグ、んく、はんぶん、しゅる!」
「•••食べたことない、カラシ。」

お花のお酒、美味しかったなぁ~!
もっと飲みたいね。
あ、このクリーム煮おいしー!
あそこで掠れちゃったんだわ。
来年は新曲で!
わいわい、ガヤガヤ。

まだまだ食べられるけれど、お腹がひとまず落ち着いた頃、竜樹は椅子を引いて、金の優勝者、吟遊詩人ノートの側に寄った。椅子がないと、こちらが立っていては、恐縮されてしまいそうである。
そして、ビールでもあれば注ぎ注がれ格好がつくのだが、それは出来ないので、タカラが持ってきてくれたお茶を手に、座り話しかけた。

「ノートさん、金の優勝おめでとう!沢山食べなね。お酒が出なくて悪かったけど、お料理は頑張ってもらったからさ、何か気に入ったお料理はあった?」
「! 竜樹様!ありがとうございます。気にしないで下さいよ、お酒は喉に悪いから、俺元々少ししか飲まないんス。料理なんでも美味くって、特にエビの、辛くない方のやつ好きです!」

ニコニコとお茶を啜りながら。
「うんうん、美味しいよね、エビマヨ。吟遊詩人って、歌と酒と男と女、人生全部歌の糧にして~♪みたいなイメージあるけど、偏見だったか、そっか、お酒飲まないのか。」
「そういう奴もいますよ。酒焼けの声が渋い感じのとか。俺の声は、そういうのに向いてないし、やりたいのそっちじゃないのと、酒そこまで好きじゃないから。美味いもんのがいいです。」

「そっかそっか、俺も俺も!お酒は、ちょっと約束があって1年に1杯しか飲めないし、食べる方が好きなんだ。」
ニコニコしていた竜樹は、ぐっ、とお茶を飲むと、両手にお茶碗をぬくぬくと持って、ふ、と息を吐き、静かに切り出した。

「ねぇノートさん。賞金の金貨30枚があるからさ、•••しばらく君に、護衛を付けた方が良いかな?って、マルサ達とも話してたんだ。完全にこっちからのサービスなんだけど、何か窮屈な感じもするだろうけどさぁ。」
「護衛?」
パチン、と目を瞑って、むむ?と開いたノートは、口元に笑顔の余韻を残しつつ、はた、とした。

「あ、あぁ!そ、そうか。俺みたいな普段金持ってないような、そこら辺で歌ってる奴が金貨30枚も、なんつったら、目をつけられて街中で脅されて巻き上げられるっスよね!?そうか、そっかー!!全然、もう、嬉しいばっかりで、気にしてなかった!」
はわわ、と焦る。
周りの歌仲間達も、まぁ!あぁ!そっかー、などと、食べながらも驚いて。

「うんうん、残念な事に、そういう事もありそうだろう?護衛されながら吟遊詩人、ってのも、多分やりづらいだろうからさ、しばらくは人を付けるにしといたとして。明日のテレビとラジオ放送で、ノートさんは賞金をこのように使ったそうです!って、もう持ってない風に知らしめとく、って手も使おう。何に使った事にしとく?寄付とかもした事にすればさ、いや、その分は俺が出すから、ノートさんに無理に使い方を決めさせようじゃないけどさ。実際にお金も動かしておけば、嫉妬みたいな悪意からも、逃れられやすいかなって、思うんだよね。音楽カセットの売り上げは、徐々に入るんだろうし、どの位儲かるかは分からないんだけど、もしすっごく儲かって身の危険とかありそうなら、お金持ってるけどヘイト、憎まれる感情や、悪意から、身を守る事が出来てる先達達に話も聞けるからさ、相談してもらって。」

まじ、と竜樹を見つめるノート。
ん、ん、ん。と考え、考え。

「•••偉い人って、そこまで考えてくれるもんなんスね。有り難いです。少し考えさせて下さいね、その、賞金の使い途、なんとなーくあるんですよ。寄付も少し、俺本当にしますよ。人の嫉妬って、感情本当怖いってのもあるけど、そういうやな事ばっかで動くってより、俺も色々な人に助けられて、やってきてるんで。」

賞金全部俺の!遊びに使う!とか言わない所が、吟遊詩人ってふわふわしてる職業のように思えるけれど、やっぱりそれも偏見か。現実的でしっかりしているノートなのである。

「そっか。せっかくの賞金とかなのに、こんな話してごめんね。本当に使い途があるなら、それにこしたことないから、考えてみてね。あ、デザート来るみたい。俺ここで食べても良い?」
「「「勿論です!!」」」

歌い手達に気遣い配慮してくれる竜樹を歓迎して、そのテーブルの者達は、ニッコリ仲間に入れてくれた。
胡麻団子と杏仁豆腐、小さな月餅にまったりしたバニラアイス。

「ししょう、あまいのたべるよ。」
とことこと、ニリヤが胡麻団子の取り分け皿を手にやって来る。
お目々が半分降りてきて、疲れてるのかな、満腹だろうし、眠そうだ。
テーブルにお皿を置いて、お手てをバンザーイにして、竜樹にコアラの抱っこで懐いた。

「ニリヤも今日は頑張ったねぇ。ニリヤ賞とか、あげたんだもんねぇ。」
うん、と抱きついて背中を撫でられて。にふ、と得意そうに笑った。

「俺にも下さいましたね。メダルと一緒に、一生の記念ですよ、ニリヤ殿下。嬉しいです。」
ノートが貰ったニリヤ賞のブローチを胸に手、言えば。ニリヤは照れて、ぱふ!と竜樹の胸に顔を埋めたけれど。
「おうたが、たのしかったの!ぼくも、うれしい、です!」
とちゃんとお返事。
「照れちゃうね、ニリヤ。」
「•••へへ。」
うふふ、はは、とテーブルからも微笑ましいな、の笑い声。

モグモグ胡麻団子を食べたりしていると、何でも実現バーニー君が、ちゃっかり美味しいご馳走をお相伴、その為にお仕事一つをこの打ち上げで果たすべく。お腹も一杯になったんで、竜樹の所にやってきた。



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