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4-2 フォアード侯爵からの招待
▽▽▽
婚儀に際して、バルモア家はアデレードの一年分の生活費を持参金としてフォアード家に送った。
しかし、着いて早々、
「こちらは奥様の今月の品位保持費の予算です」
とジェームスから渡された小切手は、持参金の丁度十二等分の額だった。
毎月この額を与えられるのだという。
つまり、持参金の全てをアデレードの小遣いとして好きに使えという意味だ。
「食費や滞在費として納めて頂きたいのですが」
アデレードが困惑して言うと、
「えぇ、それは受け取りました。こちらは当家からフォアード家の細君へ宛てられた予算ですので」
ジェームスに事もなげに返された。
父とフォアード侯爵との取り決めがどのようであるのか不明だが、それをジェームスに言っても仕方ない気がして取り敢えずは受け取った。
使わずに返せばよいか、と思った部分もある。何故ならアデレードは全くお金に困っていないのだ。
バルモア家は裕福な家系だし、兄と姉が一人ずついるが、歳の離れた末っ子であるため全員がアデレードに激甘だ。
嫁いでくる時も、多額の餞別をもらってきている。
そのため品位保持費がなくとも金銭的には余裕がある。
だから、嫁いできた二日間は結婚祝いの礼状を送るのに時間を費やしたものの、その後はやることがなかったので毎日一人で市内観光に出掛けてスイーツ巡りを楽しんだ。
礼状の手配以外に「妻の務め」はあるかジェームスに尋ねてみたが、
「夜会に出席して夫婦として顔見せして頂くことです」
と返答がきた。
しかし、ペイトンとは初日以来会っていない。
毎日これほど忙しく飛び回っているのに、夜会へ出席している暇があるようには思えなかった。
そんな時間があるなら休息した方がよいのではないか。
そもそも白い結婚なのに「私達は夫婦です」と知らしめる必要があるのか。
参加しろと言われたら従うのみだが、夜会にはよい思い出がないので出来れば避けたい。
アデレードは、ペイトンがこのまま多忙を極めてくれたら良いな、と願いつつ、嫁いで来たというより気ままな旅行者気分を味わっていた。
そんな中、今夜は義父であるフォアード侯爵から晩餐に招かれ、ペイトンと二人で出掛けることになった。
王都でも屈指の名店だという。
アデレードは、普段使いのドレスでは拙いだろうと、嫁入りにあたり新調してきたドレスの中から、若草色のドレスを選んで着ることにした。裾に金糸で薔薇の刺繍が施されている。
着付けてもらうと、
「アデレード様、よくお似合いです。お若いのですからやはりこれくらい華やかなドレスでないと」
とバーサから感嘆の声が上がった。
これまではレイモンドの好みに合わせてよく言えばシンプル、悪く言えば地味な、流行から外れたドレスばかり着ていた。
新調した物は母と姉が「アデレードに似合う物を」と選んでくれた。
鏡の中の見慣れない姿を見ていると、本当の自分を取り戻した気持ちになる。
「せっかくバリバラ国に来たのだし、こっちでもドレスを新調してみようかしら?」
「それがよいですよ。この国はシルクが有名ですからね。あと、髪飾りなんかも、もっと明るい色の物をお付けになられたらいかがです?」
二人で盛り上がっているうちに、ジェームスが「そろそろお時間です」と呼びに来た。
婚儀に際して、バルモア家はアデレードの一年分の生活費を持参金としてフォアード家に送った。
しかし、着いて早々、
「こちらは奥様の今月の品位保持費の予算です」
とジェームスから渡された小切手は、持参金の丁度十二等分の額だった。
毎月この額を与えられるのだという。
つまり、持参金の全てをアデレードの小遣いとして好きに使えという意味だ。
「食費や滞在費として納めて頂きたいのですが」
アデレードが困惑して言うと、
「えぇ、それは受け取りました。こちらは当家からフォアード家の細君へ宛てられた予算ですので」
ジェームスに事もなげに返された。
父とフォアード侯爵との取り決めがどのようであるのか不明だが、それをジェームスに言っても仕方ない気がして取り敢えずは受け取った。
使わずに返せばよいか、と思った部分もある。何故ならアデレードは全くお金に困っていないのだ。
バルモア家は裕福な家系だし、兄と姉が一人ずついるが、歳の離れた末っ子であるため全員がアデレードに激甘だ。
嫁いでくる時も、多額の餞別をもらってきている。
そのため品位保持費がなくとも金銭的には余裕がある。
だから、嫁いできた二日間は結婚祝いの礼状を送るのに時間を費やしたものの、その後はやることがなかったので毎日一人で市内観光に出掛けてスイーツ巡りを楽しんだ。
礼状の手配以外に「妻の務め」はあるかジェームスに尋ねてみたが、
「夜会に出席して夫婦として顔見せして頂くことです」
と返答がきた。
しかし、ペイトンとは初日以来会っていない。
毎日これほど忙しく飛び回っているのに、夜会へ出席している暇があるようには思えなかった。
そんな時間があるなら休息した方がよいのではないか。
そもそも白い結婚なのに「私達は夫婦です」と知らしめる必要があるのか。
参加しろと言われたら従うのみだが、夜会にはよい思い出がないので出来れば避けたい。
アデレードは、ペイトンがこのまま多忙を極めてくれたら良いな、と願いつつ、嫁いで来たというより気ままな旅行者気分を味わっていた。
そんな中、今夜は義父であるフォアード侯爵から晩餐に招かれ、ペイトンと二人で出掛けることになった。
王都でも屈指の名店だという。
アデレードは、普段使いのドレスでは拙いだろうと、嫁入りにあたり新調してきたドレスの中から、若草色のドレスを選んで着ることにした。裾に金糸で薔薇の刺繍が施されている。
着付けてもらうと、
「アデレード様、よくお似合いです。お若いのですからやはりこれくらい華やかなドレスでないと」
とバーサから感嘆の声が上がった。
これまではレイモンドの好みに合わせてよく言えばシンプル、悪く言えば地味な、流行から外れたドレスばかり着ていた。
新調した物は母と姉が「アデレードに似合う物を」と選んでくれた。
鏡の中の見慣れない姿を見ていると、本当の自分を取り戻した気持ちになる。
「せっかくバリバラ国に来たのだし、こっちでもドレスを新調してみようかしら?」
「それがよいですよ。この国はシルクが有名ですからね。あと、髪飾りなんかも、もっと明るい色の物をお付けになられたらいかがです?」
二人で盛り上がっているうちに、ジェームスが「そろそろお時間です」と呼びに来た。
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