Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第627話

 敵機は拳銃を投げ捨てて急上昇。 
 一瞬、後れて無数の転移刃が何もない空間を薙ぐ。 
 それは彼女の狙い通りで、ふわわが野太刀を大きな動きで縦に振り下ろしていた。

 回避のタイミングを狙っての一撃。 
 これは通っただろとマルメルは思ったが敵機は彼の予想を軽く上回っていた。
 横回転しながら躱し、蹴りを放って野太刀を圧し折ったのだ。

 「嘘ぉー!?」

 流石のふわわも驚きを隠せないのか声を漏らす。 
 だが、敵機の動きはそれだけでは終わらない。 折れ飛んだ刃を足で蹴り飛ばしたのだ。
 当然、ふわわに向けて。 躱すと態勢が崩れるとでも判断したのか飛んで来た刃を太刀で切り払う。
 
 敵機はそのまま追撃に繋げようとしていたが、グロウモスとアリスのレーザーが飛ぶ。
 最小の動作で躱し、完全に無視をしてふわわの下へ。
 
 「俺を忘れて貰っては困るな!」

 横からモタシラが斬りかかるが敵機は精製した剣で受ける。
 モタシラは狙い通りと言わんばかりに巻き取ろうとするが何かに引っかかって止まる。
 剣の一部が凸凹になっており、そこに噛んでしまって動かないのだ。

 「ソードブレイカー……」

 次の瞬間にはモタシラは蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられた。 
 手元に呼び出した妙に銃口の大きな銃――恐らくはグレネードランチャーを無造作に構えて発射。
 ポンと何かがすっぽ抜けた音がして榴弾がモタシラへ吸い込まれるように飛んでいく。

 蹴ったと同時に追撃に発射した事もあって地面に叩きつけられた一瞬後にモタシラに直撃。
 躱しようがないタイミングだった。 軽量機体である彼に耐えられる訳もなく反応がロスト。
 その間に立て直したふわわが斬り込むべく突っ込んで行く。

 太刀と小太刀を抜き放ち、太刀による刺突から小太刀による斬撃。
 対して敵機は加速に物を言わせての後退。 

 「挟むゾ!」
 「分かってる!」

 ポンポンとアドルファスが下がった所を先回り。
 左右からエネルギーブレードで横薙ぎの一撃――はアドルファスの懐に入る事でやり過ごす。
 咄嗟に掴んで動きを封じようとしたが、それよりも早く敵機の手の平がアドルファスのコックピット部分に当てられていた。 

 「何を――」

 ズンと音がしてアドルファスの胴体に風穴が開いた。
 敵機は振り返りもせずに空いた腕をポンポンに向ける。 
 腕にはいつの間にか砲が付いており、砲口には赤々と光が灯っていた。

 「っ!?」

 咄嗟に盾を構える。 発射。
 真っ赤なエネルギーの奔流がポンポンの盾を焼くがその機能を全開にした彼女の盾は砕けない。

 ――やらせるかよ!

 ようやく、追いついたマルメルがアノマリーで援護射撃。
 せめて気を逸らせれば――敵機は砲の照射を続けながら僅かな動きで回避。
 僅かに振り返るとその肩には四角いランチャーのような物が乗っていた。

 ――ミサイル? だったら――

 その思惑ごとぶち抜いてやる。 ハンドレールキャノンのエネルギーを充填。
 敵機の発射に合わせて喰らわせてやろうと考えていたのだが、ぷしゅという空気が抜けるような音に掻き消された。 同時に衝撃。

 マルメルの機体には無数の杭のような物が突き刺さっていた。
 
 「ミサイルランチャーじゃなくてそのサイズでニードルガンとかマジかよ」

 それだけ言うので精一杯だった。 
 コックピット部分を破壊されたマルメルにはもうできる事はなく、機体は爆発すらせずに力なく崩れ降りた。

 

 ――これは不味いゾ。

 ポンポンは内心で冷や汗をかく。 敵機の新たな姿と戦闘スタイルに戦慄していた。
 これまでは必要に応じてドローンを精製し、本体は逃げに徹するスタイルだったのだが、今は必要に応じて武器を精製して自分から攻めるスタイルへと変わっていた。

 明らかに初期のコンセプトは支援機といった印象だったのだが、今は完全に全距離対応の万能機に変わっている。 
 加えて挙動も柔軟性に富んでおり完全にさっきまでとは別物だった。
 どうにか挙動を分析しているのだが、追いつかない。 見ている間に次々と味方が落とされる。

 平八郎達もそうだが、全体を見れるヨシナリが落ちたのが痛い。
 あいつが居れば突破口を抉じ開けるハードルが下がったというのに……。
 そんな弱気が顔を出すが小さく首を振って追い出す。 今ある手札でやれる事をやるのだ。

 これまでの攻防で少しではあるが相手の敵機の動きに関しては見えていた。
 同時に勝ち目が薄い事も。 この敵機に厄介な点は何をしてくるのかが分からない点だ。
 ドローンであるなら基本的に飛び道具な上、行動を起こす前に破壊すれば無力化はできる事もあって何とか処理できるレベルの相手ではあった。

 今は様々な武器を呼び出して状況に応じて使い分けてくるので、非常に厄介だ。
 制限の類も今の所、視えない事もあって突破口が見当たらないのだ。
 加えて相手の技量も突き抜けて高い。 

 あのモタシラがあっさりとやられた点からも距離を選ばない万能さが際立つ。
 敵機はマルメルを仕留めた後、即座に回避行動。 僅かに遅れてレーザー砲が複数飛んでいく。
 アリスだ。 前線が崩壊した事を察して前に出たのだろう。 タヂカラオ達が追撃し、どうにか挙動を制限しようと手数を増やしていた。

 距離の取り方も上手い。 恐らくは周囲のほぼ全員の動きを把握している。
 ふわわとは付かず離れずを維持し、落とし易い相手を見極めて数を減らしに行っている。
 ニャーコがどうにか足を止めるべく前に飛び出す。

 「ニャーコ! 無理に攻めるナ! 相手の挙動を制限する事を意識!」
 「分かったにゃ!」

 ニャーコの最大の強みは接近戦より、そのフットワークの軽さだ。
 下手に攻撃せずに相手の視界で動き回る事で選択肢を制限する事が出来れば――
 エネルギーウイングによる旋回のタイミングを完全に盗まれており、ニャーコの旋回に合わせて全く同じ速度、タイミングで先回り。

 逃げ切れないと判断したニャーコがエネルギークローを展開して仕掛けようとしたが、あっさりと躱された上に蹴りを喰らって吹き飛び、敵機は興味を失ったかのように軽い動作で手榴弾を放り投げる。
 さっきのモタシラの時の再現のように立ち上がろうとしたニャーコは手榴弾の爆発に巻き込まれて即死。

 何とか立て直したカカラが弾幕を張って逃げ場をなくそうとしているが、時間稼ぎにしかならなさそうだ。 
 
 ――どうにか、どうにかしないと……。

 ポンポンはかなり焦っていた。
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