Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第631話

 間違いなくタイミングは合っていた。 
 弾く姿もイメージできていたはずだ。 しかし、現実は彼女の想定を上回った。
 何故なら機体の胴体に向こうが視える風穴が開いていたからだ。
 
 何故?といった疑問が形になる前に機体が爆散。 脱落となった。

 
 「もういいだろ! 後は全員でやるゾ!」

 ふわわがやられたと同時にアリスとグロウモスが攻撃を開始し、ポンポンとタヂカラオが挟む。
 残っているのはポンポン、まんまる、ベリアル、グロウモス、アリスのみ。
 ヴルトム達は遠巻きで援護というポジションだが、敵のスタイル変更に伴って効果がなくなった。

 敵の動きに関してはかなりの部分が見えて来た。 得意武器は飛び道具、近接武器に関しては超人的な反応で扱っているだけで動きのクオリティはかなり落ちる。

 突破口を見出すならそこか。 タヂカラオがエネルギーリングを連射。
 応じるように敵機が拳銃で迎撃。 全てのリングを欠けさせ、効果を失わせた後に潜ってやり過ごす。 
 驚異的な対応力。 普通に考えれば勝ち目のない相手だが、無敵という訳ではない。

 まずは転移を使えない事。 
 もしかすると扱えるのかもしれないが、ふわわとユウヤとの戦いで使用せずに攻撃を喰らっている点からも使えない可能性が高い。 

 この短時間で挙動の癖はある程度は見た。 付け入る隙はある。
 
 「ポンポン君! 策があるのかな?」
 「一応はナ! どっちにしても早めに決めないと削られて終わるゾ!」

 後ろでドローンの駆除を担当していたが、人数の減少に伴って前に出たタヂカラオは信じるよと付け加えてエネルギーリングを派手にばら撒く。
 そうする事で敵機はリソースをリングの処理に割かなければならない。
 リングは飛距離に比例して広がる性質があるので、早めに処理しないと動きを封じられてしまう。

 その間にアリスが前に出てポジションを変える。 逆にまんまるはポジションを下げて砲撃に専念。
 敵の狙いを分散する意味もあるが、グロウモスと位置を変える事で敵の意識を散らす狙いもあった。

 そして残ったベリアルは短距離転移で敵機へと肉薄。 そのま接近戦を仕掛けていた。
 彼の上手い点は敵機が無力化したタヂカラオのリングを潜って真っすぐに行くところだ。
 相手のリソースを割きつつ得意の接近戦という土俵に相手を上げている。

 こうして見るとベリアルは驚くほどに周囲が見えるようになっていた。
 元々、ツェツィーリエと戦っている所を何度も見ている事もあって知ってはいたのだ。
 王は孤高だと言わんばかりの個人主義で連携という概念とは無縁で、常に自己を貫く事を徹底しているプレイヤーだった。 

 それがヨシナリと組んで『星座盤』に入る事で大きく変わっていた。
 味方を意識するようになったのだ。 こうして一緒に戦ってみるとそれがよく分かる。
 短距離転移で死角に回り、ラッシュをかける挙動は以前と同じに見えるが明らかにグロウモスやアリスの射線を意識していた。

 いつでも躱せるから遠慮せずに撃てと言わんばかりだ。
 そしてグロウモスもそんなベリアルを信用しているのか何の躊躇もなくベリアルごと射抜くような形でレーザーを放つ。 これは互いの信頼があって初めて成り立つ連携。

 ベリアルの攻撃はふわわやユウヤと違ってとにかく回転が速い。
 その為、防ぎたいのなら距離を取るか、小回りの利く武器で受けるしかない。
 敵機が選択したのは後者だ。 腕にガントレットのような物を装着してベリアルの攻撃をいなしている。
 
 反応自体は敵機の方が上、つまり普通に打ち合えばベリアルは押し負ける。
 それを補うのが短距離転移と間合いの取り方だ。 
 手数で押し切るような戦い方ではなく、転移で距離を取る事で味方の介入を用意している。 

 ポンポンとしては非常にやり易かったからだ。 爪で左右から一撃。
 敵機は左を躱して右をガントレットで受ける。 ベリアルは追撃せずに転移。
 ここで敵機の反応が僅かに遅れる。 死角に回り込んで攻撃継続か距離を取って味方の援護を誘うか。
 
 そしてシックスセンスを持っているポンポンにはベリアルが何処に転移して来るのかははっきりと視えている。 
 ただ、見てからの反応の早さでは相手が上なのでやや遅れるが、敵機は対処、ポンポン達は攻撃と行動に対する難易度が違う事もあって反応の差は補えていた。

 今回は距離を取った。 そこだとポンポンは突撃銃を連射。 
 撃ち分けも可能だが、この特殊な突撃銃はエネルギー、実弾を交互に連射する事も可能だ。
 そうする事で射撃時間を延ばす事ができる。 敵機はベリアルが距離を取った事を好機と捉えたのかポンポンの方へと向かって来た。

 そこを狙ってタヂカラオがエネルギーリングを連射し、それに混ざって前に出て来たホーコートが突っ込む。 ヴルトム達と後方で援護に徹していたのだが飛び出してきたようだ。
 想定外だが余計な事とは思わない。 少なくとも邪魔にはならないからだ。
 
 「お、俺だってやれる!」

 直線加速で肉薄したと同時にギリギリのところで右旋回。
 背後に回ろうとしていたがいつのまにか手に持っていた水平二連の散弾銃を振り返らずに肩に乗せて引き金を引く。 真後ろに来たと同時に散弾をまともに喰らって穴だらけになり、一瞬後に爆散。
 
 文字通りの瞬殺だが、彼の行動は無駄ではない。 
 敵機はホーコートを仕留める為に一手使った。
 それによってできた隙を突いてポンポンは突撃銃を連射しながら突っ込む。

 危険だがここは勝負に出る所だ。 弾が切れた頃には接近戦をしかかけられる距離。
 盾を起動。 淵にブレードが展開される。
 敵機はポンポンの動きに反応して大型のレーザーキャノンを向けた。

 充填速度を考えるとポンポンが防御するより早く撃てるタイミングだ。
 
 ――が、アリスとグロウモスの援護の方が早い。

 異なる角度から重なるように放たれたレーザーは回避コースが限られる。
 そしてこの敵機は瞬時に最適な回避コースを見極められる眼を持っている。 
 この二点を把握していれば相手の動きを読む事は可能。

 突撃銃から手を放して盾の裏に仕込んでいた拳銃を抜く。 
 強化装甲のような物で盛ってはいるがこれまでの戦闘で損傷しており、傷口が大きく開いている。
 拳銃でも充分に貫けるはずだった。
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