Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
641 / 865

第641話

 ――今の俺に足りない物は何だ?
 
 マルメルはビルの隙間を縫うように加速。 
 ここ最近は速度を落とさずに曲がったりといった訓練をしているが、最低限は形になってきていた。
 技術面ではそこそこの成長を実感できるが、それ以上に敵のインフレが激しい。

 敵機の突撃銃の連射をビルを盾にする事で防ぎながらハンドレールキャノンを展開。
 突撃銃の連射間隔を確認し、リロードに入ったと同時に発射する。
 弾体は盾にしていたビルごと敵機を撃ち抜いた。 

 小さく息を吐く。 命中精度は上がってきている。
 最近は態勢が崩れた状態でも当てられるように精度を高めていたのだが、こちらも一定の成果は出ていた。 
 だが、あの強敵相手にはそれでも足りないと感じてしまう。 

 マルメルは少し焦っていた。 
 ヨシナリもふわわも次のステージに進んでいるのに自分だけ足踏みをしているのではないか?
 聞けばこの間、ふわわがヨシナリと戦って勝ったらしい。 

 機体も大きく変わっており、装備も強化されている。 
 
 ――俺も負けていられない。
 
 そう思ってはいるのだが、何処から手を付けていいのかが分からないのだ。
 リザルトを特に確認もせずに次のランク戦に参加。 
 相手はソルジャー+、エネルギーウイング装備の高機動型。

 即座に脳裏で戦い方を組み立てる。 敵機は真っ直ぐに突っ込んで来た。
 恐らくは機動で攪乱して来る。 射程に入ったと同時に旋回に――入る前にアノマリーで移動先に撃ち込むと敵機は想定していなかったのかたたらを踏むように動きを止めた。

 そこで実弾に切り替えて連射。 敵機は即座に回避に入るが、いくつか命中する。 
 推進装置に命中したらしく、明らかに挙動がおかしい。
 敵機は身を晒した状態は不味いと判断して急降下。 

 体勢を立て直そうと狙うが、相手が視界から消えたと同時にハンドレールキャノンをチャージ。
 射撃精度に差があると判断したのかこちらの死角を突こうとビルを盾にして回り込もうとしているが、このマップのビルの配置はほぼ頭に入っている。

 すっと狙いを付けて発射。 弾体は狙いを過たずに敵機をあっさりと射抜く。

 「その辺はビルが詰まってて隙間が細いんだよなぁ……」

 通るルートが制限されると自然と減速してしまう。 そこを一刺しだ。
 試合終了。 リザルト画面が表示される。 
 無視して消そうとしたが、昇格の二文字が現れたので思わず手を止めた。

 いつの間にかCランクに上がっていたようだ。 

 「次でBか」

 小さく呟く。 
 始めた当初であったならこれでPが定期的に貰えるぜラッキーぐらいの感想だったが、今はジェネシスフレーム獲得までどれぐらい稼げばいいだろうとしか考えられない。
 
 ハンドレールキャノンの扱いに関しては我ながら慣れて来たと思っていた。
 左右での使い分けも形になっている。 右利きという事もあって左はやや精度が落ちるが、そもそも右を外した時の二の矢として使う事が多いので、そこまで大きな問題ではない。

 必要なのは新しい武器だ。 今ある武器を磨くにしても限度があった。
 ヨシナリは時間をかけて長所を伸ばす事の重要性を教えてくれたが、伸びしろがなくなってきた以上は新しい何かに手を出すべきだとマルメルは考えていた。

 その一環としてシニフィエに教えを乞うたのだが、対応力を上げる一助になっただけでマルメルの望む成長には繋がらない。 

 「……そうなるとヨシナリの真似でもしてみるか?」

 果たして自分のコミュ力でそれができるのかは怪しいが、縁だけは繋がっているのだ。
 やるだけはやってみるべきだろう。 
 そう考えてマルメルはメッセージを送る為の作成メニューを呼び出した。

 
 『こ、こんなのどうすりゃいいんだよ!?』

 一人のプレイヤーの嘆きがフィールドに響き渡り、その一瞬後には機体ごと両断された。
 ふわわは特に何も考えずに無言で次のマッチングを開始。
 考えるのはあの戦いの結果。 惨敗だった。 

 何かを掴み、新しい境地に至った手応えもあったが、まだまだ足りていないと即座に思い知らされる。
 面白い。 このゲームは本当に面白い。 上には上がいる。
 打倒すべき壁、障害が無数に存在するのは彼女にとって歓迎するべき事柄だった。

 新しく得た装備は非常に有用だ。 そして自分はまだこれを使いこなしていない。
 差し当たっては今の装備に慣れる所からだろう。 
 ついでに個人ランクを上げればいいとランク戦に潜っていたのだが、歯応えのある相手が居ない。

 最近、実装されたフリーのランク戦を活用して高ランクプレイヤーとの戦いを期待していたのだが、文字通りのランダムなので格下と当たる事も多かった。
 それでも早い段階でBランク以上のプレイヤーとランク戦ができるのはありがたい。

 歯応えがある上、貰えるポイントも多くランクアップまでの時間も短縮できる。
 何なら次のアップデートの時に同格以上としか当たらないフィルタリング機能でも付けてくれれば尚いいとさえ思っていたぐらいだ。

 強化装甲『ハクサンゴンゲン』のお陰で性能としては大きく向上したが、ソルジャーフレームではここが限界だろう。 
 Aに上がるまではこの機体で戦い抜くしかない。 
 並のランカー相手なら充分に勝てるといった自負はあるが、ベリアルやユウヤのような上位のプレイヤー相手はまだまだ厳しい面も多い。

 その為にもっと力を付けなければならない。 もっと強くならなければならない。
 しばらくゲームから離れ、自らの剣と向き合った結果はこの仮想の世界であっても効果は如実に表れていた。
 相手の殺気のみに頼るな。 もっともっと相手の動きに対する解像度を上げろ。
 
 そうすれば相手が動く前にその挙動を捉えられるはずだ。 
 試合が始まる。 相手はCランクのキマイラ+。 
 こちらの姿を認め、装備構成から距離を取るべきと判断して開始と同時に急上昇。

 ふわわは特に動揺もせずに野太刀を鞘ごと外して刺突の構え。
 敵機がこちらの状況を確認しようと減速したと同時に解放。 
 彼女の神速の突きは鞘の電磁加速との相乗効果を経てそれ自体を巨大な弾丸と化す。

 バチバチと鋭くスパークする音が響き。 鞘が消えた。
 次の瞬間、敵機は鞘に射抜かれて胴体に文字通りの風穴が開く。
 何が起こったのか分からないといった様子でふわわを見ていた敵機がやがて爆散。

 試合終了となった。 

 「そろそろAランクとバチバチに戦りたいなぁ……」

 リザルト画面を見ながらふわわはそう小さく呟いた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。