Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
644 / 865

第644話

 完全にすっぽりと覆われており、全容は見えないが闇の中から薄く輝くカメラアイが不気味だった。
 一瞬、キマイラかとも思ったがシルエット的に違うと判断。
 間違いなくジェネシスフレームだ。 

 ――センサー系に引っかからないのはあのひらひらした被り物の所為か?

 詳細は不明だが、ステルスマント、ステルスコートといった探知を無効化する装備が存在するのでその類だろう。 居場所を割った以上は何の関係もない。 
 隠密に特化した機体である以上、耐弾性能は余り高くないはずだ。
 アトルムをバースト射撃。 敵機は音もなくゆらりとした動きでビルの陰に入って躱す。
 
 ヨシナリはちらりとシックスセンスの観測結果を確認。 敵機の姿は観測できない。
 正確には動体は見えているが、それ以外は上手に隠れていた。
 隠密系の比較対象はグロウモスやフカヤだったのだが、あの二人の場合は何らかの装置を使用する事で気配を隠している。 

 それが何を意味するのかというと姿を隠し続ける事は少なからずジェネレーター出力を圧迫しており、発見されれば使い続ける事はリスクでしかない。
 
 ――にも関わらずこの敵機は使い続けている。

 それが意味している事は隠密効果がノーリスクで使用できるパッシブか、使い続けなければ何らかの不都合があるのかのどちらかだ。
 手持ちの情報ではどちらかの判断が付かない。 もう少し観察が必要だ。

 攻撃手段はワイヤー付きのアンカーとレールガン。 
 以前のグロウモスと同じで気配を消して一刺しを狙うタイプかとも思ったが、動きから発見された事による焦りの類を感じない。 

 寧ろ発見させて誘い込もうとしているような意図すら感じる。 
 やり難い相手だ。 これまでに戦ったどのプレイヤーとも類似点が見当たらない。
 
 『テクニカル。 判断が早い』

 不意に通信に声が入る。 幼さが残る少女のような声だ。
 挙動から陰を含んでいるような印象だったが、機体の動きとは裏腹に声には自信が感じられる。
 フランスのSランクと似た年頃だろうか? 声が幼いからと油断はしない。

 「そりゃどうも」

 イラをマウントしながら銃撃で牽制しつつアトルムをホルスターに戻してアシンメトリーに切り替える。
 敵機が影から出てきていない事を確認してチャージショット。 
 高出力のエネルギー弾が建物を貫通するが、手応えがない。

 動体センサーに反応。 背後だ。 回り込まれた? いつの間に?
 疑問はあるが、反応せざるを得ない。 上昇しながら振り向いて射撃。
 放ったエネルギー弾は敵機らしき物の頭部を過たずに射抜いたが、額に風穴を開けられた状態にも関わらず敵機はゆらりとした動きでまたビルの陰へ。

 『プラクティカル。 大当たりだ』

 また背後から動体反応。 アンカーが飛んでくる。
 それは一回見た。 引き付けた後に旋回で躱し、アンカーが重なった所を纏めて撃ち抜く。
 ワイヤーは固いがアンカー本体はそこまでではないようだ。 直接当てればどうにでもなる。
 
 ――執拗にアンカーで拘束を狙って来るな?

 動きを止めたいという事は当て辛い大砲を隠し持っている?
 いや、さっきのレールガンで充分か。 

 ――あぁ、余り良くないな。

 変に思考する為の余裕がある分、余計な事を考えてしまう。
 アンカーの出所を見ると同じデザインの機体が音もなくまたビルの陰へ。
 鬱陶しいが、また一つはっきりした。 敵機は複数いる。
 
 分身しているのか、ドローンなどを用いて複数いるように見せているか。
 ヨシナリの感覚としては後者の可能性が高い。 特にあのひらひらした被り物が怪しいかった。
 輪郭がはっきりしないのは中にドローンしか入っていないから撃ち抜いても手応えがなかったと考えれば説明が付くからだ。

 ――だったら分身を全部潰してしまえば本体が出張らざるを得ないよなぁ!

 動体反応を検知。 即座にアシンメトリーで撃ち抜く。
 胴体らしき部分に命中。 例によって手応えがなく、敵機は構わずにアンカーを飛ばしてくる。
 引き付けて急加速で正面突破。 スラスターで微調整はしているが、急な動きの変調に付いて来れていない。 明らかに自動操作だ。

 恐らくはロックオンした場所を狙って自動で飛んでいくようにできているのだろう。
 ビルの陰に入る前に敵機の首を掴むが手応えが全くない。 
 裾を掴んでめくり上げると中身は空で球状のドローン三基が頭部、胴体二か所を押し上げる事で形を作っているだけだった。 

 内、胴体部分を担当している二基にはアンカーが内蔵されていたが、残り一基には何もない。

 『テクニカル。 女性の服を剥ぎ取るなんて嫌らしい男だな』
 
 何とでも言えと思いながら無装備のドローンを掴んで握り潰すと、残りの二基は制御を失って落下。
 なるほど。 三基でワンセットという訳か。
 
 『ジャッカル。 バレてしまっては仕方がないな。 ここからは少し乱暴に行こう』

 そんな声と同時にヨシナリを包囲するように動体反応が――九つ。
 
 「多いな!」

 あちこちから同じデザインの機体――に偽装したドローン群が現れる。
 そこでヨシナリの脳裏に理解が広がった。 
 どうやらこいつはさっきまでせっせとドローンを撒いていたようだ。

 九機全てがアンカーを同時発射。 躱すなら上だ。
 反射的に上昇しかけてぐっと踏みとどまる。 何故ならここまで周到に準備している奴が、こんな分かり易い逃げ道を残すかといった疑問があったからだ。

 ――相手の思考を上回らないと手玉に取られて終わる。

 ここは上ではなく突破を狙う。 ヨシナリは上ではなく下に活路を見出すべく降下。
 地面スレスレを這うように飛んでアンカーを躱す。 

 『ロジカル! 冷静だな。 だが、まだまだ甘い』

 上から更に無数の動体反応。 数は二十以上。 
 射出されたアンカーだ。 ちらりと空を見上げると夜空から滲み出るように無数の敵機が湧いてくる。
 
 「やっぱり上に伏せてやがったか」 

 全部で十。 地上より多く配置している時点で上に逃げるように誘導していたのは明らかだ。
 
 『ティピカル。 そろそろ詰みだ』

 不意に通り過ぎようとしてビルが破壊され、中から敵機が飛び出してきた。
 咄嗟に反撃しようとしたが、上と周囲からアンカーが飛んできている状況でまともに身動きが取れない。 
 明らかに目の前の敵機が本体だ。 

 中身がスカスカのドローンではビルを突き破るなんて真似は不可能。
 つまりあの機体には中身が詰まっている。 
 本来なら待ってましたと迎撃したいところだが、状況がそれを許してくれなかった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。