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第646話
ホロスコープの全身がエーテルで覆われ、出力が跳ね上がる。
エネルギーウイングと推力偏向ノズルがエーテルに染め上げられた黒い光を吐き出して唸りを上げた。
ヨシナリはイラを抜くとギミックを起動して全力で振り回す。
元々、パワー不足で切断に時間がかかっていたのだ。
出力を上げて強引に底上げしてしまえば突破自体はどうにでもなる。
さっきまでの抵抗が嘘のようにワイヤーの結界はイラの回転刃による切断力に抗う事は敵わず次々と引き千切れていく。
『ヒステリカル!? この包囲を抉じ開けるか!?』
アイロニカルの驚愕が聞こえるが無視。
さっきまでで情報はある程度、出揃ってるんだよ。
まだ何かを隠しているとは思うが、小細工を使う前にご自慢の包囲網をズタズタにしてやる。
どんな策も前提さえ崩せば無意味だろうが。
そんな乱暴な思考をしながらヨシナリようやく手に入れた安全地帯で直立し、イラを地面に突き立てるとアシンメトリーで本体をチャージショットで狙う。
エーテルを喰らったアシンメトリーから放たれる漆黒のエーテル弾はアイロニカルの機体を捉えはしたが流石にランカー。 簡単には直撃してくれない。
肩の辺りに当たったらしく、大きく抉れている。 これは不味いと思ったのかビルの陰へと飛び込む。
その隙にアトルムとクルックスに持ち替えて周囲にいるダミー機に片端から銃弾を撃ち込む。
エネルギー弾はコーティングが施されているのか効きが悪く、実体弾を用いて連射。
あのダミーは布切れのような物を三基のドローンが内部を押し上げて動かしており、頭部部分に入っている物を起点に三角になるように移動する。
要は頭部、両肩だ。
それで形ができる上、肩に付いているスリット部分からアンカーを飛ばす事もできる。
三つでワンセットである以上、全てを無線で操る必要はない。
間違いなく、頭部の一基だけを操って残り二つはそれに追従しているだけ。
つまり頭部のドローンを破壊すれば纏めて使い物にならなくなる。
――あの布切れの所為でセンサー系にはほぼ映らないが、目視で場所は分かるんだよ。
そこを撃ち抜けば一発だ。 ダミーの数は合計で二十。
合計で六十基のドローンを操っている点は驚異的ともいえるが、こうして本体を追い込んでやれば動きが悪くなる。 後は棒立ちになった所を狙い撃ちだ。
次々とダミー機を沈める。
瞬く間に半数まで減らした所で不味いと判断したのか、本体が出て来た。
ビルを突き破っての奇襲ではなく、ビルをよじ登っての真上からの強襲だ。
いきなり視界に現れる事で意表を突いたのだろうが、充分に想定内。
体当たりを喰らった際に見た目以上に出力が高く、重量がある事も分かっている。
地面に突き立てたイラを引き抜いてハンマーへと変形。
――叩き潰してやる。
四つ足の獣にしては低い姿勢に長い指。
被り物の所為で詳細なデザインは不明だが、ここまで情報が出れば大雑把だが見えてくる。
こいつの正体はモグラに近い。 地中に潜れるのかは不明だが、デザインモチーフという点では大きく外していない自信があった。
移動時に音がしないのはホバー移動。
飛行は出来なくはないだろうが、重量を考えるとあまり考慮はしていない印象を受ける。
恐らくダミー機を飛ばす事はそれを誤魔化す意味合いもあったのかもしれない。
右腕は潰している以上、接近戦を仕掛けるのなら左――
「そうきたか」
アイロニカルは引き千切ったであろう腕を加えており、首を大きく振って投擲。
指先のアンプルを見れば何らかの薬液が充填されているのは分かっている。
叩き潰すのは論外。 先端に当てないように打ち払うと本体への対処が一手遅れる。
一番いいのは使えるようになった機動力を活かしての回避。
アイロニカルの機体はお世辞にも機敏とは言えない。
スピード勝負に持ち込めばかなり有利のはずだ。
だが、これまでの行動傾向から何らかの罠を張っている可能性もなくはない。
迷う。 勝負を受けるか避けるか。
「は、ここはビビる所じゃねぇよなぁ!」
マルメル達に散々逃げるなとか言っておいて自分が逃げるなんてありえないだろう。
それにここで逃げたら負けと同じだとも思ってしまった。
――勝負一択だ。
『フィジカル! そういうのは嫌いじゃない! 勝負だ!』
ヨシナリは飛んで来た腕をハンマーで打ち払い。 遠くへ飛ばす。
本音を言うなら上手に打ち返してピッチャー返しをお見舞いしてやりたかったが、できる自信はなかった。 時間がある時にでも練習しておくべきかと思いつつ次への対処だ。
アイロニカルは残った左腕を大きく振り被って上から引き裂くように振り下ろす。
それをギリギリまで引き付けて左に上半身を傾けて躱しつつ、推進装置を噴かして後退。
『テクニカル!? この精度で躱すのか!?』
舐めるな。 ベリアルのラッシュに比べればお前の攻撃なんて止まって見えるぞ。
傾けた上体を更に倒しながら推進装置を噴かして横回転。
右の推力偏向ノズルの出力だけを上げると自然と足が蹴りの軌跡を描き、吸い込まれるようにアイロニカルの脇腹に深々と食い込む。
――厄介な相手だったが、種が割れればチープなトリックだったな。
結局、あの怪しい薬液は何だったんだろうかという疑問はあるが倒してしまえば何の問題もない。
気になるのなら後で映像を確認して検証すればいいだけの話だ。
足に仕込んだクレイモアを起爆――と同時にアイロニカルの右腕がヨシナリの肩を掴み、その針が機体に突き刺さる。
流石にこれは想定できなかったヨシナリは驚きに目を見開く。
あの腕はホログラムか何かで作ったダミー? いや、あり得ない。
打ち払った感触は確かに本物だ。 なら隠し腕か何かか?
胴体がやや長いので格納スペースぐらいはあるかもしれない。
そんな事よりも不味い。 何か入れられる。 いや、それ以前にクレイモアは完璧に入った。
先に仕留められる。 違う。 相手の反応はまだ死んでない。
何らかの手段で即死を免れてる。 無数のエラーメッセージがポップアップ。
フレームに重大なダメージ。
流し込まれている薬液の正体が分かった。 グロウモスも使っている腐食液だ。
パンドラを使って脆くなったフレームにそんな物を流し込まれればひとたまりもない。
こうなった以上は小細工は無意味。
ヨシナリは殺られる前に殺ればいいんだろうがと胸部の給排気口にエーテルを集中。
一発撃てればいい。 どうやって腕を生やしたのかは知らんが跡形もなく消し飛ばしてやる。
エネルギーウイングと推力偏向ノズルがエーテルに染め上げられた黒い光を吐き出して唸りを上げた。
ヨシナリはイラを抜くとギミックを起動して全力で振り回す。
元々、パワー不足で切断に時間がかかっていたのだ。
出力を上げて強引に底上げしてしまえば突破自体はどうにでもなる。
さっきまでの抵抗が嘘のようにワイヤーの結界はイラの回転刃による切断力に抗う事は敵わず次々と引き千切れていく。
『ヒステリカル!? この包囲を抉じ開けるか!?』
アイロニカルの驚愕が聞こえるが無視。
さっきまでで情報はある程度、出揃ってるんだよ。
まだ何かを隠しているとは思うが、小細工を使う前にご自慢の包囲網をズタズタにしてやる。
どんな策も前提さえ崩せば無意味だろうが。
そんな乱暴な思考をしながらヨシナリようやく手に入れた安全地帯で直立し、イラを地面に突き立てるとアシンメトリーで本体をチャージショットで狙う。
エーテルを喰らったアシンメトリーから放たれる漆黒のエーテル弾はアイロニカルの機体を捉えはしたが流石にランカー。 簡単には直撃してくれない。
肩の辺りに当たったらしく、大きく抉れている。 これは不味いと思ったのかビルの陰へと飛び込む。
その隙にアトルムとクルックスに持ち替えて周囲にいるダミー機に片端から銃弾を撃ち込む。
エネルギー弾はコーティングが施されているのか効きが悪く、実体弾を用いて連射。
あのダミーは布切れのような物を三基のドローンが内部を押し上げて動かしており、頭部部分に入っている物を起点に三角になるように移動する。
要は頭部、両肩だ。
それで形ができる上、肩に付いているスリット部分からアンカーを飛ばす事もできる。
三つでワンセットである以上、全てを無線で操る必要はない。
間違いなく、頭部の一基だけを操って残り二つはそれに追従しているだけ。
つまり頭部のドローンを破壊すれば纏めて使い物にならなくなる。
――あの布切れの所為でセンサー系にはほぼ映らないが、目視で場所は分かるんだよ。
そこを撃ち抜けば一発だ。 ダミーの数は合計で二十。
合計で六十基のドローンを操っている点は驚異的ともいえるが、こうして本体を追い込んでやれば動きが悪くなる。 後は棒立ちになった所を狙い撃ちだ。
次々とダミー機を沈める。
瞬く間に半数まで減らした所で不味いと判断したのか、本体が出て来た。
ビルを突き破っての奇襲ではなく、ビルをよじ登っての真上からの強襲だ。
いきなり視界に現れる事で意表を突いたのだろうが、充分に想定内。
体当たりを喰らった際に見た目以上に出力が高く、重量がある事も分かっている。
地面に突き立てたイラを引き抜いてハンマーへと変形。
――叩き潰してやる。
四つ足の獣にしては低い姿勢に長い指。
被り物の所為で詳細なデザインは不明だが、ここまで情報が出れば大雑把だが見えてくる。
こいつの正体はモグラに近い。 地中に潜れるのかは不明だが、デザインモチーフという点では大きく外していない自信があった。
移動時に音がしないのはホバー移動。
飛行は出来なくはないだろうが、重量を考えるとあまり考慮はしていない印象を受ける。
恐らくダミー機を飛ばす事はそれを誤魔化す意味合いもあったのかもしれない。
右腕は潰している以上、接近戦を仕掛けるのなら左――
「そうきたか」
アイロニカルは引き千切ったであろう腕を加えており、首を大きく振って投擲。
指先のアンプルを見れば何らかの薬液が充填されているのは分かっている。
叩き潰すのは論外。 先端に当てないように打ち払うと本体への対処が一手遅れる。
一番いいのは使えるようになった機動力を活かしての回避。
アイロニカルの機体はお世辞にも機敏とは言えない。
スピード勝負に持ち込めばかなり有利のはずだ。
だが、これまでの行動傾向から何らかの罠を張っている可能性もなくはない。
迷う。 勝負を受けるか避けるか。
「は、ここはビビる所じゃねぇよなぁ!」
マルメル達に散々逃げるなとか言っておいて自分が逃げるなんてありえないだろう。
それにここで逃げたら負けと同じだとも思ってしまった。
――勝負一択だ。
『フィジカル! そういうのは嫌いじゃない! 勝負だ!』
ヨシナリは飛んで来た腕をハンマーで打ち払い。 遠くへ飛ばす。
本音を言うなら上手に打ち返してピッチャー返しをお見舞いしてやりたかったが、できる自信はなかった。 時間がある時にでも練習しておくべきかと思いつつ次への対処だ。
アイロニカルは残った左腕を大きく振り被って上から引き裂くように振り下ろす。
それをギリギリまで引き付けて左に上半身を傾けて躱しつつ、推進装置を噴かして後退。
『テクニカル!? この精度で躱すのか!?』
舐めるな。 ベリアルのラッシュに比べればお前の攻撃なんて止まって見えるぞ。
傾けた上体を更に倒しながら推進装置を噴かして横回転。
右の推力偏向ノズルの出力だけを上げると自然と足が蹴りの軌跡を描き、吸い込まれるようにアイロニカルの脇腹に深々と食い込む。
――厄介な相手だったが、種が割れればチープなトリックだったな。
結局、あの怪しい薬液は何だったんだろうかという疑問はあるが倒してしまえば何の問題もない。
気になるのなら後で映像を確認して検証すればいいだけの話だ。
足に仕込んだクレイモアを起爆――と同時にアイロニカルの右腕がヨシナリの肩を掴み、その針が機体に突き刺さる。
流石にこれは想定できなかったヨシナリは驚きに目を見開く。
あの腕はホログラムか何かで作ったダミー? いや、あり得ない。
打ち払った感触は確かに本物だ。 なら隠し腕か何かか?
胴体がやや長いので格納スペースぐらいはあるかもしれない。
そんな事よりも不味い。 何か入れられる。 いや、それ以前にクレイモアは完璧に入った。
先に仕留められる。 違う。 相手の反応はまだ死んでない。
何らかの手段で即死を免れてる。 無数のエラーメッセージがポップアップ。
フレームに重大なダメージ。
流し込まれている薬液の正体が分かった。 グロウモスも使っている腐食液だ。
パンドラを使って脆くなったフレームにそんな物を流し込まれればひとたまりもない。
こうなった以上は小細工は無意味。
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