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第650話
視覚と聴覚にのみ影響が出ているのは奇妙だ。
機体のステータスにも異常は見られない。
『――愛を貴方に――』『――愛を貴方に――』『――愛を貴方に――』
『――愛を貴方に――』『――愛を貴方に――』『――愛を貴方に――』
――何だこりゃ?
どうやら聞こえる全ての音声がこの女の声に変わるようだ。
透き通るような綺麗な声ではあるが、いくつも重なれば耳障りなノイズでしかない。
頼りになるのはレーダー表示だけだ。 ちらりと確認すると味方の数が減り始めた。
攻撃を受けているのは分かるが、これは非常に不味い状況だ。
しかもふざけた事に攻撃エフェクト――要は視覚にかけられたマスキングの所為で何をされているのかが分からない。 あくまでマスキングなので、位置関係は変わらないのがせめてもの温情か。
だが、これはどうすればいいんだ? 何をされているのかも分からない。
攻撃の正体が――不意に一機の味方機のマスキングが剥がれたのだ。
見間違えるはずもないその姿はベリアルのプセウドテイ。
『実像を歪ませ、虚構を見せる。 貴様の小賢しい幻覚がいつまでもこの闇の王に通用すると思わない事だな!』
プセウドテイの表面を覆うエーテルの装甲が僅かに瞬き、火花のような物が散る。
それを見てヨシナリは敵機の攻撃の正体を悟った。
「そういう事かよ!」
ヨシナリもエーテルの鎧を展開し、ホロスコープの表面を削るように被せる。
それにより装甲表面に付着した何かが擦り潰され小規模な爆発が無数に発生し、火花が散るようなエフェクトが発生。
ベリアルの姿を見て気が付いたプレイヤー達がその僅かなヒントで突破口を見出したのか、一部の機体が周囲に向けて小規模のEMP攻撃――電磁パルスを撒き散らす。
それによりセンサー系に僅かなノイズが走るが、視界と聴覚が回復。
「な、なんだ!? 何が起こったんだ?」
仲間の状態をチェック。
マルメルは慌てた声を漏らし、ふわわは恐ろしい事にあの状態で逆に敵を撃破し続けていた。
グロウモスは距離があるので不明ではあるが、健在ではあるようだ。
ホーコートは地面に伏せていた。 彼なりに危機をやり過ごそうとしたのかもしれない。
シニフィエもふわわと同様に既に敵機を叩き潰している。 あの姉妹は一体何なんだ?
ユウヤは苛立ちを感じられる動きで敵機を散弾砲で穴だらけにしている。
ベリアルは真っ先に復帰しただけあって既に敵と交戦に入っていた。
全員が無事だった事に内心でほっと胸を撫で下ろしつつ、エーテルの鎧を解除し、ぱらぱらと粉のような物が機体の表面から剥がれ落ちる。
それを手の平で受け止めると拡大。
灰にしか見えないが、よくよく見ると小さな虫のような形状をしている。
ナノマシンだ。 機体の表面に張り付いたこいつ等は内部に欺瞞データを送り込んで映像、音声の一部をマスキングしたという訳だ。
しかも巧妙なのは機体ではなく、アバターをターゲットにしている点だ。
だからいくら機体をチェックしても異常が検出されず、何をされたのかが分からない。
この攻撃の肝はナノマシンを敵陣へ散布しなければならない点にある。
いつの間にと思うかもしれないが、初手の気象兵器による竜巻。
あれで戦場全域にナノマシンをばら撒いたのだ。
つまりはあの竜巻や雷雲はこれをばら撒く為の布石だった。
流石にここまで派手な欺瞞工作は想定できなかったが、種さえ割れれば防ぐ事は可能だ。
――というよりはもう使えないだろうな。
あれだけ大掛かりな準備が必要なのだ。 次を許す程、日本側のプレイヤーも甘くはない。
初手で少し減らされたがリカバリが早かった為、被害はそこまで大きくはなかった。
巻き返しは充分に可能だ。
突っ込んで来たソルジャータイプの斬撃を引き付けて旋回で躱しながら背後を取るとアトルムで一撃。
――さて、どうするか。
そう自問するがやる事はほぼ決まっていた。
「なぁ、さっきの幻覚使ってきた奴、どれか特定したんだけどリベンジ行きたい人居ます?」
例の幻覚攻撃を使用する前に異常な観測値を示していた機体が居たのだ。
そして現在地もしっかりと特定できている。 また似たような事をされても迷惑なので早めに消しておこうとヨシナリはそんな提案を口にした。
「どいつだ? ぶち殺してやる」
「ふ、欺瞞を戦場に撒き散らす惑乱の主、奴にはその力がこの闇の王に及ばない所を見せつけるべきだろう」
やや声に怒気の混ざったユウヤと平常運転のベリアルが真っ先に名乗りを上げた。
「えぇやん。 ウチも賛成かなー?」
「や、いいんですけど、またSランクとかだったら他に押し付けて弱った所を狙いましょうよ」
やる気満々のふわわとやや消極的なシニフィエ、ホーコートは発言権がないとでも思っているのか「お任せします」とだけ口にし、マルメルは小さく肩を竦め――
「やってやろうぜ」
そう一言。 満場一致で行くべき場所は決まった。
シニフィエが私は完全に同意してないんですけどーと主張していたが、全員が無視した。
センサーシステムをリンクしているマルメル達の機体にマップ表示にある敵を一機マーキング。
「こいつで間違いない。 例の幻覚が発動する前にかなり大出力の通信――恐らくはナノマシンに対しての専用のコマンドを送信していたと思う」
「こいつか。 そんなに離れてねぇな」
ユウヤはぶっ殺してやると放たれた矢のように飛び出していった。
ベリアルは楽し気に笑うとその背を追いかける。 恐らくはフォローに回るつもりなのだろう。
「ヨシナリ! お前も先行け! こっちも直ぐに追いつくからよ!」
ヨシナリ達の機体とマルメル達の機体――ソルジャータイプではどうしても速度差が出る事もあって足並みを揃えると遅くなってしまう。
ユウヤ達が先行したのは逃げられる可能性を考慮しての事だ。
実際、ターゲットの機体は後退を始め、戦場から離脱しようとしていた。
「分かった。 悪いが早めに頼む!」
そう言ってヨシナリは機体を変形させると推進装置を全開にして二人の後を追った。
戦場を切り裂くように飛び、敵機を障害物として捌き、時には躱してターゲットの下へ。
そろそろ敵を射程内に捉える頃には既に二人は戦闘へと突入していた。
――というか敵のど真ん中なんだよなぁ。
敵陣のかなり深い位置なので内心でマルメル達に早く来てくれよと祈りながら機体を変形させ、戦闘に参加した。
機体のステータスにも異常は見られない。
『――愛を貴方に――』『――愛を貴方に――』『――愛を貴方に――』
『――愛を貴方に――』『――愛を貴方に――』『――愛を貴方に――』
――何だこりゃ?
どうやら聞こえる全ての音声がこの女の声に変わるようだ。
透き通るような綺麗な声ではあるが、いくつも重なれば耳障りなノイズでしかない。
頼りになるのはレーダー表示だけだ。 ちらりと確認すると味方の数が減り始めた。
攻撃を受けているのは分かるが、これは非常に不味い状況だ。
しかもふざけた事に攻撃エフェクト――要は視覚にかけられたマスキングの所為で何をされているのかが分からない。 あくまでマスキングなので、位置関係は変わらないのがせめてもの温情か。
だが、これはどうすればいいんだ? 何をされているのかも分からない。
攻撃の正体が――不意に一機の味方機のマスキングが剥がれたのだ。
見間違えるはずもないその姿はベリアルのプセウドテイ。
『実像を歪ませ、虚構を見せる。 貴様の小賢しい幻覚がいつまでもこの闇の王に通用すると思わない事だな!』
プセウドテイの表面を覆うエーテルの装甲が僅かに瞬き、火花のような物が散る。
それを見てヨシナリは敵機の攻撃の正体を悟った。
「そういう事かよ!」
ヨシナリもエーテルの鎧を展開し、ホロスコープの表面を削るように被せる。
それにより装甲表面に付着した何かが擦り潰され小規模な爆発が無数に発生し、火花が散るようなエフェクトが発生。
ベリアルの姿を見て気が付いたプレイヤー達がその僅かなヒントで突破口を見出したのか、一部の機体が周囲に向けて小規模のEMP攻撃――電磁パルスを撒き散らす。
それによりセンサー系に僅かなノイズが走るが、視界と聴覚が回復。
「な、なんだ!? 何が起こったんだ?」
仲間の状態をチェック。
マルメルは慌てた声を漏らし、ふわわは恐ろしい事にあの状態で逆に敵を撃破し続けていた。
グロウモスは距離があるので不明ではあるが、健在ではあるようだ。
ホーコートは地面に伏せていた。 彼なりに危機をやり過ごそうとしたのかもしれない。
シニフィエもふわわと同様に既に敵機を叩き潰している。 あの姉妹は一体何なんだ?
ユウヤは苛立ちを感じられる動きで敵機を散弾砲で穴だらけにしている。
ベリアルは真っ先に復帰しただけあって既に敵と交戦に入っていた。
全員が無事だった事に内心でほっと胸を撫で下ろしつつ、エーテルの鎧を解除し、ぱらぱらと粉のような物が機体の表面から剥がれ落ちる。
それを手の平で受け止めると拡大。
灰にしか見えないが、よくよく見ると小さな虫のような形状をしている。
ナノマシンだ。 機体の表面に張り付いたこいつ等は内部に欺瞞データを送り込んで映像、音声の一部をマスキングしたという訳だ。
しかも巧妙なのは機体ではなく、アバターをターゲットにしている点だ。
だからいくら機体をチェックしても異常が検出されず、何をされたのかが分からない。
この攻撃の肝はナノマシンを敵陣へ散布しなければならない点にある。
いつの間にと思うかもしれないが、初手の気象兵器による竜巻。
あれで戦場全域にナノマシンをばら撒いたのだ。
つまりはあの竜巻や雷雲はこれをばら撒く為の布石だった。
流石にここまで派手な欺瞞工作は想定できなかったが、種さえ割れれば防ぐ事は可能だ。
――というよりはもう使えないだろうな。
あれだけ大掛かりな準備が必要なのだ。 次を許す程、日本側のプレイヤーも甘くはない。
初手で少し減らされたがリカバリが早かった為、被害はそこまで大きくはなかった。
巻き返しは充分に可能だ。
突っ込んで来たソルジャータイプの斬撃を引き付けて旋回で躱しながら背後を取るとアトルムで一撃。
――さて、どうするか。
そう自問するがやる事はほぼ決まっていた。
「なぁ、さっきの幻覚使ってきた奴、どれか特定したんだけどリベンジ行きたい人居ます?」
例の幻覚攻撃を使用する前に異常な観測値を示していた機体が居たのだ。
そして現在地もしっかりと特定できている。 また似たような事をされても迷惑なので早めに消しておこうとヨシナリはそんな提案を口にした。
「どいつだ? ぶち殺してやる」
「ふ、欺瞞を戦場に撒き散らす惑乱の主、奴にはその力がこの闇の王に及ばない所を見せつけるべきだろう」
やや声に怒気の混ざったユウヤと平常運転のベリアルが真っ先に名乗りを上げた。
「えぇやん。 ウチも賛成かなー?」
「や、いいんですけど、またSランクとかだったら他に押し付けて弱った所を狙いましょうよ」
やる気満々のふわわとやや消極的なシニフィエ、ホーコートは発言権がないとでも思っているのか「お任せします」とだけ口にし、マルメルは小さく肩を竦め――
「やってやろうぜ」
そう一言。 満場一致で行くべき場所は決まった。
シニフィエが私は完全に同意してないんですけどーと主張していたが、全員が無視した。
センサーシステムをリンクしているマルメル達の機体にマップ表示にある敵を一機マーキング。
「こいつで間違いない。 例の幻覚が発動する前にかなり大出力の通信――恐らくはナノマシンに対しての専用のコマンドを送信していたと思う」
「こいつか。 そんなに離れてねぇな」
ユウヤはぶっ殺してやると放たれた矢のように飛び出していった。
ベリアルは楽し気に笑うとその背を追いかける。 恐らくはフォローに回るつもりなのだろう。
「ヨシナリ! お前も先行け! こっちも直ぐに追いつくからよ!」
ヨシナリ達の機体とマルメル達の機体――ソルジャータイプではどうしても速度差が出る事もあって足並みを揃えると遅くなってしまう。
ユウヤ達が先行したのは逃げられる可能性を考慮しての事だ。
実際、ターゲットの機体は後退を始め、戦場から離脱しようとしていた。
「分かった。 悪いが早めに頼む!」
そう言ってヨシナリは機体を変形させると推進装置を全開にして二人の後を追った。
戦場を切り裂くように飛び、敵機を障害物として捌き、時には躱してターゲットの下へ。
そろそろ敵を射程内に捉える頃には既に二人は戦闘へと突入していた。
――というか敵のど真ん中なんだよなぁ。
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