Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第651話

 敵機を捕捉したと同時に真っ先に突っ込んで行ったのはユウヤだ。
 散弾砲を撃ちながら加速。 その間にヨシナリは標的をフォーカス。
 近づいた事で敵機の簡単な情報が表示される。 

 プレイヤーネーム『カンチャーナ』。 
 ランクなどは不明だが、どう見てもジェネシスフレームなのでAかSだろう。
 散弾砲はカンチャーナに当たる前に数機のエンジェルフレームが割り込んで防御。
 
 攻撃をやり過ごしたと同時に複数の機体が撃ち返す。 
 ユウヤはやや不快といった様子で推進装置を切って着地。 
 二機のソルジャータイプが左右からエネルギーブレードを展開して斬撃を繰り出す。
 
 囲まれている事もあって死角を減らす為に着地する判断。 
 冷静さを欠いているようにも見えたが、ユウヤの動きは明らかに周りがしっかりと視えていた。
 左右からの攻撃も微妙にタイミングが合っていない事を見切り、右、左の順に躱し、拳を握る。

 拳を覆うように装甲が展開。 ナックルガード?
 見た事のない装備だ。 先端が妙に平らなのも気になる。
 コックピットをコンパクトに一撃。 威力よりも素早く当てる事に重きを置いた動き。
 
 そしてインパクトの瞬間に衝撃が敵機のコックピットを突き抜ける。 
 ビクリと敵機は僅かに痙攣すると動きを停止。 崩れ落ちる頃にはもう一機にも同じように拳を一撃。

 ――えげつないな。

 機体にはほとんどダメージがなく、コックピット周りだけ正確に破壊している。
 特にアバターの破壊を念頭に置いた攻撃なのは分かるが、それよりも特筆するべきは動きの精密さだ。
 包囲されたと同時に死角を減らす動きに、相手の攻撃を高精度で回避したと同時にカウンター。

 これまでなら真っ先に散弾砲やイラでの包囲の突破が選択肢に上がるはずだったのだが、プレイスタイルに冷静な面が目立つようになっている。
 ラーガストとの特訓の成果だろう。 加えて視野も大きく広がっている。

 電磁鞭で狙っていたエンジェルフレームを行動不能にする。 
 その背を他の機体が狙っているが、フォローできる位置にヨシナリ。
 ユウヤは肩越しに小さく振り返る。 それを見て思わず笑みがこぼれてしまう。

 ――援護を要求するポジショニング。 

 気が付けばヨシナリはユウヤを狙っている機体をアシンメトリーで撃ち抜いていた。
 敵だけでなく味方の位置を空間把握して味方のカバーが届く位置を完全に無視する事で挙動から無駄を削ぎ落している。 視野が広がった事により、集団戦闘に対する適性が大きく上がっていた。

 元々はアルフレッドを使って死角を消しつつ、単独での突破、状況の打開を狙うスタイルだったのだが、ここ最近はグロウモスへ貸し出す頻度が増えた事で彼なりに単独で戦えるスタイルを確立しようとした結果なのかもしれない。

 武装に関しても重さではなく挙動の最適化を意識したアップグレード。
 射線が敵機に被るように動いている事もあって、常に包囲に穴ができるような立ち回り。
 躱しきれない攻撃は背にマウントした大剣で防御。 

 Bランク以下のプレイヤーではまるで相手にならない。 

 ――しかも――

 ユウヤの陰から死角をカバーするように飛び出したベリアルが敵の包囲を崩す。
 ここだ。 それを広げるようにヨシナリがアシンメトリーの実体弾を連射。
 
 ――周りを使う事を覚え始めた。 

 ユウヤから力強く周りを引っ張っていく引力のような物を感じる。 
 新鮮な感覚だった。 これまでは合わせる形でユウヤにマッチした立ち回りを意識していたのだが、今回は欲しい動きが明確でこちらに付いて来いと背で語っているようだ。

 そしてその目的もはっきりと示している事からヨシナリとしても非常にやり易い。 
 何より、面白い! 包囲に穴が開いた事でカンチャーナへの道が拓いたのだ。
 
 「ふ、煉獄の化身よ。 俺達を露払いに使うつもりか」

 ベリアルも似た結論に至ったのか楽し気に笑う。 
 
 「あのクソは俺がぶち殺す」
 「いいだろう。 新たな領域に突入した貴様の力、存分に見せて貰うとしよう!」
 
 フォローに入った敵機を掻き分けるように包囲を突破しカンチャーナを射程に収める。
 見事な動きではあるが、狙われているカンチャーナ自身に動きが少ない事が気になるが――
  
 「――まぁ、そう簡単には行かないよな」

 小さく呟く。 僅かに遅れてユウヤが小さく舌打ちする。
 何故なら割り込むように一機のジェネシスフレームが現れたからだ。
 機体をフォーカス。 プレイヤーネーム『ラーヒズヤ』

 上半身は非常にスリムな印象を受けるが、腰回りから下は甲冑のような物で覆われている事もあってややアンバランスさが目立つ。

 「どけ」
 『どかせてみろ』

 言葉はそれだけだった。 最初に動いたのはユウヤだ。
 横薙ぎに電磁鞭を一閃。 ラーヒズヤは霞むような挙動で腕を振るうと鞭が半ばで千切れ飛ぶ。
 エネルギーブレードだ。 特注品らしく、ブレードの展開が異様に早い。

 長さも自由に弄れるようで必要最低限の長さで鞭に対処。 
 短ければ短いほどに攻撃モーションから無駄を削ぎ落せる事もあって、ブレードの扱いとしては非常に合理的だ。

 加えて動きも軽快。 ユウヤの攻撃に対処しながら間合いを詰めている。
 いつの間にか空いた手にもブレードを構えており、既に刺突のモーションに入っていた。
 ラーヒズヤの刺突をユウヤは前のめりになる事で切っ先を背の大剣で受ける。

 接触と同時に状態を僅かに上げて切っ先をずらし、片足を僅かに上げた。
 軸足を残して推進装置を吹かす事で半回転。 浮かせた足で蹴りを繰り出す。
 上手い。 防御と攻撃をほぼワンアクションで両立させている。

 『やる! だが――』
 「だがはねぇよ。 お前にはウチの狂犬が噛みつく。 そいつと遊んでろ」

 ラーヒズヤからやや訝しむ気配がしたが、咄嗟に後ろに跳んで回避。
 ほぼ同時に延長された水銀の一閃が大地に縦一文字の斬跡を刻む。
 
 「なーに? もしかして狂犬ってウチの事?」
 
 追いついてきたふわわだ。 

 「お前以外の誰がいるんだよ? お誂え向きの相手だ。 片付けろ」
 「もー、貸しやからねー」

 ふわわはいつもの調子でそう口にしたと同時にラーヒズヤへと真っすぐに突っ込んで行く。
 その間に太刀と小太刀を抜き、間合いに入ったと同時に即座に斬り込む。
 ラーヒズヤが居なくなった事でカンチャーナを守る者はいなくなった。

 『勇敢な方。 よくぞあの守りを突破して私の前まで来れましたね。 その胆力は賞賛に――』

 カンチャーナが言い終わる前にユウヤは散弾砲を発射した。
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