Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第654話

 タカミムスビの圧倒的な火力を無効化したのはダラヴァグプタの呼んだ雷雲にある。
 彼が発生させたのは雷だけではない。 視界を制限するほどの豪雨。
 それにより光学兵器が大きく減衰する事となったのだ。 

 結果、タカミムスビの高出力のレーザー砲やエネルギーライフルはその威力を大きく減ずる事となり、ダラヴァグプタの防御システムを突破できなかったのだ。
 実弾兵器は降り注ぐ雷とそれを誘導する機体によって生み出された磁界によって逸らされる。

 戦場を支配し、圧倒的な攻撃力と防御力を誇る。 
 これこそがSランクプレイヤーダラヴァグプタの戦い方だった。

 『流石はSランクといった所かな? このままでは厳しいね』
 「実力差を認識して戦意を失ったのか? だとしたら貴様は戦士ではあっても勇者ではないな」
 
 ダラヴァグプタの言葉にタカミムスビは小さく笑う。

 「何がおかしい」
 『君と私の間には大きな認識のズレがあると思ってね。 ――君は私を戦士と認識し、勇者である事を期待した』

 その通りだった。 ダラヴァグプタが強者に求めるのはそれだ。

 『私はね。 戦士でも勇者でもなく、ただの欲張りな探究者だよ。 ただ欲しい、ただ知りたい。 それだけのつまらない人間さ。 だから、私が執着するのは勝負ではなく勝敗・・という結果だ』
 
 レーダーに反応。 無数の敵機が接近していた。
 日本側の拠点に近い以上、増援が来るのが早いのは理解していたが、この状況で数を繰り出した所でダラヴァクプタが支配する空は崩せない。 何を企んでいる?
 
 フォーカスすると向かって来るのは低ランクのⅠ型やⅡ型ばかりだが、装備を見てダラヴァクプタは思わず眉を顰め、意図を察して不快感に吊り上がった。

 「貴様ぁ! 同胞を捨て石にするつもりか!?」

 そう、援軍らしき機体群は武器を一切持っていない。 
 代わりに複数の大型のシールド、強化装甲等で防御力を可能な限り高めていた。
 そしてダラヴァクプタの主な攻撃手段はある程度の操作ができるとはいえ雷だ。

 つまり避雷針・・・を用意すれば攻撃密度を減らせる。 
 タカミムスビは友軍機を弾避けにしてダラヴァクプタの攻撃を減らし、自らの防御に割いていたリソースを攻撃に回そうとしているのだ。
 ダラヴァクプタの考える戦士の戦いからほど遠い行いに怒りが湧き上がる。
 
 『言っただろう。 私は勝ちにのみ執着すると、低ランク数十人の犠牲でSランクを仕留められるなら安い取引だ。 それに君が居なくなればインド側の士気は大きく下がるだろう。 君は君自身が思っている以上に戦略、戦術的に重要なポジションにいるという事を自覚した方がいいのではないかな?』

 タカミムスビは一向に気にせず、味方の犠牲を必要経費だと言い切る。
 彼に言わせればこういった使い方をする為に低ランクのプレイヤーを大量に抱え込んでいるのだ。
 普段そこそこいい思いをさせているのだから、こういった時ぐらい役に立ってくれよというのが偽らざる本音だった。

 『さて、これまでの会話で君の人となりも理解したよ。 悪いが直情的な人間にはあまり興味を抱けなくてね。 戦士の誇りだ何だとナンセンスな理由で突出したというのならその愚かさの代償をこの場で支払って貰おうとしよう』
 「数を揃えた所でこの俺を仕留められるとでも思ったか!?」
 『それはこれを見てから判断して貰おうじゃないか』

 タカミムスビは余裕すら感じられる口調でそう言い放つと、彼の機体に変化が起こる。

 「これは――」

 ダラヴァクプタの言葉が形になる前にそれが彼の目の前で姿を現した。
 
 
 ――きっついなこれ。

 マルメルは目の前のソルジャー+をアノマリーでハチの巣に変えながら内心でそう呟く。
 敵の推定Sランクを撃破しに行くという事で突出したのだが、結果として敵の包囲のど真ん中に身を晒す事になってしまったのだ。 

 普通ならそのまま握り潰されて終わりだが、かなりいいタイミングで『思金神』が助けに来てくれた事はかなり大きい。 
 マルメルとしては少しタイミングが良すぎるような気もしたが、助かった事には変わりはなく、そこは気にしないようにしていた。

 この戦場を俯瞰すると戦場の中央部分がインド側に突出している事もあって三角形にでも見えるかもしれない。 この陣形はあまりよろしくなかった。
 何故なら突出している事は前に伸びきっているとも言い切れるからだ。

 それが何を意味しているのかというと――

 「あぁ、ウゼぇ!」

 射線に味方が居ない事を確認してハンドレールキャノンを発射。 
 弾体は伸びきった戦線の側面――要は包囲しようとしている敵の目の前を通り過ぎる。
 少し目を離すとこれだ。 一点突破、突出と格好の良い字面ではあるが、実際にやって見ればしんどい事この上なかった。 

 常に敵は包囲を狙っている事もあってとにかく周囲に気を配らなければならない。
 前を見ながら定期的にレーダー表示を確認。 敵機が自機、または自分がカバーに入れる位置にいる友軍機を狙っているのなら牽制射撃で黙らせる。 

 「クソ。 滅茶苦茶忙しいな!」
 「はっはぁ! ぼやくなぼやくな! ここは楽しむ所だろう!」

 マルメルの愚痴に野太い声が堪える。 苦しい状況ではあるが良い事もあった。
 自分が他人をフォローするように他人も自分の事をフォローしてくれる事だ。
 飛んで来た無数の銃弾やエネルギー弾を黒い重量級の機体が射線に割り込んで止める。

 日本側のAランクプレイヤー『ウルツァイト』とその機体『ボロンナイト』だ。
 足こそ遅いが重装甲と防御システムのお陰で非常に打たれ強い。
 彼は足を止めて敵と撃ち合っている友軍機を文字通り、体を張って守っていた。

 銃弾の雨を物ともせずに接近して来た敵機に肉薄し、持っていた長柄のハンマーで叩き潰す。
 
 「すんません。 助かりました」
 「気にするな! ここは頑丈な俺の踏ん張りどころだ! やる気も出るというものだな!」

 ウルツァイトの挙動は非常にシンプルだ。 敵の攻撃の激しい所に飛び込んで大部分を引き受ける。
 味方が立て直したのを確認して次へとかなり無茶な事をしている。
 彼の機体は防御に偏ったビルドではあるが、いつまでも喰らってはいられない。
 
 実際、その機体の装甲には徐々に損傷が目立ち始めていたからだ。 
 ぐるりと見回すと敵のジェネシスフレームも次々と参戦してきている事もあってかなり苦しかった。
 この突出の目的はカンチャーナという幻覚使いを仕留める事だ。 
 
 それが成ったのなら立て直しの為に後退するだろうが、問題はそれができるかどうかだった。
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