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第657話
――あったが手応えは全く違ったものだった。
捉えたと思った瞬間、ふわわの機体は横に半回転、位置的には半歩ズレた形になる。
次いで機体が腕に絡みついた。 肩を起点に足をかけられる。
腕挫十字固《うでひしぎじゅうじがため》。
普段であったなら関節が伸びる関係でそこまで脅威ではないのだが、ふわわは腕が伸びきったタイミングで組みついてきた。
――不味い。
『もーらった』
バキリと嫌な音が響いてウインドウにエラーがポップアップ。
腕が使い物にならなくなった。 既に片腕を自切した事で腕がもう残っていない。
『間合いの取り方と緩急の付け方は参考になったわ。 ただ、ちょーっと前のめり過ぎたなー。 ウチがそんなに怖かった?』
見透かされたかのような物言いにラーヒズヤは怒りを露わにしようとしたがふわわが腰裏に仕込んでいた柄を抜くと起動。 液体金属刃が飛び出し、そのままコックピットを串刺しにした。
ラーヒズヤの言葉は形になる前に霧散。
最後に思ったのは次に会ったら必ず八つ裂きにしてやると誓う事だった。
――これは酷い。
ヨシナリは内心で思わずそう呟く。
初見であった事も要因としては大きいが下手な近接機をふわわに当てると碌な事にならないという分かり切った事実を確認できただけだった。
ソルジャータイプでジェネシスフレームを圧倒するのはいつ見ても凄まじい。
しかも相手の土俵で、だ。 この様子だと彼女は大丈夫そうかと目を逸らす。
カンチャーナの幻惑で随分と押し込まれたが、日本側が徐々に押し返し始めていた。
この前線はだが。 実を言うと状況自体はそこまで良くはなかった。
何故なら本陣に強襲をかけている部隊が拠点を派手に破壊しているらしい。
どうやら前線は足止めで本命は拠点の破壊のようだ。
インド側のプランとしては拠点を叩いた後、背後からの挟み撃ちを狙っているのだろう。
日本側も『思金神』を筆頭に巨大ユニオンがいくつも防衛に当たっている事もあって簡単に落ちないとは思うが、敵の思惑を外す意味でもカンチャーナは仕留めておきたい。
ユウヤとベリアルが行っているが、仕留めきれていない点からも助けが必要そうだった。
ヨシナリとしては一刻も早く駆け付けたい気持ちがあったのだが、思った以上に忙しく身動きが取れない。
何をやっているのかというと、敵の牽制だ。
インド側の動きは分かり易く、包囲殲滅。
日本側の突出を受け止めた後、包むように薄く展開して握り潰す。
仮に失敗しても拠点に強襲をかけた者達が戻ってくるまで足止めすればいいだけという事もあって敵側からはそこまでの焦りは感じない。
目標を複数設定して比較的、簡単な方を上位に据える事で前線の精神的な負荷を軽くしているのは良いやり方だと素直に感心した。
ホーコートのように気負うタイプにはかなり有効そうだったので今度試してみようと脳内のメモ帳にガリガリと記入しておく。
話が逸れたが、インド側は包み込む形でゆっくりと包囲を狭めている。
ヨシナリはその鼻先に仕掛ける事で敵の気勢を削ぐ事に注力していた。
意図を読んで何機かが自発的に付いて来てくれたのもありがたいと感じる。
「よし、次は――」
不意に直上から無数のエネルギー反応。
咄嗟に変形して加速、僅かに遅れて無数のレーザーが降り注ぐ。
回避に成功はしたが気は抜けない。 即座にバレルロール。
数発のミサイルが通り過ぎるが、誘導性能の強い物が旋回して追いかけて来る。
鬱陶しいとアシンメトリーで撃ち落とす。
――クソ。
インメルマンターン。 縦旋回で十字砲火を躱す。
明らかにヨシナリを狙って来ている。 加えてこちらの動きを先読みするような攻撃。
何をされているかはすぐに分かった。 間違いなく機体のエネルギー流動を読まれている。
「シックスセンス持ちか」
ヨシナリも普段からやっている事でもあった。 自分がやられると中々心臓に悪い。
何処だと探すと相手は直ぐに見つかった。 直上、さっきのレーザー攻撃をしてきた機体だ。
随分とすっきりしたデザインの白い機体。 腰辺りと両肩の傍に巨大なリングが浮いている。
侵攻戦でエネミーが使っていた物に似ていた。
推進装置が見当たらないのはあの三つのリングがそれを担っているからだろう。
フォーカス。 プレイヤーネーム『アーシュリア』、機体はどう見てもジェネシスフレームだ。
厄介なのに目を付けられたようだ。
アーシュリアがすっと手を上げると数十機のエンジェルフレームがヨシナリを取り囲む。
――これはヤバいな。
少し目立ちすぎたか。 そんな事を考えている間に上げた手が下ろされる。
囲んでいる敵機全てが一斉に動き出した。 ヨシナリはセンサーシステムの感度を最大に。
敵の動きを細大漏らさずに観察しろ。 とにかく数が多い以上、ミスは即座に死へと繋がる。
味方から引き剥がしつつ、攻撃しながら退路を潰す立ち回り、完全に殺しに来ていた。
――クソ、これは独力で抜けるのは難しいか。
並行して分析を開始。 まず敵の数は三十三機。
全てエンジェルフレーム。
内訳はエンジェルフレーム二十、プリンシパリティ七、アークエンジェル五。
それに例のアーシュリアを合わせて三十三機だ。
組み立てとしてはエンジェルタイプが全方位から微妙にタイミングをずらしての射撃。
全て光学兵器だ。 これは射線を安定させる為ではなく、ヨシナリの回避コースを限定する為だろう。
その間隙を突く形で躱すとプリンシパリティの砲撃。
こちらは無理に当てに行かずにプラズマキャノンによる範囲攻撃だ。
空間を埋めるような射撃に対してヨシナリは大きな動きで躱さざるを得ない。
そこをアークエンジェルが刈り取りに来るという三段構えだ。
どうにかプラズマキャノンの範囲から抜けた所で二機が左右から挟みに来た。
同時にエネルギーブレードを展開して一閃。 正面が胴、背後が頭部狙い。
――考える余裕ぐらいくれよ!
上体を後ろに向けて頭部狙いのブレードをエーテルで保護した腕で受け、正面からの一撃は蹴りで迎え撃つ。 正面の敵機は足を取れればいいと判断したのだろうが、このままクレイモアを――
背後の斬撃を受け止めたと同時に起爆。
くたばれとベアリング弾のシャワーを至近距離から喰わらせたのだが、発射の直前に回避行動。
距離が近かった事もあって完全に躱すまではいかなかったが、撃破は叶わなかった。
余裕がない以上、目の前の事を可能な限り早く処理して次に備えなければならない。
捉えたと思った瞬間、ふわわの機体は横に半回転、位置的には半歩ズレた形になる。
次いで機体が腕に絡みついた。 肩を起点に足をかけられる。
腕挫十字固《うでひしぎじゅうじがため》。
普段であったなら関節が伸びる関係でそこまで脅威ではないのだが、ふわわは腕が伸びきったタイミングで組みついてきた。
――不味い。
『もーらった』
バキリと嫌な音が響いてウインドウにエラーがポップアップ。
腕が使い物にならなくなった。 既に片腕を自切した事で腕がもう残っていない。
『間合いの取り方と緩急の付け方は参考になったわ。 ただ、ちょーっと前のめり過ぎたなー。 ウチがそんなに怖かった?』
見透かされたかのような物言いにラーヒズヤは怒りを露わにしようとしたがふわわが腰裏に仕込んでいた柄を抜くと起動。 液体金属刃が飛び出し、そのままコックピットを串刺しにした。
ラーヒズヤの言葉は形になる前に霧散。
最後に思ったのは次に会ったら必ず八つ裂きにしてやると誓う事だった。
――これは酷い。
ヨシナリは内心で思わずそう呟く。
初見であった事も要因としては大きいが下手な近接機をふわわに当てると碌な事にならないという分かり切った事実を確認できただけだった。
ソルジャータイプでジェネシスフレームを圧倒するのはいつ見ても凄まじい。
しかも相手の土俵で、だ。 この様子だと彼女は大丈夫そうかと目を逸らす。
カンチャーナの幻惑で随分と押し込まれたが、日本側が徐々に押し返し始めていた。
この前線はだが。 実を言うと状況自体はそこまで良くはなかった。
何故なら本陣に強襲をかけている部隊が拠点を派手に破壊しているらしい。
どうやら前線は足止めで本命は拠点の破壊のようだ。
インド側のプランとしては拠点を叩いた後、背後からの挟み撃ちを狙っているのだろう。
日本側も『思金神』を筆頭に巨大ユニオンがいくつも防衛に当たっている事もあって簡単に落ちないとは思うが、敵の思惑を外す意味でもカンチャーナは仕留めておきたい。
ユウヤとベリアルが行っているが、仕留めきれていない点からも助けが必要そうだった。
ヨシナリとしては一刻も早く駆け付けたい気持ちがあったのだが、思った以上に忙しく身動きが取れない。
何をやっているのかというと、敵の牽制だ。
インド側の動きは分かり易く、包囲殲滅。
日本側の突出を受け止めた後、包むように薄く展開して握り潰す。
仮に失敗しても拠点に強襲をかけた者達が戻ってくるまで足止めすればいいだけという事もあって敵側からはそこまでの焦りは感じない。
目標を複数設定して比較的、簡単な方を上位に据える事で前線の精神的な負荷を軽くしているのは良いやり方だと素直に感心した。
ホーコートのように気負うタイプにはかなり有効そうだったので今度試してみようと脳内のメモ帳にガリガリと記入しておく。
話が逸れたが、インド側は包み込む形でゆっくりと包囲を狭めている。
ヨシナリはその鼻先に仕掛ける事で敵の気勢を削ぐ事に注力していた。
意図を読んで何機かが自発的に付いて来てくれたのもありがたいと感じる。
「よし、次は――」
不意に直上から無数のエネルギー反応。
咄嗟に変形して加速、僅かに遅れて無数のレーザーが降り注ぐ。
回避に成功はしたが気は抜けない。 即座にバレルロール。
数発のミサイルが通り過ぎるが、誘導性能の強い物が旋回して追いかけて来る。
鬱陶しいとアシンメトリーで撃ち落とす。
――クソ。
インメルマンターン。 縦旋回で十字砲火を躱す。
明らかにヨシナリを狙って来ている。 加えてこちらの動きを先読みするような攻撃。
何をされているかはすぐに分かった。 間違いなく機体のエネルギー流動を読まれている。
「シックスセンス持ちか」
ヨシナリも普段からやっている事でもあった。 自分がやられると中々心臓に悪い。
何処だと探すと相手は直ぐに見つかった。 直上、さっきのレーザー攻撃をしてきた機体だ。
随分とすっきりしたデザインの白い機体。 腰辺りと両肩の傍に巨大なリングが浮いている。
侵攻戦でエネミーが使っていた物に似ていた。
推進装置が見当たらないのはあの三つのリングがそれを担っているからだろう。
フォーカス。 プレイヤーネーム『アーシュリア』、機体はどう見てもジェネシスフレームだ。
厄介なのに目を付けられたようだ。
アーシュリアがすっと手を上げると数十機のエンジェルフレームがヨシナリを取り囲む。
――これはヤバいな。
少し目立ちすぎたか。 そんな事を考えている間に上げた手が下ろされる。
囲んでいる敵機全てが一斉に動き出した。 ヨシナリはセンサーシステムの感度を最大に。
敵の動きを細大漏らさずに観察しろ。 とにかく数が多い以上、ミスは即座に死へと繋がる。
味方から引き剥がしつつ、攻撃しながら退路を潰す立ち回り、完全に殺しに来ていた。
――クソ、これは独力で抜けるのは難しいか。
並行して分析を開始。 まず敵の数は三十三機。
全てエンジェルフレーム。
内訳はエンジェルフレーム二十、プリンシパリティ七、アークエンジェル五。
それに例のアーシュリアを合わせて三十三機だ。
組み立てとしてはエンジェルタイプが全方位から微妙にタイミングをずらしての射撃。
全て光学兵器だ。 これは射線を安定させる為ではなく、ヨシナリの回避コースを限定する為だろう。
その間隙を突く形で躱すとプリンシパリティの砲撃。
こちらは無理に当てに行かずにプラズマキャノンによる範囲攻撃だ。
空間を埋めるような射撃に対してヨシナリは大きな動きで躱さざるを得ない。
そこをアークエンジェルが刈り取りに来るという三段構えだ。
どうにかプラズマキャノンの範囲から抜けた所で二機が左右から挟みに来た。
同時にエネルギーブレードを展開して一閃。 正面が胴、背後が頭部狙い。
――考える余裕ぐらいくれよ!
上体を後ろに向けて頭部狙いのブレードをエーテルで保護した腕で受け、正面からの一撃は蹴りで迎え撃つ。 正面の敵機は足を取れればいいと判断したのだろうが、このままクレイモアを――
背後の斬撃を受け止めたと同時に起爆。
くたばれとベアリング弾のシャワーを至近距離から喰わらせたのだが、発射の直前に回避行動。
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