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第658話
エネルギーウイングを強引に噴かす事で背後の敵に肩をぶつけて強引に体勢を崩し、強引にその敵機の後ろに回り込む為に旋回。
本当なら距離を取りつつ態勢を整える為に上に逃げたかったが、待ち構えている敵機が大量に居る事もあって自殺行為に等しかった。
『ヨシナリ!』
気付いたマルメルが強引に援護に入ろうとしていたが、他の機体に阻まれて近寄れない。
シニフィエ、ふわわは距離が離れすぎている事もあって無理。
ベリアル、ユウヤはカンチャーナの相手で忙しい。 グロウモスは拠点の防衛で手が離せない。
中々のピンチだった。
他の友軍機に期待したい所ではあったが、さっきまで近くに居た味方は一機残らず撃墜されてしまったようだ。
恐らくはヨシナリ一機を仕留める為にこの場を用意したのではなく、動きの良い一団を切り取って処理しようとしているのだろう。 それを繰り返す事で日本側の勢いを削ぐつもりだ。
敵は生き残ったヨシナリを意地でも仕留めたいらしくキルゾーンから解放してくれない。
横槍は他の機体が完全にシャットアウトしていた。
どうやらヨシナリは思っていた以上に敵にとって目障りと判断されたようだ。
アトルムとクルックスを連射。 敵機は慣れた挙動で躱す。
反応が良すぎる。 明らかに見えているな。
ちらりと空を見上げる。 アーシュリアは特に動かずこちらを観察するように視線を向けていた。
普通に見たのなら高みの見物といった所だが、シックスセンスで視るとそうではない事は明白だ。
かなり頻繁に通信を行っている事は明らか。 つまりあの機体は指揮に特化しているのだ。
ここまで分かり易い指揮官機というのは余り見た覚えがなかった事もあって珍しいと感じたが、需要がある事も理解できる。 基本的に大半のイベントは集団戦なのだ。
大勢を手足のように動かせる指揮官という存在が求められるのは当然の流れだろう。
――クソ、崩すには手が足りない。
この包囲網を突破する最も分かり易い方法はアーシュリアの集中を乱す事。
あいつが指揮に集中できなければ連携のクオリティはかなり落ちるはずだ。
問題はそれをする余裕がない事だった。 近くの敵機を狙う振りをしてアーシュリアを狙うが、フィールドが展開されて銃弾が通らない。
あの巨大なリングは推進装置であり防御機構だ。
半端な攻撃では抜けない。 ならパンドラのリミッター解除で強引に突破するか?
あり得ない。 全ての機体がヨシナリを追い込むように動いてはいるが、一部の機体はアーシュリアの傍から離れていないのだ。 明らかに不測の事態に備えた直衛機だろう。
ここまで優位を取っておきながら欠片も油断していない。
敵として高い評価を得ているのは光栄な話ではあるが、ここまでストレスの溜まる展開を強いられている以上、このクソが絶対にぶっ殺してやる以外の感想が出てこない。
敵の連携は完成度が非常に高く、現状は凌ぐだけで精いっぱいだ。
それもミスをしなければという但し書きが付く状態で、だ。
一度でも回避、反撃をミスっただけでヨシナリは袋叩きにあって終わる。
だからじっと耐えて反撃の糸口を探っているのだが、そろそろ限界だった。
直上からの射撃を変形からの直線加速で振り切り、正面からの斬撃を機銃で牽制しつつインメルマンターンで背後からの奇襲を躱し、途中でバレルロールしながら人型に変形してアトルムとクルックスをバースト射撃しこちらを狙っている敵機を黙らせる。
視界にいる敵機の動き、レーダー表示での位置関係、シックスセンスを用いての敵の攻撃兆候。
その三つを並行して処理するのだ。 いい加減に脳が焼き切れそうだった。
目の前の対処以外に思考のリソースを回せない。
接近戦を仕掛けて来た敵機を急降下で躱し、地面スレスレを飛ぶ。
不意にエラーメッセージがポップアップ。 内容は足の損傷により推進力の低下。
どうやらクレイモアを使った時に何処かを痛めたようだ。
不味い。 この状況で足回りのダメージは――
ここが攻め時と判断したのかアーシュリアの近くに居た直衛機が動き出した。
――この野郎、こっちの不調を察して決めに来やがったな。
ヨシナリはアトルムとクルックスを連射。
敵機は腕に装着したエネルギーシールドを展開してそのまま突っ込んで来る。
当然の展開だった。 アシンメトリーやイラは抜いている余裕がない以上、アトルムとクルックスでしか迎撃できず、機動力が落ちている今が勝負の決め時と判断するのは正しい。
ヨシナリが逆の立場であってもそうするだろう。
だからと言ってただでやられてやるつもりはない。 こうなったら最悪道連れに――
『ティピカル。 自棄になるのは少し早いのではないか?』
不意に地面から無数のワイヤーアンカーが飛び出す。
ワイヤーが敵機のいくつかを絡め取り、その動きを拘束する。
そして突っ込んで来た敵機に横合いから何かが体当たり。
流石に銃弾は防げても突っ込んで来た機体を防ぐ事は難しかったようだ。
ヨシナリは突然の事に驚きはしたが、このチャンスを見送るほど愚かではなかった。
即座に振り返ってバースト射撃。 ワイヤーに拘束された敵機を次々と撃ち抜いて撃破する。
連携を高める為に機動性に振っている所為か装甲は貧弱だった事もあって当たりさえすれば撃破は容易だった。
『クリティカル! 危ない所だったな?』
敵機は態勢こそ崩したが、即座に立て直すと横からつっこんできた機体にエネルギーライフルを撃ち込むが地面を滑るようなホバー移動で滑らかに回避。
布のような物を被っている所為で姿がよく分からないが、姿勢が引くい事から四つ足の獣に近い形状であろう事は分かる。
先日、対戦した『アイロニカル』の機体だ。
「アイロニカルさん? 何故――」
『ロジカル。 君はここで落ちるには惜しい人材だ。 それと私の事はアイロニーと呼べ』
「あ、はい」
よく分からないが助かった上、敵の包囲が崩れた。 ここを利用しない手はない。
逃げる事も視野に入ったが、ここまでされて逃げる? 冗談だろ?
この対抗戦が終わってしまえば次にインド第二と戦える機会はいつになるのか分からないのだ。
借りを返すのは今を置いて他にない。
つまりアーシュリアをぶちのめしてこれまでに溜め込んだストレスを発散する機会はここしかないのだ。 つまりやる事は決まっている。 反撃一択だ。
――それに――
戦場を切り裂くように一条の光が通り過ぎる。 正確には発射された弾体だが。
『へ、間に合ったようだな! 助けに来たぜ相棒!』
マルメルの機体だ。 あちこち被弾している事からかなり無理をして突っ込んできたようだ。
「マルメル!」
『こいつ等をぶっ潰すんだろ? やってやろうぜ!』
本当なら距離を取りつつ態勢を整える為に上に逃げたかったが、待ち構えている敵機が大量に居る事もあって自殺行為に等しかった。
『ヨシナリ!』
気付いたマルメルが強引に援護に入ろうとしていたが、他の機体に阻まれて近寄れない。
シニフィエ、ふわわは距離が離れすぎている事もあって無理。
ベリアル、ユウヤはカンチャーナの相手で忙しい。 グロウモスは拠点の防衛で手が離せない。
中々のピンチだった。
他の友軍機に期待したい所ではあったが、さっきまで近くに居た味方は一機残らず撃墜されてしまったようだ。
恐らくはヨシナリ一機を仕留める為にこの場を用意したのではなく、動きの良い一団を切り取って処理しようとしているのだろう。 それを繰り返す事で日本側の勢いを削ぐつもりだ。
敵は生き残ったヨシナリを意地でも仕留めたいらしくキルゾーンから解放してくれない。
横槍は他の機体が完全にシャットアウトしていた。
どうやらヨシナリは思っていた以上に敵にとって目障りと判断されたようだ。
アトルムとクルックスを連射。 敵機は慣れた挙動で躱す。
反応が良すぎる。 明らかに見えているな。
ちらりと空を見上げる。 アーシュリアは特に動かずこちらを観察するように視線を向けていた。
普通に見たのなら高みの見物といった所だが、シックスセンスで視るとそうではない事は明白だ。
かなり頻繁に通信を行っている事は明らか。 つまりあの機体は指揮に特化しているのだ。
ここまで分かり易い指揮官機というのは余り見た覚えがなかった事もあって珍しいと感じたが、需要がある事も理解できる。 基本的に大半のイベントは集団戦なのだ。
大勢を手足のように動かせる指揮官という存在が求められるのは当然の流れだろう。
――クソ、崩すには手が足りない。
この包囲網を突破する最も分かり易い方法はアーシュリアの集中を乱す事。
あいつが指揮に集中できなければ連携のクオリティはかなり落ちるはずだ。
問題はそれをする余裕がない事だった。 近くの敵機を狙う振りをしてアーシュリアを狙うが、フィールドが展開されて銃弾が通らない。
あの巨大なリングは推進装置であり防御機構だ。
半端な攻撃では抜けない。 ならパンドラのリミッター解除で強引に突破するか?
あり得ない。 全ての機体がヨシナリを追い込むように動いてはいるが、一部の機体はアーシュリアの傍から離れていないのだ。 明らかに不測の事態に備えた直衛機だろう。
ここまで優位を取っておきながら欠片も油断していない。
敵として高い評価を得ているのは光栄な話ではあるが、ここまでストレスの溜まる展開を強いられている以上、このクソが絶対にぶっ殺してやる以外の感想が出てこない。
敵の連携は完成度が非常に高く、現状は凌ぐだけで精いっぱいだ。
それもミスをしなければという但し書きが付く状態で、だ。
一度でも回避、反撃をミスっただけでヨシナリは袋叩きにあって終わる。
だからじっと耐えて反撃の糸口を探っているのだが、そろそろ限界だった。
直上からの射撃を変形からの直線加速で振り切り、正面からの斬撃を機銃で牽制しつつインメルマンターンで背後からの奇襲を躱し、途中でバレルロールしながら人型に変形してアトルムとクルックスをバースト射撃しこちらを狙っている敵機を黙らせる。
視界にいる敵機の動き、レーダー表示での位置関係、シックスセンスを用いての敵の攻撃兆候。
その三つを並行して処理するのだ。 いい加減に脳が焼き切れそうだった。
目の前の対処以外に思考のリソースを回せない。
接近戦を仕掛けて来た敵機を急降下で躱し、地面スレスレを飛ぶ。
不意にエラーメッセージがポップアップ。 内容は足の損傷により推進力の低下。
どうやらクレイモアを使った時に何処かを痛めたようだ。
不味い。 この状況で足回りのダメージは――
ここが攻め時と判断したのかアーシュリアの近くに居た直衛機が動き出した。
――この野郎、こっちの不調を察して決めに来やがったな。
ヨシナリはアトルムとクルックスを連射。
敵機は腕に装着したエネルギーシールドを展開してそのまま突っ込んで来る。
当然の展開だった。 アシンメトリーやイラは抜いている余裕がない以上、アトルムとクルックスでしか迎撃できず、機動力が落ちている今が勝負の決め時と判断するのは正しい。
ヨシナリが逆の立場であってもそうするだろう。
だからと言ってただでやられてやるつもりはない。 こうなったら最悪道連れに――
『ティピカル。 自棄になるのは少し早いのではないか?』
不意に地面から無数のワイヤーアンカーが飛び出す。
ワイヤーが敵機のいくつかを絡め取り、その動きを拘束する。
そして突っ込んで来た敵機に横合いから何かが体当たり。
流石に銃弾は防げても突っ込んで来た機体を防ぐ事は難しかったようだ。
ヨシナリは突然の事に驚きはしたが、このチャンスを見送るほど愚かではなかった。
即座に振り返ってバースト射撃。 ワイヤーに拘束された敵機を次々と撃ち抜いて撃破する。
連携を高める為に機動性に振っている所為か装甲は貧弱だった事もあって当たりさえすれば撃破は容易だった。
『クリティカル! 危ない所だったな?』
敵機は態勢こそ崩したが、即座に立て直すと横からつっこんできた機体にエネルギーライフルを撃ち込むが地面を滑るようなホバー移動で滑らかに回避。
布のような物を被っている所為で姿がよく分からないが、姿勢が引くい事から四つ足の獣に近い形状であろう事は分かる。
先日、対戦した『アイロニカル』の機体だ。
「アイロニカルさん? 何故――」
『ロジカル。 君はここで落ちるには惜しい人材だ。 それと私の事はアイロニーと呼べ』
「あ、はい」
よく分からないが助かった上、敵の包囲が崩れた。 ここを利用しない手はない。
逃げる事も視野に入ったが、ここまでされて逃げる? 冗談だろ?
この対抗戦が終わってしまえば次にインド第二と戦える機会はいつになるのか分からないのだ。
借りを返すのは今を置いて他にない。
つまりアーシュリアをぶちのめしてこれまでに溜め込んだストレスを発散する機会はここしかないのだ。 つまりやる事は決まっている。 反撃一択だ。
――それに――
戦場を切り裂くように一条の光が通り過ぎる。 正確には発射された弾体だが。
『へ、間に合ったようだな! 助けに来たぜ相棒!』
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