Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第662話

 ――中からは撃てるのかよ!?

 ヨシナリは敵機の銃撃を躱しながら敵機の防御機構を分析。
 あのリングは空間歪曲による防御フィールドで実体、エネルギー両面に対して強固な障壁を築く。
 面白いのがリングの前後――要はアーシュリアの機体から見て前と後ろでフィールドの性質が変わっている。

 中から一方的に撃てるカラクリの正体はこれだろう。 
 日本サーバーのプレイヤーもそうだったが、空間歪曲は非常に優れた防御手段ではあるが展開範囲が他に比べるとかなり限定的となる。 
 それはアーシュリアも例外ではなく、リングの範囲内でしか攻撃を防げない。
 
 だからこそ遠隔操作で範囲の狭さをカバーしているのだろうが、リングの挙動で追いつかないレベルの機動性を発揮する機体との一対一の状況では脆さが露呈する。
 アトルムとクルックスを向けるとアーシュリアは即座に射線にリングを割り込ませるが、ヨシナリは即座に旋回でリングを躱して肉薄。 

 ――懐にさえ入ってしまえばそのご自慢の防御リングは使えないだろうが!

 残りのリングを動かそうとしているが遅い。 アトルムをバースト射撃。
 
 『舐めるな!』

 アーシュリアは機体の推進装置を全開にしてリングの真後ろへ。 
 リングの挙動が間に合わないのなら自分で防御範囲に入りに行けばいい。
 銃撃を防ぎながらリング越しに短機関銃を連射。 回避の為に上昇するが、アーシュリアはそこを狙って円形のブレード――チャクラムを投擲する。
 
 当然ながらただの投擲武器とは判断しない。 シックスセンスでスキャニング。
 
 ――随分とリッチな代物だな。

 内部に重力制御機構と機体からの制御を受け取る受信機が付いているようで本体と通信している事が分かった。 それが意味する事は一つ。
 クルックスでチャクラムを撃ち落とすが、銃撃で変わった軌道を即座に修正して追いかけて来る。
 遠隔操作。 だが、本体側からのリアルタイムな操作ではない。

 恐らくはロックした敵機を壊れるまで自動で追尾する仕組みなのだろう。
 常に本体と通信しているのは恐らくは機体側で任意に標的の変更などの管理を行う為だ。
 面白い武器だ。 ブレード部分の淵には高エネルギー反応。
 
 エネルギーブレードを展開して切断力を上げている。 
 実体刃でありながらエネルギーの属性を併せ持つ事で物理、光学のどちらの防御機構にも対応できる代物なのだろう。 

 アーシュリアは短機関銃を連射しながらチャクラムを二つ、三つと追加で投げる。
 この時点で彼女の戦闘傾向が見えて来た。 
 指揮特化という変わったビルドというだけあって他は同ランク帯の機体で見るとそこまで怖い相手ではない。 

 武装は例の防御リングとエネルギー、実弾の撃ち分けができる短機関銃が二挺。
 片方しか使っていないのは残りは予備だろう。 後は追尾機能搭載のチャクラム。
 恐らくは他には接近戦用のエネルギー系統のブレードでも持っているのだろう。

 高火力の武装は使わずに無駄なく綺麗に撃ち抜いて敵を仕留めたいといったコンセプトは良く伝わる。
 そこから雑な破壊ではなく、最小の威力での撃破を狙う事を念頭に置いた几帳面な性格である事が窺えた。 流石はAランクだけあって挙動も巧みだ。

 防御リングを常に前面に出して攻撃を防ぐ事で高火力の相手であるなら防ぎながら間合いを詰めて仕留めに行くスタイルなのだろう。 
 ヨシナリがやったように防御リングはそこまで速くない事もあって引き付けてからの急加速、急旋回で充分に躱せる。 それを見越してのもう一つのリング。

 こちらに関しては本体をベタ付きさせるといった運用で高機動機に対処。
 基本的にリングの防御を高く信頼しており、敵機との間に挟んでさえいれば何とかなると判断しての事だろう。 火力に振っていない分、ジェネレーター出力を防御と機動に割いているのも面白い。
 
 リングには個別にジェネレーターを搭載しているようだが、本体からも特殊な送信装置でエネルギーを補給しているようだ。 
 エネミーが似たような代物を使っているのを何度か見ているだけあってヨシナリとしては特に驚きに値しない。 精々、汎用品として売ってくれよと思う程度だ。
 
 こういった防御に長けたプレイヤーと相性がいいのはふわわなのだが、彼女は他の相手に夢中らしく呼び出せそうにない。 
 対処として一番分かり易いのは防御を突破する事だ。 アーシュリアが防御に絶対の自信を持っている事は見れば分かる。 目の前でそれを突破された時の同様は大きいはずだ。
 
 攻撃が通らなかったとしても突破するだけで、調子を崩すぐらいの効果はある。
 この手の防御兵装は燃費の悪さが弱点ではあるが、火力に振っていないアーシュリア相手に息切れを期待するのは少し現実的ではない。 分かり易い突破方法としては頭数を揃えて飽和攻撃が手っ取り早いのだが、マルメルもアイロニーも地上の敵相手に忙しい事もあって援護は頼めそうもなかった。

 少なくとも地上の掃除が終わるまでは待った方がいい。 
 このままダラダラと時間をかけて消耗を待ってもいいが、ここはインド側の拠点に近すぎる。
 敵の増援が来る方が早い。 アーシュリアの機体を見ればかなり大型ユニオンの幹部かリーダーのポジションに収まっているのは明らかだ。 
 
 時間をかける事は不利を招く。 

 ――まぁ、仕方ない。 当初のプランで行くか。

 見た所、ここまで追い込んで他の攻撃手段を使ってこない点からも手札はほぼ捲れた。
 そろそろ仕留めに行く頃合いだろう。 早い段階で仕留める為の組み立ても済んでいる。
 大人数を統率するという稀有な能力を持っている点は素晴らしい。

 少なくともあれだけの人数を手足のように動かす事はヨシナリには難しいだろう。
 だが、個人技という点ではそこまでではなかった。 
 射撃、機動、防御、反応どれをとってもこれまでに戦ってきた強敵達に比べればいくらか見劣りする。

 それに、アーシュリアのキルゾーンは崩れた以上、ヨシナリの選択肢は格段に増えた。
 
 『――っ!?』

 アーシュリアが咄嗟にリングを移動させると僅かに遅れて弾体が防御力場に突き刺さる。
 マルメルのハンドレールキャノンだ。 
 挙動から他の敵機を狙う振りをしてアーシュリアに撃ち込んだのだろう。

 もう少しかかると思ったがこちらに手を出せる余裕が出来たようだ。
 
 ――ありがたい。

 真下からアイロニーのドローンがアンカーを飛ばす。 
 アーシュリアは小さく舌打ちして短機関銃で迎撃。 
 残りのリングをヨシナリの対処に回している以上、自力で防ぐしかないからだ。
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