Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
663 / 865

第663話

 ――ここだ。

 ヨシナリはパンドラのリミッターを更に解放。 
 300%。 終わったら機体の修理と補給の必要はあるが、アーシュリアを仕留められるのなら安い代償だ。 出力増加による挙動の変調は初見であるのなら簡単に見切れるものではない。
 
 10%の上昇でも馬鹿にできないほどに伸びるのだ。 冷静に考えれば50%は通常出力の1.5倍。
 完全に別物と言っていい。 急旋回で背後を取りながらイラを抜いて横薙ぎに一閃。
 抜きながら旋回して背後を取ると同時に振り抜く。 満足のいくクオリティになるまでそこそこ時間はかかったが、ランク戦で同ランク帯のプレイヤーにまともに躱せた者はいない。

 ――まぁ、ユウヤとベリアルは初見でカウンター当てて来たけど。
 
 訓練の際に自信満々に繰り出してあっさり返されたのは割とショックだった。
 ユウヤは「まぁまぁ、良かったんじゃねぇか? ちょっとヒヤッとした」
 ベリアルは「煉獄の炎で鍛えし刃による一閃。 その流麗なる軌跡は貴様がまた闇の叡智への理解を深めた事の証」

 ――と、微妙に褒めてはくれた事もあってヨシナリとしては少し複雑だったが。
 ちなみにふわわにはタイミングが合わなかったので披露できなかった。
 アーシュリアはリングの淵を掴み、足をかけて横に一回転。 

 その場で回る関係でヨシナリの旋回よりもコンパクトに動く。
 イラが防御力場に干渉。 止められるが読み通りだ。
 
 「はぁ、これで仕留められた良かったんだけどなぁ……」
 「ゴチになります! お義兄さん」

 瞬間、アーシュリアの背後、何もない空間から腕が現れ両肩を掴むと機体が大きく反り返る。
 そしてコックピット部分から杭が突き出た。 

 『なん――』
 
 アーシュリアが何か言いかけたが、形になる前に機体が爆散。 脱落となった。
 
 「いやぁ、これ便利ですね。 売ってるんなら是非とも一枚欲しいですよ」

 そう言って現れたのはシニフィエの機体だ。 
 アイロニーが気配を消すのに使っている布を被っていたお陰でここまで楽に接近で来たという訳だ。
 ヨシナリが考えた作戦は非常にシンプルでシニフィエをアイロニーの布で隠して近くに伏せておき、後はそこまで追い込むだけだった。 

 普通に忍び寄らせて自分で決める事も考えたが、確実に仕留める事を優先したのだ。
 シックスセンスと同等クラスのセンサーシステムを積んでいるのは明らかだった事もあって気付かれる恐れがあった。 

 その為、可能な限り余裕を剥ぎ取りギリギリまで追い込んだ上でシニフィエを伏せた場所まで誘導したのだ。 
 あの布は耐弾性能こそ皆無だが、ステルス性能はこれまで見た中でもトップクラスの隠密性能を誇る。
 動くとスラスターの噴射熱や動体に引っかかる可能性がある以上、潜伏がベスト。
 
 マルメルとアイロニーもシニフィエの位置を意識して追い込む一助となってくれた。
 最後の一手はイラによる斬撃だったのだが、決められれば最高だったが防がれた以上は仕方がない。
 防御の為に隙を晒したアーシュリアはシニフィエの奇襲に対しての反応が致命的に遅れ――今に至るという訳だ。

 「来てくれて助かった」
 「本当ですよ。 こっちに来るの割と大変だったんですからね?」

 ふわわにくっ付いて比較的、前線に居てくれた事も好都合だった。 
 加えてキルゾーンを維持していたアーシュリアの仲間は「思金神」が抑えていた事も大きい。
 ちらりと振り返るとヤガミを筆頭に上位のプレイヤー達が凄まじい勢いで敵機を駆逐していた。

 カンチャーナを追って突出する形になっている事もあって押し返されるかとも思ったが、予想以上にインド側の抵抗が弱い。 何でだと疑問を抱きはしたが、遠くにあるエネルギー反応で察した。
 日本側の拠点で凄まじい爆発と飛び交う光学兵器の軌跡が見える。 

 どうやら向こうは本命を迂回させて拠点を叩きに行ったようだ。
 明らかに火力自慢が猛威を振るっており、混ざる気にはなれなかった。 少なくとも今は。
 向こうにはタカミムスビや「思金神」の精鋭が控えているはずだ。 何とかするだろう。

 そんな事よりもカンチャーナを始末してしまいたい。 
 あの鬱陶しい幻覚攻撃をもう一度許すと勝負が決まってしまいかねない事もあって撃破は急務だ。
 ユウヤとベリアルが行った以上、使う隙は無いと思いたいが始末して確実に憂いを立っておきたい。

 他のメンバーはどうなったかなと戦場を見渡すと――恐ろしい物を見つけてしまった。


 ――何なんだこいつは?

 インドのAランクプレイヤー『シシキン』は余りにも異様な光景に身を震わせていた。
 周囲には無数の残骸。 彼を助けに入ろうとして切り刻まれた仲間達だ。
 それを成したのは目の前のソルジャー+。 既存機にも関わらず圧倒的な戦闘能力は何なんだ?

 訳が分からない。 
 最初は複数の刀剣を装備している事から接近戦に自信のあるプレイヤー程度の認識だった。
 だが、上位機であるプラスフレームであっても所詮はソルジャー。 
 
 ジェネシスフレームとの根本的な性能差は覆せない。 
 そんな事を考えていたのだが、自分が増長していたと気づいたのは数秒後だった。
 相手は「ふわわ」という変わった響きのプレイヤー。 ランクは最大限、高く見積もってもB。

 機体は近接特化。 その見立てには間違いはなかったが、攻撃範囲に関しては想定の遥か上だった。
 シシキンの機体も近接寄りだった事もあって攻撃の組み立てとしては剣の技量を見る為に接近からの斬撃。 相手の対応でそのまま押し切るか他の武器を使うかで決める。

 彼の機体『ダルマ・シュラッダー』は近接寄りの機体ではあるが、間合いを選ばない。
 ほぼ骨格だけの上半身に具足のようなボリュームのある物を身に着けているように見える下半身。
 ややアンバランスに見えるかもしれないが、可能な限り軽量化を行っているだけあってジェネシスフレームの中ではかなり速い。 

 ――注意するべきは肩に積んでいる野太刀。 

 液体金属刃を用いて間合いを拡張しているのは見た。 
 予備動作が大きい以上は対峙している相手には使えない。   
 ふわわが手を伸ばしたのは腰の太刀。 正面からの斬り合いがお望みか?

 いや、違うと警戒心が持ち上がる。 武器の選択までが早い。
 何かある。 シシキンは剣ではなく腰部の装甲の裏に隠した武器の柄を掴む。
 ふわわの一閃に合わせて応じるようにシシキンも武器を振るう。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。