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第664話
ふわわは腰のナインヘッドドラゴンに手を添えて一閃。
餌は撒いた。 野太刀は一度見せている以上、距離は取らない。
敵機の見た目から近接に自身がある事も窺える。 なら、接近して来る事は分かり切っていたからだ。
――それに――
見えるのだ。 正確には感じる。
敵――シシキンが自分を斬りたがっている事に。
殺気だけでなくAランクプレイヤーであるという自負、接近戦に絶対的な自信がある事。
そして自分は勝てるという確信と僅かな警戒。 実に好みの相手だ。
お願いだからこれで終わらないでねと僅かな願いを込めて放たれた斬撃はシシキンを包囲するように九つに分かれて襲い掛かる。
癖の強い武器ではあるが、そろそろ慣れて来た。
当初は安定して当てられるのは三つでそれ以上は余り現実的ではないというのがふわわの感想だったのだが、そうでもなかったようだ。
ヨシナリに倣って練習してみたのだが、止まっている的であるなら何の問題もなく当てられる。
ただ、これが動いている相手であると難しい。 シニフィエを何度も練習台にしたのだが、とにかく当たらないのだ。
来るのが分かっているからこそひらひらと躱されている面もあるのだろうが、どんな相手にでも安定して当てられないと意味がない。
このまま振っていても進歩はないと判断したのだ。 それがゲームを休む前の話。
新しい刺激を得る為、もっと強くなる為、あちこちの道場を見学に回ったのだが、中々に収穫の多い旅だった。
このご時世で減少傾向にはあったが、このエリアのあちこちで伝統を守り続けている場所もあれば、彼女の実家のようにVRゲームが圧倒的な人気を誇る時代に適応した結果、ゲームでの戦闘技能獲得を意識した売り方をする場所と様々な道場を見て来た。
モタシラとリアルで遭遇したのは全くの偶然だったが、結果的には良かったと思っている。
その過程で面白い物、これまでのふわわになかった発想に触れ、新しい戦い方のアイデアが湧いてくるのだ。 通用するのかを試したい、そしてこれで敵を刻めばどれだけ爽快だろうか。
ある意味、この戦いは成果を確かめる一歩だ。
ナインヘッドドラゴンを扱う際のコツも何となくだが、掴めてきた。
九つに分裂する刃。 転移座標を確定させて振るという関係上、しっかり狙うと大きなラグが生じる。
瞬時に狙って瞬時に振り切るぐらいでないと上位のプレイヤーには通用しない。
だからこそ数を絞って一部は攪乱と割り切る形で用いていた。
何とかならないと考えているとふと閃いたのだ。 剣として振るうから上手くいかないと。
ならこの武器を何と見做せばよいか? 答えは思った以上に早く出た。
網だ。 点ではなく面で捉える。 対象を囲んで掬う感覚。
狙う場所は腹から上。 重装甲の機体でないなら確実に殺せる。
振り切ったと同時にシシキンの周囲に刃が出現。 それよりも僅かに早くシシキンが腰に仕込んでいたらしい武器の柄を握る。
刃が襲い掛かると同時にシシキンの腕が鞭のようにしなり、手から銀色の何かが閃く。
それにより九つの内、四つが叩き落され、残りは前進する事で躱す。
何をしたのかは分かっていた。 金属製の鞭のような物を振るって迎撃したのだ。
資料として実家にも現物がある事もあって存在は知っていた。
ウルミ。 薄く伸ばした金属の刃で運用は鞭に近いがカテゴリーは剣だ。
非常に扱いが難しく、振り回すには危険という事もあって実家の道場では扱っている者はいない。
一応、VRゲーム内では興味のある門下生が触ったという話を聞いた事があるが、使いこなせずに終わったと聞いた。 ふわわ自身触ろうと思った事はあったが、どうもしっくりこなかった事もあって結局、使わなかった代物だ。
シシキンは刃の包囲を抜けたと同時に一歩大きく地面を踏みしめ、ウルミを振るい頭上で一回転させて横薙ぎに振るう。 面白い事に柄から三つに枝分かれしている。
脇腹を引き裂くような軌道。 まるで獣の爪だ。
上に飛んで躱せばいいが、ここは前に出るべきと判断。
何故なら他にもふわわを狙う殺気を感じたからだ。
ナインヘッドドラゴンを鞘に戻しながら軌道を見極め、小太刀で絡め取るべく抜き放つ。
基本的にこの手の武器は速度が乗らなければ脅威度は激減する。
絡め取る事に失敗したとしても止まりさえすれば怖くはない。
そうなれば引き戻さざる得ない。
武器を捨てないのなら片手は使えない状態での接近を許す事になるだろう。
――って考えてるんやろぉ?
――読み通り。
シシキンのウルミはジェネシスフレームの専用装備なのだ。
普通の武器ではない。 この武器は振るうと同時に先端を射出して柄と先端を繋ぐ形で液体金属の刃が展開される。 つまり原理はふわわの野太刀と同じなのだ。
だが、決定的に違う点が一つあった。 それは射出した先端の機能だ。
これは小さな推進装置を兼ねた代物でシシキンの意志によって少し軌道を変える事を可能としている。 それは近接戦闘では絶大な効果を発揮するのだ。
転移刃は想定外だったが、シシキンにとっては既知の攻撃手段。
驚きはあったが心を乱す程のものではない。 ウルミを振るって正面を叩き落として包囲を突破。
再度、横薙ぎの一撃を振るう。 これがリアルであったならまず躱せない攻撃だが、このゲームに於いてはそうはいかない。
人体ではなくトルーパーには推進装置があるからだ。
枝分かれして広い攻撃範囲を誇っていたとしても軌道は薙ぎ。 上に飛べば躱せる。
だが、上にはシシキンのユニオンメンバーが居る。 他と交戦中だが、獲物が目の前に飛び込んでくれば即座に仕留める程度の余裕はあるだろう。
そうでないなら防ぐはずだ。 この武器は下手に受けると碌な事にならない。
鞭に近い性質を備えている関係で半端な位置で防御すると先端がそのまま標的の周囲を一周して絡め取るからだ。 それを理解しているのなら防ぐ手段は一つ。
先に絡め取る事。 ふわわはその正解に即座に辿り着き小太刀をウルミに当てようとしてきた。
対処の難しい武器なのだが、ここまで的確に対処できるという事は彼女にとって既知の攻撃手段という事なのだろう。
だが、知っているが故に彼女は敗北する事となる。
シシキンは機体側から先端を操作。
ウルミは不自然な軌道を描いてふわわに絡みつくべく大きく弧を描く。
餌は撒いた。 野太刀は一度見せている以上、距離は取らない。
敵機の見た目から近接に自身がある事も窺える。 なら、接近して来る事は分かり切っていたからだ。
――それに――
見えるのだ。 正確には感じる。
敵――シシキンが自分を斬りたがっている事に。
殺気だけでなくAランクプレイヤーであるという自負、接近戦に絶対的な自信がある事。
そして自分は勝てるという確信と僅かな警戒。 実に好みの相手だ。
お願いだからこれで終わらないでねと僅かな願いを込めて放たれた斬撃はシシキンを包囲するように九つに分かれて襲い掛かる。
癖の強い武器ではあるが、そろそろ慣れて来た。
当初は安定して当てられるのは三つでそれ以上は余り現実的ではないというのがふわわの感想だったのだが、そうでもなかったようだ。
ヨシナリに倣って練習してみたのだが、止まっている的であるなら何の問題もなく当てられる。
ただ、これが動いている相手であると難しい。 シニフィエを何度も練習台にしたのだが、とにかく当たらないのだ。
来るのが分かっているからこそひらひらと躱されている面もあるのだろうが、どんな相手にでも安定して当てられないと意味がない。
このまま振っていても進歩はないと判断したのだ。 それがゲームを休む前の話。
新しい刺激を得る為、もっと強くなる為、あちこちの道場を見学に回ったのだが、中々に収穫の多い旅だった。
このご時世で減少傾向にはあったが、このエリアのあちこちで伝統を守り続けている場所もあれば、彼女の実家のようにVRゲームが圧倒的な人気を誇る時代に適応した結果、ゲームでの戦闘技能獲得を意識した売り方をする場所と様々な道場を見て来た。
モタシラとリアルで遭遇したのは全くの偶然だったが、結果的には良かったと思っている。
その過程で面白い物、これまでのふわわになかった発想に触れ、新しい戦い方のアイデアが湧いてくるのだ。 通用するのかを試したい、そしてこれで敵を刻めばどれだけ爽快だろうか。
ある意味、この戦いは成果を確かめる一歩だ。
ナインヘッドドラゴンを扱う際のコツも何となくだが、掴めてきた。
九つに分裂する刃。 転移座標を確定させて振るという関係上、しっかり狙うと大きなラグが生じる。
瞬時に狙って瞬時に振り切るぐらいでないと上位のプレイヤーには通用しない。
だからこそ数を絞って一部は攪乱と割り切る形で用いていた。
何とかならないと考えているとふと閃いたのだ。 剣として振るうから上手くいかないと。
ならこの武器を何と見做せばよいか? 答えは思った以上に早く出た。
網だ。 点ではなく面で捉える。 対象を囲んで掬う感覚。
狙う場所は腹から上。 重装甲の機体でないなら確実に殺せる。
振り切ったと同時にシシキンの周囲に刃が出現。 それよりも僅かに早くシシキンが腰に仕込んでいたらしい武器の柄を握る。
刃が襲い掛かると同時にシシキンの腕が鞭のようにしなり、手から銀色の何かが閃く。
それにより九つの内、四つが叩き落され、残りは前進する事で躱す。
何をしたのかは分かっていた。 金属製の鞭のような物を振るって迎撃したのだ。
資料として実家にも現物がある事もあって存在は知っていた。
ウルミ。 薄く伸ばした金属の刃で運用は鞭に近いがカテゴリーは剣だ。
非常に扱いが難しく、振り回すには危険という事もあって実家の道場では扱っている者はいない。
一応、VRゲーム内では興味のある門下生が触ったという話を聞いた事があるが、使いこなせずに終わったと聞いた。 ふわわ自身触ろうと思った事はあったが、どうもしっくりこなかった事もあって結局、使わなかった代物だ。
シシキンは刃の包囲を抜けたと同時に一歩大きく地面を踏みしめ、ウルミを振るい頭上で一回転させて横薙ぎに振るう。 面白い事に柄から三つに枝分かれしている。
脇腹を引き裂くような軌道。 まるで獣の爪だ。
上に飛んで躱せばいいが、ここは前に出るべきと判断。
何故なら他にもふわわを狙う殺気を感じたからだ。
ナインヘッドドラゴンを鞘に戻しながら軌道を見極め、小太刀で絡め取るべく抜き放つ。
基本的にこの手の武器は速度が乗らなければ脅威度は激減する。
絡め取る事に失敗したとしても止まりさえすれば怖くはない。
そうなれば引き戻さざる得ない。
武器を捨てないのなら片手は使えない状態での接近を許す事になるだろう。
――って考えてるんやろぉ?
――読み通り。
シシキンのウルミはジェネシスフレームの専用装備なのだ。
普通の武器ではない。 この武器は振るうと同時に先端を射出して柄と先端を繋ぐ形で液体金属の刃が展開される。 つまり原理はふわわの野太刀と同じなのだ。
だが、決定的に違う点が一つあった。 それは射出した先端の機能だ。
これは小さな推進装置を兼ねた代物でシシキンの意志によって少し軌道を変える事を可能としている。 それは近接戦闘では絶大な効果を発揮するのだ。
転移刃は想定外だったが、シシキンにとっては既知の攻撃手段。
驚きはあったが心を乱す程のものではない。 ウルミを振るって正面を叩き落として包囲を突破。
再度、横薙ぎの一撃を振るう。 これがリアルであったならまず躱せない攻撃だが、このゲームに於いてはそうはいかない。
人体ではなくトルーパーには推進装置があるからだ。
枝分かれして広い攻撃範囲を誇っていたとしても軌道は薙ぎ。 上に飛べば躱せる。
だが、上にはシシキンのユニオンメンバーが居る。 他と交戦中だが、獲物が目の前に飛び込んでくれば即座に仕留める程度の余裕はあるだろう。
そうでないなら防ぐはずだ。 この武器は下手に受けると碌な事にならない。
鞭に近い性質を備えている関係で半端な位置で防御すると先端がそのまま標的の周囲を一周して絡め取るからだ。 それを理解しているのなら防ぐ手段は一つ。
先に絡め取る事。 ふわわはその正解に即座に辿り着き小太刀をウルミに当てようとしてきた。
対処の難しい武器なのだが、ここまで的確に対処できるという事は彼女にとって既知の攻撃手段という事なのだろう。
だが、知っているが故に彼女は敗北する事となる。
シシキンは機体側から先端を操作。
ウルミは不自然な軌道を描いてふわわに絡みつくべく大きく弧を描く。
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