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第665話
ウルミは受けに使った小太刀の表面を僅かに削るだけで絡め取るには至らずに逆に彼女の機体を拘束するべく大きく広がる。
これはただの刃ではない。 液体金属で生成されたブレードは柄と先端からの制御で自在にその形を変える。
表面にスパイクが発生しそのままふわわを締め潰す――はずだった。
ふわわは小太刀を真っすぐに投擲。 シシキンは悪足掻きをと思いながらも空いた手に仕込んだカタールで打ち払う。 こちらの制御に乱れを生じさせようと考えたようだが無駄だ。
先端はドローンに近い誘導が可能という事もあって本体の態勢が崩れた程度では何も変わらない。
三本の薄く延ばされた液体金属の帯が絡みつく前にふわわはシシキンの想定を遥かに超える行動を取った。 ウルミを掴んだのだ。
それも三本纏めて。 広がり切る前を狙われた。
どういう反射神経があればそんな真似ができるのかは不明だが、現実にやってのけているのだ。
だが、掴んだ以上、腕は諦めて貰う。 腕にウルミが絡みつきそのまま締め潰そうとするが、ふわわは腕を抜いた。 どうやら籠手のように腕に被せているパーツだったようで絡め取らせた後、腕を抜いたのだ。
ウルミは空になった籠手を握り潰したが、その頃にはふわわは既に踏み込んで腰の太刀を構えていた。
モーションから抜き打ち――居合の類だと判断。 これはタイミングさえ掴めれば充分に躱せる。
ふわわの手元で太刀が霞むような速さで抜き放たれた。 シシキンは持っていた剣で受けようとしたが、嫌な予感を感じて上体を後ろに倒す。
キンと澄んだ音がして剣の刃が半ばから消失。
あまりの光景にシシキンは何が起こったのか一瞬、分からなかった。
太刀で剣を斬った? 意味が分からない。
実体剣で実体剣を斬るなんて真似ができる事が驚きだったが、シシキンの戦いにおける矜持が彼の意識を現実へと引き戻したのだ。 ふわわは刃を返して更に一閃。
シシキンはウルミを手放し、カタールを交差させて防御する。
流石にこちらは切れなかったようでしっかりと受け止める事に成功したが、受けた感触が異様だった。
重いのだ。 ふわわの機体重量からは想像もできないほどの重く鋭い一撃。
これに関して身に着けている強化装甲のお陰であるのは分かるが、もはや油断できる相手ではない。
全霊を以って叩き潰すべき脅威と認識した。 だから、シシキンは勝ちにこだわるべく仲間に通信。
こちらを手伝うようにと。 彼の指示を受けたプレイヤー達はふわわを取り囲みつつ、上を押さえる為に展開。 エンジェルフレームが十機。
――これは集団戦だ。 悪く思うなよ。
シシキンはこの時点でふわわの脅威度を自身と同等以上の強者と認識していた。
その為、多少無理をしてでも潰してしまおう。
そう考えての判断で、それは間違っていないと固く信じていた。
――本当にそうなのか?
シシキンは自問する。 脅威度が高い事は認めていた。
その為に最大限に打てる手を打つのは当然だ。 だが、何故か不安が止まらなかった。
何か、自分は何かを見落としてはいないのだろうか? 胸中に形容できない何か――
ふわわは両肩にマウントされた野太刀をそれぞれの手で掴む。
あの武器は片手で振るのは難しい。 一体、何を?
疑問を抱いたのは刹那。 だが、その僅かな時間が致命的だった。
野太刀のマウントが外され、重力に引かれて落ちる前にそれが起こったのだ。
何が起こったのかシシキンですら理解できなかった。
攻撃範囲に居た友軍機の反応が一瞬でロスト。 正確な数は不明だが、二十機近くがやられた。
咄嗟に急上昇した事でシシキンは撃墜こそ免れたが、無傷とは行かなかった。
膝から下がなくなっている。 斬られたのだ。
『へぇ? 斬ったと思ったのに躱すなんてやるやん』
ふわわは柄だけになった野太刀を投げ捨て、太刀と小太刀を抜いて突っ込んで来る。
太刀による上からの斬撃。 真っすぐではあるが速い一撃をカタールで捌き、返す一撃で剣による刺突。 いつの間にか逆手に持ち替えた小太刀で流される。
剣を捨ててカタールを展開し腕ごと流される事を防ぎながら、再攻撃に繋げたのだが腹に前蹴りを入れられる。 シシキンは僅かに表情を歪めて推進装置を噴かして姿勢制御。
両足を失っている以上、地上戦は不可能だ。
空中でどうにかしなければならないのだが、地に足が付いていない事もあって踏ん張りが利かない。
小太刀が飛んでくる。 投げたのだ。 咄嗟に打ち払うが、そうしてから失敗に気付く。
斜め下からの斬撃。 カタールを展開――三枚の重ねた刃を左右に広げる事で微妙に攻撃範囲を変えたり、防御に使ったりと汎用性の高い機能だ。 それを用いて受け止める。
衝撃。 肩を当てられた。 押される形で高度が下がる。
不味い。 今更になってシシキンは相手の意図に気付く。
足がない以上は地上に落とされると圧倒的に不利になる。 ふわわはこのまま地上まで押し込む気だ。
そうはさせるかと強引に高度を上げるが待ってましたと言わんばかりにふわわが先回り。
刺突が飛んでくる。 ギリギリまで引き付けて旋回。
螺旋を描くような軌道で上昇する。 機体のステータスにエラー。
片腕喪失のメッセージ。 どうやら旋回時に斬られたらしい。
ぞっとした。 どんどん攻撃速度が速くなっている。 これはロボットアクションゲームなのだ。
断じてバフで身体能力が上がるRPGではない。 トルーパーという機体なのだ。
つまりどれだけの技量があったとしても性能という上限がある。
――にもかかわらずこれだ。
消耗によってパフォーマンスが落ちるどころか動きに無駄がなくなりつつあった。
その結果、動きが速く鋭くなっているのだ。
理解は出来たが、このゲームでそんな真似ができる者が存在するとは信じられなかった。
シシキンは僅かに瞑目。 屈辱ではあるが認めなくてはならない。
今の自分の手に余ると。 ここで落とされる訳には行かない以上は逃げるしかない。
このまま高度を取りつつ拠点まで逃げよう。 そう決めたシシキンの行動は早い。
一気に加速し、ふわわから距離を取る。
エネルギーウイング装備の機体であろうとも全力で逃げを打ったシシキンを捕まえる事は困難だ。
速度自体に大きな差はないが、裏を返せば一度引き離してしまえば追いつかれる事はない。
振り切るのは難しいかもしれないが、拠点までなら問題なく逃げ切れる。
――はずだった。
次の瞬間にシシキンの機体は何かに貫かれ、それが何だったのかを理解する間もなく爆散。
脱落となった。
これはただの刃ではない。 液体金属で生成されたブレードは柄と先端からの制御で自在にその形を変える。
表面にスパイクが発生しそのままふわわを締め潰す――はずだった。
ふわわは小太刀を真っすぐに投擲。 シシキンは悪足掻きをと思いながらも空いた手に仕込んだカタールで打ち払う。 こちらの制御に乱れを生じさせようと考えたようだが無駄だ。
先端はドローンに近い誘導が可能という事もあって本体の態勢が崩れた程度では何も変わらない。
三本の薄く延ばされた液体金属の帯が絡みつく前にふわわはシシキンの想定を遥かに超える行動を取った。 ウルミを掴んだのだ。
それも三本纏めて。 広がり切る前を狙われた。
どういう反射神経があればそんな真似ができるのかは不明だが、現実にやってのけているのだ。
だが、掴んだ以上、腕は諦めて貰う。 腕にウルミが絡みつきそのまま締め潰そうとするが、ふわわは腕を抜いた。 どうやら籠手のように腕に被せているパーツだったようで絡め取らせた後、腕を抜いたのだ。
ウルミは空になった籠手を握り潰したが、その頃にはふわわは既に踏み込んで腰の太刀を構えていた。
モーションから抜き打ち――居合の類だと判断。 これはタイミングさえ掴めれば充分に躱せる。
ふわわの手元で太刀が霞むような速さで抜き放たれた。 シシキンは持っていた剣で受けようとしたが、嫌な予感を感じて上体を後ろに倒す。
キンと澄んだ音がして剣の刃が半ばから消失。
あまりの光景にシシキンは何が起こったのか一瞬、分からなかった。
太刀で剣を斬った? 意味が分からない。
実体剣で実体剣を斬るなんて真似ができる事が驚きだったが、シシキンの戦いにおける矜持が彼の意識を現実へと引き戻したのだ。 ふわわは刃を返して更に一閃。
シシキンはウルミを手放し、カタールを交差させて防御する。
流石にこちらは切れなかったようでしっかりと受け止める事に成功したが、受けた感触が異様だった。
重いのだ。 ふわわの機体重量からは想像もできないほどの重く鋭い一撃。
これに関して身に着けている強化装甲のお陰であるのは分かるが、もはや油断できる相手ではない。
全霊を以って叩き潰すべき脅威と認識した。 だから、シシキンは勝ちにこだわるべく仲間に通信。
こちらを手伝うようにと。 彼の指示を受けたプレイヤー達はふわわを取り囲みつつ、上を押さえる為に展開。 エンジェルフレームが十機。
――これは集団戦だ。 悪く思うなよ。
シシキンはこの時点でふわわの脅威度を自身と同等以上の強者と認識していた。
その為、多少無理をしてでも潰してしまおう。
そう考えての判断で、それは間違っていないと固く信じていた。
――本当にそうなのか?
シシキンは自問する。 脅威度が高い事は認めていた。
その為に最大限に打てる手を打つのは当然だ。 だが、何故か不安が止まらなかった。
何か、自分は何かを見落としてはいないのだろうか? 胸中に形容できない何か――
ふわわは両肩にマウントされた野太刀をそれぞれの手で掴む。
あの武器は片手で振るのは難しい。 一体、何を?
疑問を抱いたのは刹那。 だが、その僅かな時間が致命的だった。
野太刀のマウントが外され、重力に引かれて落ちる前にそれが起こったのだ。
何が起こったのかシシキンですら理解できなかった。
攻撃範囲に居た友軍機の反応が一瞬でロスト。 正確な数は不明だが、二十機近くがやられた。
咄嗟に急上昇した事でシシキンは撃墜こそ免れたが、無傷とは行かなかった。
膝から下がなくなっている。 斬られたのだ。
『へぇ? 斬ったと思ったのに躱すなんてやるやん』
ふわわは柄だけになった野太刀を投げ捨て、太刀と小太刀を抜いて突っ込んで来る。
太刀による上からの斬撃。 真っすぐではあるが速い一撃をカタールで捌き、返す一撃で剣による刺突。 いつの間にか逆手に持ち替えた小太刀で流される。
剣を捨ててカタールを展開し腕ごと流される事を防ぎながら、再攻撃に繋げたのだが腹に前蹴りを入れられる。 シシキンは僅かに表情を歪めて推進装置を噴かして姿勢制御。
両足を失っている以上、地上戦は不可能だ。
空中でどうにかしなければならないのだが、地に足が付いていない事もあって踏ん張りが利かない。
小太刀が飛んでくる。 投げたのだ。 咄嗟に打ち払うが、そうしてから失敗に気付く。
斜め下からの斬撃。 カタールを展開――三枚の重ねた刃を左右に広げる事で微妙に攻撃範囲を変えたり、防御に使ったりと汎用性の高い機能だ。 それを用いて受け止める。
衝撃。 肩を当てられた。 押される形で高度が下がる。
不味い。 今更になってシシキンは相手の意図に気付く。
足がない以上は地上に落とされると圧倒的に不利になる。 ふわわはこのまま地上まで押し込む気だ。
そうはさせるかと強引に高度を上げるが待ってましたと言わんばかりにふわわが先回り。
刺突が飛んでくる。 ギリギリまで引き付けて旋回。
螺旋を描くような軌道で上昇する。 機体のステータスにエラー。
片腕喪失のメッセージ。 どうやら旋回時に斬られたらしい。
ぞっとした。 どんどん攻撃速度が速くなっている。 これはロボットアクションゲームなのだ。
断じてバフで身体能力が上がるRPGではない。 トルーパーという機体なのだ。
つまりどれだけの技量があったとしても性能という上限がある。
――にもかかわらずこれだ。
消耗によってパフォーマンスが落ちるどころか動きに無駄がなくなりつつあった。
その結果、動きが速く鋭くなっているのだ。
理解は出来たが、このゲームでそんな真似ができる者が存在するとは信じられなかった。
シシキンは僅かに瞑目。 屈辱ではあるが認めなくてはならない。
今の自分の手に余ると。 ここで落とされる訳には行かない以上は逃げるしかない。
このまま高度を取りつつ拠点まで逃げよう。 そう決めたシシキンの行動は早い。
一気に加速し、ふわわから距離を取る。
エネルギーウイング装備の機体であろうとも全力で逃げを打ったシシキンを捕まえる事は困難だ。
速度自体に大きな差はないが、裏を返せば一度引き離してしまえば追いつかれる事はない。
振り切るのは難しいかもしれないが、拠点までなら問題なく逃げ切れる。
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