Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第672話

 動きだけでなく機体にも変化があった。 
 座っていた台座が分解し、強化装甲のように機体各所に装着される。
 元々、フライトユニットとして使用してた点から防御力よりも機動力の向上を図ったと見るべきだろう。

 複数の頭部、多い腕、独鈷。 
 妙に既視感のある装備構成だとは思っていたが、運営の繰り出してきた敵性トルーパーと装備の系統が似通っている。 正直、サーバー対抗戦という大きなイベントで使って来るとは思わなかった。

 非常に不愉快ではあるが、僅かに面白いとも思っている自分も居た。
 前回の防衛イベント。 ユウヤは不参加だったが、ヨシナリとベリアルは協力して運営のイカサマじみたスペックの敵機を叩き潰した話を聞いた事もあって自分もやってみたかったのだ。

 イベントを欠席してまで積んで来た成果をぶつけるには中々に手頃な相手だった。
 
 ――ぶっ潰してやる。

 先に動いたのはカンチャーナだ。 推進装置を強化装甲に変えただけあって動き出しが早い。
 滑らかな挙動は重力制御系の推進装置。 六本腕から回転の早い斬撃。
 腕の可動域が広く、斜め上下――四方からの斬撃に加え、左右から挟むように独鈷を振るう。

 斬撃というよりは蟹がハサミを閉じるような印象を受ける。
 速くはあるが、虚実がない素直な攻撃という事もあって引き付けて躱す事も可能ではあった。
 少し迷ったが、余裕を持って躱す。 

 振り終わったタイミングでベリアルがカンチャーナの背後に空間転移。
 エーテルの爪を一閃。 それに同期して散弾砲を構える。
 可動域の広い腕はベリアルの死角からの一撃を伸ばした独鈷で受け止めた。
 
 発射。 散弾砲を正面から撃ち込むとカンチャーナは独鈷の一本を突き出すと反対側も伸びて両剣に姿を変える。 手首が高速で回転。
 霞むほどの速度で回転した刃が散弾を全て叩き落す。 それに連動して他の手首も高速回転。

 他の回転している刃に干渉しないよう器用に振り回す。 
 流石に近寄れないと判断したのかベリアルが仕切り直す為に転移で僅かに後退。
 ユウヤは散弾砲を更に発射。 間合いからベリアルが消えた事によりターゲットをユウヤに切り替えたカンチャーナはそのまま突っ込みながら散弾を弾く。

 切り刻みに来たがユウヤは構わずに大剣を抜いて横薙ぎに一閃。
 カンチャーナはさっきと同様に三本で受けようとしたが、回転させたままだったのは失敗だったようだ。 カンチャーナの振り回す刃が砕け散る。

 オディウム=イラの強度は並ではない。 そんな物に高速でぶつければ砕けるのは目に見えていた。
 当然ながら軌道を逸らすにも至らずに大剣はそのまま胴を薙ぐはずだったが、異様な旋回で回避。
 後退しながら独鈷を投擲。 回転しながら飛んでくるが散弾砲で撃ち落とす。

 躱しても良かったが、近寄ったタイミングで伸縮される可能性を考慮して撃ち落とした。
 武器が減ったと思ったが、カンチャーナは即座に手から追加の独鈷を補充。
 恐らくは内部で精製するタイプだろう。 つまり武装の破壊による戦闘能力の低下は見込めない。
 
 ――それに――

 明らかにまだ何かを隠している。 
 ほぼ確信しているが、カンチャーナが運営の支援を受けているというのならこんな物で終わる訳がない。 現在、見えている範囲では挙動の高速化。
 
 技量自体はそのままだが、反応速度が段違いに上昇している事で脅威度が跳ね上がっている。
 ベリアルの転移による奇襲、ラッシュもその超人的な反応で捌くだけでなく、反撃まで可能としていた。 単純に腕が多い事がストレートに響いており、完全に手数で圧倒されている。

 加えて死角もない。 
 ベリアルの相手をしながら死角へと移動したユウヤの攻撃にも瞬時に反応している。
 これは頭が複数ある事の恩恵だろう。 以前に遭遇した敵機はヨシナリ曰く、複数人での操作をしている事で物理的に死角を潰し、リソースを増やしていると言っていた。

 確かにと思う。 さっきまでのカンチャーナでは不可能な反応速度、挙動だ。
 武器の使い方も違う点から複座だけでなく、ホーコートのような何らかのチートで技量を底上げしていると見て間違いない。 よくよく見れば武器の振り回し方も無駄こそないが単調だ。

 六本腕の上二つは可動域の広さを利用して胸から上を斬り刻む動きで、中二本は上下のジョイント役を担っているのか基本的に繋ぎだ。 下二本は足やコックピット部分を狩りに行っている。
 動きの組み立てとしては上下の出し易い方で先制して防がれたら中二本で追撃、それも防がれたら上下の使っていない方で更に追撃。 中二本はその間、奇襲などに備えて防御を担う。

 ベリアルとの攻防に関しては上二本で刻みに行ったがエーテルの爪でいなされ、中二本で追撃。
 後退して躱された所を下二本で更に仕掛ける。 基本的にそのローテーションで相手が捌き切れなくなるまで畳みかけるというのがカンチャーナの近接戦のやり方だ。

 ――で、何らかの妨害が入ると真ん中の腕で反応するって訳か。

 広い可動域のお陰でどこから仕掛けても反応される。 そして距離を取ると独鈷による投擲。 

 「厨二野郎。 分かってるな?」
 「無論だ。 走狗と戦うのは初めてではない。 同じ手は喰わん」

 ただの確認だったが、ベリアルはユウヤの意図をよく理解していた。
 投擲された独鈷を躱さずにエーテル弾で一つ残らず破壊する。
 理由は簡単で以前に同じ武装を使用していた敵機が遠隔操作で独鈷を操っていたからだ。

 恐らくは投擲にかこつけて周囲にばら撒いて適度に溜まった所で遠隔操作を行い、手数を増やすつもりなのだろうがそうはいかない。
 少しの間、様子を見ながらベリアルと交互に仕掛けたのだが、新しい攻撃手段を繰り出してくる気配がない以上は粘っても問題はなかった。

 理由としてはヨシナリが援軍を引き連れてこちらに向かって来ているからだ。
 来るまで待って全員で袋叩きにするというのも勝ち筋としては充分に有りではあったが、ここは自分で決めてしまいたい。 仮にここでカンチャーナを仕留めたとしてもまだまだ敵は残っているのだ。

 余計な手間を省く意味でもここで片付けてしまいたい。
 
 ――決めに行くか。

 変に急ぐと失敗の下だがベリアルもいる以上、多少は前のめりになったとしても充分にリカバリは効く。 仕留めるタイミングは次にベリアルが仕掛けた時。 
 そこで仕留めに行く。
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