Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第678話

 拠点の外では突出したベリアル達とそれに便乗して仕掛けたプレイヤー達によって乱戦状態と化していた。 お陰で敷地外に抜け出した後に追撃を受けずに済んだのは幸運といえる。
 手近な敵機を銃撃しながら戦闘機形態で戦場を突破し、ベリアル達の反応がある所まで真っすぐに向かう。 

 マルメル達は速度差もあって少し遅れているが、そうかからずに追いつくだろう。
 まずは現状の把握だ。 敵機も多いが味方機も多い。
 ベリアル達が開けた風穴を広げる形でいくつかのユニオンが前線を押し上げたようだ。

 『豹変』『カヴァリエーレ』『ヴェクヴェーム』『栄光』
 ざっと見ただけだが大型ユニオンが四つも居た。 
 フレンド登録しているプレイヤーはレーダー表示で分かる事もあって知り合いが居ないかの確認を行う。

 ポンポン、まんまる、ニャーコは来ていない。 恐らくは本陣の守りに付いているのだろう。
 同様にツェツィーリエの反応もない。 恐らくはメンバーだけを送ったのだろう。
 『カヴァリエーレ』『ヴェクヴェーム』はフレンド登録している知り合いは居ないので不明。

 最後の『栄光』だが、ツガルとフカヤ、イワモトも来ている。 
 ツガルは良く目立ち、レーダーで確認するまでもなくその姿を見つける事が出来た。
 突進用の兵装を積んだ事で攻撃の幅が一気に広がっており、派手に暴れている。

 フカヤは味方に隠れて数を減らしているようだ。 
 合流するには遠い事もあって今は気にしない――いや、本来なら目を向けるべき物があるのだが、どうにも行き辛い。 何故ならユウヤとベリアルの近くにカナタが居たからだ。

 彼女の機体は攻撃手段の派手さもあってツガルと同様、非常に良く目立つ。
 ユウヤとカナタが一緒にいる。 
 嫌な予感しかしない上、どういう経緯でこうなったのかがさっぱり分からない。

 ――そんな事よりもカンチャーナだ。

 ユウヤ達の勢いから仕留めていてもおかしくないと思っていたが、最初に見た時と形状が違っていた。
 飛行に使用していた台座のようなものがなくなっている点から分解して強化装甲として装備したといった所だろう。 六本の腕による高回転の攻撃に加え、例の幻惑による攪乱。

 ざっと見ただけで凡その戦い方は割れているが、動きに違和感があった。
 ベリアルのラッシュに対応しているが、凌ぎきれずに後退。 
 手から生み出した無数の独鈷を飛ばして牽制。 

 その間に死角に回ったユウヤが散弾砲で本体を巻き込むように独鈷を狙う。
 カンチャーナは高速での旋回で回避。 それを見てヨシナリは思わず眉を顰めた。
 旋回の挙動に見覚えがあったからだ。 

 「おいおい、インドのランカーはチート使うのかよ」

 思わず呟く。 
 旋回からのアタックはやや異なるがベースとなる挙動がホーコートのアレとほぼ同じだ。
 これは間違いなくやっているだろう。 それによりヨシナリの中でカンチャーナへの評価が大きく下がった。

 機体を変形させると旋回での回避先を狙ってアシンメトリーで一撃。 
 フィールドを展開して防御。 弾かれ方から空間歪曲だろう。
 それならそれで問題はない。 そのまましつこく連射。 

 あの手の防御兵装はジェネレーターへの負担が大きい。 使わせてスタミナを消費させるのだ。
 
 「戦友よ! 間に合ったようだな」
 「ふ、待たせたようだな。 闇の王よ。 要らぬ世話かとは思ったが、戦友の危機にただ座す事などできる訳もなかった。 俺にも共に勝利の美酒を味わう権利を分けて貰おうか」
 
 ちょっと嬉しそうなベリアルに気分がよくなったヨシナリは先にくねっとポージング。
 ベリアルも応じるようにくねっとして応じた。 
 やや過剰な反応を見て内心でおやと首を傾げたが、ややあって脳裏に理解が広がる。

 「邪魔するんじゃねぇ! クソ女ぁ!!」
 「じゃ、邪魔してないわよ! ――ん、んん、ゴホン。 か、勘違いしないでよね! 偶々なんだからね!」

 ユウヤが苛立ちを通り越して憎悪すら籠った口調でカナタを怒鳴りつけ、カナタは謎のツンデレっぽい口調で言い返していた。 意味が分からない。
 しかも連携面で噛み合っていない事もあって、ユウヤの動きから繋げているカナタの攻撃が隙になって僅かではあるがカンチャーナに立て直す間を与えていた。

 ――これはよろしくないな。

 この二人は合わせるのが難しい。 
 恐らくはユウヤの動きにカナタが合わせる形になっているのだろうが、完全に同期できていない事もあって繋ぎがかなり甘い。 加えてカナタ自身が連携に慣れていない事もあって攻撃が単調だ。

 恐らくはユウヤを巻き込む事を恐れてなのだろうが、これまでの彼女のプレイ傾向から他人に合わせるという事に対しての適正が低い。 そんなカナタに即興の連携など望める訳もなかった。
 その為、ベリアルがジョイントとして間に入る事で辛うじて成立させていたのだろう。

 結果、攻めあぐねてしまったという訳だ。 ベリアルの最大の強みは接近戦にある。
 そんな彼を連携のフォローに使うなど宝の持ち腐れにもほどがあった。
 加えて他からの横槍もある。 

 ヨシナリに気付いたエンジェルタイプがエネルギー式の突撃銃を連射しながら突っ込んで来た。
 急上昇して回避、敵機は追って来るが徐々に距離を詰めた所で急制動。
 ユウヤが散弾砲を撃ち込んだからだ。 躱した反応は見事だが、制動をかけたのは良い判断ではない。

 アトルムを抜いてバースト射撃。 胸部を穴だらけにされた敵機はそのまま爆散する。
 アイロニーが派手に爆破したお陰で敵の増援は滞っているが、いつまでも続かない。
 カンチャーナを潰すなら今を置いて他にないのだ。 

 ――どうしたものか……。

 盤面を見て、敵、味方、不確定要素をどう動かすかを考え――結論が出た。
 
 「……やるしかないか」

 時間があればもっと策を練れたかもしれないが、この状況で思いついた最も大きな勝ち筋はこれだった。
 
 「ユウヤ!」
 「くたばれクソ女! ――あ? なんだ?」

 カナタを巻き込む形で散弾砲を撃ち込んでいたユウヤだったが、不意に声をかけられて不機嫌な声を上げる。 
 怒ってはいるがそこまで視野は狭まっていない。 
 何故ならヨシナリの意図に気付いて射線に入った敵機を撃ったからだ。

 「ここからは俺の指示に従ってくれ」
 
 頼む気が付いてくれ。 祈るように念じるとユウヤは僅かに首を傾げたが――
 
 「分かった。 指示を出せ。 従ってやる」

 ――そう答えた。
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