Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第679話

 ユウヤとベリアルはこれでいい。 問題は――

 「カナタさん。 ありがとうございました」

 ――カナタだ。 
 カナタはヨシナリの意図がよく分からずに訝しむような素振りを見せる。
 
 「ここから先は俺達だけで大丈夫なので他へ行ってもらって大丈夫ですよ」

 アバター状態にも関わらず胃がキリキリと痛む錯覚に襲われた。 
 
 「なに? 私が邪魔だって言いたいの?」
 
 ――圧が凄いな。

 底冷えするような恐ろしさを内包した声。 ふわわとは別のベクトルの怖さがある。
 だが、ここで怯んではいけない。 この戦いに必要なのは敵か味方だ。
 あやふやな不確定要素はノイズでしかない。 

 「そういったつもりですがご理解いただけませんでしたかね?」
 
 元々、印象は最悪なのだ。 これより下がりようがない。
 カナタの機体から刺すような視線を感じる。 逃げ出したくてたまらないがそれを押し隠す。

 「あの機体は俺達『星座盤』の獲物だって言ってるんですよ。 あ、どうしても混ざりたいならこっちの指示に従って貰えませんかね」

 ヘソを曲げて何処かへ行くならそれでいいが、カナタの性格を考えるとあり得ない。
 ならどうする? ヨシナリの下に付く度量があるか否かで対応が変わってくるのだが――
 襲って来る敵機を捌きながらカナタの反応をじっと待つ。 

 カナタはヨシナリとユウヤを見比べ――カンチャーナへと斬りかかった。

 「あんたの指示には従わない。 こっちは好きにやらせて貰う」

 ――流石に無理か。

 かなりきつく言った事もあって意外でもない反応だった。 要は想定内だ。 
 
 「ユウヤ。 悪いけど我慢してくれ」
 「分かった」
 
 ユウヤはヨシナリの意図に気付いたのか小さく頷く。
 ベリアルは察したのか僅かに下がって仕掛けの準備に入った。

 
 ――どうしても許容できなかった。
 カナタは自分でもここはどんな形でも協力体制を取る事の重要性が分からないほど馬鹿ではない。
 だが、彼女はヨシナリという人間が生理的に受け付けないのだ。

 自分はこれほどまでに狭量な人間だったのかと自己嫌悪すら浮かぶ。
 頭では分かっているのだ。 自分の存在がノイズになっているのは。
 下がって任せるのは悪い判断ではないが、ユウヤとの関係値を少しでもプラスに戻す機会はリアルとこのゲーム内を合わせても非常に少ない。 そのチャンスを逃す訳には行かなかった。

 ならプライドを捨ててでもヨシナリの指示に従うというのは間違った判断ではないはず。
 分かってはいるのだ。 それが最も合理的であると。
 現状、カンチャーナと相対しているのはユウヤ、ベリアルと全員が『星座盤』のメンバーだ。

 自分は外様である以上、合わせるべきなのは理解しているのだが『星座盤』の戦い方はカナタと噛み合わない。 恐らく自分の強みを活かす事は難しいだろう。
 それではダメだなのだ。 ヨシナリの居るこの場でヨシナリ以上の成果を見せつけないと。

 ブレードを展開。 延長された光の刃がカンチャーナへと襲い掛かるが驚異的な反応で回避。
 即座にブレードを消した後、横薙ぎに一閃しながら再展開する。
 カンチャーナは急上昇しつつ独鈷をばら撒いて躱す。 追撃を試みるがそれを阻むように独鈷が飛来。

 カナタは即座に二刀に切り替えて叩き落す。 今度は本体が来ると身構えたが、来なかった。
 何故ならベリアルとユウヤが仕掛けていたからだ。
 分身で退路を制限し、ユウヤがハンマーで防御を剥がす。 たまらずにカンチャーナは後退。
 
 そこをヨシナリが狙撃。 防御を剥がされたカンチャーナは躱すしかない。
 一方的に撃たれるのを嫌がって独鈷の矛先がヨシナリに向く。 
 ヨシナリは動かない。 それを見てカナタは内心で歯噛み。

 ――こいつ。

 ヨシナリは独鈷と自機の間にカナタを挟むようにポジショニングしていた。
 つまりカナタに独鈷を処理しろと要求しているのだ。 
 無視してもいいがここで躱す事は利敵行為に等しい。 

 よってカナタは独鈷を処理せざるを得なかった。 

 二刀で独鈷を叩き落とす。 この時点でカナタはヨシナリの意図を完全に理解した。
 カナタが使えないと判断して盾として利用する事にしたのだ。
 カンチャーナと自機の間にカナタを挟めば攻撃は必ず彼女を経由せざるを得ない。

 スルーする事も可能だが、それをやってしまうとヨシナリが落ちてしまう。
 現状、ユウヤはヨシナリの傘下である以上、そんな真似をしてしまえば完全に敵と認識されかねない。
 それだけならまだマシだが、最悪ベリアルまで一緒に襲って来る可能性すらあった。

 あの二人のヨシナリへの心酔振りは洗脳能力でも持っているのではないかと疑いたくなるレベルだ。   
 結果、思惑通りに動くしかない。
 そして何よりも業腹なのが、ヨシナリが参加した事でユウヤとベリアルの攻撃が活性化した事だ。

 後ろを気にしたくてよくなったベリアルはフォローに入らず、攪乱と攻撃の起点を担い、ユウヤが撃破を狙いつつも防御を剥がす。 両者が高いレベルの連携を取れる事の利点はそれだけにとどまらない。
 ベリアルがユウヤの機体にエーテルによる防御を施す事で幻惑攻撃から守っているのだ。

 お陰でユウヤは散弾砲ではなく大剣とそれの可変形態であるハンマーで仕掛ける事を可能としていた。
 カンチャーナとしては味方の援護を期待したい所ではある場面なのだろうが、ヨシナリが狙撃によって他のインド機が居ない所に追い立てている。 お陰で徐々に追いつめられていっていた。

 この流れを作り要となっているのがヨシナリと理解しているカンチャーナはかなりのリソースを彼の排除に使っていたのだが、間にカナタが居て通らない。 
 同時にカナタも身動きが取れなくなっていた。 

 ポジションを変えてもヨシナリは影のようにぴったりと離れない。  
 常にカンチャーナと自分の間にカナタを挟む。 
 カンチャーナを追い込みつつ邪魔なカナタを排除する非常に合理的な動きだった。

 排除だけでなく盾として利用している点もカナタの苛立ちを加速させる。
 どうにかしたいと思ってはいたが、この形に持っていかれると何もできない。
 
 ――クソッ。

 カナタにできるのはそう吐き捨てながらヨシナリを守る為に剣を振るい続ける事だけだった。 
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