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第680話
――これでいい。
ヨシナリは自分を守る為に剣を振るうカナタを一瞥して内心でそう呟いた。
現状、カナタはこの戦場に於いてノイズでしかない。
機能するのなら便利ではあるが、連携が望めないのならいない方がマシだった。
だからと言って何処かへ行く訳もない。
そうなると何とか利用するべきなのだが、今回の状況では二通りの使い道があった。
最初に思いついたのは彼女の攻撃力を活かすやり方。
これは普段の『栄光』メンバーがやっている事をヨシナリ達が担う形。
要は全員でカナタをサポートする戦い方だ。
ヨシナリとしては勝てるのであればそれでも良かったが、ユウヤの事を考えると論外だった。
そうなるとできるのはもう一つ。 カナタを敵機との間に挟んで盾にする方法。
これには二つの利点があった。
まず第一にカンチャーナは高い確率で退路の制限を行うヨシナリの排除を優先する。
状況的にヨシナリの撃破にかなりのリソースを使うだろう。
ヨシナリが逆の立場でも同じ結論に至るが、この乱戦で挙動を制限して来る相手は非常に目障りだ。
あの独鈷は無尽蔵に生み出せるようなので手数は圧倒的。
手数に物を言わせて叩き潰し、ユウヤ達の処理に専念したいはずだ。
場合によってはヨシナリは逃げに徹さなければならないかもしれないが、カナタに守って貰えばそこを気にしなくて良くなる。
加えて、ヨシナリが後ろで援護に入る事で二人が後ろを気にせず前に出られる。
特にベリアルはエーテルによって例の幻惑攻撃に対する耐性を獲得している以上、接近戦に持ち込まれるとやり難い相手だ。
さっきまではユウヤのフォローの為に動き回っていた事もあって防御に回っていた事でカンチャーナにとって比較的、優位に進められていたのだろうがこれからはそうはいかない。
そしてもう一つの利点。 それはカナタを防御に専念させる事で戦闘から排除できる事。
勿体ないと思わなくもないが、カナタが居るとユウヤのパフォーマンスが低下する。
敵であったなら逆に上がるが、友軍という中途半端な立ち位置は相当なストレスになっているはずだ。
介入を最小限にするだけで精神面の負担を大きく軽減できる。
カナタが最低限の理性を残していて本当に良かったと胸を撫で下ろす。
ヨシナリは既にカナタに関する分析はかなり深い部分まで進んでいた。
Aランクプレイヤー。 戦闘能力もそうだが、リーダーとしての能力も高い。
ヨシナリの見立てでは他人を動かすというよりは長所を見抜くのが上手いのだろう。
それは自身にも言える事で基本的に自分の得意を相手に押し付ける事で圧倒する傾向にある。
彼女が強者としてこのゲームに君臨できる理由でもあり、総合力だけならユウヤ、ベリアルに匹敵すると言っていい。 少なくともヨシナリの見立てではあの三人に大きな差はなかった。
だから、過去のユニオン戦で二対一に持って行けばあっさりと沈められると確信していたのだ。
それ故に思考は基本的に合理を重んじている。 短所という無駄を省き、長所を伸ばす。
決して間違ってはいない。
特に長所は伸ばし易い事もあって分かり易く成長を実感できる事もあってストレスに対するケアにもなる。 多くのプレイヤーが彼女に付き従う理由もそこに起因しているのだろう。
彼女に見初められた者は長所をひたすらに伸ばし、このゲームを心から楽しめるはずだ。
それがユニオン『栄光』とそれを率いるカナタの作った組織の成長構造。
悪い事ではない。 寧ろカナタの稀有な才能を活かした組織作りと言える。
――だが、ヨシナリとは根本的な部分で合わなかった。
ヨシナリは自分という人間を良く知っている。
彼は自分に突き抜けた強みはないと思っていた。 ふわわやベリアルのような天才ではない。
同じ事ができるようになるまで数倍の時間が必要だろうが、気にした事はあまりない。
ヨシナリの価値基準で言うなら長所を伸ばすよりも短所を克服して自分の物にした方がずっと気持ちがいいからだ。
少なくともこれまでそうして積んで来た。
狙撃の技量、ポジショニング、空戦飛行、パンドラの扱い、大剣の振り回し方、攻撃のいなし方。
できなかった事を努力で捻じ伏せて自分の得意へと昇華する。
これ以上に自己の成長を実感できる快感はないだろう。
ヨシナリは自分に才能があると信じていないが、自分が積んで来た時間は心の底から信じていた。
――短所は自分の可能性の一つなのだ。
そこから目を逸らすカナタのやり方とは相容れないだろう。
さて、そこまで分析が進めば何故、ユウヤにあれだけ執着しているにも関わらず拒まれるのかが見えてくる。 繰り返しになるがカナタは長所を見極める事に長けた人物だ。
それは自身にとって有用がそうでないかを見極める事に通じる。
つまる所、彼女は見切りをつけるのが早いのだ。
そうする事で余計な無駄を削ぎ落し最短の時間、最小の浪費で最大の成果を叩き出す。
――カナタはもう分かってるんだろうなぁ。
カナタの才能はユウヤを不要、切り捨てるべきものとして認識しているのだ。
それを無視して手元に置こうとしているものだから、歪みが生まれる。
ある意味、彼女の人間臭い部分ではあるのだろうが、ロジックとしては理解できるのだ。
カナタの生理がユウヤを不要と認識するが、感情が手放す事を拒む。
結果、不要でない物に矯正しなければならないという強迫観念に近い物に擦り替えられたのだ。
それがユウヤの自尊心を徹底的に踏み躙る構図を作った仕組み。
皮肉な事にカナタがユウヤに執着すればするほどに反発される事となるのだ。
愛されている結果とも取れるが、ユウヤにそれを許容できればいい関係を築けただろう。
だが、そうでなかった以上、カナタはユウヤではなく自分に合った相手を見つけるべきなのだ。
ヨシナリは深く踏み込むつもりはないが、このICwpの中であっては話は少し変わって来る。
勝利を味わう為、ユニオンの仲間として、ユウヤの友人として、彼が可能な限り気持ちよくこのゲームで遊べるように行動するつもりだった。
――そんな訳でカナタにはしばらく俺の盾として頑張って貰おうか。
彼女は合理を重んじ、状況判断もできる故にヨシナリを守らざるを得ない。
この状況でヨシナリを見捨てるような真似をすればどうなるのかを理解しているからだ。
ヨシナリは自分を守る為に剣を振るうカナタを一瞥して内心でそう呟いた。
現状、カナタはこの戦場に於いてノイズでしかない。
機能するのなら便利ではあるが、連携が望めないのならいない方がマシだった。
だからと言って何処かへ行く訳もない。
そうなると何とか利用するべきなのだが、今回の状況では二通りの使い道があった。
最初に思いついたのは彼女の攻撃力を活かすやり方。
これは普段の『栄光』メンバーがやっている事をヨシナリ達が担う形。
要は全員でカナタをサポートする戦い方だ。
ヨシナリとしては勝てるのであればそれでも良かったが、ユウヤの事を考えると論外だった。
そうなるとできるのはもう一つ。 カナタを敵機との間に挟んで盾にする方法。
これには二つの利点があった。
まず第一にカンチャーナは高い確率で退路の制限を行うヨシナリの排除を優先する。
状況的にヨシナリの撃破にかなりのリソースを使うだろう。
ヨシナリが逆の立場でも同じ結論に至るが、この乱戦で挙動を制限して来る相手は非常に目障りだ。
あの独鈷は無尽蔵に生み出せるようなので手数は圧倒的。
手数に物を言わせて叩き潰し、ユウヤ達の処理に専念したいはずだ。
場合によってはヨシナリは逃げに徹さなければならないかもしれないが、カナタに守って貰えばそこを気にしなくて良くなる。
加えて、ヨシナリが後ろで援護に入る事で二人が後ろを気にせず前に出られる。
特にベリアルはエーテルによって例の幻惑攻撃に対する耐性を獲得している以上、接近戦に持ち込まれるとやり難い相手だ。
さっきまではユウヤのフォローの為に動き回っていた事もあって防御に回っていた事でカンチャーナにとって比較的、優位に進められていたのだろうがこれからはそうはいかない。
そしてもう一つの利点。 それはカナタを防御に専念させる事で戦闘から排除できる事。
勿体ないと思わなくもないが、カナタが居るとユウヤのパフォーマンスが低下する。
敵であったなら逆に上がるが、友軍という中途半端な立ち位置は相当なストレスになっているはずだ。
介入を最小限にするだけで精神面の負担を大きく軽減できる。
カナタが最低限の理性を残していて本当に良かったと胸を撫で下ろす。
ヨシナリは既にカナタに関する分析はかなり深い部分まで進んでいた。
Aランクプレイヤー。 戦闘能力もそうだが、リーダーとしての能力も高い。
ヨシナリの見立てでは他人を動かすというよりは長所を見抜くのが上手いのだろう。
それは自身にも言える事で基本的に自分の得意を相手に押し付ける事で圧倒する傾向にある。
彼女が強者としてこのゲームに君臨できる理由でもあり、総合力だけならユウヤ、ベリアルに匹敵すると言っていい。 少なくともヨシナリの見立てではあの三人に大きな差はなかった。
だから、過去のユニオン戦で二対一に持って行けばあっさりと沈められると確信していたのだ。
それ故に思考は基本的に合理を重んじている。 短所という無駄を省き、長所を伸ばす。
決して間違ってはいない。
特に長所は伸ばし易い事もあって分かり易く成長を実感できる事もあってストレスに対するケアにもなる。 多くのプレイヤーが彼女に付き従う理由もそこに起因しているのだろう。
彼女に見初められた者は長所をひたすらに伸ばし、このゲームを心から楽しめるはずだ。
それがユニオン『栄光』とそれを率いるカナタの作った組織の成長構造。
悪い事ではない。 寧ろカナタの稀有な才能を活かした組織作りと言える。
――だが、ヨシナリとは根本的な部分で合わなかった。
ヨシナリは自分という人間を良く知っている。
彼は自分に突き抜けた強みはないと思っていた。 ふわわやベリアルのような天才ではない。
同じ事ができるようになるまで数倍の時間が必要だろうが、気にした事はあまりない。
ヨシナリの価値基準で言うなら長所を伸ばすよりも短所を克服して自分の物にした方がずっと気持ちがいいからだ。
少なくともこれまでそうして積んで来た。
狙撃の技量、ポジショニング、空戦飛行、パンドラの扱い、大剣の振り回し方、攻撃のいなし方。
できなかった事を努力で捻じ伏せて自分の得意へと昇華する。
これ以上に自己の成長を実感できる快感はないだろう。
ヨシナリは自分に才能があると信じていないが、自分が積んで来た時間は心の底から信じていた。
――短所は自分の可能性の一つなのだ。
そこから目を逸らすカナタのやり方とは相容れないだろう。
さて、そこまで分析が進めば何故、ユウヤにあれだけ執着しているにも関わらず拒まれるのかが見えてくる。 繰り返しになるがカナタは長所を見極める事に長けた人物だ。
それは自身にとって有用がそうでないかを見極める事に通じる。
つまる所、彼女は見切りをつけるのが早いのだ。
そうする事で余計な無駄を削ぎ落し最短の時間、最小の浪費で最大の成果を叩き出す。
――カナタはもう分かってるんだろうなぁ。
カナタの才能はユウヤを不要、切り捨てるべきものとして認識しているのだ。
それを無視して手元に置こうとしているものだから、歪みが生まれる。
ある意味、彼女の人間臭い部分ではあるのだろうが、ロジックとしては理解できるのだ。
カナタの生理がユウヤを不要と認識するが、感情が手放す事を拒む。
結果、不要でない物に矯正しなければならないという強迫観念に近い物に擦り替えられたのだ。
それがユウヤの自尊心を徹底的に踏み躙る構図を作った仕組み。
皮肉な事にカナタがユウヤに執着すればするほどに反発される事となるのだ。
愛されている結果とも取れるが、ユウヤにそれを許容できればいい関係を築けただろう。
だが、そうでなかった以上、カナタはユウヤではなく自分に合った相手を見つけるべきなのだ。
ヨシナリは深く踏み込むつもりはないが、このICwpの中であっては話は少し変わって来る。
勝利を味わう為、ユニオンの仲間として、ユウヤの友人として、彼が可能な限り気持ちよくこのゲームで遊べるように行動するつもりだった。
――そんな訳でカナタにはしばらく俺の盾として頑張って貰おうか。
彼女は合理を重んじ、状況判断もできる故にヨシナリを守らざるを得ない。
この状況でヨシナリを見捨てるような真似をすればどうなるのかを理解しているからだ。
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