Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第686話

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 敵のエンジェルフレームがレーザーの直撃を受けて大破。
 グロウモスは発射後、即座にその場から離れる。 
 それに追従する形でレーダーに反応。 アルフレッドだ。

 彼がシックスセンスを用いてリアルタイムでグロウモスに必要な情報を送り続ける。
 特に敵のロックオンの検知には力を入れており、狙われた場合には即座に反応できるようにしていた。
 彼女はイベント開始と同時に拠点に留まって向かってきた敵機を狙撃していたのだが、最初は散発的に向かって来る相手への迎撃という比較的楽な仕事のはずだ。

 だが、途中で雲行きが怪しくなってきた。 
 何故ならインド第二側のSランクが現れたからだ。 
 それだけではなく、かなりの数の敵機を引き連れて現れた事で瞬く間に激戦地へと変わった。

 敵の行動はかなり大胆な物といえる。 全体の半数以上を引き連れての強襲。
 元々、鶴翼で受けて様子を見る方針だった日本側の防衛ラインはあっさりと食い破られてそのまま本陣へと雪崩れ込まれた。 当然ながら、日本側も黙って見ていた訳ではない。

 受け止める形で包囲しつつ削る方針に切り替えたようだ。 
 ヨシナリ達はこれ幸いと例の幻惑使いを追って敵陣深くへと斬り込んで行ったが。
 気象兵器という見慣れない代物を使っているだけあってイベントの進捗は向こうが上なのだろう。

 いくら規模が大きかろうとこんな無謀な突撃が成立する訳がないはずなのだが、それを可能にする存在があった。 
 カンチャーナによる幻惑も要因として大きいが、それ以上に物理的に厄介な存在が居たのだ。  
 黄土色と背面の一対二つの輪が特徴的な機体。 プレイヤーネーム『ダラヴァグプタ』。 
 
 気象兵器を内蔵した機体らしく、雨雲を呼んで空から無数の落雷を降らせるという凄まじい攻撃を繰り出して来た。 攻撃範囲は観測した限り、数キロ四方と非常に広い。
 つまり拠点の近くで使うだけで勝手に設備の被害が拡大するので居るだけで迷惑な存在だった。

 グロウモスは早々に危険と判断して拠点から離れたのは正解だったようだ。
 自分だけの問題なら多少危険でも問題はなかったのだが、ユウヤからアルフレッドを預かっている以上は万が一にも失うような事にはなって欲しくない。 
 
 特に支援機は撃破されるとフレームを始め、全てのパーツがロストするのだ。 
 シックスセンス搭載機でキマイラループスのプラスフレームという中々に高級機という事もあってとてもではないが弁償できない。 
 
 ユウヤは構わないと言っていたが、借りている以上は可能な限り無傷で返したいと思っていた。
 それにアルフレッドには何度もお世話になっている。 グロウモス自身もかなりの愛着を持っている事もあって単なる支援機ではなくユニオンの仲間として大事にしたいと考えている。

 そんな理由で早々に距離を取る選択を執る事となったのだ。
 シックスセンスでダラヴァグプタの攻撃範囲は見えている。 
 後は範囲外に出て遠くからチクチクと削りに徹していた。 

 ダラヴァグプタは狙わずに取り巻きの処理を優先。 
 攻撃の優先順位はジェネシス、エンジェル、キマイラとグレードが高い順番に狙っている。
 ランカーを狙うのは危険ではあるが、乱戦という状況を利用すれば当てられない事もない。

 ――状況が許してくれるのであればダラヴァグプタを狙う事も考えたのだが――

 アルフレッドの件を差し引いても安易に手を出すのは危険な有様だった。
 グロウモスが空を見上げるとダラヴァグプタの周囲には凄まじい密度の攻撃が飛び交っているからだ。
 彼と対峙するのはかなりの大型機。 

 鐘のような印象を受ける機体でユニオン『思金神』のリーダー、タカミムスビのジェネシスフレーム『アマノイワト』だ。
 左右に浮遊する巨大な手のようなドローンと巨体にこれでもかと内蔵された武装が絶え間なく火を噴く。 圧倒的とも言える攻撃密度を誇るがダラヴァグプタもサーバーのトップに君臨するプレイヤーだ。

 こちらも並ではなかった。 
 雷を利用したフィールドのような物を展開し、全ての攻撃を強引に逸らしている。
 
 「……もう何が何だか分からない」

 思わず呟く。 
 タカミムスビのばら撒く攻撃とダラヴァグプタが降らす雷のお陰で二機を中心に空が発光している。
 それだけなら激しい戦闘で片付くのだが光量が凄まじく、眩しくて目視が難しくなっていた。

 まるで竜巻のようだ。 実際、迂闊に近寄った機体が余波で敵味方問わずに爆散している。
 アルフレッドのシックスセンスを通してみても爆発と攻撃の応酬でよく分からない事になっていた。
 状況的に拮抗はしているように見えるが、攻撃の密度が濃すぎてよく分からない。

 正直、自分の手に余ると判断せざるを得なかった。 

 「おや、君も無事だったか」

 通信に乗って聞き覚えのある声が響く。 小さく振り返るとタヂカラオがゆっくりと隣に降り立った。
 大きな損傷はないが、これまでの戦闘を繰り広げて来たらしく細かな傷などから消耗している事が窺える。

 「そ、そっちも無事でよかった」
 「見た所、君は――いや、君達はここで頑張っていたようだね」
 
 タヂカラオはアルフレッドに小さく手を振る。 
 一時、『星座盤』のメンバーだったタヂカラオとしてはアルフレッドは単なる付属品ではなく共に戦った仲間と言う事もあってぞんざいに扱うつもりはなかった。

 「そっちは?」
 「あぁ、僕かい? 『思金神』のメンバーに混ざってあそこで戦ってたんだけど、良いのを貰ってね。 さっきまで拠点内のハンガーで修理してたんだ。 ――まぁ、この有様だから、武装と内部パーツの修理だけを済ませて早々に逃げて来たけどね?」

 そのまま戦闘に復帰しようとしたのだが、偶々見知った顔を見つけて寄って来たという訳だ。
 
  「あの嵐を避けて取り巻きの排除を行っていたんだけど、僕としてはどうにかしてあのSランクに一撃入れたいと狙っているんだ。 グロウモス君はどう思う?」
 「割って入るのは現実的じゃない」

 既に結論が出ている事もあって即答。 タヂカラオはだよねぇと苦笑する。

 「いやぁ、僕もそう思うんだけど、ヨシナリ君の癖が感染ったのかな? タカミムスビさんを出し抜いてあいつを仕留めたくてしょうがないんだ」
 
 それを聞いてグロウモスの脳裏に電流が走った。

 ――ハニー、何を恐れているんダ!? 
 
 今の自分を叱咤するように脳内にヨシナリの声が響いたからだ。
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