Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
688 / 865

第688話

 「ふはははは、どうしたジャパンの戦士よ! お前の力はその程度か!?」

 ダラヴァグプタは笑いながら雷の雨を降らせる。
 対峙する敵――タカミムスビというプレイヤーの機体は手強かったがこれまで戦った相手に比べればいくらか劣っていた。 

 ――所詮はAランクか。

 戦えば相手のランクは何となくではあるが見えてくる。
 少なくともタカミムスビからはこれまでのサーバー対抗戦で戦ってきたSランクプレイヤーが身に纏う強者のオーラが足りていなかった。
 
 特に前回当たったアメリカ第一サーバーのSランク達は文字通りの怪物揃いだ。
 あれだけの戦力を揃えておきながら「最強」は不参加だったという恐ろしさ。
 恐らくはSランクの中でも突出した存在なのだろう。

 ダラヴァグプタもランク昇格後に触りだけは聞いていたので、Sランクを越えた存在――オーバーSランクの存在は知っていたのだ。 
 彼等は運営の設けた能力水準を越える事で特別なミッションに参加できる権利を獲得した超越者。
 正確な人数はダラヴァグプタも知らないが、彼の見立てでは世界に十人いるかいないかといった所だろう。

 強者の殿堂。 その最奥に辿り着いた者達。
 報酬も桁外れと聞いてはいるが、そんな事よりも最強という称号が欲しかった。
 強い守秘義務があるが、自分だけが得る事のできる最上の栄誉であり、最高の勲章。

 存在を知ってからダラヴァグプタは堪らなくそれが欲しかった。 
 だから彼は強くなる事に固執しているのだ。 その為に必要な事は何でもやる。
 そんな覚悟でこのゲームに臨んでおり、誰の挑戦でも請われれば受け、イベント、ランク戦には積極的に参加。 とにかく戦いの経験を積む事で強くなると彼は固く信じていたのだ。

 特に他のサーバーの猛者と戦えるこの対抗戦は彼にとって積み上げた物を試しつつ、腕を磨くチャンスでもある。 絶対に見逃せないイベントと言えた。
 強くなりたい。 もっと自分の可能性を追求したい。 自分はまだまだ遠くへ行ける。

 登り始めたこの山の頂はまだ見えない。 
 先へ進む為にはこのまだ見ぬ登山ルートを開拓しなければならないのだ。
 
 ――あぁ、このICpwは俺をどこまでも惹き付けてくれる。

 ダラヴァグプタはこのインド第二サーバーでは最強であったが、彼は自分が井の中の蛙である事をよく理解していた。 
 だから大海を知りたい。 この世界という大海原で自分の力は何処まで通用するのかを試したいのだ。
 ロシア、アメリカ相手に二連敗した事で大規模ユニオンは士気の低下を懸念していたが、ダラヴァグプタには心の底からどうでもいい事だった。 

 ――愚かな奴らだ。 負ける事の何がいけない?

 敗北を屈辱と捉え、次こそは勝利を息巻いている者も多かったが、ダラヴァグプタからすれば敗北は忌避する物ではなく血肉にする物だと捉えていた。
 何故ならダラヴァグプタよりも強い存在が居るという事はまだ道が続いているという事だからだ。

 この視界すら定かではない道の先、そこを進む強者の存在は先があるという事の証左。
 勝利は自らの踏みしめた足跡の結果、敗北は見果てぬ先の存在の証明。
 未知の敵、未知の戦いを求めてダラヴァグプタは先へと進むのだ。

 彼の機体『ヴリトラハン』はその為に蓄えた力の象徴と言える。
 今回の相手であるジャパンサーバーにも彼は大いに期待していた。
 自分を成長させてくれる何かを見せてくれるのかを。

 だが、目の前のタカミムスビからは期待したほどの物は感じられなかった。
 手強い相手ではある。 相当数のカスタマイズを経た機体は非常に堅牢で火力に自身のあったにも関わらず碌にダメージを与えられていない。

 ――とにかく硬い。

 それがダラヴァグプタがタカミムスビに抱いた第一印象だ。
 火力も凄まじいが、既存兵器の延長という事もあってそこまでの怖さは感じなかった。
 怖さはないが決して弱くはない。 事実としてお互いに決め手に欠いた状態で膠着している。

 タカミムスビの攻撃はダラヴァグプタの防御を貫けずに、ダラヴァグプタの攻撃もタカミムスビの守りを突破できない。 
 ならこのまま千日手になるのか? 答えは否だ。
 突破は出来ないがタカミムスビは徐々に消耗している。 

 防御兵装にかなりのリソースを持っていかれている事もあってジェネレーターへの負担が徐々に溜まってきているのだ。 対するダラヴァグプタは落雷を吸収する事でエネルギーを補充している。
 つまり外部で賄っているのだ。 この差は大きい。

 加えて実弾兵器は内部での生産が追いついておらず徐々に攻撃の密度が低下している。
 生産系の武装は休ませずに長時間の稼働を行って無理をさせると故障やエラーの発生率を上げ事もあってダラヴァグプタは余り信用していなかった。

 本来なら可能性としては無視してもいいレベルではあるが、こういった高レベルかつ長時間の戦闘ともなると徐々にだがボロが出て来るのだ。 このまま行けば勝利は時間の問題だった。 
 タカミムスビとの決着が付けば次は誰と戦うべきか? 横目でレーダー表示を確認する。
 
 戦況はやや優勢と言える状態だった。 
 味方機は事前に絶縁処理を施している事もあってこの雷の雨が降る戦場でも一定の継戦能力を確保できており、防御手段を持たない敵機は生き残れない。
 
 そして防御手段を持っていたとしてもリソースを大きく割かれる事で戦闘能力が大きく落ち込む。
 このダラヴァグプタが支配する領域では強者のみが存在する事を許される。
 耐えられない弱者は即座に淘汰される修羅の世界。 

 ある意味、彼の理想を体現した空間とも言えるかもしれなかった。
 攻撃範囲には敵の拠点の大部分が含まれており、このまま膠着しているだけでジャパン側の施設は使い物にならなくなる。 

 当然ながらダラヴァグプタがこの状況を作り出していると理解している以上、排除したいとは思っているのだが彼の鉾を掻い潜り盾を貫ける猛者は居ないようだ。
 結果としてタカミムスビとの一騎打ちという形になったのだが――

 ――?

 ここに来て動きに変化があったのだ。 一部の敵機が妙な動きをしていた。
 
 『随分と好き勝手してくれたようだが、充分に観察させて貰ったよ』
 「ほう、この状況を打開し、この俺を仕留める算段が付いたとみていいのだな?」
 
 タカミムスビの口調からは焦りの類は感じられない。
 虚勢の可能性もあるが果たしてどちらなのか―― 
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。