Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第689話

 ダラヴァグプタの視界の端で敵機が撃墜された味方機の残骸を盾にして上がって来たのだ。
 
 ――気付いたか。

 絶縁処理を施している以上、残骸だったとしても雷を防ぐ盾として機能はする。 
 加えて盾持ちを下位の機体にやらせている点からもこの状況を打開する手を導き出せたのだろう。
 そうなるとこの先に何をしてくるのかも読めたダラヴァグプタは盾持ちの機体を狙ってレーザーを発射。
 
 『おっと』

 即座にタカミムスビが射線に割り込む。 
 その後ろで大量のミサイルを抱えたソルジャータイプが雷雲に突っ込んで行く。
 レーザーを拡散に切り替えて照射。 

 タカミムスビの防御をすり抜けて何機かを撃墜すると凄まじい爆発が発生する。
 明らかに普通の爆発ではない。 つまり用途は――

 「自爆か!?」

 その通りだった。 機体群は雷雲に突っ込んだと同時に自爆。
 それにより雲が吹き払われて空が露わになる。

 『いや、気象兵器とは恐れ入ったよ。 最初の竜巻から見ていたけど、準備にそこそこの時間がかかるみたいだね。 つまり、その雲さえ完全に散らしてしまえば次を用意するのは無理なんだろう?』

 タカミムスビの言葉は正しい。 
 竜巻からのカンチャーナの幻惑は相手を削る以上に雷雲を生み出す為の時間稼ぎでもあったからだ。
 それにより圧倒的な制圧力と火力を実現したのだが、本質は雲である以上は吹き散らされれば力を失うのは当然と言える。

 雲がなくなったと同時に比較的、安全圏で戦っていたジャパン側ランカー達が息を吹き返す。
 雷による制空権の確保が崩れた事で優位は消えたが、充分に削ればした。 
 絶縁処理を施していたとはいえ、限度はあったインド側も自由に動ける。

 ――ここからは正面からの殴り合いだ。

 「面白い! よくぞ我が雷雲を吹き払った。 だが、その消耗で我々に勝てるか!?」
 『そこはやってみないと分からないだろうね? ただ、ウチのランカー達は中々にしぶといよ。 ――それに――』

 そこまで言ってタカミムスビは小さく笑う。 
 底が見えない嫌な笑い方だった。 ダラヴァグプタの警戒心が持ち上がる。

 『底を見せていないのはこちらも同じだ。 これまで随分と気持ちよく暴れてくれたんだ。 そろそろ代わってもらいたいものだね?』

 同時にタカミムスビの機体がその姿を変えた。



 ――外装展開。 殲滅形態へ移行。

 支援AI『常世とこよ』、『八意やごころ』起動。
 タカミムスビはこれまでの時間を耐え抜いた自身への褒美と言わんばかりに愛機に秘められた力の一つを解放する。 鐘を思わせるデザインの外装がバラバラと剥がれ落ちると機体の周囲に展開。

 中から現れたのは二十メートルクラスの巨大な機体。 
 左右に展開していた巨大な腕は筒のような形状に変形して背面へ。 
 接続と同時に表面の装甲各所がスライドし、無数のレンズのような物が顔を覗かせる。

 ダラヴァグプタ。 インド第二サーバーのSランカー。
 彼と同格以上に動けるプレイヤーが見当たらなかった点からこれ以上は出てこないと判断。
 タカミムスビは彼の事を非常に高く評価していた。 

 気象兵器という癖の強い代物を集団戦闘でここまで上手く機能させたのは賞賛に値する。
 だが、全体的な質はお世辞にも高いとは言えない。 
 イベントの進捗が進んでいるからと言って総合力で下回っている訳ではないという好例だ。

 特にイベント戦は質よりも数が物を言う場面が多い。 
 日本サーバーが後進である最大の理由はプレイ人口の少なさからだ。 
 特に最初の防衛戦で足踏みしてしまったのは大きな遅れと言っていい。

 だが、生まれた差も徐々に埋まってきている。 
 事実としてラーガストという規格外を除いてもアメリカ第三、フランスにも日本のランカーの力は充分に通用していたからだ。 
 
 タカミムスビとしてもいい加減に後進サーバーと見下される事に辟易していた事もあってここらでしっかりと勝っておきたい所だった。 
 前々回は勝利という結果に終わりはしたが、ラーガストが居なければ逆転していたような内容だ。

 アレを勝利と言えるほどタカミムスビは傲慢ではない。
 それに日本サーバーも充分に世界に通用する事を示す意味でもここらでSランクを叩き潰し、自分達は強いのだと周囲にも示すのだ。

 分析も済んだ。 ダラヴァグプタは確かに強いがこれまでに見て来たSランカーに比べれば並以下だ。
 光学兵器主体のビルドと物理、光学両面に強いフィールド。 
 雷を直にエネルギー源にする事で攻防で発揮する高いパフォーマンスと圧倒的なスタミナ。

 それを実現させているにも関わらず通常機体とそこまで変わらないサイズ。
 小さいという事はそれだけ機動性を発揮しやすい事でもある。
 
 ――随分と欲張ったね。

 火力と機動性を両立させる試みは素晴らしいと思うが、タカミムスビは完全に同意は出来ない。
 何故なら世の中には完璧という言葉は存在しないからだ。 
 どんな物にも必ず弱点は発生する。 補う事は可能だが消し去る事は不可能と彼は考えていた。

 結果を得る為には犠牲は必要だ。 
 雷雲を消し飛ばす為に低ランクのプレイヤーを使い潰した事も、彼の機体は火力と重装甲に特化した事で機動性を捨てた事も立派な犠牲――いや、必要経費だ。

 タカミムスビの認識では軽量機は吹けば飛ぶ。 
 ラーガスト並みの技量があるなら話は別だが、これまでの攻防で充分に見せて貰った。
 
 「ではたっぷりと楽しんでくれたまえよ」

 ターゲットマルチロック。 フルファイヤ。
 
 ――次の瞬間、インドサーバーの機体数十機の反応が一瞬でロストした。

 『――っ!?』

 これにはダラヴァグプタも思わず息を呑む。 

 「懐かしいだろう? 前に喰らった時からずっと使ってみたいと思ってたんだ」

 次の瞬間、更に数十機の反応がロスト。 
 ダラヴァグプタは即座に反射点・・・を狙ってレーザーを発射。
 それは集まる事で放ったレーザーを弾き返す。
 
 「無駄だ。 君の攻撃でこの結界は破れない」
 『面白い! あの化け物の武装を真似たか!?』
 「あぁ、優れているのだから、使いたいと思うのは当然じゃないか」

 それは周囲に展開した装甲板が生み出す結界。 
 放ったレーザーを無数に乱反射して敵を撃ち抜く光の檻。
 あの巨大なイソギンチャク型エネミーが使用していた反射兵器そのものだった。
 
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