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第690話
数百の反射板と数十の方向から放たれるレーザーが乱反射して襲い掛かる。
まさに結界と言える領域だが、これの恐ろしい所はその猛威を外にまで及ぼせる点だ。
タカミムスビは実弾兵器を使用せずに全て光学兵器に切り替えてとにかく撃ちまくる。
真っすぐ飛ばすだけで後は無数の反射板が勝手に軌道を変えて敵機に襲い掛かるのだ。
ダラヴァグプタはフィールド展開で凌いでいるが、他の機体はそうも行かない。
迂闊に結界に足を踏み入れた者は何処から飛んでくるか分からないレーザーに反応できずに即座に撃墜され、反応、もしくは防御できたとしても二の矢、三の矢が飛んできて即座に刈り取る。
徹底的に計算されつくされた軌道によって敵機のみがその数を凄まじい勢いで減らしていくのだ。
つまり味方だけを綺麗に避けて攻撃している。
その一点だけでタカミムスビの凄まじさが分かるが、この手品には種があった。
彼の機体。 アマノイワトに搭載されているAIの力だ。
二機のAIユニットを攻撃の軌道計算などに利用しており、それにより人間の脳では処理が難しいような複雑な攻撃も実現を可能とした。
過去の防衛戦。
タカミムスビも当然参加しており、イソギンチャク型の中から出て来たウツボ型の火力に屈したのは彼にとっても苦い思い出だった。 だが、それ以上に思った事がある。
――欲しい。
あのイソギンチャク型は中からトルーパーが出て来た以上、強化装甲のように内部で操作できる仕組みなのだ。 つまり仕様上、プレイヤーにも使用できるはずだった。
タカミムスビはこれまでに様々なゲームに触れており、理不尽な目に遭った経験も少なくない。
そんな時に思った事はこうだ。
――自分も使ってみたい。
RPGをプレイすれば魔王を使ってみたいと思い、シューティングゲームをやればボスの理不尽な弾幕を自分で発生させたいと考えていた。 どんな形であれ、良い物は良いのだ。
より良い結果を得る為にはより良い道具を求めるのは当然の事だろう。
このゲームでも同じ事だ。
強い武器を持った敵が現れれば同じ武器を使い、強力な機体構成の相手が現れればそれを真似た。
そして手強いプレイヤーが現れれば仲間にしようと画策する。
強い力はどういった形であれ手に入れたい。
そうしてその中から自分に合った物を抽出していけば自然と上がって行ける。
事実としてユニオン『思金神』はこうして出来上がった。
ユニオンシステムが実装される前から派閥のような物を作っており、有力なプレイヤーとは連絡を密にして関係を維持。
タカミムスビは人が上を目指すのは欲望があるからだという事をよく理解していた。
何故なら彼自身が、自己の欲望に対して忠実だったからだ。
欲望。 そう、欲望なのだ。 欲しがれ、欲張れ、それが向上心に変換される。
その思想はユニオン運営にも遺憾なく発揮されており、一軍などの階層を意図的に作って上位を過剰に優遇、下位をそこそこ優遇、そして最下層には最低限。
そうする事で上を目指す事で得られる物が欲しくなってくるはずだ。
つまり、欲望が生まれる。 上手く育てはそいつは確実に強くなるはずだった。
そしてユニオンの規約で縛ればそう簡単には逃げられない。
当然ながら成功者とそれ以外に分けるのは余りよろしくなかった。
高すぎる目標は欲望を畏縮させる。 だから階層を細かく分けたのだ。
十軍に上がれればランクに見合った装備の支援。 九軍に上がればよりグレードの高い装備の支給。
そうやってハードルを徐々に高くしていく。 欲望は満たすものではなく育てる物だ。
加えて競わせる事でユニオン内での競争意識を適度に煽る。
内部分裂しない程度に調整しなければならないが、今の所は大きな問題も起こっていない。
ただ、順調かと言われれば疑問符が付く。 大きな問題はないが小さな問題はあった。
それは三軍以下の上位プレイヤーがその位置で満足してしまう事だ。
満足。 タカミムスビはその言葉があまり好きではなかった。
何故なら満足は欲望の終着点。 一つの渇望が死ぬ瞬間だからだ。
タカミムスビの認識では欲望の多さと伸び代がイコールと思っている事もあって人は一つの満足を得ると一つの成長を失うと考えていた。
だからと言って忌避しろとは言っていない。 満足して次の欲望を探す者も居るからだ。
まるで頂上を征服した登山家が次の山を目指すように欲望を満たした事で次の欲望を探すという貪欲さは非常に好ましい。
だから、タカミムスビはヨシナリの事が大好きだった。
彼は非常に良い。 勝利に執着するという強い欲望があり、得て満足したとしても次の勝利が欲しいと新たな欲望を発生させている。
欲望の無限増殖炉だ。 タカミムスビはそれを知って感動した。
負ける事が死ぬほど嫌いで一度負けた相手は徹底的にリサーチしてリベンジの機会を窺う。
しかもそれは仲間であっても例外ではないのだ。
勝利。 執着する対象としては理想的とも言えるファクターだ。
特に得る過程に完全な正解がないのがいい。
つまり得る為に多種多様なスキルを身に着ける必要があり、勝利という結果は勝負という過程がある以上、永遠について回る。 最高なのはその欲望が全方位に向いている事だ。
一時所属したタヂカラオから聞いた話からもそれは明らかで、それ以上に少し話しただけでタカミムスビにはお見通しだった。
彼は強い欲望を飼っており、それを上手に育てている自分の同類だと。
いや、勝利という麻薬のような刹那の快楽の為にあらゆる労力を厭わない姿を見れば欲の深さはタカミムスビすらも凌ぐ。 だから、タカミムスビは確信している。
ヨシナリが身の内に飼っている欲望という獣が空腹でいる限り、彼は何処までも強くなるだろう。
――彼はあのラーガストですら欲望の対象なのだ。
誰もが勝てる訳もないと諦めた相手に対して、あの圧倒的な実力差を見ても叩き潰したいと欲望を燃やし続けている。 なんて素晴らしいんだ。
自分を含めた『思金神』のメンバー全員に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいだ。
だからタカミムスビはヨシナリが欲しかった。 とても欲しかった。
今も非常に欲しいと思っており、どうやれば『思金神』に入ってくれるのだろうかと常に考えている。
――おっと。
いけない、いけないとタカミムスビは己を律する。
思わず欲望が漏れてしまっていたからだ。
まさに結界と言える領域だが、これの恐ろしい所はその猛威を外にまで及ぼせる点だ。
タカミムスビは実弾兵器を使用せずに全て光学兵器に切り替えてとにかく撃ちまくる。
真っすぐ飛ばすだけで後は無数の反射板が勝手に軌道を変えて敵機に襲い掛かるのだ。
ダラヴァグプタはフィールド展開で凌いでいるが、他の機体はそうも行かない。
迂闊に結界に足を踏み入れた者は何処から飛んでくるか分からないレーザーに反応できずに即座に撃墜され、反応、もしくは防御できたとしても二の矢、三の矢が飛んできて即座に刈り取る。
徹底的に計算されつくされた軌道によって敵機のみがその数を凄まじい勢いで減らしていくのだ。
つまり味方だけを綺麗に避けて攻撃している。
その一点だけでタカミムスビの凄まじさが分かるが、この手品には種があった。
彼の機体。 アマノイワトに搭載されているAIの力だ。
二機のAIユニットを攻撃の軌道計算などに利用しており、それにより人間の脳では処理が難しいような複雑な攻撃も実現を可能とした。
過去の防衛戦。
タカミムスビも当然参加しており、イソギンチャク型の中から出て来たウツボ型の火力に屈したのは彼にとっても苦い思い出だった。 だが、それ以上に思った事がある。
――欲しい。
あのイソギンチャク型は中からトルーパーが出て来た以上、強化装甲のように内部で操作できる仕組みなのだ。 つまり仕様上、プレイヤーにも使用できるはずだった。
タカミムスビはこれまでに様々なゲームに触れており、理不尽な目に遭った経験も少なくない。
そんな時に思った事はこうだ。
――自分も使ってみたい。
RPGをプレイすれば魔王を使ってみたいと思い、シューティングゲームをやればボスの理不尽な弾幕を自分で発生させたいと考えていた。 どんな形であれ、良い物は良いのだ。
より良い結果を得る為にはより良い道具を求めるのは当然の事だろう。
このゲームでも同じ事だ。
強い武器を持った敵が現れれば同じ武器を使い、強力な機体構成の相手が現れればそれを真似た。
そして手強いプレイヤーが現れれば仲間にしようと画策する。
強い力はどういった形であれ手に入れたい。
そうしてその中から自分に合った物を抽出していけば自然と上がって行ける。
事実としてユニオン『思金神』はこうして出来上がった。
ユニオンシステムが実装される前から派閥のような物を作っており、有力なプレイヤーとは連絡を密にして関係を維持。
タカミムスビは人が上を目指すのは欲望があるからだという事をよく理解していた。
何故なら彼自身が、自己の欲望に対して忠実だったからだ。
欲望。 そう、欲望なのだ。 欲しがれ、欲張れ、それが向上心に変換される。
その思想はユニオン運営にも遺憾なく発揮されており、一軍などの階層を意図的に作って上位を過剰に優遇、下位をそこそこ優遇、そして最下層には最低限。
そうする事で上を目指す事で得られる物が欲しくなってくるはずだ。
つまり、欲望が生まれる。 上手く育てはそいつは確実に強くなるはずだった。
そしてユニオンの規約で縛ればそう簡単には逃げられない。
当然ながら成功者とそれ以外に分けるのは余りよろしくなかった。
高すぎる目標は欲望を畏縮させる。 だから階層を細かく分けたのだ。
十軍に上がれればランクに見合った装備の支援。 九軍に上がればよりグレードの高い装備の支給。
そうやってハードルを徐々に高くしていく。 欲望は満たすものではなく育てる物だ。
加えて競わせる事でユニオン内での競争意識を適度に煽る。
内部分裂しない程度に調整しなければならないが、今の所は大きな問題も起こっていない。
ただ、順調かと言われれば疑問符が付く。 大きな問題はないが小さな問題はあった。
それは三軍以下の上位プレイヤーがその位置で満足してしまう事だ。
満足。 タカミムスビはその言葉があまり好きではなかった。
何故なら満足は欲望の終着点。 一つの渇望が死ぬ瞬間だからだ。
タカミムスビの認識では欲望の多さと伸び代がイコールと思っている事もあって人は一つの満足を得ると一つの成長を失うと考えていた。
だからと言って忌避しろとは言っていない。 満足して次の欲望を探す者も居るからだ。
まるで頂上を征服した登山家が次の山を目指すように欲望を満たした事で次の欲望を探すという貪欲さは非常に好ましい。
だから、タカミムスビはヨシナリの事が大好きだった。
彼は非常に良い。 勝利に執着するという強い欲望があり、得て満足したとしても次の勝利が欲しいと新たな欲望を発生させている。
欲望の無限増殖炉だ。 タカミムスビはそれを知って感動した。
負ける事が死ぬほど嫌いで一度負けた相手は徹底的にリサーチしてリベンジの機会を窺う。
しかもそれは仲間であっても例外ではないのだ。
勝利。 執着する対象としては理想的とも言えるファクターだ。
特に得る過程に完全な正解がないのがいい。
つまり得る為に多種多様なスキルを身に着ける必要があり、勝利という結果は勝負という過程がある以上、永遠について回る。 最高なのはその欲望が全方位に向いている事だ。
一時所属したタヂカラオから聞いた話からもそれは明らかで、それ以上に少し話しただけでタカミムスビにはお見通しだった。
彼は強い欲望を飼っており、それを上手に育てている自分の同類だと。
いや、勝利という麻薬のような刹那の快楽の為にあらゆる労力を厭わない姿を見れば欲の深さはタカミムスビすらも凌ぐ。 だから、タカミムスビは確信している。
ヨシナリが身の内に飼っている欲望という獣が空腹でいる限り、彼は何処までも強くなるだろう。
――彼はあのラーガストですら欲望の対象なのだ。
誰もが勝てる訳もないと諦めた相手に対して、あの圧倒的な実力差を見ても叩き潰したいと欲望を燃やし続けている。 なんて素晴らしいんだ。
自分を含めた『思金神』のメンバー全員に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいだ。
だからタカミムスビはヨシナリが欲しかった。 とても欲しかった。
今も非常に欲しいと思っており、どうやれば『思金神』に入ってくれるのだろうかと常に考えている。
――おっと。
いけない、いけないとタカミムスビは己を律する。
思わず欲望が漏れてしまっていたからだ。
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