Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第691話

 ――今見るべきは目の前のダラヴァグプタだ。

 タカミムスビは攻撃を凌ぎながらもこちらを仕留めようと狙い続けているダラヴァグプタに意識を向ける。 彼の機体構成、強み、弱みはもう見えた。
 最大の強みは気象兵器を用いる事で戦場そのものを自らに有利な空間へと作り替える事だ。

 加えて雷による無制限の攻撃。 特に大規模戦闘に於いてはこれ以上ないほど強力な武装と言える。
 それによるエネルギーの補充。 落雷は制御できないというデメリットはあるが吸収する事でそれをメリットに変換する発想は素晴らしい。

 高出力の武装、防御兵装が使い放題なのは素直に羨ましいと思った。
 ジェネレーターへの負担は最小に抑えた状態で高い機動性も発揮できるといい事しかない。 

 ――以上がダラヴァグプタの強みだ。

 さて、これからが弱みになる。 まずは有利な領域を形成する雷雲の精製。
 これには非常に時間がかかる。 
 恐らくは規模を抑える事で所要時間を大幅に短縮できるのだろうが、大規模戦闘に際して時間をかけてこれだけの規模にしたのだろう。 

 個人戦レベルであったのならこれの二割もあれば充分だ。
 次に維持。 何らかの手段を用いて雷を落とせるように弄っているのだろうが、本質的にはただの雲でしかない。 つまり爆破などの何らかの手段で吹き散らせば無力化は可能だ。

 自らの領域を失ったダラヴァグプタの脅威度は大きく落ちる。
 特にエネルギー供給が止まるのはかなり大きい。 武装使用、機動に悪影響が出るからだ。

 恐らくはこれまでの対抗戦でも似たような形に持っていかれて敗北したとみていい。
 当人も自覚があるようで常に上を取るような立ち回りをしている点からもどうにもならないと割り切っているのだろう。 
 
 だからと言ってあの規模の雷雲を守るのは現実的ではない。
 ダラヴァグプタの考えとしては種が割れる前に決めてしまおうといった所だろう。 
 速攻をかけてきた点からも間違いない。 

 正面からやれば勝利は厳しい相手ではあったが、強みを剥ぎ取ればどうとでもなる典型だ。
 タカミムスビの最終的な評価は「条件付きで集団戦では絶大な力を発揮する」となる。
 素晴らしい火力と殲滅力だが、種さえ割れれば驚くほどのものではなかった。

 もう勝ち筋も見えている。 余程の隠し玉がない限り引っ繰り返される事はない。
 主兵装は供給される無尽蔵のエネルギーを利用した高火力の光学兵器。
 携行武装が見当たらないのは邪魔になるか必要ないと割り切っているかのどちらかだ。

 雷を受ける関係で使い物にならなくなるからだろうか?
 武器自体を本体と同じ仕様にできなくはないが、実弾だと干渉を起こすのかもしれない。
 弱点も非常に分かり易い。 背中にある二つのリングだ。
 
 雷を誘導して受け止める避雷針の役割を果たしつつジェネレーターへ直接エネルギーを供給するシステムで推進装置も兼ねており、破壊されたら困りますと全力で訴えている代物だった。 
 挙動自体もAランクの水準では高い部類ではあったが、Aの域を出ていない。

 ――つまりSとして見るならそこまで怖くない相手だ。

 レーザーを連射。 入射、反射角度の調整。
 経由する反射板を増やして意識を散らす。 ダラヴァグプタは躱す、躱す、躱し続ける。
 素晴らしい反応だ。 ここまでされても闘志が衰えない。

 彼の危機を察したインド側の機体がタカミムスビとダラヴァグプタの下に集まって来るがついでとばかりに撃墜。 エンジェルフレーム以上でないとこの攻撃は防げない。
 防げたとしても連続で叩きこまれるレーザーに耐えるのはスペック上、不可能だ。

 そして打開の突破口になり得るジェネシスフレームは『思金神』の精鋭が抑えている。
 数は違うが質は上だと自負している事もあって多少の横槍は入るかもしれないが、割って入る事はまずないと確信していた。

 「つまる所、君はもう詰んでいるのだよ」
 『は、ははは! 何を言っている!? ここからが面白いのだろうが! 俺はまだ健在で、貴様の喉笛を食い千切らんと狙っているぞ!」

 それを聞いてタカミムスビは少し嬉しくなった。
 何故ならダラヴァグプタからもっと闘争を楽しみたいといった欲望を感じたからだ。
 欲望は良い。 サーバーが同じならユニオンメンバーに欲しいぐらいだ。

 ダラヴァグプタのタカミムスビを仕留めたいといった欲望に刺激され、彼自身も敵を屠り勝利したいといった欲望が高まるのを感じる。 
 これだ。 この欲望の高まりが、渇望が、自分を新しい領域へと誘う道標となる。

 ダラヴァグプタは香り高く素晴らしい食材ではあったが、咀嚼しすぎたようだ。
 味がしなくなった。 つまり、そろそろ呑み込まなければならない。
 ありがとうダラヴァグプタ君。 

 君の欲望は素晴らしく、自分が高みへ向かう為の足場として立派に機能してくれた。 
 気象兵器の扱いに関しては非常に参考になり、この素晴らしい時間の記憶はしばらくの間は色褪せる事はないだろう。

 回避先の予測、及び不確定要素の排除も完了。 これは当たる。
 不意に反射板の操作に一部ノイズ。 
 何だと眉を顰めるがもう仕掛けた以上はどうにもならないと無視。

 反射したレーザーが複数、フェイクを混ぜながらダラヴァグプタへと殺到――する前に想定外の角度から飛んで来た大出力のレーザーがダラヴァグプタのフィールドごと彼の機体を貫いた。
 ダラヴァグプタは何かを言いかけていたが形になる前に爆散。

 「……どういうつもりかな?」

 自分でも驚くほどに低く平坦な声が出た。 

 「余計な事とは思いましたが、助太刀をと思いまして」

 そう応えたのはタヂカラオだ。 何が起こったのかも理解している。
 視線を下に向けると問題の攻撃を放ったキマイラ+が大型の狙撃銃を構えていた。
 タヂカラオがエネルギーリングで数枚の反射板の動きを制限し、キマイラ+――ネームタグを見ると『グロウモス』と表示されているプレイヤーに都合のいい角度に調節したのだ。

 そこを一撃。 助太刀という言葉を使っていたが、明らかに狙っていた。
 つまりタヂカラオはタカミムスビを出し抜く機会を窺っていたのだ。
 表情は笑顔だったが、内心は複雑だった。 

 タヂカラオがユニオントップの自分に歯向かえるぐらいに欲望を育てている事は祝福するべき事で、そこは純粋に嬉しかったのだが獲物を横取りされてしまったのは少し不快だ。

 ――まぁ、ここは素直にやられたと言っておこうか。
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