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第706話
正直、下がって様子を見る――要は他のプレイヤーに先行させてある程度の安全を確認してから進むべきぐらいは言って来ると思っていたヨシナリにとってグロウモスの返事はありがたい物だった。
彼女もこのイベントをしっかりと楽しんでくれているようだ。
「分かりました。 行きましょう」
移動ルートに関してはもう頭の中で組み立ててある。
ヨシナリは念の為とボーンヘッドに内蔵されていたマップを確認しながら先へ。
向かう先は二層へと降りる為のリフトだ。
エレベーターと違って一階層だけを移動できるようになっている。
資材だけでなく機体の移動手段も兼ねているだけあってかなり大きい。
それに襲撃を受けた場合でも飛び降りて下層に移動する事も可能であって比較的安全だ。
戦闘音が遠い事からこの位置は基地内でも外縁に当たる事で警戒が薄いのか、敵、味方どちらとも遭遇する気配はないが、下層に降りるリフトやエレベーター前には確実に何かしら居るはずだった。
――できれば二層ぐらいまではテロリスト相手だと楽でいいんだけど……。
一応、このボーンヘッドには敵味方の識別はされており、テロリスト側の機体にも味方と認識されているはずだ。 後は変に見咎められなければ下に降りるぐらいは何とかなる。
そう思いたかったのだが、先の方で響く銃声や砲声に掻き消された。
「ヨシナリ」
「分かってます」
明らかに戦闘によって発生した音だ。 問題は音が一種類しかない事。
基本的に勢力が二つ以上あるならその際に響く音は自然と混ざり合ったものになる。
残念ながらこの先で響く音は一種類。 つまり、何かが何かに対して一方的に銃撃、ないし砲撃を浴びせている事に他ならない。
通路の先からボーンヘッドと鹵獲Ⅰ型が射撃しながら後退している姿が視界に入る。
プチプチと音声が途切れている事から何やら叫んでいるらしいが、ヨシナリ達には一切聞こえない。
「何? 音が途切れてる?」
「仕様みたいなの気にしない方がよさそうです。 うーん、これはヤバそう」
ヨシナリはそう呟いてそっと近くの通路に入って身を隠す。
テロリストの機体は射撃しながら突き当りの通路をそのまま後退して姿が消える。
彼等を追うようにガシャガシャと異様な足音が発生し――
「うわ、何だアレ?」
思わず呟く。 姿を現したのは異様な何かだった。
ボーンヘッドやⅠ型のパーツ、後は無数の小さな人型の何かを寄せ集めたような異形の鉄塊。
巨大な塊に手足が生えたようなそれはバランスの悪さもあってそこまでのスピードはなかったが、確実にテロリスト達を追跡していた。
――思った以上にヤバいのがいたなぁ……。
例のクリーチャーの特製が分からなかった事もあって脅威度は高めに見積もっていたが、あんなのが大量に徘徊しているのなら話が変わって来る。 明らかに手持ちの武装で処理するのは難しい。
同時にテロリストの意図に関しても何となくだが分かった。
Ⅰ型もボーンヘッドも本来ならもっと速度が出るはずなのに相手に見失わせない距離を維持している。
恐らくはあのままプレイヤー達の所まで引っ張ってぶつけるつもりのようだ。
少し時間を空け、何も出てこない事を確認してからクリーチャーが飛び出した方へと向かう。
通路は酷い有様だった。
爆撃でもされたのかと言いたくなるほどに不規則に空いた床の穴と大きく抉れた壁。
遠目で詳細までは分からなかったがどれだけ歪な形をしていたのかがよく分かる。
更に進むと戦闘の跡と思われる痕跡があちこちに刻まれていた。
銃弾、砲弾の跡は勿論、血痕も少なくない。
この様子を見れば海から仕掛けたプレイヤー達がどうなったのかは想像に難くなかった。
「……肝心の死体や残骸がな――あ、そっか……」
「お察しの通りあの団子の一部になったんでしょうね」
少しではあるが情報が増えた。
まず、あのクリーチャーに関してだが、死体を媒介に感染して増殖するタイプではない。
恐らくこれは確定だ。 その為、数はそこまで多くはない。
潰せば減るのは朗報だ。 次に成長過程。
テロリストの死体やプレイヤーのアバター、機体の残骸が見当たらない点から手当たり次第に吸収して際限なく大きくなるといった所だろう。
「バランス調整でもしてるのか? 微妙に都合がいいのが気になるなぁ……」
この情報から読み取れるクリーチャーの生態は近くに居る存在を捕食する為に執拗に追いかけると言ったものだ。 常に何かを喰って大きくなろうとしているので、待ち伏せやその場に留まるといった行動を取らない。
「――という事は何もない場所は安全って事?」
「そういう事でしょう。 何しろ獲物が居ない以上は次を探しに移動しますからね」
同時に獲物が居ないという事はその場のテロリストも皆殺しにされた証拠でもある。
つまり、何も残らないという訳だ。
「まぁ、見つからなければ比較的、安全に下に降りれそうですね」
油断は禁物ではあるが。
さっきのをやり過ごせたのは非常に大きかった。 戦闘音が移動しているからだ。
ヨシナリの見立て通り、プレイヤー達の方へと誘導して擦り付けるつもりなのは間違いない。
実際、戦闘音は徐々に遠ざかっている点からも即座に巻き込まれる事はないはずだ。
そのままリフトまで辿り着いたのだが完全に破壊されており、下への穴がぽっかりと開いていた。
ちらりと覗き込むと真っ暗な縦穴と下層の明かりらしき物が奥に見える。
ヨシナリは内心で小さく舌打ちする。 推進剤を余り使いたくなかったからだ。
戦闘を行っていない事もあってそこまで減っていないが無駄遣いもしたくない。
別のリフトへ向かうかとも思ったが、移動中に敵と遭遇するリスクを考えると降りた方が無難だ。
「降ります。 しっかり掴まっててください」
グロウモスが体を固定した事を確認してヨシナリはボーンヘッドを穴に飛び込ませる。
二層は食料プラントだ。 中心に生産設備――要は巨大な森のような畑があってそれを囲むように通路や設備が配置されている。 何処へ行くにもその森を経由した方が早いのだ。
どう動いた物かと考えながら推進装置を噴かして落下速度を削ぎ落して着地。
我ながらボーンヘッドの扱いに慣れて来たなと思いながら通路に出ると、かなりの数のテロリストとボーンヘッド二機が視界に飛び込む。
「げ」
完全に鉢合わせた形だ。
グロウモスが後ろで身を固くし、ヨシナリも反射的に攻撃しようとして思いとどまる。
何故なら鹵獲機体と気付かれていないはずだからだ。
彼女もこのイベントをしっかりと楽しんでくれているようだ。
「分かりました。 行きましょう」
移動ルートに関してはもう頭の中で組み立ててある。
ヨシナリは念の為とボーンヘッドに内蔵されていたマップを確認しながら先へ。
向かう先は二層へと降りる為のリフトだ。
エレベーターと違って一階層だけを移動できるようになっている。
資材だけでなく機体の移動手段も兼ねているだけあってかなり大きい。
それに襲撃を受けた場合でも飛び降りて下層に移動する事も可能であって比較的安全だ。
戦闘音が遠い事からこの位置は基地内でも外縁に当たる事で警戒が薄いのか、敵、味方どちらとも遭遇する気配はないが、下層に降りるリフトやエレベーター前には確実に何かしら居るはずだった。
――できれば二層ぐらいまではテロリスト相手だと楽でいいんだけど……。
一応、このボーンヘッドには敵味方の識別はされており、テロリスト側の機体にも味方と認識されているはずだ。 後は変に見咎められなければ下に降りるぐらいは何とかなる。
そう思いたかったのだが、先の方で響く銃声や砲声に掻き消された。
「ヨシナリ」
「分かってます」
明らかに戦闘によって発生した音だ。 問題は音が一種類しかない事。
基本的に勢力が二つ以上あるならその際に響く音は自然と混ざり合ったものになる。
残念ながらこの先で響く音は一種類。 つまり、何かが何かに対して一方的に銃撃、ないし砲撃を浴びせている事に他ならない。
通路の先からボーンヘッドと鹵獲Ⅰ型が射撃しながら後退している姿が視界に入る。
プチプチと音声が途切れている事から何やら叫んでいるらしいが、ヨシナリ達には一切聞こえない。
「何? 音が途切れてる?」
「仕様みたいなの気にしない方がよさそうです。 うーん、これはヤバそう」
ヨシナリはそう呟いてそっと近くの通路に入って身を隠す。
テロリストの機体は射撃しながら突き当りの通路をそのまま後退して姿が消える。
彼等を追うようにガシャガシャと異様な足音が発生し――
「うわ、何だアレ?」
思わず呟く。 姿を現したのは異様な何かだった。
ボーンヘッドやⅠ型のパーツ、後は無数の小さな人型の何かを寄せ集めたような異形の鉄塊。
巨大な塊に手足が生えたようなそれはバランスの悪さもあってそこまでのスピードはなかったが、確実にテロリスト達を追跡していた。
――思った以上にヤバいのがいたなぁ……。
例のクリーチャーの特製が分からなかった事もあって脅威度は高めに見積もっていたが、あんなのが大量に徘徊しているのなら話が変わって来る。 明らかに手持ちの武装で処理するのは難しい。
同時にテロリストの意図に関しても何となくだが分かった。
Ⅰ型もボーンヘッドも本来ならもっと速度が出るはずなのに相手に見失わせない距離を維持している。
恐らくはあのままプレイヤー達の所まで引っ張ってぶつけるつもりのようだ。
少し時間を空け、何も出てこない事を確認してからクリーチャーが飛び出した方へと向かう。
通路は酷い有様だった。
爆撃でもされたのかと言いたくなるほどに不規則に空いた床の穴と大きく抉れた壁。
遠目で詳細までは分からなかったがどれだけ歪な形をしていたのかがよく分かる。
更に進むと戦闘の跡と思われる痕跡があちこちに刻まれていた。
銃弾、砲弾の跡は勿論、血痕も少なくない。
この様子を見れば海から仕掛けたプレイヤー達がどうなったのかは想像に難くなかった。
「……肝心の死体や残骸がな――あ、そっか……」
「お察しの通りあの団子の一部になったんでしょうね」
少しではあるが情報が増えた。
まず、あのクリーチャーに関してだが、死体を媒介に感染して増殖するタイプではない。
恐らくこれは確定だ。 その為、数はそこまで多くはない。
潰せば減るのは朗報だ。 次に成長過程。
テロリストの死体やプレイヤーのアバター、機体の残骸が見当たらない点から手当たり次第に吸収して際限なく大きくなるといった所だろう。
「バランス調整でもしてるのか? 微妙に都合がいいのが気になるなぁ……」
この情報から読み取れるクリーチャーの生態は近くに居る存在を捕食する為に執拗に追いかけると言ったものだ。 常に何かを喰って大きくなろうとしているので、待ち伏せやその場に留まるといった行動を取らない。
「――という事は何もない場所は安全って事?」
「そういう事でしょう。 何しろ獲物が居ない以上は次を探しに移動しますからね」
同時に獲物が居ないという事はその場のテロリストも皆殺しにされた証拠でもある。
つまり、何も残らないという訳だ。
「まぁ、見つからなければ比較的、安全に下に降りれそうですね」
油断は禁物ではあるが。
さっきのをやり過ごせたのは非常に大きかった。 戦闘音が移動しているからだ。
ヨシナリの見立て通り、プレイヤー達の方へと誘導して擦り付けるつもりなのは間違いない。
実際、戦闘音は徐々に遠ざかっている点からも即座に巻き込まれる事はないはずだ。
そのままリフトまで辿り着いたのだが完全に破壊されており、下への穴がぽっかりと開いていた。
ちらりと覗き込むと真っ暗な縦穴と下層の明かりらしき物が奥に見える。
ヨシナリは内心で小さく舌打ちする。 推進剤を余り使いたくなかったからだ。
戦闘を行っていない事もあってそこまで減っていないが無駄遣いもしたくない。
別のリフトへ向かうかとも思ったが、移動中に敵と遭遇するリスクを考えると降りた方が無難だ。
「降ります。 しっかり掴まっててください」
グロウモスが体を固定した事を確認してヨシナリはボーンヘッドを穴に飛び込ませる。
二層は食料プラントだ。 中心に生産設備――要は巨大な森のような畑があってそれを囲むように通路や設備が配置されている。 何処へ行くにもその森を経由した方が早いのだ。
どう動いた物かと考えながら推進装置を噴かして落下速度を削ぎ落して着地。
我ながらボーンヘッドの扱いに慣れて来たなと思いながら通路に出ると、かなりの数のテロリストとボーンヘッド二機が視界に飛び込む。
「げ」
完全に鉢合わせた形だ。
グロウモスが後ろで身を固くし、ヨシナリも反射的に攻撃しようとして思いとどまる。
何故なら鹵獲機体と気付かれていないはずだからだ。
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