Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
706 / 865

第706話

 正直、下がって様子を見る――要は他のプレイヤーに先行させてある程度の安全を確認してから進むべきぐらいは言って来ると思っていたヨシナリにとってグロウモスの返事はありがたい物だった。
 彼女もこのイベントをしっかりと楽しんでくれているようだ。

 「分かりました。 行きましょう」

 移動ルートに関してはもう頭の中で組み立ててある。
 ヨシナリは念の為とボーンヘッドに内蔵されていたマップを確認しながら先へ。
 向かう先は二層へと降りる為のリフトだ。 

 エレベーターと違って一階層だけを移動できるようになっている。
 資材だけでなく機体の移動手段も兼ねているだけあってかなり大きい。
 それに襲撃を受けた場合でも飛び降りて下層に移動する事も可能であって比較的安全だ。

 戦闘音が遠い事からこの位置は基地内でも外縁に当たる事で警戒が薄いのか、敵、味方どちらとも遭遇する気配はないが、下層に降りるリフトやエレベーター前には確実に何かしら居るはずだった。
 
 ――できれば二層ぐらいまではテロリスト相手だと楽でいいんだけど……。

 一応、このボーンヘッドには敵味方の識別はされており、テロリスト側の機体にも味方と認識されているはずだ。 後は変に見咎められなければ下に降りるぐらいは何とかなる。
 そう思いたかったのだが、先の方で響く銃声や砲声に掻き消された。

 「ヨシナリ」
 「分かってます」

 明らかに戦闘によって発生した音だ。 問題は音が一種類しかない事。
 基本的に勢力が二つ以上あるならその際に響く音は自然と混ざり合ったものになる。
 残念ながらこの先で響く音は一種類。 つまり、何かが何かに対して一方的に銃撃、ないし砲撃を浴びせている事に他ならない。

 通路の先からボーンヘッドと鹵獲Ⅰ型が射撃しながら後退している姿が視界に入る。
 プチプチと音声が途切れている事から何やら叫んでいるらしいが、ヨシナリ達には一切聞こえない。
 
 「何? 音が途切れてる?」
 「仕様みたいなの気にしない方がよさそうです。 うーん、これはヤバそう」

 ヨシナリはそう呟いてそっと近くの通路に入って身を隠す。 
 テロリストの機体は射撃しながら突き当りの通路をそのまま後退して姿が消える。
 彼等を追うようにガシャガシャと異様な足音が発生し――

 「うわ、何だアレ?」

 思わず呟く。 姿を現したのは異様な何かだった。
 ボーンヘッドやⅠ型のパーツ、後は無数の小さな人型の何かを寄せ集めたような異形の鉄塊。
 巨大な塊に手足が生えたようなそれはバランスの悪さもあってそこまでのスピードはなかったが、確実にテロリスト達を追跡していた。

 ――思った以上にヤバいのがいたなぁ……。

 例のクリーチャーの特製が分からなかった事もあって脅威度は高めに見積もっていたが、あんなのが大量に徘徊しているのなら話が変わって来る。 明らかに手持ちの武装で処理するのは難しい。 
 同時にテロリストの意図に関しても何となくだが分かった。

 Ⅰ型もボーンヘッドも本来ならもっと速度が出るはずなのに相手に見失わせない距離を維持している。
 恐らくはあのままプレイヤー達の所まで引っ張ってぶつけるつもりのようだ。
 少し時間を空け、何も出てこない事を確認してからクリーチャーが飛び出した方へと向かう。

 通路は酷い有様だった。 
 爆撃でもされたのかと言いたくなるほどに不規則に空いた床の穴と大きく抉れた壁。
 遠目で詳細までは分からなかったがどれだけ歪な形をしていたのかがよく分かる。

 更に進むと戦闘の跡と思われる痕跡があちこちに刻まれていた。
 銃弾、砲弾の跡は勿論、血痕も少なくない。 
 この様子を見れば海から仕掛けたプレイヤー達がどうなったのかは想像に難くなかった。

 「……肝心の死体や残骸がな――あ、そっか……」
 「お察しの通りあの団子の一部になったんでしょうね」

 少しではあるが情報が増えた。 
 まず、あのクリーチャーに関してだが、死体を媒介に感染して増殖するタイプではない。
 恐らくこれは確定だ。 その為、数はそこまで多くはない。
 
 潰せば減るのは朗報だ。 次に成長過程・・・・。 
 テロリストの死体やプレイヤーのアバター、機体の残骸が見当たらない点から手当たり次第に吸収して際限なく大きくなるといった所だろう。 

 「バランス調整でもしてるのか? 微妙に都合がいいのが気になるなぁ……」

 この情報から読み取れるクリーチャーの生態は近くに居る存在を捕食する為に執拗に追いかけると言ったものだ。 常に何かを喰って大きくなろうとしているので、待ち伏せやその場に留まるといった行動を取らない。

 「――という事は何もない場所は安全って事?」
 「そういう事でしょう。 何しろ獲物が居ない以上は次を探しに移動しますからね」

 同時に獲物が居ないという事はその場のテロリストも皆殺しにされた証拠でもある。
 つまり、何も残らないという訳だ。 

 「まぁ、見つからなければ比較的、安全に下に降りれそうですね」

 油断は禁物ではあるが。 
 さっきのをやり過ごせたのは非常に大きかった。 戦闘音が移動しているからだ。
 ヨシナリの見立て通り、プレイヤー達の方へと誘導して擦り付けるつもりなのは間違いない。

 実際、戦闘音は徐々に遠ざかっている点からも即座に巻き込まれる事はないはずだ。
 そのままリフトまで辿り着いたのだが完全に破壊されており、下への穴がぽっかりと開いていた。
 ちらりと覗き込むと真っ暗な縦穴と下層の明かりらしき物が奥に見える。

 ヨシナリは内心で小さく舌打ちする。 推進剤を余り使いたくなかったからだ。
 戦闘を行っていない事もあってそこまで減っていないが無駄遣いもしたくない。
 別のリフトへ向かうかとも思ったが、移動中に敵と遭遇するリスクを考えると降りた方が無難だ。

 「降ります。 しっかり掴まっててください」

 グロウモスが体を固定した事を確認してヨシナリはボーンヘッドを穴に飛び込ませる。
 二層は食料プラントだ。 中心に生産設備――要は巨大な森のような畑があってそれを囲むように通路や設備が配置されている。 何処へ行くにもその森を経由した方が早いのだ。

 どう動いた物かと考えながら推進装置を噴かして落下速度を削ぎ落して着地。
 我ながらボーンヘッドの扱いに慣れて来たなと思いながら通路に出ると、かなりの数のテロリストとボーンヘッド二機が視界に飛び込む。

 「げ」

 完全に鉢合わせた形だ。 
 グロウモスが後ろで身を固くし、ヨシナリも反射的に攻撃しようとして思いとどまる。
 何故なら鹵獲機体と気付かれていないはずだからだ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。